「ギャング対Gメン 集団金庫破り」

深作欣二監督「ギャング対Gメン」(1962)の続編だが、監督は石井輝男さんに交代しており、共通しているキャストは尾形刑事役の加藤嘉さんくらいで、主役の鶴田浩二さんの役名は違っているし、藤川警部のキャスティングも変わっている。

組織的な金庫破りもので、美貌の佐久間良子さんと筑紫あけみさんが犯罪者側に混じっていることから、イタリア映画の「黄金の七人」(1965)を連想させたりするが、どう考えても本作の方が公開時期は早い。

たまに「ダイハード3」は「黄金の七人」に似ているという意見も見かけるが、それより前に似たような作品がすでに日本で作られていたということで、いろいろ革新的な娯楽映画を撮ってきた石井輝男監督らしいといえばらしい作品である。

サスペンス映画らしく、二転三転する展開はスリリングだが、警察側の動きがあまりに杜撰すぎるようにも感じる。

ラスト近くがややもたつく印象はあるが、まずまずの佳作だろう。

この当時の加藤嘉さんは、髪には白いものが混じってはいるが、顔の皮膚などはまだ張りがあり、アップになると若さが伺える。

十朱幸代さんの実父十朱久雄さんが、どうみても善人顔なのに犯罪者役で出ているのが珍しい。

杉浦直樹さんの悪役も珍しいような気がするが、この時代の八名信夫さんが杉浦さんや丹波哲郎さんとほぼ同格の役を演じているのが嬉しい。

田中春男さんがエロ親父みたいな中年男として登場しているが、1958年公開の「一心太助 天下の一大事」では「純情さん」などと呼ばれる純粋な若者を演じていただけにそのギャップに驚かされる。

この当時51歳くらいだったはずで、年齢的には本作の方が合ってるとは思う。

梅宮辰夫さんも出ているが、この時代の辰兄いは妙にイケメンなのが逆に個性を殺しており、存在感が希薄なのが特徴。

ただ劇中に登場する音による拷問は、流石に今見ると現実味が薄い。

トランジスタラジオの音量の上限など知れているのに加え、片耳用のイヤホンだけで、あそこまで苦しむことはないと思えるからだ。

丹波哲郎さんもなかなか異色の役柄で印象的。

【以下、ストーリー】

1963年、東映、村尾昭脚本、石井輝男脚本+監督作品。

街を走る護送車の中から、よお、姉ちゃん!と歩く女性たちに声をかける竹中譲治(田中春男)に、おい!と護衛の警官が注意する。

人気の少ない二線の線路に挟まれた道を走っていたご走者を前後して挟んで移動していた乗用車が急に停まり、通路を塞ぐ形になったので護送車も停まったところで、背後の車から降りた菅沼信(杉浦直樹)が、護送車の後部ドアの鍵を、脇の線路を通過する列車の音に紛れて銃で破壊し、開ける。

逃げようとする竹中に手錠をかけて制止しようとした警官松田は、菅沼が銃殺する。

竹中と警官を繋いでいた手錠の鎖も銃で切断する。

逃げ出した竹中と菅沼は後部の車に乗り込み逃亡する。

ゲームセンターの射撃ゲームを試していた菊川志郎(鶴田浩二)の肩を叩いたのは、馴染みの刑事尾形(加藤嘉)だった。

結構流行っているじゃないかと話しかけた尾形に、お陰さんでね、なんで来たい?と菊川が聞いたので、こいつはご挨拶だね、その後どうしているかと、そこまできたついでに…と尾形が言うと、保護観察ってやつですかい?と菊川が皮肉ったので、おい!バカに僻みっぽくなったなと尾形は揶揄う。

菊川が、おい、サブ!と呼んで出てきた青年に、どうだい?と緒方が聞くと、それはもう真面目一方で…とサブは答え、で、何か?マスター…と菊川に聞くと、この機械、電気周りの調子悪いな、お前、よく調べとけと菊川は支持する。

奥の部屋で茶を入れていた菊川に、わしも一杯もらおうかなと尾形が声をかけると、親父さん、持って回った言い方しないで、要件言ってもらいたいなと菊川はいう。

実はね…と尾形が口を開くと、この件でしょう?と菊川は新聞を取り上げて差し出す。

緒方が紙面に目を落とすと、「白昼、囚人語走者襲わる  監視の警官を射殺 仲間の計画的犯行」のトップ記事が目に飛び込む。

じゃあ率直に聞くがね、この事件と君は…と緒方が言うと、二つの茶の入った湯呑みを持ちながら、関係があると菊川は答える。

殺された松田巡査と俺はガキの頃からのポン友だからなと菊川はいう。

それを聞いた尾形は、おい、脅かすなよと言いながら椅子に腰を下ろすと、犯人と関係があるような言い方をしてと苦笑する。

そう言う可能性があるから俺んところに来たんでしょうと菊川が指摘すると、そう絡むなって、捜査の常道として殺された松田純さの交友関係、怨恨説とかどんな角度から…と緒方が言いかけると、捜査の常道として調べる

ってわけかと菊川は冷めた表情で言い返す。

菊川は松田巡査とのことを思い出していた。

(回想)ある日店に来た松田巡査は、たまには遊びにこいよ、お袋が顔を見たがっているんだと話しかけられた菊川は、おばさんにはずいぶん迷惑をかけちまったからな、敷居が高いよと菊川が応じると、年寄りは口はうるさいけどさ、あれで影じゃ君のことを心配してるんだよと松田巡査が言う。

それじゃ、近いうちにお説教でも聞きに行くかと菊川は答えると、松田巡査はその返事を聞き嬉しそうだった。

(回想明け)あれが松田の顔を見た最後だった…と菊川は告白する。

それを聞いた尾形は、やっぱり松田は偶然の災難だったんだな〜と呟く。

それを聞いた菊川は、じゃあ松田は脱走事件に関係があったとでも言うんですか?と問い詰める。

すると尾形は、まあ色々勘繰るものもいるんでね〜と言いにくそうに答える。

そうか、松田の交友関係が気に食わない奴もいるんですね〜、俺みたいな前科者もいるし‥と菊川は自虐的に言う。

そんな菊川に、言い難いこと言わしてもらうがねと前置きした尾形は、今度脱走したのは金庫破りの南京虫のジョーってやつなんだと教える。

ふ〜ん、俺と同業か…、それでマツダが疑われているんですね?と菊川は考え込む。

君が足を洗った男だってことはわしは一番よく知っているよと尾形は言うが、あんたみたいなベテランが俺んところウロウロしているようじゃ、ホシは今頃笑いが止まらないってことでしょうと菊川は皮肉る。

おい、手厳しいんだなと尾形が驚くと、じっとしてられねえぜと言いながら菊川は立ち上がる。

特別捜査本部に戻った尾形に、たった今、四課の方へ北海道警から連絡がありまして、松井という箱師崩れが網走刑務所を出獄して、その足で東京に向かったっていうんですがね、この男、金庫破りの前科が19回もあるんで…と刑事が報告に来て要注意ということで照会したんですが…、場合が場合だけに…とい報告しながら写真を見せる。

気になるのか?と尾形はいう。

通称「伯爵」か…と言い、なるほど、すまし込んでいると貴族様って面だと尾形は写真を見て笑う。

刑事たちはすぐに駅に張り込み、松井(十朱久雄)を見つけて尾行する。

電車に乗り込んだと見せかけた松井は、刑事二人が乗り込むと、発車直前に電車から降りてしまい、刑事たちは電車の中に取り残される。

本部の電話でそのことを知った尾形は、何?巻かれた!と驚く。

赤電話で報告した尾行刑事は、すみませんと謝る。

尾形の電話を本部で聞いていた藤川警部(織本順吉)は、なるほど、一筋縄で行く相手ではなさそうだなと指摘する。

松井って箱師崩れと南京虫のジョーの脱走事件が関係あるとすれば…と尾形が呟くと、何人かの金庫破りが東京に集まっているとも考えられるねと藤川警部は答える。

金庫破りの名人が東京に集まっている…何をやろうとしてるんだろう?と尾形は呟き、どうでしょうか?奴らの中に1人潜り込ませてみたら?と提案する。

というと?と藤川警部が聞くと、打ってつけの男がいるんです、ほら、例の巡視した松田の幼馴染で菊川っていう男なんですと教えると、ああ、金庫破りの前がある男だねと藤川も思い出す。

蛇の道はなんとかって言いますが、彼にやらせたら早く解決への目処がつくかもしれませんとの尾形の提案を聞いた藤川は、尾形君、警察が前科者に渡りをつけてホシをあげるなんていうのはね、昔の捜査のやり方だよと指摘する。

例えどんなに苦しくても自力でやるべきだ!と藤川警部はいうので、尾形は、そりゃそうですけど…と落ち込む。

「大東ホテル」

ブランデーと注文しながら、松井の隣に座った菅沼は、新聞見て驚いたよ、なんであんな、手荒な真似をしたんだと松井が言うので、趣味や道楽でやったわけじゃねえよとサングラスをとって答える。

他のメンバーは?と松井が聞くので、お前とだと答えると、懐かしい顔が見れると松井は喜んだので、ただ神戸の矢島って男だが、こいつだけはどうしても捕まらねえ、半年も必死に探しているんだが…と菅沼が言うので、誰より一番肝心な男だ、あいつがいなけりゃ箱が開かないと松井は指摘する。

それも俺の責任ってわけかと不貞腐れた菅沼は、無理だぜ、あんたが顔知らねえ男を俺が探せるわけねえじゃないかと言い返す。

無理でもなんでも探し出すんだ、それでなきゃ、網走の別荘で3年越しに考えたこのプランも水の泡さと囁きかける。

だから、あんたが出てくるんを首を長くして待ってたんじゃねえか、俺に向かねえ仕事だと菅沼はいう。

松井の家に久々に訪れて仏壇に焼香をした菊川は、おばさん、悔しいだろう?諦め切れないだろう?俺も悔しいよ、腹がたつ、捕まえて叩き殺してやりたい!と松田の母親に話しかける。

すると母親は、純ちゃん、あなたの気持ちは嬉しいわ、でもそんな言い方しちゃダメよと注意する。

でもね…、おばさん、俺は‥と菊川がいうと、いけない、そんな顔、その目、あなたがいけないことをする時の目よと母親は指摘する。

おばさん、しょうちゃんをやった奴を俺の手であげたいんだと菊川はいうと、でもそれは警察のする仕事よと母親は言い返す。

その警察にもおツムのボンクラなのがいてさ…、しょうちゃんに俺みたいな前科者友達がいるんで変な目で見てる奴がいるんだと菊川は悔しがる。

そんなこと…と母親が言うと、俺の僻みかもしれないと言った菊川は、だけど俺はこの白黒は自分でつけて、しょうつあんに安心して眠ってもらいたいんだと言う。

ねえおばさん、俺は死んだしょうちゃんに代わって、きっとホシを上げてやる、良いね?と菊川は確認する。

母親はやっと頷くのだった。

松井家を後にした菊川は、近くに尾形が立っているのに気づき、親父さん、俺をつけてきたのか?と聞く。

ま、そう言う形になっちゃったかなと頭を書いた尾形は、やめてくれ!なんで俺を犯罪者扱いにするんだと抗議してきた菊川に、そうすげないこと言いなさんな、わしはお前さんが好きなんだよ、だから…と言うので、警察官に好かれるなんてなんて因果なんだ、忙しいんだから帰るぜ、俺は…と菊川はぼやく。

まあ、そうポンポン言いなさんなって、わしだって昔はお前さんと仲間だったことがあると尾形は一緒に歩きながらいう。

ちょっとわしの昔話でも聞いていかないかと続ける尾形は、近くの公園の長椅子に腰を下ろす。

やむなく付いてきた菊川は、俺の仲間だったって?一体どういうわけなんだいと聞きながら長椅子の隣に腰を下ろす。

わしゃね、貧乏百姓の次男坊で、うだつが上がらないのであてもないのに東京に出た。17の時さと尾形は話し出す。

おさだまりのコースで、スリの下働きまで手伝ったことがあるというので、菊川は見つめる。

ある日、パクられちまった、ところがその刑事さんがね、蕎麦屋に俺を連れ込んで身の上話を聞いてくれと…、あの時泣きながら食った天丼の美味さと言ったら…、今でも忘れないねと尾形は言う。

天ぷらの尻尾まで食っちまってさ、刑事さんに笑われたよと尾形が言うと、それで足を洗ったのか?と菊川が聞いてくる。

たった天丼一杯でね…、人間更生することもあればどん底に落ちることもあるんだよ、その人が生きている間

に、一度刑事らしい仕事ぶりを見せたいと思ったんだが、来年定年というのにまだこれという仕事が一つもない万年刑事だ…と尾形は言い、ああ。お喋りしちゃったなと言いながら立ち上がると、あんた、運が悪いんだよと菊川に告げる。

ダイヤルの箱師を今晩マークしてるんでね…というと、尾形は立ち去ってゆく。

その直後、椅子に置いてあった封筒に気づいた菊川が、おい尾形さん、忘れ物だ!と呼び止めようとすると、忘れ物するほどぼけちゃおらんよと言い残し尾形は遠ざかっていく。

封筒の中には矢島健(江原真二郎)という29歳の男の写真付き身上書が入っていた。

丸顔、色白、鼻筋通り、目付き鋭し…、ダイヤル錠に天才的な腕を持ち、4犯の前科は全て金庫襲撃であるといった特徴を、菊川は帰りの電車の中で暗記していた。

神戸

「ミナトビリヤード」

矢島がビリヤードをやっているのを見た菊川は、すごい球を見せてもらった、どうだ?一杯付き合わねえかと声をかける。

バーで何にすると菊川が聞くと、俺はいつものやつと矢島が言うので、俺も同じでいいよと注文する。

あんた、見かけねえ顔だなと矢島が警戒して言うので、あんたがしばらく土地を出ていたから、俺を見かけなかっただけだと冷静に応じる菊川。

何の話だ?と矢島がいうので、どうだい、そろそろ仕事をしたらと誘った菊川は、その場でトランプの妙技を披露し、スペードの7、ダイヤのクイーン、ハートのAと、次々とカードを見ないで当てて見せる。

すると、そのトランプを受け取った矢島も、同じようにカードを見ないで当て始める。

それを見たバーテンが驚いたので、俺たちと賭け事はしない方が良いぜと菊川は若いかける。

あんた、なかなか良い指持ってるなと矢島が興味を持ってくる。

これでダイヤルを触ると、向こうの方からスーッと入って来るんだと自分の指を見ながら菊川がいうと、矢島は俺と組みたいのか、あんた?と聞いて来る。

完璧だと思うね、どんな箱でもいうこと聞くよと菊川は告げる。

周囲の目を警戒しながら、でかい山なら乗ってもいいぜと菊川が応じてきたで、河岸変えてゆっくり話そうじゃないかというと菊川は席を立つ。

矢島も後についてきたので、港がみえる空き地にやってきた菊川は、話を聞こうじゃないかという矢島に、でもな、あんたがいちゃ都合の悪いことがあると告げる。

何だって?と訝る矢島に、もう少し消えていてもらいたいんだと菊川はいう。

そんなくだらないことを言うためにこんなところに連れ出してきたのか?と矢島が聞くと、どうしても首を縦に振ってもらいたいと菊川は頼むと、いきなり矢島は持っていたビリヤードのスティックケースで殴りかかってくる。

すぐに反撃をした菊川は、相手を殴りつけ、右手を負傷させたので、矢島さん、その腕じゃ当分仕事は無理だぜ、それにサツはあんたの動きに目を光らせていると告げる。

お前さん、一体何のために俺をこんなことに?と負傷した右手を差し出して矢島が聞くので、わけはちょっと言えねえが、今行ったことは嘘じゃねえよと言いながら、菊川は尾形からもらった身上書を手渡す。

それを見た矢島が、どうしろってんだ?と言うので、神戸から姿を消してくれてらば良い、それだけさ、それであんたも俺もうまくいくよと菊川は告げる。

それを聞いた矢島は薄笑いを浮かべ立ち上がると、お前さん、何をやらかす気か知らないが、面白いことがありそうだなと近づいてきたので、菊川は、まあな、新聞を楽しみにしていてくれという。

そうすりゃ、俺のいうことを聞いてよかったと感謝することになるよと菊川がいうと、そうならなかったらこの挨拶は必ずするぜと矢島は自分の右腕を見せながら答える。

互いに笑い合うと、矢島はスティックケースを拾い上げ、立ち去ってゆく。

競馬場に来た菅沼は、咳き込んでいる無精髭の男の方を叩き、ついてねえようだなと声をかける。

絶対外れっこないってのがあるんだがねと菅沼がいうと、その男手塚徹(丹波哲郎)は、じゃああんたが買えばいいんじゃないかと答え背を向ける。

俺はあんたに同情してるんだよ、だからいいレースを押してやろうと教えてやろうと思ったんだ、そうすりゃ、あんたをボロクズのように捨てた秋子っていうハクいスケの気持ちも変わるかもしれねえぜと再び菅沼は語りかける。

振り返った手塚は、あんた一体誰だと聞くので、幸運を振り撒く男だ、来なと菅沼は誘う。

絶対外れないレースってやつ行かしてもらおうかと、持っていた馬券を破り捨てついてきた手塚が言うので、幸運を掴むには少し危険が伴う、わかってるだろうなと菅沼が聞くと、今の俺に危険なんてものはないよ、どうせもう…と手塚は笑うと、また咳き込み始める。

菅沼は、そうだ、その意気だ、太く短く生きるんだと菅沼は褒め、どうせ一度は死ななけゃいけねえんだからなと同行していた石川(八名信夫)もいう。

早く仕事の話をしろよと手塚が急かすと、おめえたちの説教が聞きてえわけじゃねえんだというので、こりゃ悪かったと菅沼は苦笑し、率直にいうが、「カサブランカ」というキャバレーで暴れてもらいたいんだと伝える。

「カサブランカ」?と手塚が立ち止まったので、そうだ、あんたを捨てたあのスケが2号に収まっているあの店さと菅沼がいうと、どのくらいやりゃいいんだいと手塚は聞く。

ちょっと都合があってな、あの店を使わせてもらいたいと申し込んである、だがなかなか首を縦に振らないと菅沼は説明する。

当たり前だよそりゃと手塚がいうので、そこを何とかいうことを聞かせてもらいてえと菅沼が頼むと、どういう感じでやりたいと手塚が聞くので、ハジキでさ、あの店は大岡組の経営だ、応対に出てきた幹部に、話によっちゃ一発ぶっ放してもらおうかと菅沼は言う。

遠慮はいらねえ、急所にぶち込んでかまわねえと菅沼がいうので、断っておくが、警察病院に行って棺桶に入るようなことにはならねえだろうな?と手塚は聞いてくる。

あんたがパクられるような、そんなドジはしねえよと菅沼は約束する。

どうやら俺にうってつけの仕事らしいな、あんたが今言ったように実行者だと手塚が言うので、心配いらねえよ、あんたがパクられたら俺たちも一蓮托生じゃねえかと菅沼はいう。

よしわかった、早速だが、仕事までの手付をもらっておこうかと手塚が手を差し出してきたので、生活費かい?と聞くと、まあ良いよ、今日からあんたは俺たちの大事なお客様だ、最高の待遇をするぜというと、菅沼は待たせていた車を呼び寄せる。

神戸の「ミナトビリヤード」のバーで待っていた松井に、バーテンがあの人ですよと耳打ちしたのは、やってきた菊川だった。

お手合わせ願えますかと松井が話しかけると、小さな勝負ならお断りだぜと松井は答える。

私もちっぽけな賭けは大嫌いでねと松井も応じてくる。

そいつは頼もしい、それじゃああんた、どのくらい賭ける?と菊川が聞くと、まず3億くらいかなと松井が囁きかけたので、おい、あんた少しここに来てるんじゃないかと自分の頭をスティックで突きながら言い、その場を離れながらも、こいつ臭い!もしかすると俺の待ち受けているやつかもしれないと考える。

あまり大きすぎるかけはお嫌いですか?と松井が肩に触ってきたので、あんたが本気なら相手しても良いが、後で…と菊川が警戒するふりをすると、いや後悔はさせません、あなたと賭け事をするなと言う忠告も聞いての上のことですと松井はバーテンの方を見ながらいう。

菊川は、こいつは矢島を探しているに違いないと確信する。

あなたがお気が進まないならお連れの方でも良いんですが?紹介してくれませんかな?と松井が言ってきたので、紹介してくれ?じゃあ、この親父、矢島の顔を知らないのかも知らないと考える。

連れって矢島のことか?と思い切って口に出すと、矢島さん!と松井が驚いたので、やっぱりこいつ矢島を探しているんだと菊川は確信する。

ぜひお手合わせしていただきたいが、失礼だが相当のお礼はさせていただく、ご紹介くださいと松井はしつこく迫ってくる。

やつは今日は本町の玉屋にいるんだ、案内しても良いぜと菊川が教えると、お願いしますと松井はいってくる。

どうやら矢島の顔は知らないらしい、よし、一つ芝居を打ってみようと菊川は考えながら、松井を連れて外に出る。

街の路地にやってきた菊川は、おい、お前矢島に何のようがあるんだと、松井の襟元を掴んで聞いてみる。

玉を突くだけですよ、大きく賭けてねと松井が言うので、とぼけるな!矢島はやばいことになるんで滅多なことでは姿を見せねえ、おめえデカだな?吐け!吐いちまいな!と疑ってみせる。

サツなんか怖がってるチンピラとは訳が違うんだ、素直に吐かないと、明日の朝、岸壁に浮かんでいるなんてことになるかもしれねんだぜと脅すと、放せ、デカなんかじゃない、訳を言うから放せと松井は言う。

手を離した菊川は、良い、何で矢島探しているんだと再度聞く。

心配いらんよ、わしは矢島さんに会ったことはないけど同業者だと松井は言う。

そうかい、そいつはすまねえことしたなと詫びた菊川は、彼に用事なんだ、案内してくれたまえと松井がやや上から目線で行ってきたので、俺だよと菊川が答えると、あんたが矢島さん!と松井は驚く。

俺もヤキが回ったかな、デカと間違えるなんてと菊川が芝居を続けると、会いたかった、3年前に伊勢パールの箱を破った松井ですよと自己紹介してきたので、じゃああんた「伯爵」?とニックネームで呼んでみる。

あんな大先輩に失礼なことしちゃってと菊川が詫びると、気にしない、気にしないと松井は答え笑い出す。

その話をホテルで松井に聞かされた菅沼は笑い、岸壁に浮かんでなくてよかったな、おまけに俺が半年も探し回っていた矢島を探しい当てたんだと褒める。

大事な男だ、待遇は最高にしてやってくれよと松井は頼むので、わかってるよと菅沼は応じる。

松井指定の部屋にやってきた菊川は、カーテンの背後に気配を感じ、そっとカーテンの隙間から中を覗き込むと、ベッドに見知らぬ女が寝そべっており、ホワイトホースのグラスを傾けながら、どうしたの?おっかない顔して…。今日ねえ、この部屋の付属品よと笑いかけてくる。

菅沼さんにそう言われたの…と女がいうが、菊川は警戒したままであった。

菅沼?その男が俺を呼んだのか?と聞くと、いきなり入ってきた菅沼が、矢島さんだね、挨拶は抜きにして、この女マリ子(筑紫あけみ)って言うんだ、仕事が済むまであんたの専属ってことにしておくぜと紹介する。

せっかくの志だが、この付属品は返すぜ、仕事に女は御法度だからなと菊川はいう。

ホテルのロビーで張っていた石川は、やってきた男に野見山さんだね?と声をかける。

野見山守(曽根晴美)は、あんたは誰だいと聞いてきたので、石川って言うんだよと名乗ると、写真の方がずっと感じがいいなと、顔認証のため持っていた写真を見ながらいう。

言い難いこと言うね、あんた…という野見山に、正直なんだ俺は…と答え、先に立って案内する石川。

ゲームセンターにやってきた菊川はサブを呼び出し、俺のポケットに入っているメモをすって、緒方さんに渡してくれと頼む。

マスターの手前仕方ねえや、給料のためならやりますよとサブはいい、俺は今、大東にいる、いつでも俺を張ってくれと菊川は付け加える。

ホテルに戻るとすでに仲間たちは揃っており、菅沼が、矢島さん、勝手に出歩いてもらにじっや困るねと注意してくる。

始終部屋の中では監獄と同じだぜと菊川は言い訳すると、一体いつ仕事始めるんだ?と聞く。

人数が揃ったらなと菅沼が答えると、ほお、いつ揃うんだい?と菊川が聞くと、うん、もう着く頃なんだがな〜と菅沼は腕時計を見ながら答える。

その時、ノックのが聞こえたので、竹中譲治(田中春男)が開けてみると、そこに立っていたのは橋場玲子(佐久間良子)だったので、なるほど噂通り美人だが、問題は腕の方が…と言いながら顔を近づけたので、玲子は手袋で竹中の頬を叩く。

見かけによらないじゃじゃ馬だと竹中はぼやく。

部屋の中に入った玲子が、菅沼さんって言うのは?と聞いてたので、私ですよ、こちらの推薦であんたを呼んだと菅沼が答える。

推薦者として立ったのは松井だった。

じゃあ、あなたが「伯爵」ねと玲子は気づくと、橋場玲子ですと挨拶する。

松井は玲子を座らせると、仲間を紹介していきましょう、こちらは…と手を差し出したので、神戸の矢島ですと菊川は挨拶する。

石川でスト名乗った後、私は…と竹中が名乗ろうとすると、いっぺんに言われても覚えきれないわなどと言いながら、玲子は化粧を直し始め、とにかく一休みさせていただくはというので、竹中はムッとなる。

それを野見山が愉快そうに笑い、一旦部屋から出ようとした玲子が、あなたってお頭も軽くそうだけどお財布も軽いのねと言いながら、さっきスったばかりの竹中の財布を投げてよこしたので、しっかりしとると竹中はぼやく。

その後、玲子の部屋に一人で入る竹中の姿を菊川は目撃する。

突然侵入してきた竹中を見て、何するの!と玲子が警戒すると、何もしやしねえよ、マンドリンみたいな可愛いお尻に触りたくなっただけよと言いながら、体を触ろうとしてきたので、変な真似するとただじゃおかないわよと玲子が威嚇すると、面白えなそりゃと言いながら玲子に抱きつこうとする竹中。

玲子は必死に相手の顔をビンタしながら抵抗するが、あまり手荒なことすると、指痛めちゃうぜ、大事な商売道具の指をな…と言う竹中にベッドに押し倒されてしまう。

竹中は玲子の体に覆い被さりキスしようとするが、その背中を掴み、殴ってきたのは菊川だった。

何だお前は?と鼻血を出した竹中が聞くと、俺の指はちょいと丈夫にできてる、足りなきゃもっとマッサージしてやっても良いぜと菊川はいうので、わかったよ、凄く聞いたぜと言いながら、鼻血を拭いながら竹中は部屋を出てゆく。

しかし玲子は礼を言うどころか、あなた、誰に断って部屋に入ってきたの?と聞いてきたので、何だって?と菊川は憮然とする。

私ね、ノックなしで男を部屋に入れた経験がないのよ、恋人以外はね、出ていってちょうだいと、髪や服を鏡台を見ながら直しながら玲子はいう。

菊川は、すまなかった、俺はの区をして女の部屋に入ったことがないんでねと答えて部屋を出る。

その後、ビリヤードをしていた菊川に、お手合わせ願いましょうか?と竹中が勝負を挑んでくる。

どのくらい組むんだい?と聞くと、1本まではいかないな、スケをつく方はだいぶんいけるんだがなどと言いながら、竹中はスティックを選ぶ。

兄貴、昨日は失礼、ヒラに、ヒラに…などと竹中が仕立てに出てきたので、手荒なことして悪かったな、忘れてくれと菊川も謝る。

気にするなって、で、どうしたい?兄貴、全然二枚目だったからな、あのすけ、兄貴にイチコロでいかれちまっただろうなと竹中がからかってきたので、そんなんじゃねえよ、あんな青臭いのおかしくってと菊川は受け流す。

それを聞いた竹中は、へえ、趣味が違うんだね、俺とは…と意外そうに驚く。

その時、階段を降りてホテルにやってきたのが、咳き込んでいた手塚を連れた菅沼だった。

それを見た菊川は、手塚だ、どうしてあいつがこんなところに?菅沼と一体どういう関係なんだと怪しむ。

その時、兄貴、どうしたって?早く突きなってとじれたように竹中が話しかけてくる。

それで一発突いたのち、譲治さん、あんたずらかる時、警備の巡査眠らせたの誰だい?と聞く。

しかし竹中は、質問には答えかねますなといい、兄貴、どうしてそんなこと聞くんです?と不思議がったので、どうってことないさ、ただあんまり鮮やかな段取りだったので、誰の仕事かと思ってね…と譲治はごまかす。

でも仁義に反するで、そう雨質問はね…、うっかりバレて、そいつがパクられでもしたら、間違い無く電気椅子だからな…と竹中はいう。

そうした二人の会話を柱の陰から聞いていたのは岩下次郎(梅宮辰夫)だった。

銀座の夜景のネオンが重なり、「カサブランカ」のネオンが見える。

咳き込みながら店に入ってきた手塚は、秋子(八代万智子)が控えていた支配人室に勝手に入り込む。

秋子、ちょっとの間、この店を俺に預けてくれと頼むが、あなた、気は確か?と嘲笑するように秋子は問いかける。

狂ってるかもしれん、お前が狼野郎の情婦になった時からな…とい言いながら、手塚はテーブルの上に銃を置く。

相変わらず素直じゃないのね、私が欲しけりゃこんな物騒なもの振り回さなくてもと言いながら、明子が銃を取ろうとしたので、うるせえ!と跳ね除けた手塚は、咳き込みとハンカチで口元を抑え、お前のようなバイタにはもう用はない、早く返事を聞かせてもらおうかという。

わかったよ兄貴、改めて挨拶させてもらうよと言って立ち上がった支配人に銃を向けた手塚は、オメエのような使い走りの出る幕じゃねえやと凄んで見せる。

秋子、どうなんだい?と銃を向けると、私はいいけど…、じゃ、話は決まった、こいつにハンコを押してもらおうかと言い、手書きの「委任状」を差し出す。

秋子がそこにハンコを押すふりをしてテーブルに座ると、机の下の呼び出しボタンを押したので、それに気づいた手塚は、秋子の背後に身を隠し、ドアから銃を手に乱入してきた用心棒たちに向けて発砲する。

そしてハジキを捨てろ!ドア閉めろ!と命じると、なかなか味な真似やるじゃねえかと言いながら銃口を秋子の眉間に向ける。

すると秋子は、許して!ね、あなた、許して!と縋りついてきたので、俺ってどこまでも甘くできた男らしいな、オメエって女には…と言いながら、手塚は銃を持った手を垂らす。

そして版を推した委任状を手に取ると、中で用心棒たちを脅しながら部屋から出てゆく。

手塚は笑ったかと思うとまた激しく咳き込みだし、外に走り出ると、待機していた車に乗り込み逃げ出す。

ホテルでは石川が菅沼に、「カサブランカ」から無条件に貸し出すと返事があったそうですねと聞く。

いよいよ最後の仕上げってわけだと菅沼もブランデーを片手に答える。

それでどうします?あの肺病病みの元刑事さんはと石川が聞くと、恋に狂った元刑事、妻に捨てられ、拳銃を持って殴り込み、逃走中、栄養失調で死す…ってのはどうだい?と菅沼が筋書きを伝えると、なるほど、こいつは世話をかけなくて良いと石川は満足げに微笑む。

「カサブランカ」では大岡組の舎弟たちが、店長、なぜこのまま引っ込んでいるんです?組の信用はガタ落ちですぜと聞いていた。

わかってる!と怒鳴りつけた大岡(沢彰謙)は、やつらはなぜこんなヤバい橋を渡ってまであの店が必要なのかということだという。

部屋のベッドで寝ていた手塚を見舞ったのは菊川だった。

菊川の顔を見た手塚は、おお!珍しいとこで会うね、何年ぶりだろう?と驚く。

4年前の3月15日…と菊川が答えたので、そうか…あんたよく覚えているなと手塚は感心する。

忘れようたって忘れやしないよ、シャバとおさらばした日だからと菊川はいう。

恨んでるんだな?と手塚がいうと、今更…と菊川は苦笑し、そう言ってくれると嘘でも俺は気が楽になると手塚は良い、また咳き込み出す。

だがどうして俺がここにいることを?と手塚が不思議がったので、どうやら同じ雇い主のところで働いているらしいからなと菊川が言うと、なんだって!と手塚は踊る区で、昨日はだいぶん派手にやったらしいねと菊川は指摘すると、元刑事の俺がなと手塚は笑い出す。

これで今あんたが刑事をやってるなんてことになりゃ、潔く捕まってやるところなんだが…と手塚が言うので、くだらねえ冗談はともかく、体の方はどうなんだと菊川が聞くと、医者でなくなってわかるだろう、俺のツラ見りゃなと手塚は言う。

鬼刑事と言われたあんたが、そんな弱音吐いちゃ、みっともねえぜと菊川が言うと、だが本当のことだよと手塚は笑って言う。

ドアを閉めた菊川が手塚さん!と呼びかけたので、なんだ急に改まってと手塚は訝しがるが、ここにいるのは菊川としてじゃないんだ、ここじゃ矢島ってことになっているんだと切り出すが、手塚が何も言わないの∂え、訳を聞こうとしないのか?と菊川は問いかける。

良いじゃねえかそんなこと、どっちだって…と手塚は興味なさそうにいうので、よかねえんだ、俺にとっちゃ…と菊川はいう。

俺はどっちだって良いと言ったぜと手塚が真顔で言うので、俺で役に立つことがあったらそう言ってくれ、部屋は205だと菊川は告げ、部屋を出てゆく。

長い間、退屈させちまったな、今日からいよいよ仕事を始めてもらう…と菅沼は、部屋に集合した仲間たちに伝える。

場所は「カサブランカ」っていうクラブの地下だと菅沼はいうので、そこに金庫があるんだな?と菊川が聞くと、そう簡単には行かないよと菅沼はいう。

みんなに仕事してもらう銀行は、その地下の下水道を掘った向こう側にあると菅沼は説明する。

俺たちは穴掘りか…と竹中が不満そうにいうと、冗談じゃねえやと野見山も言い出したので、冗談は嫌いな男だと菅沼は言い返し、さ、早速始めてもらおうかと指示する。

「カサブランカ」の内部にあるマンホールから地下に降りることを知った菊川は、まるでもぐらだぜとぼやく。

野見山が先におり、菊川が続き、玲子らも下に降りる。

ゲス道脇を通り、ある場所に来ると、ここだと松井が指差したので、間違いねえだろうな?と菅沼が確認する。

30年前の話だから狂いはない、これから横に4m、さらに上に2m半掘るんだと松井は指示するんで、しかし臭いな、とんだ花咲か爺さんだと野見山がぼやく。

持参して電動ドリルでレンガの隙間を掘り進める野見山。

石川と竹中がレンガを抜いていく。

翌日、ホテルから出発する際、サブが菊川とすれ違いざま、小さなメモを受け取り、失礼と言って立ち去る。

警察の食堂で、緒方刑事にそれを渡すサブ。

なんか食っていかないかと尾形は勧めるが、なんか指先がむずむずするから帰りますとサブがいうので、そうかと尾形は笑いかけながらも、立ち去るサブに、また頼むよ、おいおい、こういうのダメだぞと指を鍵形にして注意する。

緒方が開いた菊川のメモには、「襲撃場所はキャバレーカサブランカにつながる建物 襲撃日時は未定」と書かれてあった。

その頃、竹中と石川らは車を塗装し直し、日本電信電話公社の作業車に偽装していた。

衛生局下水道課にやってきた尾形は、この下水道の上の建物は何になるんですかと係員に聞いていた。 

そこは三丸商事東洋会館ですねというので、横は?と聞くと、平和経済会ですねというので、尾形は平和経済会?と繰り返す。

バーにやってきた玲子は、先に飲んでいた菊川に気づき、気まずくなるが、ストレートのダブルを注文する。

菊川は先に席を立ち、帰り際、玲子の肩に手を置くと、女の酔っ払いはあまりリーズじゃないぜと声をかけるが、あなたに介抱してくれなんて言わないわと玲子が言い返したので、君はみょうに強がる癖がある、おつむの軽い証拠だよと言ってさっていく。

キャバレーカサブランカ専用駐車場に来た菅沼は、突然、横付けした車に行手を阻まれ、後部座席から出てきた男からどうぞと乗るように催促される。

中にもすでに別の男が乗っており、ニヤついていた。

菅沼が乗り込んだ車は走り出すが、そこに駆けつけた岩下が、急いでタクシーを停め乗り込むと、あの車をつけてくれと頼む。

菅沼が連れてこられたんは大岡の事務所だった。

よくきてくれたなと声をかけたのは大岡で、ご丁重に案内状を突きつけられたんじゃねと菅沼もサングラスを外して答えるしかなかった。

今日来てもらったのは他でもない、あんたの計画している事業ってものを聞かせてもらおうと思ってねと大岡は聞く。

何のことだい?と菅沼がとぼけながらも大岡のテーブルに腰掛け睨みつけると、まあいいや、せっかく来ていただいたんだから、おい、お客さんに音楽でもお聞かせしたらどうなんだいと大岡は子分に指示する。

子分たちは菅沼を捕まえ身動きできないようにすると、トランジスタラジオから聞こえるジャズの音量を最大にして、それをイヤホンで無理やり菅沼に聞かせる。

いい加減に吐いたらどうだい!と言いながら、何度もイヤホンを差し込む子分たち。

菅沼は必死にこの拷問を耐え抜く。

その時、子分の1人の顔色が変わり、背後に忍び寄っていた岩下が出しなと声をかけ銃を奪い取ると、二丁拳銃姿になり、ずいぶん殺風景な音楽会だなと言いながら他の子分たちも制すると、大岡に菅沼を立ち上がらせ、入り口のところまで連れて行かせると背後から殴り倒す。

大岡が倒れた隙に、菅沼と岩下は事務所を逃げ出す。

子分たちが後を追おうとすると、入り口からまた二丁拳銃を構えた岩下が姿を現し、変な気を起こさない方がいいぜと笑って立ち去る。

菅沼が戻ってきて事情を知った松井は、こいつは面倒なことになりそうだぜと言う。

心配することはねえ、奴らには指一本触らせはしねえやと菅沼は言い返し、それからこの男は今日から俺たちの仲間だ、よろしくたんむと岩下を紹介する。

岩下は兄貴たちよろしくお願いしますと挨拶する。

これが金庫室の表扉、横に守衛が立っているがこの壁の厚さは1mある、中で何をやろうが外はツ⚪︎ボさと松井がスライド写真を見せながら解説する。

この奥が鉄柵になっている、これが第一扉だ、その横の壁のここに警報装置の配線があるとスライドで壁に映し出された室内見取り図を指しながら松井の解説は続く。

金庫に触った途端にパトカーのご到着という仕掛けになっているんだなと竹中が気づく。

第一扉の奥にもう一枚第二扉があると松井が言うと、この小さな瓶が両方ともあっさりカタをつけてくれると竹中が何かを手に持っていう。

ところがこの第二扉にはそのニトログリセリンは使えない、聖徳太子がパーになる恐れがあるからなと松井が指摘する。

私の芸術的な指なら1分以上はかからないはずよと玲子が自慢する。

このはこはKA505型W式というやつで、鍵とダイヤルを同時に動かさないと開かないと松井はいう。

それを聞いた菊川は、このお樹さんとコンビでやれって言うのか?と玲子の方をチラ見して聞くと、2人の腕次第だと菅沼が答え、この1年間のデータで、金庫に金があるのは2時と3時の間しかないとも付け加える。

3時になると会計課長がここに来ると松井がいったので、じゃあその一時間で箱を破るわけねと玲子が確認する。

それからゲンナマは日銀行きさ、どうしても3時までには破るんだと松井が強調する。

仕事が済めば約束通り1人3000万は払うと菅沼が言うので、約束通り実行すればなと菊川は指摘すると、何だと!と菅沼は気色ばむ。

その時、ドアが開き、石川がサブを部屋に押し込み、兄貴、この野郎が廊下を彷徨いてやがったぜと報告する。

何しにきたんだいと菅沼が聞くと、俺は、俺はただ…とサブが口籠るので、酒を飲みにきたわけか、真っ昼間からキャバレーになと怪しんだ菅沼が立ち上がって迫る。

菅沼はサブを殴り始めたので、菊川は動揺するが、その顔を隣に座っていた玲子は気づく、

サブが持っていたメモを取り上げた菅沼は、中に「襲撃場所の見通し知らせ 尾」という字が書いてあったので、この仕掛けを教えてもらおうじゃないかと言った菅が銃を取り出したので、流石に菊川は立ち上がりかけるが、そこに玲子はタバコを差し出し止める。

その時銃声が響き、菅沼と石川が撃ったのはサブとそれを庇おうとした岩下だった。

久しぶりに生き物をやったぜと石川は自慢し、菅沼は岩下の死体から警察手帳を見つける。

こいつは犬さ、わかってたんだと警察手帳を全員に見せながら菅沼はいう。

サツに気づかれているってわけだなと竹中がいい、松井も急いだ方が良いなあと急かす。

ホテルに道具を撮りに行ってすぐに始めようと菅沼が命じる。

ホテルに戻った菊川は、自室でマッチケースの内側に、「警視庁尾形刑事様」と書いていたが、近くで横になりタバコを吸っていたマリ子に気づくと、この女監視しているのかも知れない、何とか尾形さんに連絡をつけなくちゃ…と焦り、「本13日午後2時平和経済会にて会いたし 菊」と折りたたみマッチケースの内側に書き込む。

そこに石川がやってきて、支度がよかったら出かけようじゃないかと言ってくる。

マリ子と廊下に出た菊川は、ちょうど通りかかったボーイを呼び止め、何かタバコを買ってきてくれ、何でも良い、ロビーで待っていると言って金を渡す。

しかしそのボーイはマッチが入っていたことに気づき、返してくる。

さらに石川が自分のタバコを差し出してきたので、それを受け取るしかなかった。

しかしその直後、あ、俺はちょっとあの死に損ないのツラ見てくるぜ、1日一度は揶揄うことにしてるんだ、あのザマ見てると胸がすーっとするぜといい、手塚の部屋に向かう。

ねたいた手塚の部屋に来た菊川は、手塚さん、時間がないからズバッという、何も言わないでこいつを誰かに渡してくれといい、折りたたみマッチを差し出す。

男と男の話だと菊川はいい、手塚はマッチの内側に書かれた内容を読む。

わかってくれ、頼む!と菊川がいうと、早く行けよ、急いでるんだろ?と手塚はいう。

そして咳き込みながら、心配するな、俺が自分で届けてやるという。

すまない、忘れないぜといい、菊川は部屋を後にする。

廊下に出ると、石川と菅沼が立っており、そのまま後ろに下がんなと命じてくる。

手動かすんじゃねえぜ、俺は早とちりする癖があるんでねと、ポケットの中の銃を突きつけながら手塚の部屋に一緒に入ってくる。

手塚の寝室に入った菅沼は、タオルに血を吐き苦しむ手塚の姿を見る。

密談の話を聞かせてもらおうじゃないかと菅沼が銃を突きつけいうと、天気の話をしてたんだよと手塚は答える。

ふ〜ん、そら結構だ、ちょっと立ちなと菅沼は命じる。

手塚が上半身を起こすと、菅沼はベッドの周囲を探し始める。

見張っていた石川が、兄貴、俺は絶対臭えと思ってたんだと側でいう。

見当たらねえなと言った菅沼だったが、とにかく「カサブランカ」に付き合ってもらうぜと手塚に迫る。

そして衣装棚の中の服も中身を探ってベッドに投げ出す。

手塚はガウンを脱いでパジャマ姿になるが、またタオルに血を吐いて、ベッドに捨てる。

「カサブランカ」の地下室のマンホールから、みんなと一緒に降りる手塚。

専用駐車場から外に出た石川の跡を尾行する大岡組の車。

「平和経済会」ビル

ガスバーナーで金庫室の床面を開け、登ってゆくメンバーたち

金庫室に登ってきた松井は、しまった、私の計算ちがいだ、鉄柵の向こう側に出るつもりだったんだといい出す。

ドジ踏みやがったなと菅沼が叱る。

任しといてと玲子は良い、タバコケースの二重底に隠してた忍び道具を取り出す。

そしてその道具で鍵穴の中をいじった末、鉄柵が開く。

飲み屋マラが中に入ろうとするにじ、待て!と制した松井が、赤外線だといい、特殊なメガネを取り出して中を確認すると、一本の赤い線が光っていた。

竹中と野見山に、その位置の少し上をテープで同じように再現し両壁に貼り付ける。

これを跨ぐんだ、うっかり触れると守衛室の呼び鈴を押すことになると松井はいう。

まず玲子に手を貸して先にまたがせ、男たちが後に続いてテープを跨ぐ。

次に松井が、これが警報装置の鉛管だと位置を指摘したので、野見山がガスバーナーで壁を焼き切り始める。

腕時計を確認した菅沼は、すでに2時20分になっていることに気づく。

鉄の壁に穴が開くと、竹中がノミでセメント部分に穴を開け始める。

その頃地上では、石川とマリ子が電信電話後者に偽装した車で乗り付けるが、その背後に尾行してきた大岡組の車も到着していた。

石川が工事用の標識類を後部扉から出そうとしてた時、接近してきた大岡組の子分たちが銃を突きつけてくる。

セメントの中に埋め込まれていた鉛管が露出したので、松井がその中のコードを切断し始める。

いよいよ野見山が金庫にドリルで穴を開けようとした時、その肩を叩いた手塚が、その場所は違うような気がするんだと口を挟んだので、俺の仕事にケチをつけるのかい?と野見山は文句を言う。

そういうわけじゃねいけど、俺は箱師専門の刑事崩れだ、知識はあると明かした手塚だったが、鼻で笑った野見山が作業を続けようとすると、臍に穴を開けてもしようがないよとドリルを止めさせ、穴は下だよとダイヤルのすぐ下を指し示す。

その時、貸してみろ、オメエらのこと見てるうちに俺は死ぬのが嫌になってきたといい、飲み山手からドリルを受け取った手塚が金庫に穴を開けようとする。

その時、おい!揉めてる時じゃない、変な真似しやがるとといいながら菅沼が銃を突きつけたので、菅沼さん、俺の指だってあんたの出方次第でどうにでもなるんだと菊川が声をかける。

その言葉で納得した菅沼は銃を納め、菊川に促され手塚が再びドリルを回し始める。

時間は2時40分になっていた。

手塚がまた咳き込み始めた後、竹中が金庫の空いた部分にニトログリセリンを注射器で注ぎ込む。

さらに信管を繋げたコードを中に入れ、反対側のコードを起爆装置にセットして爆発を起こす。

第一の金庫が開いたので、玲子が第二の金庫の前で鍵を試し、菊川がダイヤルを探り始める。

3時3分前

二人の目が合い、タイミングをそろえて開けると第二の金庫も開いた。

中の札束をバッグに詰め始めた時、会計課長がやってくるが、第一の金庫を開けようとしたところで、専務がお呼びです、急用だそうですと部下が伝えに来たので、金庫を開かず一旦戻る。

下水道を使い戻り始めたメンバーたちだったが、その頃、大東ホテルの手塚の部屋では、ベッドの上に置かれた血まみれのタオルの中からマッチが転がり落ちる。

ボーイは、そのマッチに書かれた文字を読む。

下水道で、一番後ろを歩いていた菅沼が立ち止まったので、おい、どうした?と竹中が声をかけると、銃を突きつけながら、あんたたちはまっすぐ行きなと菅沼はいう。

どういうこったい?と竹中が聞くと、俺は反対の道を行くってことさと菅沼がいうので、ちくしょう!独り占めしようってんだな!と気づいて迫った竹中だったが、菅沼に頭を殴られてしまう。

さ、早く行きなと命じる菅沼に、おい、内輪揉めしている時じゃねえぜと菊川が注意し、頭から流血した竹中を玲子が介抱する。

その時、奥からマリ子の声が聞こえ、新入してきた大岡組の連中が発砲してくる。

菅沼たちも応戦する中、道案内をさせられた石川は撃たれ、兄貴!兄貴!と呟きながら下水の中に沈んでゆく。

おいやばいぞ!逃げろ!と声をかけた菊川だったが、手塚は撃たれた竹中の体を支えながら、菊川、早く逃げろと逆に忠告する。

あんたどうするんだ?と菊川が聞くと、俺はお前のために一つだけ…といいながら、ニトログリセリンの瓶を取り出すと、それを持って大岡組の方へむ向かってゆく。

手塚さん!と呼びかける菊川だったが、手塚は最後の力を振り絞って大岡組に向かってニトロの瓶を投げつける。

ニトロは爆発し、静寂が訪れる。

大岡組の連中は下水に浮かんでいた。

手塚さん!と駆け寄ってきた菊川が倒れていた手塚を起こすと、死にたいと思った時には死ねなくて…、生きようと思ったらこの始末だ…と手塚は呟き、菊川、これ何か目的があるんだろ?早く行けよと告げ、気絶する。

その時、松井が近づいてきて、あんた矢島じゃなかったんだね、もしかしてと思っていたんだが…と語りかけてくる。

もうずらかろうとしたって無理だぜと菊川が言うと、わかってる…、人間こう言う時に慌てると恥をかくと松井は答え、この男は私が見る、早く行けよと勧める。

一方、菅沼と礼子は別の通路から脱出しようとしていたが、地上への出口にはカップルが雑談をするため立ち止まっていたので鉄蓋が上がらなかった。

菅沼は太下で懐中電灯を照らしている玲子を疑い、変なことしやがるとハジキが飛ぶぜと脅かすが、こんなところでハジキも役に立たないわよと玲子は答えたので、ちくしょう、奴を片付けるしかねえと唸る。

菅沼が去った後、代わって鉄蓋を押していた玲子だったが、上に載っていたカップルが立ち去ったので、なんとか持ち上がる。

下で銃を構えていた菅沼が、外はどうなんだ・やばくはないのか?と聞く。

鉄蓋をずらし、一人地上へ這い上がった玲子は、ハイヒールカバーを脱ぐと、下の菅沼に向かって投げつけ、その鞄をよ早く上げなさいよと上から呼びかける。

おい、変な考え起こすんじゃねえぜとしたから菅沼が脅すが、文句言ってると蓋閉めちゃうわよと玲子はいい、本当に閉めそうになったので、菅沼はわかったといいながら金の詰まったバッグを先に持ち上げる。

玲子が引き上げ歩き始めると、菅沼も地上に出て鉄蓋を閉める。

下水に浮かんでいた礼子のハイヒールカバーを菊川は発見する。

待機させていた車に乗り込んだ菅沼は、早く鞄をよこせというが、空気が美味しいわ、ちょっと散歩してみない?などと車の外に立った玲子はいう。

その頃、菊川も鉄蓋をずらして地上に出る。

道路に出ると、ちょうどパトカーが到着したサイレン音が聞こえる中、菊川は歩き出す。

警視庁から各移動、丸の内平和経済会に金庫破り発生!と警察無線が飛ぶ。

菅沼と玲子は鞄を持って徒歩で移動していたが、その跡を菊川が尾行する。

おい、どこまで行くつもりなんだと菅沼が呼び止めると、いいとこ探してゆっくり考えましょうよ、この分配方法をねと鞄を持った玲子はいいながら、ガラスに映った菊川の姿を目に止める。

ねえ高いところで頭冷やそうか?持ちつけないもの持ったんでのぼせちゃったなどと玲子はいう。

デパートの上の遊園地にやってきた2人は、ベンチに腰を下ろす。

玲子は尾行してきた菊川を気にしながら、楽しそうじゃないと菅沼の目線を遊具の方に惹きつける。

菅沼がタバコを取り出し、吸おうとした時、目の前に立った菊川に気づくが、胸ポケットに入れていた銃を玲子が素早く抜き取り、自分の背中に隠して周囲に見えないようにする。

その間、菊川は菅沼の隣に座る。

そうかい、金は綺麗に三当分しようじゃないかと菅沼が提案するが、今更綺麗にが聞いて呆れるぜ、ちょっと聞きてえことがあるんだといい出した菊川は、立ち上がって人気のない場所に連れてくる。

あんたもギャングの端くれならすっぱり吐いてくれといい出した菊川は、一体何のことでい?と聞く菅沼に、松田をやったのは誰だ?と問いかける。

さあ、覚えちゃいないな、石川かもしれねえと惚ける菅沼だったが、死人に口なしって主義か?と菊川は睨みつける。

そんなくだらないおしゃべりをしてて良いのか俺たちは…と菅沼が白けたようにいうと、それより分けるものを早く分けちまおうじゃねえかと言いよる。

すると菊川は、そんなもん、欲しくねえんだといい、俺が一番欲しいのは松田をやった奴だ、さあ吐け!本当のことを家!と菊川は菅沼の襟元を掴んで迫る。

すると菅沼が殴ってきたんで応戦する。

力で勝る菅沼が菊川の首根っこを抑え、デパートから落とそうとする。

そばにあるビルの屋上には何人もの人が見え、屋上遊園地から明るいメロディが聞こえてくる。

回転するダンボ人形が霞んでゆく。

その時玲子が空に向かって発砲したので、驚いて振り向いた菅沼の隙をつき、反撃に出た菊川は、逆に菅沼の首根っこを抑え、吐け!吐いちまえ!と塀際に追い詰める。

苦しいのか、待ってくれ!と菅沼がいうので、吐くのか?と問いかけると、やむを得なかったんだと菅沼は言い出す。

奴を殺したからってどうだっていうんだというので、貴様か!やっぱり貴様が!と菊川は怒りの表情で菅沼の首を締め続ける。

菊川が菅沼を叩きのめし出した時、再び玲子が銃を空に三発撃ち、何事かと近くのビルの屋上遊園地から見る人たちに向け、誰か警察を呼んでちょうだい!と呼びかける。

菊川は菅沼を叩きのめしていた。

その直後、駆けつけた警察に連行される菅沼。

玲子も連行されていたが、尾形刑事と並んでそれを見送る菊川が、出てきたら真っ直ぐ俺のところに来るんだ、ノックなんかしねえで黙って入ってくると良いぜと声をかける。

振り返った玲子は涙ながらに頷く。

菊川は都会に沈みかけた夕陽を見つめる。


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