「五人の賞金稼ぎ」
錣市兵衛(若山富三郎)主演の「賞金稼ぎ」(1969)の続編 荒唐無稽な時代劇で、和製西部劇といった体裁になっている。
武器も何もない砦にやってきた主人公たちが、いきなりガトリング銃を乱射したりするのは、どこから持ち込んだの?と突っ込む間も引もないほどはちゃめちゃなのだが、娯楽時代劇としてはよくできており、忍者合戦や砦の破壊シーンなどは迫力があり、とても二本立て用の映画とは思えないくらいである。
若者同士のラブシーンから、市兵衛自分が夜這いされ、裸になってから敵の乱波(忍者)と戦う展開は、ロマンから艶笑譚、そしてアクションと目まぐるしく変わり展開で、見事というしかない。
前作同様、テレビドラマ「河童の三平 妖怪大作戦」(1968〜1969)でのいたち男のような潮健児が淋病持ちの侍という三枚目キャラとして登場しており、冒頭から楽しい。
敵の忍者役に、「無用ノ介」を連想させる隻眼の伊吹吾郎、スタントマン宍戸大全、日本一の斬られ役福本清三と渋い面々が揃っているところも見所だろう。
この時期のアラカン(嵐寛寿郎)は、網走番外地に出たりと、意外な役を演じることが多くなるが、本作での名主役も珍しく、家老に河原で鞭打たれるなど、屈辱的なシーンもあるが、やはり、農民たちを守ろうとするヒーロー的存在であるのは嬉しい。
単なる活劇ではない、物悲しさも残る名品だと思う。
【以下、ストーリー】 1969年、東映、高田宏治脚本、工藤栄一監督作品。
人相書きを板に貼ったものを背中にしょわされた男が馬に乗った侍に引かれていく。
馬に乗っているのは錣市兵衛(若山富三郎)だったが、馬を停めて、背後の様子を伺うと、遠くから馬に乗って槍を構えた男が近づいてきたので、市兵衛が大きくジャンプしてその男と交差する。
槍の男は市兵衛に斬られて落馬するが、その後からさらに6人の追手が市兵衛に向かってくる。
市兵衛は拳銃を乱射し、その1人をあっという間に射殺してしまう。
タイトル 荒野のような所をお尋ね者を引いて馬を歩かせる錣市兵衛のシルエットを背景に、スタッフ・キャストロール 血判状に刀で傷をつけた親指で母印を押す農民たち。
例え身は魂魄になろうとも、必ず御公儀の手に!と約束する旅姿の治三郎(天津敏)に、吉報があるまで私は砦を守りますと答える榎太左衛門(嵐寛寿郎) あの…、私どもは?と聞く他の農民に、いつに変わらず仕事に励んでくだされと言い聞かせる太左衛門。
例え高田や榎二カ村が全滅しても、黒羽には5つの村が残ります、百姓は生き残らなければなりませんと太左衛門は言うので、他の農民たちは頷く。
家の外に出た太左衛門は、先ほど、高田村の治三郎が御広義へ直訴のために江戸面へ発ちました、班長が租税減免の徳政令を拒否してくれば、私どもは江戸面から吉報があるまでこの砦を持ち堪えねばなりますまいと、用心棒風の浪人に伝える。
10日…、いや1月先か、別所さん、無理でしょうかな?と太左衛門から相談された別所四郎五郎(徳大寺伸)は、名主殿、実は今とある人物のことを思い出したのですが、錣市兵衛と言う御仁ですと言い出す。 錣市兵衛?と太左衛門は繰り返す。
谷川を下る3人の傘姿の農民たちに合流した男が、新八、今だ!と声をかける。
傘姿の3人は馬に飛び乗ると、そのまま関所も突破していく。
役人が一人の馬に追いすがり、馬上の一人を引き摺り落とす。
さらに鉄砲隊が発砲し、さらに一人が落馬する。 老婆の背中を診察していた市兵衛は、どうだ?婿はよく働くようになったかなどと気さくに話しかけていた。
そして、良いだろう、薬もらってくれ、だいぶ良くなったと老婆に伝え、ちび!海苔屋の婆さんに薬やってくれと呼びかける。
次!と市兵衛が言うと、お次の方どうぞと看護婦役のチエ(岩村百合子)が声をかける。 男が診察室に入ってくると、初めての顔だなと、キセルを燻らしながら市兵衛は聞く。
どこが悪い?その様子じゃ寂しいやつらしいな、座れと市兵衛は勧める。
男が座ると、股を開くんだ!と市兵衛が強引に開かせたので、あ、痛い!と男は叫ぶ。
お前、こんなに酷くなるまでよくほっといたな、え?切らなきゃダメだなと言うと、患者青砥九内(潮健児)は、お…、ちんちんをですか?と青ざめる。
そうだ、このまま放っておいたらな、腐っちまってポロチンだぞと市兵衛は指摘する。
なんとか切らずに直してもらえませんか?何しろ、かけがえのない一人息子でござるゆえ…と九内は頼む。 かけがえのない一人息子だったらな大事にしろ、お、良し!なんとか切らずに直してみようと市兵衛が言うので、お願いしますと九内は頭を下げる。
市兵衛は、チエ、洗浄機!と指示する。 チエが準備した装置で洗浄を始めると、九内が酷く痛がるので、我慢しろ、性病というやつはな、徹底的に直さないとどんどん増えるんだ、え、この痛さで来られるんだぞ、俺にも経験があるんだ、わかったな?と市兵衛は言い聞かせる。
その治療中に入ってきた女が、先生、痛いの?と訴えるので、また来たのかお前、おらんといながら、ちょっとその着物の裾を捲った市兵衛は、お前、どこも悪くないじゃないか?お前は見られりゃ、それで満足するんだから、良し、わかった、わかった、後で見てりゃるから。
ちび、連れてけ、連れてけ!と命じる。 はい、後でねとチエがおらんを外に連れ出すが、市兵衛は洗浄中の九内に、お前どこ見てるんだと注意し、薬つけるからな、ちょっと沁みるぞという。
はいと答えた九内だったが、薬をつけられた瞬間、痛い!と叫んで飛び上がったので、市兵衛は慌ててその体を押さえつけようとする。
そして、チエ、包帯まけと命じるが、チエは包帯嫌!というので、おいチエ、こういうことはお嫁さんに行った時に役に立つんだ!勉強だと思ってやれ!と市兵衛は言い聞かせるが、知らない!先生の意地悪!とチエは抵抗し、待合室の方へ行くが、そこに倒れ込んできた患者がいたので、チエは、先生助けて!先生、早く!と呼びかける。
何だ?どうした?と異変を察した市兵衛が待合室に来ると、倒れ込んだ男の様子を見て、行き倒れらしいな、チビ、支度しろと命じる。
男の帯を掴んで診療室に運び込んだ市兵衛は、男の顔に水をかけると目を開いたので、ああ、気がついたねと安堵する。
またキセルタバコを吸い始めた市兵衛は、どうだ?俺の顔がわかるかと聞くと、あなたは錣市兵衛様で?と男が問いかけてきたので、そうだと答える。
男は良かった、良かったといいながら泣き始める。
わしは、野洲黒羽領榎村の百姓で新八(石山律)と言いますと男は自己紹介すると、錣様、どうかわしらを助けてくださいませと頭を下げる。
助ける?どういうことだ?と市兵衛が聞くと、お聞きくださいませと新八が話し始める。
私たち黒羽領では、ここ1〜2酷い不作続きでありました、折も折、我らの御領主黒羽5万8千石大関佐渡守様は、御広義のお役につきたいばかりに、江戸城御本丸の修復工事を進んでお引き受けになりましたと新八は語る。
しかし黒羽5万8千石では土台無理な工事で、わしら百勝は米や麦はもちろんのこと、ヒエやアワに至るまで取り上げられて、草や木の根を食う始末、その上この春からは、窓後免除を求めて一揆を起こしましたと新八は続ける。
錣様、どうかお助けてください!と訴える新八に、だめだ、俺は政治が絡んでいるのには関係したくねえんだと即答する。
錣様、こうしている間にも砦は攻められているかもしれません、このままでは忽ち攻め落とされてしまいます、わしらはともかく、年寄りや女子供まで皆殺しにされてしまいましょう、錣様、どうかお助けてくださいませ、お願いです、お助けください!と新八は涙ながらに訴える。
わかった、だがな、困っているのはおめえたちばかりじゃねえ、見ろ!世間には貧乏人は大勢いるんだ、だからこそ俺は医者でありながら、賞金稼ぎをやってんだ、タダでは困ると市兵衛は答える。
いくら出す?と市兵衛が聞くと、はい、50両とちょっとでございます、やっとかき集めてまいりましたもので…、足らん分は一揆が成功した後で必ず…と新八はいって、金を差し出す。
市兵衛はそれで十分だと答え、チエ、送ってやってくれと頼む。 新八は、ありがとうございます、ありがとうございます!と例を言いながら泣く。 チエは物干し台から伝書鳩を2羽放つ。
馬に乗った錣市兵衛は出立するが、背後からついてくるのは青砥九内だった。
歩け、歩け、負けんなと馬に語りかける九内。
一方、伝書鳩の知らせを受け取った伊賀忍法者くノ一陽炎(真山知子)は、馬に乗って走り出すが、同じように馬に乗った龍造寺流棒手裏剣名手鬼塚隼人(北村英三)と、新当流抜刀術望月弥太郎(大木実)が後を追う。
市兵衛、行先は?と馬を並べた弥太郎が聞くと、野洲黒羽領と市兵衛は教える。 仕事は?と陽炎が聞くと百姓一揆、いくぞ!と市兵衛は簡潔に伝える。
早馬の知らせを受けた大関佐渡守(小池朝雄)が、虫ケラどもめ、まだ粘っておるのか?と問うと、租税免除の特例例が出るまではと…使いのものが教えるので、己、頭に乗りおって…、主水!軍勢を引き連れ一挙に蹴散らしてしまえ!と命じる。
しかし芝池主水(中谷一郎)は、殿!私もほどほどにいたしませぬと、江戸表御公儀への聞こえが…、御領内で一揆が起こったと知れては、御出世どころかお取り潰しの口実にすらなりかねませぬと言い聞かせる。
ではどうすればいいんだ?わしは決して出世が望みではないわ、黒羽藩5万8千石を守り抜くには何としても公儀との契約をとり結ばなければならんのだ!百姓どもを屈服させなければ、このわしが破滅するのだ、ということはその方も…と佐渡守が力説していた時、御安堵くだされと声がする。
一揆の首謀者太左衛門は元々温厚な男、一部の気違い百姓どもに、無理やり引き摺られたに相違ございません、それが市にお任せをと主水が申し出る。
河原に来た太左衛門の元にやってきた主水は、太左衛門!お前にしては軽はずみなことをしたもんだなと馬上から言い放つ。
悪いことは言わん、直ちに砦をせろ!と命じるが、芝池さま、私たちの願いの儀お聞き届きくださいましょうと土下座するので、ああ、わかっておるとも…と主水は答える。
その方を地区に主分に取り立てて、百姓どもとは区別して遣わす、即刻解散して百姓どもを村へ戻らせるのだ、否やをもうさば、反乱の首謀者として一家眷属もろともに火炙りの刑に処さなければならぬと主水はいう。
すると太左衛門は、御家老様、私どもは党に一名を投げ出しております、どんなお咎めを被りましょうとも、さらに悔いはございませんと言い返す。
太左衛門!正気か!と馬上の主水が叱ると、どうか私の命と引き換えに百姓衆をお助けくださいませと太左衛門は願い出る。
主水は、痴れ者が!と罵倒し、鞭打つが、御家老様、何卒お助けくださいませ、何卒、何卒、この通りでございます!御家老様、お願いでございます!と苦しみながらも太左衛門は繰り返す。
太左衛門、わしを甘うみたな、虫ケラ同然の百姓どもを操って、脅しが聞くとでも思うたか!と主水は吐き捨てる。
いや、脅しではございません、生きるためにはかようなことをするしかいたし方ございません!と太左衛門が馬の足元で這いつくばって逃げるので、言うな!わしのいうとおりにするか、それとも百姓もろとも皆殺しの罪に遭うか!と主水が迫ると、私も百姓でございます!と太左衛門は言い放つ。
主水は3人の馬に乗った家臣を呼び寄せたので、近くに控えていた百姓たちが駆け寄り、太左衛門を救出する。
しかし、すぐに百姓たちは家臣たちの馬に囲まれてしまう。
その時、姿を現したのが錣市兵衛の仲間達で、市兵衛が空に向かって銃を打ったのに気づいた主水は、引け、ひけ!と家臣たちに呼びかける。
砦に到着した市兵衛に、錣さん、よくきてくれました、別所四郎五郎です、しばらくでしたと待ち受けていた浪人が話しかける。
あんたが俺のことを言ったな?名主はどこだ、名主は?俺たちがせっかくきたというのに!と望月弥太郎が不機嫌そうにいう。
今、お引き合わせします、さあどうぞ…と四郎五郎が声をかける。
砦を守っていた農民たちは、おい、あれが賞金稼ぎちゅう侍か?とコソコソ話を始める。
俺たちは葬式代まで叩いたのに、あれじゃただの浪人ではないかと文句を言うものがいるので、ぐずぐずいうんじゃねえ、城との話は終わっちまったんだ、こうなったら籠城しかねえ、あっしら、あの人たちを頼るしかねえんだと若い農民が言い聞かせる。
荒れ寺にいた太左衛門に、四郎五郎が、名主様、錣市兵衛殿ですと紹介すると、榎太左衛門ですと名主も名乗る。
錣様、あなたは美濃太田の一揆では、百姓衆のために大きな力んあられたと別所さんから承りましたと太左衛門が話しかけると、思い出したよ別所さん、あんた確か、美濃太田の一揆で城側の侍大将だったな?と市兵衛殿は聞く。
四郎五郎ははいと答える。
ところで名主さん、美濃太田に比べてここは食糧武器はどうなんだと市兵衛聞くと、何一つございません、しかし太田と同様に御広義の巡査式が来られるまでこの砦を守りたいのです、10日、いや1月先か、あるいは…と太左衛門は即答し、錣様、お引き受けくださいますかと聞く。
市兵衛、やめとけ、この仕事は無理だと弥太郎が意見を言うと、あなた様にお聞きしているのではありません、錣様の存念をお尋ねしているのでございますと太左衛門はいう。
すると弥太郎は、冗談じゃねえ、市兵衛の返事で俺たちの運命が決まるんだと言い返してくる。
市兵衛が弥太郎を宥めようとするが、どうも名主の態度が気に食わねえと弥太郎はいうので、商売だから仕方がねえだろう、弥太郎…と市兵衛は言い聞かす。
その時、突然外から矢が撃ち込まれたので、咄嗟に市兵衛は抜刀して矢を切り落とす。
そこに弓を持って入ってきた浪人は、錣市兵衛と言ったな、わしは芸州浪人朝海十蔵(林彰太郎)、お主同様この一揆を請け負った一人だと名乗る。
おなしく芸州浪人岩下甚内(関山耕司)別の浪人が名乗り、貴様如きに勝手な真似はさせんぞと挑んでくる。
ここにきて挨拶しろと言われた市兵衛は、それを無視して、別所さん、砦を案内してもらいましょうかと頼む。 心得ましたと四郎五郎が立ち上がった時、貴様!と甚内らが迫ってきたので、銃が足元に撃ち込まれて動きを制する。
撃ったのは陽炎で、動いちゃダメよと釘を指す。
何かあったんですかな?音がしましたが?と入り口に九内が顔を見せ、ああ、初めまして、いや、どうも…と芸州浪人や太左衛に会釈をすると、いやこれは無関係でしたな…と独り言を言って外に出てゆく。
陽炎と共に、砦内で寝込んでいる病人たちの容態を見た市兵衛は、この薬を飲ませてやってくれと面倒を見ている女に渡す。
そんな中、気が触れているのか、赤ん坊を抱いたまま始終笑っている女(松井康子)もいた。 その赤ん坊を見た市兵衛は、この子は死んでるてと顔を顰める。
亭主が税を滞らせた罪で打首になり、可哀想に気が触れましたと四郎五郎が説明する。
陽炎に赤ん坊を渡そうとすると、嫌だよ、私の子だよと言いながら、狂った女は死んだ赤ん坊を奪い返し、愛おしそうに顔を擦り付ける。
別所さん、あんたあれからどうした?と市兵衛が問いかけると、ご承知の通り、あれからしばらくしてお家がお取り潰しになり、浪々の果て、この地で病に倒れましたと四郎五郎はいう。
名主さんの情けで一命だけは取り留めたものの、皮肉なことに百姓一揆の手助けをする羽目になりましたよと四郎五郎は自虐的に言う。
百姓一揆の惨めさを一番知っているはずのあんたがなぜこの一揆を止めなかったんだ?他に方法はなかったのか?と市兵衛が聞くと、なかった…、ありませんでしたよ!と四郎五郎は語気強く答える。
ひょっとするとあんた、負けるとわかったから、一揆に俺ら引っ張り込んで昔の仇を打とうってんじゃねえのか?と市兵衛は問いかける。
それは違う!と四郎五郎は否定する。
違う?と市兵衛が聞くと、ただ戦術家としてのあなたに惚れた私の心が、死ぬ前にもう一度優れた戦いぶりを見せてもらいたかったのかもしれないと四郎五郎はいう。
一方、寝所で子供相手に遊んでいた新八に、みんな、早く寝なさいと叱ったみゆき(土田早苗)は、新八さん、困るわと注意している所に市兵衛と陽炎が姿を見せたので、居住いを正した新八は、みゆきさん、錣市兵衛さんですと紹介すると、名主様のお嬢さんでみゆきさまですと市兵衛に教える。
市兵衛は若い2人を見比べ、お似合いだなというと、2人とも照れくさそうに笑う。
浪人ら集まっている部屋にいた岩下甚内は、世話係の女が箪笥の中のものを取ろうとした時見えた脹脛に欲情し、抱きつこうとしたので、女は逃げ回る。
他の浪人も加わって、その女を手籠にしようと別室に連れ込んだので、女は、いやです、やめて!と必死に抵抗する。 その場で着物をはぎ、くじ引きで順番を決める浪人たち。
選ばれた浪人が女を抱いていた時、その背中に刀を突き立てたのは鬼塚隼人だった。
歯向かおうとした他の浪人たちの手元や顔の近くには棒手裏剣を投げて牽制し、おめえたち、もうこれからこいつらの面倒見なくても良いからな、食いもんだって百姓たちと同じで良いんだぜと世話掛の女たちに告げる。
部屋を後にしようとする鬼塚隼人に、悔し紛れに甚内が棒手裏剣を投げ、それは柱に突き刺さるが、隼人は振り返って苦笑するだけだった。
陽炎は農民たちと協力して、藁を使った罠を作っていた。 そんな中、気の狂った女は近くの丘に腰を下ろし、死んだ赤ん坊を抱いて、ねんねんや、ねんねんや〜と子守歌を歌っていた。
砦の前に来た弥太郎が、陽炎、日の出は?と聞くと、後半時…と教えた後、耳をすませ、市兵衛、来たわ!と教えたので、数は?と市兵衛が聞くと、相当たくさんよと言うので、市兵衛自身も朝霧の中から聞こえてくるヒズメの音に耳をすませ、持ち場につけ!弥太郎!と呼びかける。
弥太郎は直ちに梯子をのぼり、砦の上部から先方を監視し始める。
板を打ち鳴らし、城兵が来たぞ〜!と周囲の農民たちに知らせる。
太左衛門も砦の上部に来て、前方を見つめる。
あまりの兵の数を見た太左衛門は、酷い、これは酷すぎる、一体わしら百姓集をなんだと思ってるんだと憤る。
魁として砦に近づいた3頭の馬の中央に乗った侍が、榎太左衛門に物申す!拙者御本丸鎮守頭堂崎意休(鈴木金哉)!、御家老芝池主水様のお言葉をお伝えに来た!心して聞けい!直ちに砦を出て降伏するのだ!さもない時は総攻めをかけ、女子供に至るまで、容赦無く首を刎ねるぞ!返答いかに!と呼びかけてくる。
それに対し太左衛門は、御家老様にお伝えください!私どもは徳政令が交付されるまで、最後の1人まで砦を死守します!と答える。
太左衛門!心得違いをするな!今一度考え直せ!と意休は呼びかけるが、その額めがけて朝海十蔵が矢を放ったので、3頭の馬は帰ってゆく。
やがて数十人の城兵が攻めてくる。 まず弓隊が矢を放ってきたので、農民や浪人たちは砦の裏に身を隠す。
市兵衛、どうする?と陽炎が聞いてきたので、みんな避難させろと市兵衛は指示する。
敵の先人が、藁で作った罠のところに接近した時、市兵衛と陽炎は銃でその藁の束部分を撃ち発火させる。
敵兵たちは、その燃え盛る罠を避けながら接近してきたので、市兵衛は藁で隠しておいたガトリング銃を露出させると、このやろうと言いながら乱射し始める。
これを見て驚く四郎五郎と太左衛門だったが、威力は凄まじく、敵兵はバッタバッタと倒れていく。 弾倉の弾が切れると、用意していた弾倉と取り替え、また乱射する。
この攻撃の前ではさしもの城兵もそれ以上前進することができず、一旦退却になる。 その惨状を見にきた主水に、御家老、いや信じられません、到底このようにあんなものがあろうとは…、いまだに悪夢を見ているようでございますと小沼蔵人(高並功)が報告すると、あの浪人ものの仕業だな?と他の家臣が指摘したので、そうです、恐るべき新兵器を操っていたのは、百姓が錣市兵衛と呼んでいた浪人者ですと蔵人は答える。
とんでもない奴が現れたもんだ、御家老、これでは軍勢を揃えても脅しにはなりませんな、強行すれば犠牲を増すばかりですと秋葉伊織之介(楠本健二)たちはいう。
この際、太左衛門の面目の立つように、多少の条件を飲んでは?と側近の1人がいうと、言うな、御家老の面目はどうなると別の側近が遮る。
意見された主水は考え込んでいた。 是が非でも百姓どもを屈服させぬことには、殿への手前、御家老も我々も腹を斬らねばならんなどと配下は話し合っていた。
しかし、騒ぎが大きくなると、たちまち御公儀の耳に…、それこそ御家老が案じておられたことでは…などと意見が飛び交う。
その時、手はある!というものがり、端の者これへ!と伊織之介が呼ぶと、3人の若者が駆けつけて控える。
御家老、那須乱破の者たちにございます、頭目の那須音平(伊吹吾郎)、比津留源造(宍戸大全)、白河小笹(福本清三)と紹介すると、このものたちに例の新兵器を破壊させましょうと伊織之介が提案する。 すると主水は奪い取れと命じたので、伊織之介は、奪い取る!と驚く。
そうだ、奪い取るのだ、あれさえあれば、未来永劫我らには向かうものはいなくなると、側近たちの方を向いた主水は言いながら笑うと、音平、やれるかと顔を見る。
返事がないので、どうだな、音平!と再度尋ねると、ようやく、はい、必ず…と音平は答える。
乱波たちは数名で忍び装束に身を包み、一人が砦の内部に向けて矢文を打ち込む。 その文を受け取った浪人者は、岩下甚内の元に来ると、話があると切り出すと、おめえ、仕官したいとおもんかと聞く。
仕官?と陣内が聞き返すと、あの錣たちにのさばれられたんではここではうめえ話にはなりそうもないと浪人は囁きかける。
そこでだ、向きを変えて城側に売り込むのよと浪人はいう。
例えば、市兵衛の首だ!おめえ、手を貸せと浪人がいうと、陣内は頷く。
農民と混じり、力作業をしていた市兵衛に、手拭いを渡した弥兵衛は、な、市兵衛、城側の陣営が妙に静かだが、俺はてっきりあの連発銃にたまげて和議に出てくると思うんだがと話しかける。
そう思うか弥太郎?あの家老の芝池主水って野郎、なかなかの切れ者だ、油断はできんと市兵衛はいう。 無茶はするまい、百姓あっての大名だと弥太郎はいうので、それがわかってる大名なら一気は起きねえだろう、百姓を殺したって自分が出世してえんだと市兵衛が指摘すると、なんて凝った、その皺寄せが全部百姓におっかぶさってくるのかと弥太郎は嘆く。
そういうわけだと市兵衛が言うと、市兵衛、しばらく寝ろ、体が持たんぞと弥太郎は忠告する。
そうだな、じゃあ、頼むはと言い残し、市兵衛は寺に寝に行く。
藁をかぶって熱きうとしたその時、側から新八さん、私たち一体どうなるのかしら?と呼びかけるみゆきの声が聞こえたので、市兵衛は無理に寝つこうとする。
そんなことわからないよと新八が答えると、でも、どうせ最後は死ぬんでしょう?そうでしょう?とみゆきは聞く。
そうとは決まっちゃいないさと新八が否定すると、新八さん、私を今すぐあなたのおかみさんにして欲しいのとみゆきは言い出す。
私、あなたのおかみさんで死にたい!と言いながら、みゆきは新八に抱きつく。
しかし新八は、それはできない、わしは水呑百姓の倅だ、身分が違う、名主様が許してくださるはずがないと新八はいう。
身分が何なの!村中で一番勇気のあるあんたよ!このまま死ぬなんて嫌!とまたみゆきは新八に抱きつくが、みゆきさん!と新八は言って体を押しやる。
みゆきはその場で着物を解き始め、新八さん、帯を解いてと頼む。
新八は、みゆきさん!それはいけない!やめてくれ!みゆきさん!と拒む。
藁の下に埋もれていた市兵衛は、バカだね、あんなに頼んでんだからしてやっときゃ良いじゃねえか、バカじゃねえか、あんちくしょう!とつぶやく。
お願い!とみゆきは訴えるが、みゆきさん、いけない、こんなこと!と言って、新八は逃げてゆく。
それを追ったみゆきが新八!と言いながら抱きつくと、みゆきさん、俺名主様にはっきりいうよ、お前を女房にくださいってな…と言いながら新八は抱き止める。
わしら、誰にも恥ずかしくない夫婦になろうじゃないか!と新八はいう。 その会話をずっと聞かされていた市兵衛は、気を鎮めて寝るか…と呟く。
その後、寺の寝所に近づく浪人二人、眠っていた市兵衛のそばにも誰かが来て、市兵衛の袴を脱がせる。
市兵衛が気がつくと、農民の女が抱きついてきて、私、つれあいに死なれて長いんです、だから誰にも気兼ねしなくても良く、お願いです、私を抱いて下さいとむしゃぶりついてきたので、市兵衛は起き上がって、ちょっと待ってね!と言いながら女を押し除ける。
お願いです!と迫る女に、落ち着いて!落ち着いて!と市兵衛は懸命に拒み続ける。
落ち着け!落ち着いてな、俺の話を聞く!いいか、ま、待て!いいか?こういうことはな、男のすることだ、お前、町がちゃいねえかと市兵衛は必死に説得しようとする。
その間、寝所のそばに来ていた甚内と槍の使い手は、中の様子を窺っていた。
ああわかった、ちょっと待て!よしよし、わかった、俺も男だ、お前を満足するようにするから、気をつけて待て!と市兵衛はいいながら立ち上がり、女の方が、お願いです!お願いです!と壁際に背を向けて座るが、その時、女の表情が変わったので、驚いて市兵衛が女の背中を見ると、外から突き出した槍が刺さっていた。
市兵衛は刀だけを持って外に飛び出すと、そこにいた岩下甚内を斬り捨てる。
さらに槍を構えた浪人と出会したので、このやろう!城方と内通してやがった…と睨みつける。
そして抜刀すると、相手の槍を払い、朝海十蔵を斬りつける。
その頃、就寝中の浪人たちを次々に突き刺す賊に気づいた陽炎が、その侵入者に飛び掛かる。
異変に気づいた弥太郎も、忍び込んだ乱波者たちと斬り合う。
その間、音平は手下を使い、連発銃を砦の外に運び出していた。
連発銃を持って竹林に逃げ込んだ乱波者たちは、追ってきた陽炎に手裏剣を投げつける。
巧みに手裏剣を避ける陽炎の動きを見た音平は、お主、伊賀者だな!と見抜く。 陽炎は迫ってきた乱波に銃弾を撃ち込むと、他の乱波者と戦い始める。
陽炎が火遁の術で竹林の中に炎をあげると、そこに晒しに褌姿の市兵衛が駆けつけ、次々に乱波を斬り捨てていく。
空中で斬り結んだ音平は、地面に降りた後、貴様が錣市兵衛か!と問いかけ、わしは那須の乱波音平だと名乗る。
貴様なら相手にとって不足はない!命はもらうぞというと市兵衛に向かってゆく。 裸の市兵衛はそんな音平と斬り合う。 刀を落とした市兵衛は必死にジャンプして敵の攻撃を交わす。
音平は死んだ仲間の死体に死を放ち、それを市兵衛に向かって投げてくる。
火薬が仕込まれていたのか、地面に落下した死体は爆発する。
市兵衛は迫ってきた乱波の一人から刀を奪い取ると、それで続いて走り寄ってきた音平の右腕を斬り捨てる。
左腕一本になった音平は、自ら自分の首を切り裂いてこときれる。
陽炎、行くぞ!と呼びかけた市兵衛は、新式銃を持ち去ろうとしていた城兵たちに追いつく。
城兵の一人を斬り捨てると、敵は逃げ去ったので、陽炎は嬉しそうに市兵衛!と呼びかけるが、市兵衛は新式十が無事か確かめるために銃を撫でまわし始めたので、どうせその方が可愛いんでしょうと不貞腐れたようにいうので、妬くな!と市兵衛は言い返すと、一人で新式銃を持ち上げる。
その後、新八は一人で榎太左衛門の元へ向かうと、名主様、お願いがございます、御幸さまをいただきたいのでございますと願い出る。
その新八の言葉だけを家の外で聞いているみゆき。
身分違いはよう存じております、しかしわしは晴れて夫婦として死んでいきたいのです、どうか、許すとおっしゃってくださいませ、この通りでございますと新八は手をついて頼んでいたが、太左衛門が何も答えないので、お父様、お願いしますとみゆきも一緒に手をついて頼む。
しかし、榎太左衛門がならんと答えたので、お父様、なぜですの、訳をお聞かせくださいとみゆきは言う。
わしにとって身分などはどうでも良い、だがなみゆき、百姓衆の苦しみをみなされと言い、部屋の奥で寝込んでいる多くの農民の姿を見るように進めると、わしの口からお前たちに幸せをくれてやるわにはいかんのじゃと太左衛門はいう。
砦の外では、着物を着なさいと騒ぐ声がする。 見ようとしただけなのに、何、裸になることまでは 見せるんだけで良い、みんなに見せることはないんだ、あ、これ着なさい、これは拙者の対面を考えても…などと言いながら九内が上半身はだけた女を追ってきたので、九内!てめえ、淋病だってことを忘れたか!とその襟首を掴んだ市兵衛は殴りつける。
その後、市兵衛は、女の方には、いいか、男にこう言うところを見せてはいけない、わかったなと言い聞かせるが、女はいきなり市兵衛の顔にキスしてくる。
さらに市兵衛を投げ飛ばすと抱きついてくる。
さしもの市兵衛もこの女の攻撃には気を失ってしまう。 その頃、城内では、主水、なんと言う様だ、あれほどの公言を吐きながら!と佐渡守から叱責された主水は、面目次第もございません、錣市兵衛なる浪人者とその一味のため、某の目算は狂いましたと抗弁する。
たわけ!狂ったで済むと思うのか!たかが一握りの百姓に翻弄されているわしの立場はどうなると言うんだ!公儀の目はどこにでも光っておる、まごまごしているととんでもないことに…と意見していた佐渡守だったが、自分の髷を掴んで思いついたのか、主水、大筒を使えと言い出す。
大筒を使って、百姓どもの砦共々吹っ飛ばしてしまうのだ!と言うので、殿、なんと言うことを!と主水は言い返すが、世が許す!と佐渡守は言い放つ。
誤ってはいけません、鉄砲、火薬を用いただけでお取り潰しになった藩があるのですと主水は言い聞かせようとする。
しかし佐渡守は、ええい、言うな!その弱腰が百姓どもを付け上がらせるのだ!と佐渡守がいうので、殿!今一度、今一度某が!と主水は願い出るが、佐渡守は知らん!勝手にせい!と言い捨てて立ち去る。
その後、主水は一人の農民を後ろ手に縛り、馬に乗せて砦にやってくる。
砦でそれを見ていたものたちは、その農民が江戸へ連判状を持っていったはずの治三郎だと気づく。
その治三郎に対し馬で同行していた主水は、その方の口からいつまで抵抗しても無駄だということを教えてやれ、砦を明け渡し降伏させることができたら命を助けて遣わすと命じる。
もししくじった場合は、その方ばかりではない、妻子一族ことごとく首を刎ねるぞ、わかったな…と主水は脅す。 馬上の治三郎は頷くしかなかった。
榎村の衆に申し上げる、見られる通り、わしは道中半ばにして追っ手に捉えられてしもうた、お詫びのしようもない!残念だ、だが、榎村の衆、挫けてはならん!わしらの声は必ず天に通じて必ずや救いの手が差し伸べられるであろう!と治三郎がいうので、やめろ!と鞭打たれるが、広場の百姓衆のため、最後まで砦を守り抜いてもらいたい!というんで、治三郎は槍で突かれる。
その砦こそ、わしら百姓の命の綱なのだ!榎村の衆!頼みますぞ〜!と言いながら、絶命して馬から落ちる治三郎。
その後馬に綱もろとも引き摺られていく治三郎の最後をじっと見つめる市兵衛たち。
思わず目を伏せるみゆき、目を閉じる太左衛門。
またもや思惑が外れた主水は、砦に矢文をかけろ、翌朝を期して総攻めをかける、今日中に降伏しないときは、一人残らず殺害しろ、今度こそ決して脅しではないとな…と側近に命じる。
砦に刺さった矢文を新八が引き抜く。 農民たちを集合した前で文を読んだ市兵衛は、明朝総攻めか…と内容を知ると、いよいよ最後の決戦らしいなと弥太郎らに告げる。
名主様、わしらは死んでも砦を守りますと新八が発言し、そうだ!の声も上がるが、太左衛門は、待て!待ちなされ!もう一度やり直す、わしが江戸に直訴に参りますと言い出す。
これからすぐにですか?と市兵衛が聞くと、太左衛門は黙っているので、名主さん、直訴に行くのはいいがな、国境の道を越えるのは、これは不可能に近いぞと鬼塚隼人が指摘し、どうする市兵衛?と聞いてくる。
市兵衛は、良し、俺が囮になろうと言い、九内、持ってこいと命じる。
九内がはいと言って立ち去ると、名主さん、城はわしが引き受けます、その間に砦を出てくださいと告げる。
すると弥太郎が、市兵衛、その役目俺がやるぜ、お前はこの砦にとっては必要な男だ、最後の最後まで百姓と一緒にやってくれ、だろう?と申し出る。
市兵衛は、弥太郎と呼びかけ、弥太郎は頷く。
そこに九内が木箱を持ってくる。
その中から銃を取り出した市兵衛は、ゲーベル銃だ、頼むぞと言いながら弥平に渡す。
砦の下の門が開き、馬に乗った弥太郎が出立する。
弥太郎は、その場に待機していた城兵たちに発砲する。 城兵たちは走る弥太郎を全員追ってくる。
市兵衛がいまだと合図すると、僧侶に化けた太左衛門が出立する。
砦の外まで、新八と四郎五郎が護衛についていく。
弥太郎は囮役として孤軍奮闘していた。
やがて落馬した弥太郎だったが、落としたゲーベル銃を拾い上げると、また応戦し始める。
その間、僧侶に化けた太左衛門は江戸に向かっていた。
砦の上から弥太郎を見守っていた市兵衛は、弥太郎も…と呟き、その手元に陽炎が手を重ねる。
地面に身を伏せた弥兵衛はゲーベル銃の弾も尽き、刀を抜いて、城兵の接近に備える。
そのとき、長い布をマフラーのように首に巻いたモンドが馬で近づいてきたので、思わず笑った弥太郎がそのモンドの方へと駆け寄る。
銃撃を受けた弥太郎だったが、最後の力を振り絞り、主水に向かおうとする。
やがて惨殺された弥兵衛を馬上から嘲笑う主水。
砦の上からそれを見る市兵衛や陽炎たち。
その夜、新八に怖いかと尋ねた市兵衛は、はいと新八が答えたので、俺も怖いんだよと教える。
だがな、新八、死ぬというのは生きることより優しいものだ、そう考えりゃ気軽だろう?さあ、飲め!と酒を勧める。
新八も腕を受け取って、それもそうですねというと飲み始める。
翌朝、城兵たちは大筒を城から持ち出してくる。
砦では、お〜い、誰か来るぞ!と見張りが叫ぶ。 それは馬に乗せられた名主の死体だったので、門を開けて脳門たちが死体を確認する。
太左衛門は顔を斬られていた。 みゆきも駆けつけ、お父様!と死体に近づこうとするので、新八が、お嬢さん、見てはいけないと抱き留める。
隼人、これで城方は一気に攻めてくるだろう、おめえのいう通り、葬式代になりそうだなと市兵衛は砦の上で伝えると、陽炎、覚悟しとけとそばにいた陽炎にもいう。
寺に運ばれた太左衛門の遺体を前に、集まった農民たちは意気消沈していたので、みんな、どうしたんだよ!と新八は問いかける。
え?なんだそのしけた面!おい、城側はいつ攻めてくるかわからないんだぞ、持ち場に戻ろうじゃないか!と新八は励まそうとする。
お前ら、この砦が落ちても良いのか?と新八は問いかけるが、砦は何の役に立つんだ、もう何もかもおしまいだ、嘆願することもダメ、直訴することもダメ、今更一体何ができるんだ!というものがいた。
その男に掴み掛かった新八は、け、畜生!お前ら、名主様を犬死にさせる気か!え?わしらは最後の一人になるまで戦うんだ、あの殿様が生きている限りわしらは楽にならねえんだぞ!と新八は詰め寄る。
その話を聞いていた市兵衛は、やめろ!と制し、逃げたい奴は逃げろ、降伏したい奴は降伏しろ、砦に残りゃ必ず死ぬ…、それを選ぶのはお前たち自身だという。
錣様、わしは戦います、この砦はわしら百姓の最後の望みですと新八は訴える。
しかし市兵衛は、おめえ一人が一揆やってるんじゃねえ!と叱ると、みんなはどうなんだい?ともう一度問いかける。
すると、やります!わしらもやります!と答えるものが少しずつ出てくる。
それを聞いた新八は、庄作(遠山金次郎)!と賛同した仲間を抱きしめる。
そうか…と答えた市兵衛は、太左衛門の遺体の前に座ると、太左衛門殿、お約束通り、錣市兵衛、この砦を死守いたしますと約束すると、安らかに成仏してくださいという。
そして新八、ここへこいと呼びかけ、隣に座らせると、みゆき殿ここへと自分の反対側に座らせる。
二人が座ると、お父上に代わり、市兵衛が仲人いたしますと言い出す。
さて、二人の祝言を祝って、俺がひとさし舞おうか?といった市兵衛は、別所さん、若い二人をあっちへと声をかける。
四郎五郎の先導で、村の衆が動き始める。
みゆきと新八は老人が手を引いて並んで座らせ、農民たちは祝言を見守る客の位置に座る。
市兵衛は刀を腰に刺すと、色の黒いのに、陣笠被り〜♩と歌うと刀を抜き、剣舞を舞い始める。
晴れの門出に別れの見納め〜♩と舞っていた最中、大砲の着弾がある。
農民たちは逃げ惑い、次々に爆発が起こる。 市兵衛は、ガトリング銃の元に駆けつける。 大筒の威力は凄まじく、砦の一角が難なく破壊されてしまう。
見よ、見よ、見よ、主水、大筒の威力を…、大筒こそ大名、国主の兵器だ、初めからこれを使えばよかったのじゃと、前線にやってきた大関佐渡守が、隣に座した主水に愉快そうにいう。
大筒前へ!と指示があり、主水、総攻めじゃ!総攻めを致せ!と佐渡守が命じる。
はっと応じた主水が立ち上がり、総攻め!と兵たちに号令をかける。
騎馬兵たちが砦に接近してくる。
市兵衛のガトリング銃が火を吹く。 陽炎はゲーベル銃を、九内も拳銃で撃っていた。
犠牲の多さに驚いた騎馬兵たちは引いていく。
それを見た佐渡守は、おおたわけ者が!大筒じゃ!大筒を撃て〜!と指示を変える。
大筒の攻撃で、砦内は大混乱に陥る。
本堂へ戻れ!と市兵衛は指示し、自分はガトリング銃を抱えて退却する。
やがて、砦全体が瓦解していく。
そんな中、市兵衛はガトリング銃を抱えて退却していた。
そこに騎馬兵の第二陣が突っ込んでくる。
砦の中に入った騎馬兵たちが、次々と馬を降りる中、市兵衛はガトリング銃をさらに奥の丘の上に設置し直す。
九内にもゲーベル銃を渡した市兵衛は、男装を詰め替えガトリング銃を撃ち始める。
九内と陽炎はゲーベル銃で応戦する。
城兵に取り囲まれそうになった市兵衛は、またガトリング銃を抱えて、陽炎来い!と呼びかける。
市兵衛はガトリング銃を撃ちまくり、四郎五郎も九内も必死にゲーベル銃で応戦する。
市兵衛はゲーベル銃が加熱しすぎで撃てなくなったと悟ると、九内、来い!小便かけろ!と命じる。
九内は言われるがままガトリング銃に小便をかけるが、淋病なので痛いと叫ぶ。
もっとかけろ、ほら!と市兵衛は叱るが、これで精一杯です、痛い!と九内は答える。
その間、迫ってきた敵兵相手に、市兵衛は斬って斬って斬りまくる。
市兵衛も斬られるが、九内から拳銃を受け取ると撃ちまくる。
四郎五郎は敵兵に斬殺される。 やがて拳銃の弾も尽き、満身創痍の市兵衛は刀一本で最後の戦いを挑む。
そこに大関佐渡守が主水たちと近づいてきたので、市兵衛は最後の力を振り絞って大関佐渡守に立ち向かう。
主水を斬り捨てた市兵衛は山頂の岩馬に逃げ込んだ大関佐渡守を追う。
追い込まれた佐渡守は、顔中血まみれの市兵衛が近づくと、無礼者!下げれ下郎!と怒鳴ってくるが、市兵衛はその顔面を一頭の元に斬り捨てるのだった。
そして佐渡守にとどめを刺した市兵衛は、もときた崖の上に立つが、そこで力尽き転落していく。
壊滅した砦の後では、気の狂った女が死体を見て笑っていた。
陽炎と九内はかろうじて生き残っていた。
市兵衛も命は取り留め、血まみれで砦に戻ってくるが、そこには折り重なるようにして死んだ新八とみゆきの死体があった。
隠れていた子供たちが出てきたので、傷だらけだった隼人と九内は嬉しそうに出迎え、抱きしめてやる。
市兵衛もまた、子供たちの無事な姿を見て涙ぐむ。
そこにやってきたのは、役人風の男で馬から降りると、その方が錣市兵衛という賞金稼ぎかと聞いてくる。
某は公儀巡察士遠藤和泉(中村錦司)と申す、一揆の仔細をききたいと申し出る。
しかし市兵衛がはっきり答えないので、詰問するために近づいた和泉だったが、その襟首を掴んだ市兵衛は、何が、政治だ?何が平和だ?お前ら…、大馬鹿野郎!と泣きながら怒鳴りつけ、投げ飛ばす。
そして、自分の賞金として受け取っていた小判を、村人の目の前で落としてやるのだった。
それを見た農民たちは土下座して感謝し、市兵衛と銃を持って役人たちを牽制する陽炎、そして隼人と九内は、砦から去って行く。
それを見守る子供たち。
夕暮れの荒野を馬を走らせ遠ざかる4人のシルエット。
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