「駆逐艦雪風」

冒頭のナレーションで「現雪風が登場して、平和への祈願を込めて贈る物語」と紹介しているように、公開時の実際の自衛艦「雪風」を、戦時中の「雪風」に見立てて展開される特殊な映画なので、戦時中を再現した戦争映画と思って見ると違和感を感じると思う。

主人公の木田たちが被っている帽子には「IHI」と石川島播磨重工業株式会社の名前がそのままついている通り、ロケ地は戦後の石川島播磨重工業・東京第一工場である。

だから、いわゆる戦時下の戦争映画を見たい人はピンと来ないのではないかと思う。

同時上映は、岩下志麻さん主演の「寝言泥棒」のようで、こちらにも三上真一郎さんが出ているので、二本立ての両作品に岩下さんと三上さんが出ていることになる。

どちらかというと、岩下さん主演の「寝言泥棒」の方がメインで、本作は添えものではないかという気がしないでもないが、「寝言泥棒」も見たことも聞いたこともないので、両作品とも「添え物」だった可能性も否定できない。

製作は佐野芸術プロで、松竹の自社製作ではなく外部の会社で、当時は基本、大手の映画会社が自社製作していたが、二本立てで量産に限界があることもあってか、時折、外部の作品も配給していたようだ。

菅原文太、吉田輝雄、御木本伸介、丹波哲郎…など新東宝出身の俳優が目立つのも特徴。

主演の長門勇さんはテレビの「スチャラカ社員」や「三匹の侍」などで頭角を表したお笑いもできる脇役系の方で、ハナ肇さんや渥美清さんのように、本作のような主演映画が当たっていれば、メインの俳優としてもっと活躍の場が広がっていたのではないかと思う。

劇中、マーブルちゃんこと当時の人気子役上原ゆかりちゃんが出て来るのが楽しい。

走っているマーブルちゃんなど初めて見た気がする。

戦闘シーンでの敵機や戦艦大和などはミニチュアが使用されている以外は、戦後の自衛艦「雪風」が映るだけなので、正直スペクタクル的な見せ場には乏しい。

後半は「お涙頂戴」のわざとらしい展開が続くだけで、お世辞にも感動できると言うわけではないが、当時のプログラムピクチャーの添え物としては、こんなものだろうとは感じる。

【以下、ストーリー】

1964年、佐野芸術プロ、戸倉康裕+大橋健一脚本、山田達雄監督作品。

松竹クレジット

協力 防衛庁(とテロップ)

戦後19年、我々国民は戦争というあの忌まわしい言葉を抹殺しようと努力してきた。

そして今、平和を謳歌する時代において、人々は、その日常の生活の中から戦争という言葉を忘れた感がある。(宇宙の自衛隊パレードの映像を背景に)

その陰で日夜世界平和を願って、黙々と激しい訓練に勤しむ自衛隊三軍の姿がある。(航空自衛隊の雄姿)

その中に活躍する「雪風」は、昭和29年、戦後初の国産大型護衛艦として誕生し、そしてその名は、かつての帝国海軍駆逐艦「雪風」の名を継いだものである。

その初代「雪風」は、太平洋海戦史上、同僚駆逐艦の全てが沈んだ中で、ただ一隻生き残った奇跡の幸運艦であった。

この映画は栄光の歴史を受け継いだ現「雪風」が登場して、平和への祈願を込めて贈る物語である。(とナレーション)

タイトル

三橋美智也が歌う主題歌(現「雪風」の雄姿を背景に)

スタッフ、キャストロール

昭和14年

本駆逐艦を「雪風」と命名す!と、自衛隊の上官が式典「駆逐艦雪風 浸水祝賀会」で宣言する。

テントの中では、ねえ組長、浸水式ってやつは、何遍やっても良いものですね~、胸がジーンときやがるなんだよな~と酒を飲みながら工員たちが組長(須藤健)に話しかけていた。

それを同じ席で聞いていた 木田勇太郎(長門勇)は、わしは「雪風」が海にぷか~っと浮いた時には、涙の野郎がな…と悲しげに答えたので、それはよ、誰でもよ、てめえが初めて手がけた船が出る時はぐ~っとくるもんだけどよ、でも、きだみてえに泣くやつは初めてだぜと副議長が辛かったので、近くにいた仲間たちも笑いだす。

でもな組長、「雪風」は世界一の性能の駆逐艦だっていうじゃないですか?世界一の駆逐艦作ったんだものな~、この手で…、なみふだがでますよと木田は感激したように言うと、湯呑みの酒を煽る。

それをてめえ一人で作ったつもりでいやがるなと仲間は呆れ、組長も笑い、しかし木田、「雪風」が世界一になるかなえらないかはこれからだぜと言い聞かせる。

はあ?と聞き返した木田に、完全に竣工するまでには後1年が勝負って所だと組長は答える。

はあ、それじゃあ、「雪風」を設計した山川少佐なんぞ、当分安心して寝てられないってわけですな?と木田が言っていると、その山川技術少佐(菅原文太)がやってきたので、組長らは慌てて立ち上がる。

いやあ、諸君、ご苦労様!と声をかけた山川少佐は、直立不動の姿勢で迎えた工兵たちに、今日は一つ大いに骨を休めて飲んでくれたまえと労うが、工兵たちが緊張しているので、おいおい、そう固くならんでくれと気を遣う。

ええ、みんなのおかげで無事浸水式は済んだが、これから完成までの仕事はますます難しくなる、一層努力してくれと山川少佐が頼み、はいと答えた組長らに、よろしく頼むよと握手をしてきたので、向かいの席にいた木田も思わず、頑張りますと言って、山川少佐の手を握りしめる。

頼むよと答えた山川少佐は、ああ、君はいつも歌を歌いながら仕事をしていた…と指摘したので、木田は、どうも…と恥ずかしがるが、いや、君の歌を聴くと、いつも気持ちが和やかになってね、助かった、これからも自慢の喉を聴かせてくれたまえと褒めたので、はいと答えた木田は、ちょっと失礼しますというと、その場から走り去ってしまう。

どうしたんだ、彼は?と山川少佐から聞かれた組長は、困ったような顔をしながら、いや、あいつは感激するとすぐ…というので、感激するとどうなるんだ?と山川が聞くと、つまり、便所に行きたくなるんでありますと組長は打ち明ける。

便所?と驚いた山川少佐は思わず笑ってしまう。

便所から出てきた木田は、嬉しそうにその場で両手を広げて深呼吸する。

その後、仕事に戻った木田に、おい、木田、お前正月は国に帰るのかよ?と仲間が聞くと、冗談じゃないよ、この「雪風」が出来るまで盆も正月もありませんよと木田は答えるが、その時、二人の体を押すものがおり、次の瞬間、上から部品が落ちてくる。

危ない所だったと言うのは、木田たちを押して助けた山川少佐だったので、山川小さ…と木田は驚くが、そばにいた組長も、良かったな、木田!少佐が気づかなかったらお前イチコロだぞと声をかけてくる。

ありがとうございました、本当に命が助かりましたと木田は山川少佐に礼を言う。

いや、機材を破損するのは構わないが、君たちの体にもしものことがあったら、それこそ取り返しがつかんからなと山川少佐は答えたので、はっ、なんとお礼を申し上げたら良いやら…と木田は恐縮する。

君たち十分気をつけて仕事してくれよなと山川少佐は伝え、立ち去る。

全くおめえってやつは運の強いやつだな~と組長が木田に声をかける。

おい、今夜一杯もんだぞ、三途の川から生き返ったようなものだからなと仲間はからかうが、木田は山川少佐をの方を見ているだけで返事もしなかった。

その後、艦内点検をしていた山川に、山川少佐!と呼びかけたのは木田だったので、やあ君か?何か用かね?と聞くと、今日はありがとうございました、あの~、これ、帰りに支給されたんですが、ぜひ飲んでいただこうとお見ましてと木田は手にした一升瓶を差し出す。

いや、君、困るよ、それは…と山川少佐は困惑したので、いえ、それじゃあ、わしの気持ちが収まりません、どうか、受け取ってくださいと木田が頼むので、そうか、それじゃあ、君の気持ちだけいただこう、今日月休みでも国に持って帰ってやれと山川少佐は答えるが、わしゃ帰らん、特別作業班ににれてもらいました、わしゃ、「雪風」の側で寝んと落ち着かんのでな…と木田はいう。

それを聞いた山川少佐は、ありがとう、木田君、本当にありがとうと木田の腕を掴んで感謝すると、わしもね、特別この艦には愛着があってね、まあ、なんていうか、まるで子供のような気がするんだと言う。

わかります、山川少佐、わしに「雪風」の面倒見させてください、わしゃ、「雪風」を山川少佐と思って大事にしますと木田は申し出る。

いや、その気持ちは嬉しいが、この間は帝国海軍の駆逐艦だ、誰でも乗れると言うわけにはいかんよと山川少佐は言い聞かす。

すると木田は、わしは海軍を志願しますと言い出したので、志願する?と山川少佐が聞き返すと、わしゃ、山川少佐のためならなんでもする覚悟です、ご安心ください、「雪風」は必ず私が守りますと木田は決意を述べる。

故郷に帰った木田は、羽織袴に襷姿で仏壇に手を合わせると、お父っつあんにせめてこの姿を見せてやりたかったなと呟くと、お父っつあんだって守ってくれるよきっとと、母ののぶ(浦辺粂子)は答える。

うん、まあ、わしも頑張るからな、わしのことは安心して良いよと木田が言うと、お前もうちのことは心配しないでな、病気だけは気をつけてくれよ、お守りは?とのぶも聞くので、ここに入っとると木田は自分の腹を押さえる。

さらに木田が、勇二、おっ母さんのことは頼むなと弟の勇二(勝呂誉)に声をかけると、無~に、おっかさんだってまだまだ働けるよ、お前は勇二と違って出来の良い方ではないからの、真面目に働いて、上の人に可愛がってもらうんだよとのぶは木田に言い聞かせる。

木田は、それ言われると、面目ねえな~、その代わり、主はわしの分まで学問できるんだからな、うんと勉強してくれやと言うと、うん、兄さんに負けないように頑張るよと勇二は答える。

うん、お前が医者になるのが一つの夢だからな、立派な医者になってくれやと木田は告げる。

うんと勇二が答えた時、勇太や、そろそろ出発だがやと近所のおじさんが支えに来たので、へえ、すぐ参ります、へえと木田が答えでけけ湯としたので、勇太郎、元気でな、面会に行くからなとのぶは言う。

すると木田は、待ってるからな、その時、わしが作った「雪風」ゆっくり案内するからなと木田は答える。

兄さん、本当に「雪風」に乗れるのか?と勇二が聞くと、バカ言うな、わしは「雪風」の生みの親だぞ、ちゃんと乗れるようになってるんだ、おっかさん、行ってまいりますと挨拶すると、のぶは、はい!と答える。

その後、木田は待ち構えていた村民たちの歌う「露営の歌」や幟旗と共に家を後にする。

「おきちどり」と共に海に浮かぶ「雪風」と、別の艦上から眺めた木田は、こんなはずじゃなかったわいと嘆息していた。

木田が配属されたのは別の船の炊事班っで、つまらなそうに大根を切っていると、こら!何を考えとる!ああ?何を考えてたんだ?正直に言ってみろ!と古参兵たちが因縁をつけにくる。

私は何も考えてはおりませんと木田が答えると、嘘つけ!と叱りつけた先輩は、なんだこらあ?鯨にでも食わす気か?と大雑把に切られた大根を見つけて問い詰める。

いや…、これはつまり、なんでありまして…と木田が誤魔化そうとすると、これ、食えるもんなら食ってみろ!と言いながら、先輩は大根を木田の口にねじり込もうとする。

おい、また「雪風」のことを考えてたんだろう?と別の先輩兵が聞いてくる。

違います!と木田が答えると、まだしらを切るつもりか、貴様!と相手は因縁をつけてくる。

これでも考えてなかったと言い張るのか?お前の私物を点検したんだ!一体これは誰に出すつもりなんだ!とさらに別の古参兵が「嘆願書」を取り出して問い詰める。

第二艦隊司令長官でありますと、覚悟を決めた木田は打ち明ける。

それを聞いた古参兵は喜田の胸元を掴むと、司令長官だと?おい、貴様!この前、艦長にあれほど説教を受けたのに!まだこんな大それたこと考えてるのか!と怒鳴りつける。

木田、お前本当に「雪風」に乗りたいか?と別の古参兵が聞くので、はいと木田が答えると、良し、じゃあ、今夜俺が「雪風」に連れてってやると言い出す。

本当でありますか?と木田が聞くと、ああ、南町のな「おゆき」という子で、小柄でピリッとしたのが、それは「雪風」にそっくりだぞなどと言うので、こりゃ良いやと他の二人の古参兵も笑い出す。

それを聞いた木田は、女郎と「雪風」を一緒にするなんてもってのほかでありますと怒ると、何!もってのほかとはなんだ?もってのほかとは!と言い出しっぺの古参兵が聞き返してくる。

いや、私は…と木田が弁解しようとすると、黙れ!と他の古参兵が発言を封じる。

どうせ、お前が作ったような「雪風」ならな、たかが知れてるよ!と別の古参兵が人参で木田の鼻の下を突きながらからかってくる。

さらに、どうしたんだ、その面は!と言いながら、3人の古参兵が木田を痛ぶってくる。

堪忍袋の尾が切れた木田も抵抗するが、3人は執拗にいじめ続ける。

その後、気絶から目覚めた木田は、烹炊室に上陸禁止を食ったやつがいるって聞いてきたが、お前か?と話しかけてきた男がいたので、何の用で?と木田がぶっきらぼうに聞くと、ご挨拶だな、退屈だろうと思って慰めに来てやったのに…と相手は言う。

帰ってくれよ、一人になりたいんだよと顔を傷だらけにした木田だがそっぽを向きながら言うと、いぬっっこみてえにきゃんきゃん言うな、同病愛憐れむってこともあらあなと相手の男はいう。

その言葉で相手の顔を改めて見直した木田は、ああ、お前か…、大野とかいう機関室のならず者は…と気づく。

はっきり言いやがるな、どうだ?暇つぶしにやらねえか?と大野一等水兵(三上真一郎)は持参したサイコロを見せながら聞く。

しかし木田は、とんでもない、そんなことは帝国海軍軍人のすることじゃないときっぱり拒否する。

それを聞いた大野は、バカ硬えやつだな、だから古参兵なんか怒らすヘマやるんだ、どうせ上陸禁止喰らうなら、俺みてえに女にモテてしようがねえんで喰らう方がよっぽど粋だぞなどと言い返してくる。

女にモテて?と木田が疑わしげに聞くと、ああ、丘へ上がってみな、栄町や南町の女どもが俺じゃなくちゃ承知しねえんだ、それが悔しくて、班長の野郎、ここんとこずっと上陸禁止ばかり食わせやがんのさと大野は嘯く。

お前みたいなのが海軍にいるかと思うと情けなくなる…と気だが顔を背けると、笑わせるな、さあ、ちょっとやらないか、遊戯としてやりゃ文句はねえだろうと大野は誘う。

遊戯?と木田が確認すると、ああ、俺が勝ちゃ、この辺のものを食わしてくれ、それで良いよと大野は条件として言うが、冗談じゃないよ、そんな遊びでそんなことできるかと木田は断る。

へえ、大きくでやがったな、でもよ、安心しな、俺は弱いものいじめはしねえ主義だ、これでもエンコじゃちっとは名の売れたお兄さんだと大野が言うので、エンコってどこだよ?と木田は聞く。

腐らせるな~、浅草だよ、東京の…と大野が教えると、さ、始めようやと大野が言うので、じゃあ、やっか?と木田も乗り気になってサイコロを手に取るが、これ、どうやんの?と木田が聞くので、ええ!と大野は引いてしまう。

ところが、いざ勝負を始めると、またいただきだなと言う木田の方がツキまくるので、チェッ、こんなど素人にカモにされてたんじゃ、エンコの兄いも泣きが入るぜと大野は嘆く。

あんた、このマッチ棒、1本10銭だったな?と木田が確認すると、心配するな、勝負がついたら綺麗に払ってやるよと大野は言う。

それを聞いた木田は、悪いな~、これで今月、弟に7~8円送ってやれるかなと喜ぶ。

大野は、畜生、落ち目になりたくねえな、良し、今度はいただきだ、大きく5円と行こう!と言い出す。

どうぞ、どうぞ、金、大丈夫ね?と木田が聞くと、くどい!行くぞと大野は言い、サイコロをコーヒーカップに入れて振る。

木田が、丁!と言うとまた勝ちで、悪いな、5円…と言いながら、木田がマッチ棒を引き寄せようとした時、卑怯だぞと大野は止めようとするが、その時上官(御木本伸介)が来たので、二人は慌てて立ち上がって会釈する。

上官は大野の顔を見ると、貴様はこんなところで油をうっとったのか?と聞いて来て、大野の体を検査すると、どこに隠してサイコロは?と聞く。

大野は、私は退屈でしたので、木田とマッチ細工を作ってたとこでありますと答えたので、ほお、うまく誤魔化したな、まあ良いだろう、相手が木田では博打にもなるまい、ところで貴様たちは近くこの艦からお払い箱になるぞと言う。

それを聞いた木田が、お払い箱?と驚くと、そうだ、貴様のように「雪風」以外は軍艦ではないと思ってる奴は未練がないように輸送船の方が良いだろうって艦長が言っておられたと上官が言うので、それは本当でありますか?と木田は聞き返す。

上官は、私が嘘をつくと思っているのか?と聞いて来たので、木田はいいえと答えて諦める。

さらに上官は、大野、貴様、軍艦よりも娑婆の刑務所の方が居心地が良いだろうと思ってな、その手続きをすることになったぞと言い渡す。

ええ!と大野が驚くと、いずれその時は、ささやかながら送別会を開いてやるからな、異常ないな?と確認した上官は、はいと言う木田の返事を聞いて良しと答える。

上官が去った後、落胆して座り込んだ木田が、お前、どうする?と聞くと、どうもこうもないよ、それよりさっき、あいつにこの現場を押さえられてたらお前も俺と一緒に刑務所行きだったぜ、感謝しろよ、そう言うわけでこの勝負は後挟んだ、良いな?と言って大野も立ち去るが、後に残った木田は、輸送船とは…、あんまりだと嘆く。

「雪風」の甲板上で新艦長の出迎えとして整列していた上官は、新艦長は確かにマル9到着の予定だったねと確認し、はい、着艦マル9マルマル、間違いありませんと部下が答えるので、遅いな~、もう5分過ぎとると苛立つ。

その時水兵が、内火艇が来ましたと声をかけたので、おお、やっとみえられたかと海の方に目をやる。

到着した内火艇から降りて来たのは木田と大野だったので、何だ、お前たちは?と上官が驚いて聞くと、海軍一等水兵木田勇太郎、ただいま着任いたしましたと木田が答え、海軍一頭機関紙大野五郎!と大野も答える。

しかし上官は、そんな二人に、馬鹿者!と叱りつけたので、木田たちはあっけに取られる。

そこに次の内火艇が到着し、そこから「雪風」に上がって来た人物こそ、新艦長は整列sて敬礼していた木田の前に泊まると、お前、目が死んどる、精神がたるんどる証拠だと注意してくる。

只今より、本館の指揮を手島中佐が取る!今日からお前たちの命はわしが預かる、一旦危急の場合は、お前たち全員に死んでもらう、しかし外きは、まずはわしが先頭に立つ、お前たちは黙ってわしの後についてこい!と言いわたす。

その後、烹炊室に連れてきた木田に、今日からお前と同じ釜の飯を食うのも何かの縁だ、気楽にやろうぜ、気楽にと声をかけて来たのは烹炊長(柳谷寛)だった。

木田は、はい、烹炊長に言われると私も助かりますと答えると、今、みんな集まったら紹介するよ、まあ一服してくれと烹炊長は労う。

はいと答えた木田だったが、烹炊場の室内を眺めながら、懐かしいな~、柱一つ、鋲一つ、なんかこう…、胸にジーンときますと打ち明けたので、おお、お前、この艦を作ったとか言っとったな、まあ、ゆっくり懐かしんでくれと烹炊長が言うので、木田は嬉しそうにはいと返事する。

しかし、部屋の様子をチェックし始めた木田は、何だ、もう傷つけてるんだなと気づき、烹炊町、困りますな~、もっと大事に使ってもらわなくては!と文句を言う。

烹炊長は、おやおやとんだ口うるさい大家が飛び込んできちまったな~と呆れると、室内にいた烹炊兵が、おい、軍艦は飾り物じゃない、特に駆逐艦は魚雷を持って敵の主力艦に当たるんだ、そんな傷は傷のうちに入らん!と言い返す。

それを聞いていた烹炊長は、また始めたな、こいつと注意すると、おい、この男は渡辺と言ってな、貴様と同じ志願兵だがな、少しばかり血の気が多くて困るんだよ、掃除することばかり考えてやがるんだと木田に教える。

すると渡辺が、烹炊長!烹炊長はいささか軍人精神に欠けておられます!と逆に注意してくる。

我々は畏れ多くも天皇陛下の御子として海軍に来た以上、己の生命などないものと考えるのが当然だとお思いますなどと渡辺が言うので、烹炊長も木田も思わず直立不動の姿勢で謹聴するしかなかった。

烹炊長は、すぐそれだ…と呆れ、お、良し、ここはひとつ、木田の配属を祝って寿司でも作るかと提案する。

お寿司でありますか?と木田が聞くと、いやあ、これでも娑婆に帰れば、神田で少しは鳴らした水野寿司の親父だよと烹炊長は自慢する。

そこに来た水兵が、木田はおるか?と聞いて来たので、は、私であります!と木田が答えると、話がある、こっち来いと呼び出される。

甲板の物陰に連れて来た水兵は、手元上等兵、木田を連れて来ましたと報告したので、待ち構えていた上官は、良し、お前、並べ!と木田に命じる。

そこにはすでに大野が立っており、お前たち、なぜここに呼ばれたかわかるか?お前たちのさっきの態度は何だ?我々をまんまとペテンにかけおって!と上等兵は言い、一緒にいた上等兵も、海軍精神の入っとらん証拠だ!と木だと大野を怒鳴りつける。

今から「雪風」乗組員を代表して、お前たちに海軍魂を叩き込む、またを開け!歯を食いしばれ!と「軍人精神棒」と墨書きされた棒を持った手元上等兵が命じる。

その棒を振り上げた時、待て!と声がかかり、何度言ったらわかるんだ、お前たちは!この二人にはわしから話をすると、上等兵二人に注意しに来た上官は、上等兵二人がすごすごと立ち去ると、この艦にも張り切りすぎるやつがいて困る、早く、自分の班に帰れ!と木田と大野に話しかける。

ありがとうございました時だと大野が敬礼をすると、いちいち礼などするなと言い残して上官は立ち去る。

互いに見合って笑顔になった大野は、捨てる神あれば拾う神ありかと呟くと、どうも「雪風」も住み良い艦じゃないらしぜと木田に話しかける。

木田は、こら!「雪風」の悪口言うのはよせよと注意するので、チェッ、こんな目に遭って何が「雪風」だ、これ見ろよと大野がサイコロを見せたので、まだそんなもん持ってるのか、お前…と木田は呆れる。

昔からロッポウと出りゃ、思案のしどころだ、お互いに気をつけたほうが良さそうだぜと大野は言う。

その後、木田は手島艦長から呼び出しを受け、ノックして、入ります!と言うと、入れ!と言われたので部屋に入り、お呼びですか?と確認すると、うん、こっち寄れ、実はな、艦隊司令部に辞令をもらいに行った時、山川少佐に会ってな、お前にと頼まれたものがあると言うので、山川さんに葵になられたんですか?時田が喜ぶと、お前の話は残らず聞いたよ、砲艦で不平タラタラだったこともな、と手島艦長は言う。

木田は、どうも…、そりゃあ~と木田が頭をかくと、お前の「雪風」乗り組みには山川少佐が大変尽力されたようだ、手紙を出しとけよと手島艦長が言うので、そうですか、早速出しときますと木田は答える。

茶を飲みながらうんと答えた手島艦長は、頼まれたものはこれだ、これは山川と思って頑張ってくれとの伝言だったと言いながら、むささ黄色の包みを手渡したので、は、ありがとうございました!と礼を言って木田は受け取る。

山川少佐が「雪風」の設計に心血を注いだときのものだそうだと手島艦長は説明するので、副差を広げてみると、それはコンパスだった。

夜、1人甲板に出た木田は、その紫の袋を握り締め、山川少佐、「雪風」は必ず私が守りますと誓うのだった。

昭和16年12月8日 太平洋戦争勃発(海を背景に、軍艦マーチと共に文字起こし)

我が大日本帝国は融資以来の国難位直面し、これを打開せんがため、12月8日未明を期して、米英両国に対し、戦線を布告した。(白黒の記録フィルムを背景にナレーション)

第16駆逐隊の雪風は、第4急襲部隊の一員としてガスビーの上陸作戦に参加した。(とナレーション)

砲撃を行っている最中、木田たち烹炊班は、総出で握り飯を握って現場に運ぶ。

おい、飯だと戦っている水兵たちに渡した木田は、これが戦争というものかの~としみじみと言う。

そのとき、大野が横から握り飯を勝手に取ったので、おい、そう言うことするなと注意するが、腹が減っては戦ができんと大野は平然と言い返してくる。

それを聞いた木田は上手いこと言うなと感心し、おい、飯だ!と配って回る。

おい、大至急艇発進しろ!と手島艦長が下士官に命じると、はい、艦内に知らせますと答えた下士官はその場を去る。

陸海軍協力のもとに比島レガスビーに敵前上陸成功!(上陸艇が進む映像を背景にナレーション)

烹炊室で調理中、花も嵐も踏み越えて~と歌う烹炊員がいたので、やめろ!生きるか死ぬかの最中に流行歌を歌うとは何事だ!と堅物の渡辺が叱る。

それを聞いた烹炊長は、おい、大袈裟なことは言うな、戦争、戦争というけれど、敵の弾1つも当たらんじゃないかと言い返す。

だから尚更私は我慢できないのです、真珠湾では空母艦隊が大戦果をあげ、マレー沖でも航空隊がレパルス、プリンス・オブ・ウェールズの二大戦艦を轟沈していると言うのに、私たちの「雪風」は何ですか?毎日毎日輸送船団の護衛ばかり、まだ戦闘らしい戦闘には一遍も出くわさないで、これじゃ、世界に誇る九三式魚雷が泣きますよと渡辺が興奮気味に言うので、渡辺、そんなことわしらに言うても始まらんと思うな、文句があるなら連合艦隊司令長官に言うべきだな、そんな命令しか下さないんだから…と木田は説得する。

そうだとも…、でも今度の作戦は英米・オランダ・豪州連合軍の本拠地ジャワの攻略だ、え?少しは戦闘らしい気分になれるぞ、渡辺と烹炊長も言葉を添える。

渡辺は、は、是非そう願いたいとお見ます、とにかく、こう大根や魚ばかり切ってたんじゃ情けなくなりますとぼやく。

木田は、わしゃ、大根や魚切って、弾の飛んでこんところで、こんな結構なことはないと思うんだよなと意見を言う。

そのとき、何?もう一度言ってみろ!と因縁をつけてきた烹炊員がおり、あの…と木田は言い淀むと、今行ったことをもう一度言ってみろと言ってるんだ!と絡んでくる。

は、あの~、弾の飛んでこないところで大根や魚を切ってられて、こんな結構なことはない…と木田が復唱すると、馬鹿者!と言いながら相手はビンタしてきて、それが言いたいときは、私は命が惜しいんですと言うんだ、良いか?言ってみろ!と言うので、私は命が惜しいんでああると木田が復唱すると、声が小さい!と叱ってきたので、もう一度、私は命が惜しいんであります!と木田はおおごえでいう。

すると相手は、良し、お前が日本一の臆病者であることを艦内の1人1人に報告するんだ、来い!と相手は命令するので、やむなく木田は、私は命が惜しいんですと甲板に立って連行するハメになる。

お前、何を馬鹿なことを言ってるんだ?と大野が止めに来る者もいたが、木田は同じ言葉を繰り返すしかなかった。

やめろ!やめちまえったら!と大野は制止しようとするが、木田は涙ながらに同じ言葉を繰り返すので、誰が命令しやがったんだ、ひでえことしやがると大野は怒り出す。

大本営発表、2月27日スラバヤ北西海上において、我が第5戦隊が敵強力艦隊と遭遇、一昼夜に亘る海戦の後、次の大戦果を収めたり、巡洋艦2、駆逐艦轟沈、軽巡洋艦1、駆逐艦3大破、なお、我が方損害なし、この回線をスラバヤ海戦と称す(白黒記録フィルムにナレーション)

木曽のな~、なかのりさん…♩と歌を歌いながら、艦内の煙突に撃沈させた船の絵を描いていた木田だったが、そこに、良い喉しているじゃないかと言いながら人が近づいてきたので、お世辞言うなよといなした木田だったが、それが手島艦長とわかり仰天する。

艦長!と言いながら敬礼すると、ペンキが顔につくぞと手島艦長は注意してくる。

あ、失礼しましたと返した木田だったが、何だこれ?と聞かれたので、これはその…と口ごもってしまうと、こんな落書きをしちゃいかんじゃないか、「雪風」の大家だと言ったお前が…と手島艦長がいうので、すぐ消しますと木田が詫びると、まあ待て、一体何のおまじないだと艦長が再び聞くので、スラバヤ沖であげた「雪風」の戦果です、赤が撃沈、黄色は大破ですと木田は答える。

それを聞いた手島艦長は、うん、巡洋艦1、駆逐艦1、巡洋艦1大破というわけかと確認する。

はい、本当に申し訳ありません時田は詫びるが、面白い!これからお前に戦果記録係を命じると手島艦長が言ったので、はい、ありがとうございます時田は感激する。

これでいくらか「雪風」も男前が上がったかな?と手島艦長が聞いたので、はい、出撃以来初めての内地来航ですが、これで私たちも威張って凱旋できます!と木田は答える。

手嶋の実家に招かれた木田が、手島の同僚たちも招かれており、全く手嶋は羨ましいよ、我々は軍司令部の机に座って、大本営の指令を出すだけで、いわば連絡係も同然、同期と言いながら、どうしてこう差別するのかと憤慨しとるんだなどと友達同士の冗談を言い合うので、1人テーブルの隅で小さくなっていた。

しかし手島、お前は実戦を経験しているから感じると思うが、これからの戦闘は空軍が仕切る事になると思うか?と客が聞くと、わしも多田も説には賛成だな、ハワイ、マレー沖の実践がそれを証明しとるよと他の客も同意する。

うん、とすると、今後手島たちの任務は輸送船団護衛専門ということになるかな?と多田と言う客が指摘する。

それを聞いた木田は、今の男ば、あまりに「雪風」を知らなすぎると思います、我が93式魚雷は、決して零戦なんかに劣っておりません、艦長、そうじゃありませんか!と発言する。

それを聞いた手嶋は、木田、ムキになるな、こいつら僻んで言っとるんだ、空軍だけで戦闘ができるはずがないと言い聞かす。

そこに、お待ちどうさまでした、お熱いのがつきましたと、手島の妻の邦枝(小畑絹子)が熱燗を持ってきて、一緒に手島の妹の由起子(岩下志麻)も、腕ものをお盆に乗せて運んで来たので、おお、由紀子さん、ちょっと見ぬ間にますます綺麗になられましたなと多田がお世辞を言う。

客たちが笑うと、おい、こいつに適当な婿を探してくれんかな?あれは嫌、これは嫌で、どうも非国民で困るんだと手島が多田たちに言うと、あらお兄様、お嫁に行かないのがどうして非国民ですの?と由紀子は言い返すと、それはですな、早くお嫁に行って、我々の後に続く男の子を産んでもらわにゃ困るからですよと客の1人が笑いながら答える。

それを聞いて、あら…と恥じらった由紀子に、由紀子さん、それは良いわ、お台所の方どうかしら?と邦枝が言うと、はいと由紀子が立ちあがろうとしたので、あの~、私にも手伝わしてくださいと木田が申し出たので、おい、お前はお客さんなんだぞと手島は呆れる。

台所に戻った由紀子は、姪の京子(上原ゆかり)がつまみ食いをしていたんで、京子ちゃん!な~に、お行儀が悪いと声をかけながら、頭をさする。

京子は見つかっちゃった!と言うが、。由紀子はそこにやってきた木田に、兄の長女の京子ですの紹介する。

あ、木田でありますと木田はお辞儀をしたので、京子もいらっしゃいませとおませな挨拶をしたので、いつもこんな大人しいと良いんだけどと由紀子は京子をからかう。

あの~、私は何を手伝えば良いのでしょうか?と木田が聞くと、手伝っていただけるんですか?じゃあ、このビーフシチューをお皿に分けていただこうかしらと由紀子は頼む。

木田が鍋からシチューを皿におたまで継ぎ始めると、それをぬしぎていた京子が、木田さん、お上手ねと褒めてくれたので、え?いや、とんでもありません、しかしうまそうだな~とぉだが答えると、うちのお父様が大好きなのよと京子が教える。

そうですかと木田が答えていると、あらあら、すみませんね、木田さんと邦枝がやって来る。

家と木田が答えると、せっかくの休暇を主人の雑用やら台所まで手伝っていただいて…と邦枝は恐縮すると、由紀子さん、それでこちらは一段落ねと声をかける。

ねえお母様、木田さんを街へご案内して良い?と京子が聞くので、良いわよと邦枝が許可すると、あら、それじゃあ、私もご一緒しようと由紀子が言い出す。

あらあら、あなたも逃げ出すの?と邦枝が呆れると、だってお兄様、嫌なことばかり言うんだもんと由紀子は笑顔で言う。

その後、木田は京子の手を引いて、由紀子も伴い外出する。

山道を歩いていると由紀子お姉ちゃんも早く!と京子が急かし、ねえ木田さん、由紀子お姉ちゃんってすごく綺麗でしょう?と無邪気に木田に話しかけてきたので、はあ、綺麗であります時田は正直に答える。

近づいてきた由紀子に、ねえ由紀子お姉様、木田さんが由紀子お姉ちゃんってすごく綺麗ですってと京子が教えたので、まあ!と照れると、木田の方も照れて、あの~、私はその~としどろもどろになったので、京子ちゃん!と由紀子が睨むと、あら、怖いと言って、京子は先に1人で駆けて行く。

それを見て木田と由紀子は互いに顔を見合わせ笑い合う。

私、木田さんのことは前から存じ上げてましたのよと由紀子が打ち明けたので、ええ!と木田が驚くと、兄の手紙にあなたのことが書いてありましたのと由紀子は言う。

はあ…と木田が答えると、「雪風」には、艦長さんの他に大家さんがいて、備品を傷つけるとすごくうるさいってと由紀子は教える。

それを聞いた木田は、ええ、ひどいな艦長も…時田がぼやくと、木田さん、残念でしたわね、お家に帰れなくて、待ってる方がいらっしゃるんでしょう?と由紀子は聞くので、はいと答えると、まあ、ごちそうさまと由紀子は会釈してくる。

はあ?と困惑した木田は、いや、母と弟ですよ、私には恋人なんちゅうものは…と、私は今まで「雪風」より好きになったもんはありませんと答える。

じゃあ、「雪風」が恋人っていうわけですねと、公園のベンチに腰掛けながら由紀子が聞く。

木田は、はい!「雪風」は私の命より大事なもんでありますと即答する。

でも恋人になさるんだったら、戦艦の方がずっと大きくて立派じゃありませんの?と由紀子が聞くと、とんでもありません!形は小さくても美しいです、かわいいです、例えば…ときちのが口ごもったので、例えば?と由紀子が聞き返すと、あの~、その~、由紀子さんのような感じですと木田は答える。

由紀子は感激したのか立ち上がり、まあ、ありがとうと、背を向けた木田に答えると、木田さんって、とってもお幸せな方ねと言うので、木田が、はあ?と戸惑うと、命を賭けて愛するものがあるって言うのは本当に幸せなことじゃないかしらと由紀子は指摘する。

そうでしょうか?そうですね、きっと!と木田は納得すると、ねえ木田さん、私、あなたにお手紙差し上げてよろしいかしら?と由紀子が聞いてくる。

ええ?と木田が驚くと、あなたが命よりも大事な「雪風」の活躍が知りたいの、それに兄の乗っている軍艦ですもの…と由紀子が言う。

木田は感激し、ありがとうございますと言いながら敬礼をすると、急にもじもじし始めたので、どうなさいまして?と由紀子が聞くと、いや、その…、何…、あ、ちょっと!と言い残し駆け出していったので、ぬしぎ取ってきた京子が、木田さん、どうしたの?と聞くが、由紀子は首を横に振るだけだった。

木田は坂道を駆け下り、途中の便所に駆け込む。

その夜、帰宅した由紀子が「エリーゼのために」をピアノで演奏している音色を止めてもらった木田は寝所で聞いていた。

初戦において痛烈な一撃を米英に与えた我が連合艦隊は、短期決戦の機を掴むべく、その全勢力を挙げて敵の要衝ミッドウェイー島攻略に出撃した、時昭和17年6月5日。(当時の新聞記事を背景にナレーション)

だがこの大本営発表は、開戦以来初めて期した敗戦のことであった、真相は我が空母艦隊の全滅で、ついに作戦は中止、ここに至り、南太平洋上は、ようやく日が入り乱れての血みどろな様相を呈してきた。

「第一次」「第二次」「第三次ソロモン回線!」(白黒記録フイルムを背景にテロップ)

「雪風」の煙突に木田の手で描かれた敵船の絵も徐々に数が減ってきた。

木田や大野も参加し、甲板上の機材の清掃をしていたとき、烹炊長、ガダルカナルの撤収ってのは本当でしょうか?と渡辺が聞いてきたので、コレアでやった給油作戦は全部失敗だったからなと烹炊長は答える。

ずいぶん沈められやがったかならな、日本の軍艦も、駆逐艦だけでも1隻やられてんだと大野が答える。

「雪風」がこうやってられるなんてめっけもんだぜと烹炊長は言う。

いやあ、そう簡単に沈められちゃたまりませんよ、第一「雪風」は沈まないようにできてるんだと木田が言うと、しかしガダルカナルは悪くすると年貢の納め時になるかもしれないぜと大野が言い返したので、どうせ死ぬなら、俺は子供の顔を見てからにしてえなと烹炊長はしみじみ言う。

それを聞いた木田が、へえ、できたんですか?と聞くと、いや、ゆっくりこどぬしぎ子を作る暇が欲しいってわけよと烹炊長は答えて笑う。

私は一遍だけ、おふくろに会いたいですねと渡辺が言うので、お袋か…、お袋の顔だけは見てえもんだな時田は賛同し、そうだろうな、お袋の味はまた格別だと烹炊長も言う。

すると大野が急に、やめてくれ!何だい、お袋、お袋って、今なんだと思ってるんだ、戦争してんだぞ!と怒り出し、その場を去って行く。

その後ろ姿を見つめた木田は、後を追い、おい、待ってくれよ、大野、ワシたち、何か、お前の気に触ることでも言ったのかい?と話しかける。

すると大野は、勘弁してくんな、ついカッとしちまってなと詫びてきたので、なんだおかしいぞ、エンコの兄さんがと木田は揶揄うと、みんながお袋、お袋って言ってるの聞いたら、急に寂しくなっちまってなと大野は言い訳する。

お福ぱーを?時だが聞くと、ああ、俺、お袋の味って知らねえんだと大野は言う。

物心ついた時、孤児院にいたよと大野は続ける。

孤児院に?と木田が聞くと、そうでもなきゃもっとマシな男になってやかもしれないと大野が言うので、そうだったのか、お前!と木田は驚く。

大野は、いけない、とんだ浪花節になっちまったぜと照れた大野はその場を去る。

昭和18年2月「雪風」はガダルカナル撤収作戦に参加した。(地図と空撮を背景にとナレーション)

烹炊長たちが夕食の準備をしている中、木田はいつものように木曽のな~、なかのりさん♩と、歌を歌っていたので、やめろ、木田!と田辺が叱りつける。

お前は今度の任務をなんだと思ってるのか?くさくさしてたまんないんだよ、昔から駆逐艦って野戦専門のはずじゃないか、撤収も結構だよ、しかし2~3発は敵の陣地にお見舞いしたいよと木田は答える。

その時、烹炊長が、おい田辺、すっかりお株を取られちまったなと揶揄う。

良し、俺もだぞと田辺は言い返すよと、やめろ、やめろ、一歩後退、二歩前進ってことがあるから、戦争はこれからだぜと烹炊長は言い聞かせる。

その時管内ブザーがなり、全員常体援助作業につけ!とのアナウンスが聞き得たので、烹炊長たちも一斉に甲板に飛び出す。

上陸艇で近づいた船員たちを次々と甲板に引き上げて行く。

艦長、まるまる13を過ぎました、このまま現在地に止まっていては、夜明けまでに敵の制空圏外に出られませんという下士官の報告を聞いた手島艦長は、右舷参戦、敵魚雷艇発見!との報告を聞き、乗艦はまだ完了せんか?と確認する。

木田たちは懸命に「雪風」に乗り込んでくる兵隊を急がせていた。

そこに魚雷艇が接近してくる。

艦長室にきた大野が、艦長、「雪風」もいよいよ最後ですかな?と嫌味を言いにくる。

その時、艦長、ただいま乗艦完了しましたとの報告が入ったので、良し、鳥火事いっぱい!と手島艦長は命じる。

魚雷艇が魚雷を発射する。

翌朝、無事逃げおおせた「雪風」甲板上では、木田が救助兵たちに、ご苦労さんでしたと言いながら、やかんの白湯を配っていた。

その時、救助兵の1人が立ち上がり、おい、木田じゃねえかよ!と呼びかけてきたので、驚いて顔を見た木田も、いや~、組長!組長じゃないですか!と驚いて握手を求めてくる。

組長も感激し、自分で作った船に助けられるなんてな~、しかしお前が「雪風」に乗ってるなんて考えてもいなかったぜと言うので、だって、わしは「雪風」乗る言うとったじゃないですかと木田は照れ臭そうに答えると、組長、こいつは素晴らしい性能ですよ、山川少佐が苦心されただけあって…と教える。

それを聞いた組長は頷き、きっと山川少佐の魂が乗り移っているんだな~と空を見上げながら言い、でもよ、ここんところ、海軍さん、だいぶやられているそうじゃねえか聞くので、残念ながら…と木田は小声で答える。

駆逐艦の痛手が一番ひでえんだって?と組長が聞くので、この辺が駆逐艦の墓場だなんて言うバカな奴がいますが、「雪風」は絶対沈みませんと木田は答える。

ぜひそうあってもらいたいねえと組長も言うと、逃げてばかりいたんじゃねえのかい?と近くにいた急女性が口を出してきたので、何!もういっぺん言ってみろ!と木田は振り向いて睨みつける。

言いたくはねえけどよ~、ほとんど毎日撃ち合いしてたってのに、かすり傷ひとつねえってのはどう考えたっておかしいじゃないかと救助兵が言うので、このやろう、何言ってやがるんだよ!と木田は救助兵に掴みかかる。

組長が2人の間に入って、おい、やめねえかよ、木田、落ち着けよ!時田を制する。

しかし組長、こんな侮辱を受けて黙ってられませんよと木田が言い返すと、よく聞け、「雪風」はな、今までの主君から司令長官から二度も感謝状をいただいているんだ、敵艦も何隻も沈めたし、撃ち落とした敵機も数知れずあるんだ、それを言うにことかいて!と相手を占めようとするんで、まあまあと組長が割って入る。

それでも、この船を降りろよ!と木田が責めるので、烹炊長まで飛んできて、木田!お客様に何するんだを止める。

その後、久しぶりに実家に戻った木田は仏壇に手を合わせていると、のぶが茶を運んできて、本当によう帰ってこられたなあと声をかける。

うん、しかしな、おっ母さん、勇二の奴、海兵など入りよって、どうして止めなかったの?と木田は問いただす。

のぶは、止めたって聞くわけないよとのぶが言うので、だって勇二は医者になるってあれほど…と木田は問いかけるが、今頃そんなこと言うのは非国民だよ、友達が予科練だ、特攻だって出て行くだろう?あの子だって、落ち着いて勉強できなかったんだよとのぶは説明する。

それじゃあ、おっ母さん一人きりで…と木田は口ごもる。

な~に、わしなんか良い方さ、この村でもな、息子2人戦死させたうちがあるんだから、さあひとつどうだね?佐藤の配給が少なくて味噌餡だけどなとのぶは勧める。

木田は、海兵に入った弟勇二の写真を見ながら黙り込む。

その後、豊島の家に向かった木田は、木田さ~んと自分を呼ぶ声に振り向くと、強固だったんで、やあ!と返事する。

京子は学校の帰りらしく、行儀良く、今日はと頭を下げてくるが、由紀子お姉ちゃん、今いないわよと言うので、木田は思わず立ち止まるが、横浜のおじいちゃんの所に行ってるのと京子は教える。

はあ、横浜へ?と落胆した木田が確認すると、うんと言うので、あ、これ、田舎で作った饅頭です、皆さんで召し上がっていただこうと思って…、はいと言いながら、手土産を渡す。

どうもありがとうと京子が言うので、いえ、じゃあよろしくね、失礼しますと木田は言い、すごすごと帰って行く。

さようなら!と京子は手を振って木田を見送る。

後日、「雪風」に戻った木田は由紀子から手紙を受け取る。

木田さん、お元気ですか?先日はわざわざおいでくださいましたのに、留守をして申し訳ありませんでした、毎日、ラジオや新聞で、皆様のご奮闘を感謝しております、木田さんの武運長久を祈りながら千人針を作りましたから、お受け取りくださいませ…、それを読んだ木田は送られてきた千人針も見て感激していたが、その手紙を横から奪い取ったのは大野だったので、おい、何するんだ!と追いかけるが、みんなのいる前で、今度内地へお帰りは何時ごろになりますか?などと大野が声を出して読み始めたので、木田は慌てて手紙を奪い取ろうとする。

その時、自分宛の手紙を読んでいた烹炊長が、いい加減にしろ!2人とも!と叱ってきたので、大野はすみませんと詫び、木田は手紙を奪い取る。

木田は、烹炊長、あまり気を落とさん方が…と声をかけ他ので、何?と烹炊長は聞き返すが、お家で不幸があったんでしょう?お悔やみ申し上げますと木田が気を使い、大野と共に頭を下げたので、冗談じゃねえよ、子供が生まれるんだよ、子供が!と烹炊長が言うので、その場にいた烹炊班の部下たちは全員嬉しそうに立ち上がる。

これで俺も一安心だ!と烹炊長が言うので、そうですね、男ですか、女ですか?と聞くと、生まれてみなきゃわからねえよと烹炊長は嬉しそうに答え、今日は何日だ?と聞くので、15日ですと大野が教える。

うん、そうか…、もしかすると今頃オギャーなんて言ってるぞ、見ろ、予定日は今日明日なんだと烹炊長が言うので、みんな一緒に喜ぶが、木田は怪訝そうな顔で指折り始める。

それに気づいた烹炊長が、なんだ、その真似?と聞くと、烹炊長、この前お家に帰られたのはいつですか?時田は聞き返す。

10月だと烹炊長が言うので、10月!ああ、じゃあやっぱり烹炊長の子供だと木田が確信したので、なんだ、このやろう!と烹炊長は苦笑いしながら木田をどつく。

その時、部下たちから、おい北野、烹炊長のために歌えと声がかかり、指名された北野が、はい、歌いますと言って、取るに足らない男だけれど~、胸のかかさが何より強い~♩と乾杯仲間を歌い出す。

木田は、由紀子からの手紙を胸ポケットに入れ、嬉しそうに手拍子を合わせる。

その時、敵機の爆音が聞こえたので、定期便が来たら、機銃の弾運びは2人くらいで良いだろう、おい田辺、俺と一緒に来いと烹炊長は声をかける。

しかし木田が、烹炊長、私が行きます、烹炊長は子供さんが生まれる大事な体でありますからと志願する。

何言ってるんだ、子供を産むのは女房だよと烹炊長は言い返すが、それにな木田、戦をしている時の子供は男が多いそうだ、まあ、夕飯の支度でもしといてくれと烹炊長は教える。

その後、部屋を出た烹炊長は、物陰でこっそり手帳に何かを書き始める。

飛行機の爆音が遠のいたのに気づいた木田は夕食の準備をしながら、やれやれ、やっと引き上げたらしいなと安堵し、仲間も、しかしよくまあ、毎日来やがるなあ~と呆れるので、全くだな、定期便とはよく言ったもんだなと木田も答える。

そこに加納博司少尉(吉田輝雄)がやってきて、烹炊長はおるか?と聞いてきたので、は、甲板ですと木田が答えると、ああ、戦闘要員だったん?というので、はあ、すぐ迎えに行って参りますと木田は答え、じゃあね、今無線で連絡があってな、男の子が生まれたって電報が入ったからと加納少尉は伝える。

生まれましたか!いやあ、烹炊長、大喜びだ!と木田も感激する。

その頃、物陰で手紙を無心に描いていた烹炊長は、突然手っっきが接近し銃撃してきたのに気づく。

木田は、烹炊長!と呼びながら外に出るが、あちこち探し回った末に、撃たれて倒れていた烹炊長を発見する。

烹炊長!烹炊長!と呼びかけながら抱き抱えた木田は、こどぬしぎ子さんが生まれたんですよ、男の子が…、烹炊長!と話しかけるが、返事はなかった。

その後、烹炊室では、心ばかりの子供さんのお祝いです、一緒に召し上がってくださいと木田が烹炊長の遺影に赤飯を捧げ、合掌すると、他の烹炊員たちも首を垂れる。

田辺が位牌の前に遺品を持ってきた時、手帳が落ちたので、それを拾い上げて中を読んだ喜谷、どうしたんだ?と田辺が聞くので、見てみろ!と木田が他の仲間に手帳の中を見せ、「男 忠雄 女 孝子」と子供の名前が書かれていたのを知らせる。

烹炊長、あなたの仇はきっと討ちます!と木田は誓う。

敵の「飛び石作戦」は、ついにフィリピン奪回を目指し、10月17日、一大機動部隊がレイテ湾スルワ島に殺到した、物量及び電波兵器において一歩ひけを取る我が艦隊は米軍の先制攻撃の前に、戦艦武蔵以下、24石を失い、スマトラ沖において3昼夜に亘る大和の健闘も虚しく、我が連合艦隊は事実上壊滅の最悪状態に至ったのである。(当時の新聞記事を背景にナレーション)

その中にあって「雪風」は、不死身の名称そのままに一段一変の被害もなく、ヤマトの護衛艦として多大の殊勲をあげたのであった。(大量の黒煙を吐いて進む「雪風」の姿にナレーション)

昭和20年

これ行こう、ヨイショと烹炊兵たちが野菜を港で積み込んでいると、大根を持った大野が、突堤を歩いている海兵たちの列を見ていたので、おい、何ぼんやりしてるんだよ、いくら特攻さん見たって、なれるわけないじゃろうが、早く片付けろよと木田が声をかける。

だけどね、見れば見るほど羨ましいな、あの格好と大野は答えるので、ふん、特攻さんだけで戦争ができるわけじゃないし…と木田は言い、うん、なあ、今度の「雪風」の任務は、なんでも特攻さんに関係があるんだと教える。

回天特攻の標的になるって話だろう?同じ訓練でも、こっちは敵艦代わりの的になるんだと大野も承知していた。

それを聞いた木田は、ああ、命中轟沈確率か…、あんまりゾッとしねえなとぼやく。

でもな、同じお国のためだ、仕方ないよと言っていた木田は、埠頭を歩く特攻兵の1人に気付き、勇ニ!おい勇二!と呼びかけ、そばに駆け寄る。

勇二の方も木田に気づき、兄さん!と喜ぶ。

曽於夜の宿舎で、木田と会った勇二は、「雪風」が標的艦になるって聞いたから、いずれ兄さんにも見つかると思ってたよと打ち明ける。

今までどうして知らせて寄越さなかったんだと木田が聞くと、海兵に入る時、わしに隠してコソコソ入るって…と木田が文句を言うと、言えば、どうせ反対されるからな、怒ってんだろう、兄さん?と勇二は言う。

今更怠って仕方ないじゃないか、お袋には言ってあるのか?時田が答えると、うん、しかしね、兄さん、俺は兄さんの希望通り、医者になろうと一生懸命勉強したよ、でもね、その夢は10年先でしか実現できないんだ、その10年の間、日本はどううことになっているか、そう思うと、呑気に勉強してる気になれなくなったんだと勇二は打ち明ける。

俺が医者にならなくても良い、誰かが医者になってくれれば良い、その誰かのために、俺、犠牲になること決心したんだよと勇二は言うので、わしに相談もしないでか?と木田は責める。

ごめんよ兄さん、でもね、誰かが犠牲にならなくちゃ、ゆっくり勉強のできる日本にはならないってことさ、俺だって、好き好んで死のうと考えてるわけじゃないんだよ、わかってくれよな兄さんと勇二は続ける。

木田は、うん、わかったような、わかんないような…、今わしが言えることは、命を粗末にするなっていうことだけだと答える。

ありがとう、兄さんと答えた勇二だったが、そこに遺骨を持ってきた者がいたので、兄さん、出ようか?と勇二は誘う。

兄さんと肩を並べて歩くのは久しぶりだなと夜の道を歩きながら勇二が言うと、勇二、良い所連れて行ってやろうか?と木田は言い出す。

良いとこ?良いよと、察した勇二は断る。

女はお袋の味だけで十分だ、俺、お袋に抱かれてる夢を見て死にたいんだよと勇二がいうにで、そんなこと言って後悔しないか?と木田は確認する。

うん、兄さんの気持ちは嬉しんだけどね、ねえ兄さん、今夜一晩中話明かそうか?と勇二がいうので、やるかと木田も応じ、綺麗な星だな~、田舎でもこの星見えるだろうな…と勇二は夜空を見上げながら語りかける。

お袋はもう寝ちまっただろうな~、きっと…と木田も応じる。

うさぎおいし♩と勇二は歌い出す。

面会の日、木田は母のぶと由紀子が来ていることを知り、いやおっ母さん、よく来られたな!と喜ぶ。

こちらに案内していただいての~、助かりましたとのぶが由紀子を指すので、あ、由紀子さん!と緊張した木田は思わず敬礼する。

偶然お会いよましたのよ、お話をお伺いしたら木田さんのお母様だったとおっしゃったもんで、私も兄に用事があったもんですからと由紀子は言う。

はあ、そうですか、どうもありがとうございました、おっ母さん、勇二は後からここに来ることになってるの?と木田が聞くと、勇二が?とのぶも聞き返してきたので、おっ母さん知らなかったの?あいつ、黙ってたんだな…と木田は気づく。

それを聞いていた由紀子も、良かったですわね、お母様、弟様もご一緒でと話してきたので、本当に今日はいろいろありがとうございましたと礼を言ったのぶは、勇太郎、どうしようかの?勇二にここにきてもらうか?それともこちらから…というので、いや、あの、俺一週間前にあったんだけどな、ああ、俺、ちょっと迎えに行ってくる、由紀子さん、ちょっとおふくろとここで…と頼んで、木場はその場を立ち去る。

由紀子は、どうぞと言って見送るが、海兵隊宿舎で案内された部屋にあったのは、勇二の遺影だった。

それに気づいて、勇二!と木田がつぶやくと、案内してきた海兵が、昨日出撃しました、見事な最期だったそうですと教える。

現地からの報告によりますと、敵空母を轟沈したと…と海兵が言うので、足取りも重く母の元に戻ってきた木田は、あのな、ほんの一足違いでな、基地を移動したんだってと嘘をつく。

それを聞いたのぶは、そうかの~、それは残念だったの~、勇二にはまた会いに来るわと答える。

木田は暗い表情のままうんと言って誤魔化すが、事情を知らないのぶは、勇二って子は、この兄と違いましてな、とってもちゃっかりやで要領が良いんですよなどと由紀子に話しかける。

そうですのと由紀子が相槌を打つと、ああ言う子は悪運が強いって言いますから、なかなか弾は当たらんじゃろうと思うとりますとのぶは自慢げに話す。

たまりかねて、おっかさん!と木田が言葉をかけると、そう言うもんじゃよ勇太郎、その点、お前はしっかりせんとな、どっちかと言うと、飛んでくる弾の方へ向かうような男じゃからのとのぶは言い聞かせ、さ、お前の好きな牡丹餅作ってきたよと言いながら、持参した風呂敷を広げ重箱を見せる。

木田は涙ぐみながら、じゃあ、俺、お茶もらってくるなと言ってその場を離れる。

その様子を見た由紀子は異変を察する。

木田は物陰にくると壁にもたれてさめざめと泣き出すが、そこに近づいた由紀子は、木田さん、もしや弟さん…と声をかけたので、戦死しました、回天特攻隊だったんですと木田は振り向かず答える。

そう…、そうだったの…と由紀子は同情する。

良い奴でした、甘えん坊で、そのくせ短気で!自分が代わりに死んでやりたかったです…と木田は打ち明ける。

その時、突然空襲警報が鳴り出したので、由紀子さん早く!と木田は退避させる。

途中でのぶとも合流し、近くの防空壕に逃げ込むが、そこでのぶは、勇太郎、お前も水臭いのう、そうじゃないか、こんな娘さんと知り合いになって、なんでわしに一言言ってくれなかったと言うので、いや、それはおっ母さん…と木田が言いかけた時、空襲の振動が響いてきたので、やっぱりここの空襲はすごいもんじゃのうとのぶは怯え、由紀子は、お母様ったらと話しかけたので、あんたはおいくつかい?とのぶは遠慮なく聞いてくる。

由紀子は苦笑して22ですと教えると、じゃあ、そろそろ花嫁さんですなとのぶは言うので、おっかさん、失礼だよ、この方な…と木田が注意しようとすると、ちいっと黙っとれとのぶは叱りつける。

うちの勇太郎も26になりますけな、そろそろ身を固めないと遠も取りましたが、でも勇太郎があなたのような方とお知り合いになって安心しましたとのぶは由紀子に伝える。

見かねた気だが、母さん、今そんな話してる場合じゃないじゃろうがと叱ると、な~に、わしはここで死のうと心残りやないが、、この子はな「雪風」のような美人でなければ結婚せんと言う取りました、あんたなら大丈夫、「雪風」より美人じゃ、のう勇太郎!とのぶは話しかける。

木田は困惑し、弱ったな~、由紀子さん勘弁してください、田舎者ですからなと詫びる。

イカもんじゃろうとなかろうと、ちゃんと心は…、良かった、良かったとのぶは満足げに言うので、おっ母さん、由紀子さんは艦長の妹さんですよ、良い加減にしてくれよと木田は叱る。

それを聞いたのぶは、ありゃ、飛んだことをもうしまして!と由紀子に詫びるが、いいえと由紀子は受け流したので、すっかりはやの見込みをしちゃっての、こらえてくださいのとのぶは謝る。

すると由紀子も、困りますわ、お母様に謝られたりしちゃ、ねえ木田さん、私、「雪風」なんか比べ物にならなくてよと木田に告げる。

いや、とんでもないです、「雪風」以上ですと木田は真顔で答える。

それを聞いた由紀子は、まあ!と恥じらう。

木田も、なんとも、どうも…と恐縮するしかなかった。

敵機動部隊、突如沖縄に来週!(テロップ)

沖縄本島に敵上陸開始(新聞記事)

先に天一号作戦が発動され、沖縄攻撃の指令が下った、本日、さらに次の下命があった、伊東第二艦隊司令長官は、麾下の大和八艦、冬月、初霜、朝霜、磯風、浜風、雪風を持って海上特別攻撃隊を編成し、4月8日黎明を期し、沖縄に突入!初敵艦船を撃滅する!と司令官(丹波哲郎)が、手島艦長らに伝達する。

なお、作戦要領は次のとおり、1つ、艦隊は8日黎明、沖縄に突入し、敵感染を撃滅!

1つ、余力あらば、陸岸に乗り上げ、砲台となって全弾打ち尽くすまで陸上先頭に協力する!

1つ、さらに生命あらば、艦隊全将兵は上陸して敵陣に切り込む、以上!と司令官は読み上げる。

「雪風」の中で、烹炊長を偲んで寿司屋の主人役をしていた木田は、次卵と仲間が注文したので、卵?ダメだな、そううときは玉(ぎょく)と行ってもらいたいなと注意していた。

チェッ、言うことだけは一人前だよと客役の兵が言い返してきたので、文句があるなら出て行ってもらうぞと木田も言い返し、はいと出すと、何だ、玉(ぎょく)って言うのは沢庵のことかい?これじゃあ、まるで落語だなと客役は呆れる。

木田は、欲しがりません、勝つまではってねとごまかす。

そこにやってきた大野は、お?こいつは乙なものができてるじゃないかと喜んだので、いらっしゃい!と気だが呼びかけると、カッコだけは死んだ烹炊長そっくりだなと大野が指摘する。

へへ…、あたぼうよ、何だって言ってくんねえかな?以降見えたって、水野寿司仕込みの板さんだと木田は自慢する。

しかし大野は、こっちは食わねえ前からサビが効いてきたぜ、一度で良いから烹炊長に握ってもらいたかったなと言う。

しんみりした木田は、おい、出撃前に涙は禁物だぞと言い返す。

そこに、おお、うまそうじゃないかと笑顔でやってきたのは加納少尉だったので、木田も直立していらっしゃいと呼びかけ、おい、ちょっと詰めてくんねえと先客たちに声をかける。

しかし加納少尉は、いや、俺は後でご馳走になるよ、ところで上陸最後の内火艇が出る、行くものは甲板に集まってくれ、おい親分、栄町の彼女には義理は済んだのかい?と木田が大野に語りかけると、眠っている子を起こすなよと大野は言い返す。

その時、彼女に!と何かを思いついた木田は、私は参りますと申し出る。

それを聞いた加納少佐は、早くしろよと笑顔で答える。

それを見ていた大野は、へえ、木田の兄さんにも馴染みがあったのかい?こいつは驚きだなとからかうので、バカ言うなと木田が言い返すと、良し、俺も行くぜと大野も部屋を後に仕掛け、おい板さん、折を三つばかり頼むなどと勝手な注文をしてくる。

へえと返事しかけた木田だったが、なら調子乗るな、お前!と叱りつける。

手島艦長の自宅に来た木田は、こんにちわ、ごめんください!と玄関先で声をかけるが返事がない。

戸を開けようとしても鍵がかかっている。

仕方なく帰る途中、「恵明孤児院」と書かれたお寺から幼児たちの歌声が聞こえてきたので、何気なく中を覗いてみると、オルガンを弾く女性の横で、園児たちと一緒に歌っていたのは大野だった。

それに気づいた木田は、じっと見入る。

大野は、次はおじさんの好きな「夕焼け小焼」とオルガンの女性にお願いする。

その姿に感動した木田は海の見える場所に来て、由紀子さん、今しっかりとあなたの心のこもった千人針を身につけ、出撃できる自分は日本一の下方ものと思っています、ただ最後に今一度お会いできなかったことが残念です、由紀子さんのお幸せを沖縄の空からお祈り申し上げますと、夕陽に向かって誓う。

興国の興廃はまさにこの一挙にあり!帝国海軍は大和以下全力をあげて沖縄周辺の敵艦隊に対し、最後n総攻撃を決行せんと出撃した(自衛艦「雪風」の映像を背景にナレーション)

「Z旗(信号旗)」と「南無八幡大菩薩会場特別攻撃隊」の垂れ幕が下げられた「雪風」

調理中の烹炊室では、このまま順調にいけば、8日の突入指令は果たせるなと烹炊員が言うので、ああ、大和を先頭に立てているんだから敵さんも黙っちゃいまいと田辺も答える。

いや、何百何千の敵のやつが来たってな、大和沈むような艦じゃないぞ、その不沈艦をまた「雪風」が守ってんだからなと木田も応じる。

この作戦を契機にまた反撃ってわけか…と田辺が聞くので、当たり前だよ、不沈艦大和がある限り我が日本帝国はご安泰ってわけだと木田は答えると、それに奇跡の駆逐艦ありだと別の烹炊員が声をかける。

それを聞いた木田は、嬉しいこと言ってくれるな、おい、ええ、寿司食いねえってんだよ、おいと上機嫌になる。

そこにやってきた大野が、おい木田!もう便所行ったか?と聞いてきたので、なんだ藪から棒にと木田は答えるが、お前が便所に行く時は大概勝ち戦だからな、頼みに来たんだよと大野は言う。

無理な注文だな、こればっかりは俺も自由にはならないからなと木田は困惑し、みんなも笑い出すが、その時、第一警戒配備に付け!とう館内放送が聞こえる。

それを聞いた木田は、それじゃ行ってくると言い残し、便所へ向かう。

加納少尉は艦長に、旗艦大和より連絡、敵艦船福島方面への北東に向かう!と報告、手島艦長は、良し、戦闘配置につけ!と命じる。

左上空5000m!敵発見!と監視係が報告、対空射撃用意!射撃開始!

取り舵一杯!と手島艦長が命じたので、艦長、魚雷と体当たりするんですか?と下士官が聞くので、大和護衛が「雪風」の任務だと手島は答えたので、はい、取り舵一杯!と下士官も復唱する。

食事を運送中、銃撃を間近に受けた木田は、畜生、舐めたことしやがるな、馬鹿野郎!と敵機に向かって悪態をつく。

大和2番砲に爆弾命中!

荷物運搬中の木田は、甲板から大和を見て、あ、大和が!と叫ぶ。

手島艦長は、気弱な部下たちに対し、バカ、この作戦はいつもと訳が違う、特攻なんだ、このまま沖縄を見殺しにできるか!良し、手島が責任を取る、取り舵一杯!と命じる。

その時、艦長!艦隊命令伝えます、作戦中止!緊急所に帰投すべし!

それを聞いた手島艦長は黙り込む。

烹炊室では木田たちが落ち込んでおり、ああ、また「雪風」が生き残っちゃったなと田辺が言うので、思わずペンキ缶を持った木田は煙突の場所に行くと、これまで自分が描いた敵艦の絵を「ばかやろー!」と叫びながら×印で消すのだった。

そこに駆けつけた加納少尉や田辺らは、木田、何をばかなことをしているんだ!俺たちの大事な戦果じゃないか!と叱ると、戦果がなんだってんだ、大和はな〜、大和は沈んじまったんだい!時田が言うので、大和は立派に戦って沈んだんだ!いわば名誉の戦死だ!と加納少尉が言い聞かせる。

田辺も、お前は「雪風」の大家じゃないか!うちに帰ってきたのが嬉しくないのか?と問いかけると、帰ったんじゃない、逃げ出したんだ、わしはな、わしは「雪風」を卑怯者にはしたくないんだと木田は訴える。

そこにやってきた手島艦長は、木田、女々しいぞと叱ってきたので、艦長、「雪風」はこのまま内地へ戻るんですか?と木田が聞くと、もう一度やり直すんだ、その時こそ…というので、そんなバカな!無一度引き返しましょう、1艦だけでも突っ込ませてください、突っ込みましょう!艦長!艦長はそんな意気地なしなんですか?と木田は訴える。

加納少尉は、木田、言葉がすぎるぞ!と止めるが、艦長は腰抜けだい!艦長の腰抜け!と木田は罵倒する。

田辺も、木田、止めろ!と声をかける。

わしはな、わし…、山川少佐に合わせる顔はないわ、山川少佐はな、そんなつもりで「雪風」を作ったんじゃないぞなと木田は嘆く。

お前、軍人勅諭を知っているだろう、上官の命令は天皇陛下の命令だぞ、泣きたいのはわしも同じだよ、木田…と手島艦長は答える。

その言葉を聞いた木田は、艦長!と呟き、涙するしかなかった。

手嶋がその場から去ろうとすると、艦長!と呼びかけながら後を追った木田は、申し訳ありませんでしたと詫びると、何も言うな、それからお前にしらすことがあるんだと答えた手島は、由紀子は出撃前の空襲で死んだよと告げる。

愕然とした木田は、絶叫しながら甲板を走って船尾に向かうと、馬鹿野郎!畜生!と叫びながら戦隊を蹴る。

大和は沈んだ、由紀子さんは死んだ…、わしはどうしたら良いんだ?と遠ざかって行く海に向かって問いかける。

「雪風」お前はなんで沈まなかったんだ?馬鹿野郎!死に損ない!由紀子さん…と言いながら、涙ながらに船体をさするのだった。

そして戦は終わった(半分にちぎれた旭日旗を背景にテロップ)

太平洋史上奇跡の幸運艦「雪風」は、賠償艦船の一環として中国海軍に引き渡されることになり、昭和21年7月1日、祖国の栄光と幸福を祈念しつつ、風雨激しい長浦の港を発って行った。

その官営を港から眺めていた木田の元に、傘をさした手島と山川が近づいて呼びかけたので、艦長!山川少佐!と木田は驚くが、君だけは見送りに来てくれると思っとったよと山川少佐は言う。

しかしせっかく軍事で戦い抜いた「雪風」を…と木田が無念がるので、いや木田、「雪風」の名は全世界に知れ渡ったんだ、これから中国所属の船になろうと必ず栄光の道を歩むと思うと手島が言い、山川少佐も、そうだ、そうだよ、「雪風」の名は影響に消えやしないと断言したので、そうでしょうか?と木田が聞くと、うん、消えやしないよ、さ、笑って見送ってやろうじゃないかと手島が声をかける。

風雨の中、木田、手島、山川少佐の3人はいつまでも霞の中に消えてゆく「雪風」を見送り、木田は、「雪風」!わしがついていることを忘れるな!と心の中で叫ぶのだった。


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