「旗本退屈男 謎の南蛮太鼓」

ご存知市川右太衛門御大主演の人気シリーズ

主役早乙女主水之介が毎回着ている派手な衣装に代表されるように、分かりやすい娯楽時代劇で、本作ではさらに、清国から来た異国情緒あふれる曲戯団という見せもの要素が強調されている。

カラー作品ということもあり、子供も楽しめるファミリー映画の色調が濃くなっている感じがする。

この当時の「旗本退屈男」は、片岡千恵蔵御大の「多羅尾伴内」などと同じような荒唐無稽な趣向で構成されており、良くも悪くもご都合主義の連続と言って良い。

清国人ヒロインとして登場する佐久間良子さん(平岳大さんの実母)が「一座のスター」などと外来語で歌っていたりするのがご愛嬌。

清国の曲戯団の客寄せ男を演じているジョージ・ルイカーは、映画全盛期頃の日本映画によく出ていた日本語ペラペラの外国人なのだが、欧米人顔で清国人には見えないのがご愛嬌だろう。

主水之介の屋敷に住み、いつもお供をする若衆霧島京弥を演じているのは、市川右太衛門御大の実子北大路欣也さんで、その京弥と仲良しの菊路を演じているのは政治家の山東昭子さん、そして爺やの喜内を演じているのは、堺正章さんの実父堺駿二さん。

ちなみに、キネ旬データのキャスト欄に載っている内海突破 権三、渡辺篤 助十というのは名前と役名が逆で、本編では厠の権三(渡辺篤)と助十(内海突破)と名乗っている。

当時はケレン味の演出のつもりだったのか、せむし男や言葉を喋れない女など、身体障害者が出てきたりするので、今のテレビ放送などには向かない内容かもしれない。

ザンスザンスで、そうザンスのトニー谷ら、当時のお笑いタレントもゲスト出演しているし、悪役として有名な上田吉二郎さんが、身軽そうな義賊を演じて主水之介を助けているのも楽しい。

唐人屋敷や南蛮船、清国のテント小屋などでの大立ち回りが見どころになっている。

全編「インディ・ジョーンズ」の時代劇版といった連続活劇風になっており、リアリズムで考えると馬鹿馬鹿しい展開なのだが、荒唐無稽なチャンバラ映画として童心に戻って楽しみたい作品である。

特に劇中の曲戯団で活躍する道化師役の正体は驚愕ものだが、どう見てもそれまでは表情が出る厚化粧だったのに、最後の最後に仮面を脱ぐと言うことは、それまで道化師を演じていたのは別の役者だったと言うことだろう。

タイトルにある「南蛮太鼓」なるものが一向に出てこないのは謎である。

【以下、ストーリー】

1959年、東映、佐々木味津三原作、池上金男脚色、佐々木康監督作品

「荒磯に波」の東映クレジット

タイトル(並んだ太鼓の絵を背景に)

元禄3年11月 五代将軍綱吉公の湯島聖堂建立を祝し、清国より曲戯団江戸に来るー(延々と続く異国人たちの行列を背景にテロップ)

(同じく曲戯団の行列を背景に)スタッフ・キャストロール

その行列を見守る江戸の町人たち

行列の先頭には道化師が槍を操りながら歩いており、美しい衣装の女人たちが舞いながら続いていた。

いくつも連なる華やかな輿には清国の豪華な衣装に身を包んだ美女たちが乗って民衆たちに愛想を振りまいていた。

いくつも連なる華やかな輿には清国の豪華な衣装に身を包んだ美女たちが乗って民衆たちに愛想を振りまいていたが、ひと際美しい女性は、呉翠(佐久間良子)であった。

その後を、王宗江(吉田義夫)らが乗った馬の列が続き、停めた駕篭の中から見学する稲葉越前守(梅沢昇)に会釈して行く。

その行列の後を付いて来ていた深編み笠の浪人と霧島京弥(北大路欣也)は、道に落ちていた血痕に気付く。

待て!その駕篭待て!と行列の背後から声をかけて来た深編み笠の浪人に、無礼な!御老中筆頭稲葉越前守様の御駕篭でござるぞ!と従者たちが色めき立つと、深編み笠を取った額に三日月の傷がある早乙女主水之介(市川右太衛門)が、その駕篭に不審がある、退け!と申し出る。

早乙女の御前!と気付いた従者がへりくだると、無礼は許す、その駕篭開けて見ろと主水之介が命じる。

はっと言い、従者2人で駕篭の戸を開けると、首から血を流した稲葉越前守が転がり落ちる。

首筋を射抜かれた!とその遺体を見た主水之介が気付く。 奇怪な、何を以て射抜かれた?と主水之介は考え込む。

駕篭の内部を改めた主水之介は、不思議な針が刺さっているのに気付く。

城中では知らせを聞いた時の将軍綱吉(徳大寺伸)が、得難いものを失った…、越前は頑固一徹だったが忠節無二、万民に慈しみを忘れず、公平無私に天下の政を処して誤りのない者…と悲しんでいた。

下座でその言葉を聞いていた僧侶隆光(澤村國太郎)は、はっ、上様のお言葉の如く、御公儀にとり真に傷心の極みにござりますと返答する。

美濃、下手人が判明致したか?と綱吉から聞かれた酒井美濃守忠勝(進藤英太郎)は、はっ、残念ながら今だ…、何を用いて殺害したか、それすら判明致しませぬ、あるいは切支丹一味の…と言うので、何?切支丹!と綱吉は驚く。

はっ、清国曲戯団来朝の事もあり、内々に密偵を放しておりましたる所、府内には切支丹衆と密かに集まり、何事か企ておるとのこと…と美濃守が言うので、それは真か?と綱吉は問いかける。

はっ、切支丹のがことを起こせば、折も折、曲戯団に万一のことがあれば国交にも関わる由々しき大事、隆光殿、これは宗門のこと、其処許(そこもと)のお考えは?と美濃守は聞く。

すると隆光は、切支丹は人を惑わし国を乱す邪教!厳しき御取締が肝要かと存じますと答える。

なれど、そのために無辜の民に嘆きを見せぬよう心致せよと綱吉は美濃守に言い聞かし座を立つ。

その後、美濃守と別室で2人きりになった隆光は、目の上のこぶが落ちる…と笑い出し、これで酒井様もお望み通り御老中筆頭…、この上は例の企てを…と顔を近づけて囁きかける。

ことは曲戯団在府中に致さねばな…と、美濃守も部屋の外を警戒しながら囁きかける。

大目付大久保将監様、部室にて控えてございますと茶坊主が知らせにくる。

大久保将監(加賀邦男)と会った美濃守は、切支丹一味の探索にはいささかの容赦があってはならぬ、怪しき者はことの如何を問わずひっ捕え、厳しく吟味致すよう南北領奉行にしかと申し伝える、情けは無用じゃと伝える。

「告 切支丹宗門は累年御禁制たり 訴人に及びたる者には御褒美として、ばてれんの訴人 銀600枚 いるまんの訴人 銀300枚 同宿並宗門の訴人 銀100枚 右之通り下さるべし 元禄3年11月 奉行」と書かれた高札が市中に立つ。

(高札の中央に楕円形のワイプで、捉えられたキリシタンの浪人が引きたれたれて行く様子が写り)あ、切支丹だ!と町人(伊吹太郎)が気づく

そんなある晩、すでに戸締りされていた店の扉度を叩く音がしたので、小僧がはい?どなたですと返事してかんぬきを外すと、黒頭巾の賊が立っていたので、慌てて店内に逃げ込もうとした小僧は斬られてしまう。

その物音で出て来た店のものたちも黒装束の賊が入ったと知り震え上がる。

賊に背後から首領らしき黒頭巾が入ってきて、我らは切支丹じゃ、軍資金を申し受けると脅迫し、すぐさま店内に収入したので、お待ちくださいませと制止しようとした主人は即座に斬られてしまう。

お父様、お父様!と店の奥から出てきた娘が斬られた父親に抱きつく。

その娘に背後から掴みかかった賊の1人は、布を娘の口に当ててしばらくすると、娘は失神する。

気を失った娘は、2人の賊によって店の外に運び出される。

引き上げ賊の1人が、店の鴨居に十字架を打ちつけ、さらに火も放って行く。

店の表戸にも十字架を打ちつけた賊は、娘をからって逃げ出して行く。

火事を知らせる半鐘が響き渡る中、犯行を終え逃げていた賊の一味と外でバッタリ出くわしたのが主水之介と京弥で、退け!邪魔立てするとぶった斬るぞと首領が脅すが、火付盗賊に急騰後者、久々の夜歩き、どうやら退屈の虫も収まりそうじゃと答えた主水之介は、京弥、措置の揚心流小太刀の冴えを見せい!と背後に控えていた京弥に命じる。

はっと答え、族と斬り合いを始めた京弥だったが、敵の首領と対峙すると、いささか近rまま消しそうになったので、京弥の前で両手を開いて庇った主水之介は、開きメクラどもめ、この額の向こう傷が目に入らぬか?天下御免の退屈男、直参旗本早乙女主水之介!諸羽流正眼崩はとっくり見せてやろうか?と言い終わるや否や、賊を相手に扇子で相手を始める。

都内を騒がす不届ものめが、平安城相模守に久しぶりに血を吸わせてやりとうなったと主水之介は言い放ち、抜刀する。

数人の賊を斬った時、敵の首領が短筒を構えていたので、京弥は緊張し、主水之介は小柄を片手に構える。

しかし首領は、引け!と仲間に命じ、賊の一味は素早く逃げ去って行く。

京弥がその後を追おうとすると、追っても無駄だと主水之介が止めたので、でも1人なりとも捉えれば、その情報がわかると思いますが?と京弥が反論すると、南蛮渡りの短筒などを手にする奴らだ、どこに潜み、待ち伏せぬとも限らん、あの引き際の鮮やかさ、容易ならぬ敵じゃ、血気に逸ってはならん、京弥!あの娘を介抱して遣わせと指示する。

清国の曲戯団を披露する小屋は大賑わいだった。

さあさ、いらっしゃい、いらっしゃい、いらっしゃい、綺麗な清国の娘さん、歌う、踊る、見たい、は~い!と呼び込みの男(ジョージ・ルイカー)が客を招いていた。

すると、テントの前の緞帳が少し上がって、歌手の歌が外の客にも見えてくる。ジャガタラ船のドラが鳴る~♩

まだよく見えないね?もうちょっと上げましょうと客寄せが緞帳を上げると、ステージ上で、上げ花火、上げ花火~♩と歌う歌姫の姿がかなりはっきり見えたので、外にいた野次馬連中は喜ぶ。

しかし呼び込み男が、一番良いところで緞帳を下ろしてしまったので、野次馬たちは文句を言い始める。

残念、残念だけど、お金出せば全部見られる、ほらほら切符あそこ売ってる、どうぞいらっしゃい、いらっしゃい、あそこも売ってる、どうぞと客寄せの男は客に案内する。

ステージでは、オランダ屋敷、ギヤマンの~♩とまだ歌姫が歌を続けていた。

そんな小屋のある雑踏に、京弥と菊路(山東昭子)、主水之介と共にやって来た喜内(堺駿二)は、お殿様、良いものでございますな~、こうしてぶらぶら出歩くのも、お屋敷に燻っておりますよりも、全くもって、第一に公然の気を養い、第二に目の保養、第三に見聞が広くなると申すものでございますな~と、いつものように1人賑やかだった。

そんな喜内に女がぶつかり、女は持っていた袋を落としたので、喜内は拾ってやる。

すると相手の女が気に入ったのか、互いに見つめあってもじもじしていると、喜内、そんなにウロウロしていると迷子になるぞと、深編笠の主水之が注意してくる。

迷子などと、私めは大人でございますぞと喜内は憤慨する。

曲戯団の小屋では、ほらほら、ブランコ乗り、危ない芸当!などと呼びかけ、客寄せの男が、また緞帳を少し上げて、外の野次馬たちにチラ見させていた。

テント内では、巨大で特殊な形状の仕掛けブランコ乗りを披露していた。

外の雑踏では、先ほど喜内にぶつかった女が、また別の男とぶつかって、あら、ごめんなさいなどと詫びていたが、そばにいた主水之介が、これ女、悪さをするでないと注意する。

悪さって何のことでしょう?と女がとぼけると、今抜き取ったものだ、鮮やかな腕だな、江戸でも名うての者であろう?と主水之介が指摘すると、まあ、何をおっしゃいます、人聞きの悪い…と女は笑ってごまかそうとするが、相手の顔を見るなり、向こう傷のお殿様!と気づく。

笠を脱いだ主水之介は、この傷が見てしまったのだ、白を切る出ないと、額の傷を見せながら言う。

すると女は、恐れ入りました、お噂は予々伺っておりましたが、お殿様に捕まるなら私も本望、女冥利でございます、駆け出しながら、私もおさらばお由(三浦光子)お目溢しとはもうしません、どうぞご随に…と頭を下げてくる。

それを聞いた主水之介は、小気味良い奴よの~、わしは浮上役人ではない、その方を捉えたとて手柄にはならん、ただ抜き取ったものを返してやればそれで良いと答える。

これ女、お情け深いお殿様のお言葉だ、早く出しなさいとが喜内がお由のそばに近づいて言うと、お財布は御用人様の懐にお返ししてございますとお由が教えたので、何!わしの懐に?と喜内は驚いて自分の懐を調べ、財布を発見すると、ああ、何と素早い奴だと呆れる。

それを見て苦笑した主水之介は、京弥、取られた町人は困っておろう、早うおって届けてやれと命じる。

京弥が、はっと承知し、喜内から財布を受け取って目当ての町人を探しに向かうと、お由とやら、今後はあまり鮮やかな手並みを使うでないぞ、早う行けと主水之介はお由に言い、その場を離れていったので、お由はその後ろ姿を眺める。

その頃、京弥は、雑踏の中、財布を先ほどスられた町人を探していた。

その後、茶店で休息し、大福を食べていた喜内は、これはなかなか美味うございますな、だいたいこの大福というやつは餡の作り方が難しいなどと喜んでいた。

それを見ていた菊路は、爺や、そのように召し上がるとお腹を壊しますと注意すると、喜内は、私はまだ5皿しかいただいておりませんと言い返す。

兄上様、京弥様はまだ探しておられるのでございましょうか?と菊路が聞くと、早う屋敷へ戻って、京弥と遊びとうなったか?と主水之介が揶揄うと、まあ、またそのようなご冗談ばなり、私はもう知りませんと菊路は拗ねる。

それそれそれ!そのような怒った顔では京弥に嫌われるぞと、主水之介はまた菊路を揶揄ったので、存じません!と菊路はそっぽを向いたので、いや、謝る、謝ると主水之介は笑い、おい、待ち人来たると教える。

京弥は財布を持ったまま戻ってきたので、見当たらなんだかと主水之介が聞くと、はいと京弥が答え、この人混みですものと菊路が言い訳したので、こやつ、京弥のことなると手放しだと主水之介は呆れて、睨んでみせる。

その時、喜内が、あ、先ほどの男、財布をスられてやけ酒を飲んでおりますと、茶店のそばの木に寄りかかった町人を指差しながら笑おうとするが、餅で胸がいっぱいなので思わず胸を抑える。

すると、その町人がばたりと倒れたので、主水之介は異変を察知し、立ち上がる。

倒れた男に、しっかりいたせと声をかけると、ああ、恐ろしい陰謀、江戸が火の海!みんな、みんな焼き殺される!と苦しげに男が言うので、陰謀とは何のことだ?と主水之介が聞くが、下谷甚兵衛店…、あき…とだけ男が答えたので、あき?何と申す!と主水之介は聞き返すが、あきづき…と言いかけて男は絶命したので、その首元から流れる血に気づいた主水之介は、あ、首筋を射抜かれている、先日の稲葉殿と同じ傷跡だ、京弥、この町人の財布持っておるの?と主水之介は確認する。

はいと答え、懐から取り出した財布を京弥から受け取って中を調べた主水之介は、これは異国のうんすんカルタだ、町人の手には容易には入らんものじゃ、それも一枚…と気づく。

そんな茶店にスリのお由が顔を出し、その様子をこっそり見ていた。

この町人の言葉も謎めいている…、恐ろしい陰謀と、秋月…、う~ん…、これはずんと面白うなって参ったぞ…と主水之介は考える。

下谷甚兵衛棚の長屋では、おかみ連中が、遊びに行くのかい?気をつけて行くんだよなどと子供に注意していた。

そこにやって来た主水之介が、ちとものを尋ねるが、この中に秋月と申すものが…と聞くと、井戸の前で洗濯をしていた1人が立ち上がり、それがお気の毒なことに気が狂ってしまいましてねと言うので、何!気が狂ったと主水之介は驚く。

それはいつ頃のことか?と聞くと、あの~、4~5日くらい前でしょうかとおかみは答える。

(回想)夜になり、秋月という浪人(関根英二郎)は、急に刀を抜いて部屋を飛び出すと、あいつらだ!あいつらがわしを狙っている!江戸は火の海だ、恐ろしい陰謀だ、みんな殺されるぞ、みんな焼かれるぞなどと言いながら近所を彷徨き出す。

(回想明け)そんなわけで、秋月さんはとうとう気が狂ってしまいましてね、お役人様が来て、小石川の施薬院へ連れてってしまいましたとおかみは教える。

すると別のおかみが、外へは出ない人ですが、でも月の1日と10日と21日は、どこにいらっしゃるのか、夜遅く帰っていましたと言う。

「御公儀支配 小石川施薬院」に籠の列が入り、御老中酒井酒井美濃守様の御愛犬、お屋敷に御帰還の途中、御様子相変わり、御苦痛と拝察したにつき、御診察願いたいと御付きの侍が申し出たので、それはご心痛とご察し申し上げまする、どうぞこちらへ御成の程を…と係の侍が答えると、籠の中から取り出したのは、犬のチンの乗った座布団だった。

その犬が中に運ばれた直後、やって来たのが主水之介で、時期さん旗本早乙女主水之介、支配頭に所用があって参った、取り継がれたいと申し出ると、支配下氏らはただいま、酒井様のお愛犬をおしの様御発病のため、お取り込み中でございますと係の侍が答えたので、戯けたことじゃと呆れる。

獣を率いて人を食ましむるという言葉もあるが「生類憐れみの令」はこの頃ではまさに気違い沙汰じゃと主水之介が言うと、そのようなご政道向きのことをここで申されては?と係の侍は慌てるが、気の小さい奴よの~と主水之介は蔑む。

見聞に媚び諂う支配頭はどうでも良い、この院内に秋月と申する人物はひっ捕えておるだろう?案内致せと主水之介は命じる。

院内に入った主水之介は、そこに大量に病人が寝かされていることに気づき、驚きながらも、この者たちは身寄りがないと聞いておるが、それは?と案内した係の侍に聞く。

行き倒れや引き取り人のない病人どもを世話しておりますと案内人が答えたので、イジメじゃ、仲間の犬小屋には畳を敷き、具厚い褥もあると言うのに、ここは…医師をかけて遣わすべき病人がこの扱い…と主水之介は静かにに怒りを見せる。

街では吹き矢でスズメを撃ったと申して、子供とその父親が遠島…犬の喧嘩を止めずに見ていた町人は百叩きの上、江戸追放、今の人よりも犬畜生の方が大事にされる…、御政道の乱れは正さねばならんとと主水之介が指摘すると、案内して来た侍は苦い顔になる。

その時、火の海だ!江戸がみんな焼き殺される!と奇声が聞こえたので、座敷牢の方へ向かうと、そこの中に入れられていた男が、ああ黒い影!俺は知らん、何も知らん!などと近づいた主水之介に言い、許してくれ!ああ、火だ!火の海だ!と怯えるので、秋月!と主水之介は気づく。

不憫じゃの~、何かに怯えていると嘆いた主水之介は、楼内の飯台に置かれている団子と見た主水之介は、あの団子はここで与えたものか?と聞くと、家、あれは外寄りの差し入れでございますと案内の侍が言うので、差し入れ?と主水之介は不思議がる。

いずれのものが持参いたした?と聞くと、若い女でございます、なと住まいは控えてありますので調べてまいりますと案内の侍が言うので、待て!それはおそらく偽りの名であろうと主水之介は指摘する。

串団子は串に五つと決まっておるのを、あれは三つ、三つは江戸の名物言問団子!と主水之介は言う。

言問団子が名物の茶屋で、店からお世話様でしたと主人に挨拶して来た女がいたので、それじゃあ、気をつけてなと主人は労う。

はいと答えたその女佳代(桜町弘子)は、団子が入っているらしき風呂敷包みを手に店を出る。

そんな言問に渡り舟でやって来たのは主水之介で、ちょうど船着場にやって来たその佳代女とすれ違う。

茶店に着いた主水之介は、亭主、名物を所望すると声をかけたので、主人ははいはいと言いながら、お待ちどう様でしたと団子と茶を持ってくる。

亭主!と主水之介が呼びかけ、この障子の文字はなかなかの達筆じゃな、どなたの下げかな?と店の前に立てかけてある「名にし負はばいざ言問はむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと」と書かれた障子の文章を褒める。

主人は、それはうちにおりました茶汲み女に看板代わりに書かせましたもので、よく働く娘でしたが、今さっき、暇を取って出ていきましたと言うので、何?ではあの渡場での…と主水之介は、すれ違った女と気づくが、あの子が何か?と主人が聞くので、いや、その娘は昨日、ここの名物を持参して小石川の施薬院に参ったであろう?と主水之介が問いかけると、はいと主人は即答する。

月の1日、10日、21日には暇をもらって夜遅く帰ってきた…と主水之介がカマをかけると、はいと主人は言うので、受け人は誰じゃ?と聞くと、深川の門前仲町で両替屋をやっている山惣さんでございますと主人は答える。

何、山惣!と主水之介も驚く。

その頃、江戸では火事が起き、燃えていたのは、両替屋の山形屋惣兵衛、つまり山惣の店だった。

自身番の前に集まった野次馬連中が、火付だってよ、主人の惣兵衛さんが殺されたそうだ!などと噂しあっていた。

そこにやって来たのが主水之介で、自身番の中に入ると、これは那賀恵比寿の御前と童心が礼をして来たので、ちょっと山惣の死体をと所望すると、は、どうぞと同心は見せてくれる。

山惣の妻と娘と思しき女2人が泣いている中、床に置かれた死体にかけられたむしろを剥ぐと、胸を一突き、両刃の探検で刺して、下手人の手がかりは?と聞くと、はっ、この番頭の申し立てによりますと、奥座敷からの叫び声に駆けつけてみますと、主人が朱に染まって倒れ、部屋一面すでに火が燃え盛っていたそうでございますと童心が教える。

主水之介は番頭らしき男に、その方、言問団子の茶汲み女のことを知らんか?と尋ねると、家、一向に存じませんが…と番頭は答える。

その方の主人は、月の1日、10日、21日は夜遅いであろう?と聞くと、はい、歌詠の集まりがあるとか申しまして…と番頭は言う。

主水之介は死体の着物の襟を手探りし、何か隠してあるものを見つけると、その部分を小柄で切り裂いて中身を取り出す。

それを見た主水之介は、キリシタン!と驚く。

すると番頭は、キリシタンなどとは恐ろしい!私は何も存じません、関わりはございません!と怯え出す。

御前、ではキリシタン一味の仲間割れでございましょうか?とづしんが聞くので、稲葉様の殺害、同じ手立てで殺害された町人、黒覆面の徴用…、う~ん…、この謎は深いと主水之介は呟く。

その時、表から、これ、女、入ってはいかんと叱る見張り番の声が聞こえ、私は傷の御殿様に御用があるんですよと女が言うと、バカをいえ、お前のような奴を御前がご存知のはずがないと役人が言い返す声が聞こえてくる。

表では、私は傷の音の様に大事なことをお知らせしたいんですよ、ちょっとで良いんだからさとおさらばお由が、いかんと言ったらいかん!と言う見張と押し問答をしていた。

自身番の扉が開き主水之介が姿を見せると、あ、お殿様!とお由は喜ぶが、その方、甚兵衛棚から施薬院、言問とわしをつけておったな?と主水之介は言い当てる。

するとお由は、え!お殿様…、お背中まで目がおありなんでございますか?と驚く。

人につけられると、眉間の傷がうずうず致すのじゃと主水之介は明かす。

まあ怖いお殿様、私は心を改めて何かお役に立てばと…とお由が言い訳するので、笑った主水之介は、塩らしいことを申すやつと返す。

その時、自身番の周囲に集まった野次馬の1人に様子のおかしい男がいたので主水之介は注目するが、お由が近づいてきた、あの人です、さっきから様子がおかしいんで、これを抜いときましたと囁きかけ、財布を見せたので、心を改めてこの手並みかと主水之介は呆れる。

それでもその財布の中を改めると、うんすんカルタが出て来たので、スられた男も自分の財布だと気づき、慌ててその場から逃げ出す。

逃げていた男は、追って来たお由の目をくらますために身を隠し、お由が通り過ぎたところで逆方向へ戻ろうとするが、後から追ってきた主水之介に見つかり、戻ってきたお由と挟み撃ちになったと気づいたので、もはやこれまでと、何やら口に入れようとするが、その時、近くの五重塔から発射音が聞こえ、毒を飲みかけた男は撃たれて倒れてしまう。

驚いた主水之介は、死んだ男の手に握られていた黒い紙を広げてみると、「山:低き中に 天:近き処あり 月:三更に満つ」と白文字が書かれていた。

屋敷に戻った主水之介は京弥や菊路を前に、今までに手に入れた遺留品を前に、クロス、うんすんカルタ、山低き中に天近き処あり、三更に満つ…と考え込んでいたが、お殿様、これはキリシタン一味がどこぞに財宝を隠しているという謎ではございませんか?と、一緒に品を見ていた喜内が指摘する。

それを聞いた菊路が、まあ、爺の欲の深いこと…と揶揄うと、お嬢様、こう言うことは昔からよくあることでございますよ、山の洞窟、湖の底、絶海の湖東にこの金銀財宝がザクザクしております。これを探し出して世の貧しいものに恵んでやる、う~ん、気持ちの良いことでございますなと喜内は言う。

お殿様、これはキリシタンの者共の密会の場所、その時刻を記したものではございませんかと京弥が指摘する。

う~んと主水之介が考え込むと、山低きところは谷、谷の中はすなわち谷中、天近き処は…と京弥が呟くと、天近き処、五重塔!月満鶴は集まる処、三個…、すなわち子の刻、谷中!五重塔!子の黒刻に集まる!と主水之介は謎を解いてみせる。

子の刻を知らせる鐘が鳴る中、谷中の五重塔に集まったものは、窓の桟からうんすんカルタを中に入れて、内部の仲間に確認させ、中に入っていた。

塔の一室に集まったキリシタンたちに、今夜急にお集まりを願ったのは、この方を皆さんにお引き合わせしたかったからでございますと代表者浅倉三左衛門(柳永二郎)が説明する。

拙者は大井伝八郎、ローマ法王庁より派遣されましたフランシスコ・ピエトロ氏の下で布教に当たっているものです、この度密命を帯びて江戸へ出てまいりましたと、新参の男(山形勲)は自己紹介する。

しかし本日はせっかくのお集まりながら、早々にお引き取り願わねばなりませんと三左衛門が言うので、それはまた異なことと、何故でございますか?クルスを首から下げた参加者から声が上がる。

永井弥七郎とのが深川八幡の境内で撃ち殺され、回状を奪われたのですと三左衛門は答える。

驚いた参加者たちだったが、しかしあの謎の文をまさか解くとは…と1人が言い返すと、いや、奪ったものが江戸で評判の向こう傷、すでに甚兵衛棚、施薬院、言問と探索を進めて、月の集まりもかぎつけているとか、娘佳代の言葉でございますと三左衛門は教える。

その佳代も、その集会に参加しており、誠、油断はなりませんとその場にいた仲間たちに伝える。

そのような奴は非情の手段に訴えるべきだ!こっちの仲間はもう幾人もやられているんですからね!と参加者たちは騒ぎ出す。

千々逡巡は禁物です、これよりすぐさまそやつの屋敷を遅い、血祭りに致した方が良いと大井伝八郎が提案した時、上の階から当の主水之介が降りてくる。

あ、傷が!と参加者たちが驚いたので、さよう、天下御免の向こう傷、そちらから出向くとはない、宗徒の集まりにしては殺気が強すぎるの、傷がむずむず泣いて参ったわ…と言う主水之介に、参加者たちが斬りびかかる。

それを扇子でいなした主水之介は、階段の後ろから降りてきた京弥に、今夜は篠田竹雲先生直伝の秘伝の舞を見せてとらすぞ、とくと拝見いたせと声をかけ、斬りかかってくる宗徒たち相手に暴れ始める。

そんな主水之介の様子を大井伝八郎は冷静に観察していた。

しかし、やめい!引かぬか!何卒、何卒お許しを!と三左衛門が土下座して止めに入る。

ひたいに冴える三日月の舞の前に堪りかねたと申すか?と主水之介が問うと、はい、恐れ入りましてございます三左衛門は床に頭を擦り付けて詫びる。

その方共、夜陰にかかる場所の集まり、何を企むぞ?と主水之介が聞くと、企むなどとは誠に心外、私どもはただ心からキリシタンを信じ、平穏な暮らしを願うものにございますと三左衛門は答える。

戯けを申せ!平穏を願うものが何故黒覆面を装い、御府内を荒らすのじゃ!と主水之介が追求すると、佳代が前に進み出て、畏れながら申し上げますと平伏したので、何じゃ?と主水之介が聞くと、黒覆面が私どもでございましたならば、宗徒に累を及ぼすようなクルスを殊更残してまいりましょうか?と問いかける。

人を殺め、金を奪い、府城下の家に火を放つ…、神を信じ、神に仕える者にそのような酷いことができましょうか?と佳代は訴える。

それを聞いた主水之介は、あっぱれな申し開きじゃと佳代を褒める。

稲葉殿を殺害したものとその方共の仲間を殺めたのは同一人であろうと主水之介は推測する。

何者か、キリシタン宗徒を貶めようとする奴の為せる技であろうと主水之介は続ける。

御賢察、嬉しゅうございますと三左衛門は泣き出すが、大井伝八郎は冷めた表情のままだった。

殿、お願いでございます、我ら哀れなキリシタン宗徒のために、何卒お力を…と三左衛門は願い出るが、その時、突然の銃声と共に、三左衛門が首を抑えて倒れ伏す。

夜の闇に紛れ、五重塔の側の木から、綱を使って舞い降りる曲者の姿があった。

京弥と主水之介たちはそれを確認するが、すでに賊は立ち去る。

室内では撃たれた三左衛門を解放しようと、宗徒たちが、朝倉殿!と呼びかけていたので、しっかり致せ!と主水之介も駆け寄るが、何卒宗門のためにお力を…、お力を!と、瀕死の三左衛門が頼んで、そのまま息絶えたので、佳代は泣き出すが、そんな中、立ち上がって大井伝八郎の方を凝視した主水之介は、早乙女主水之介、直参旗本の名に賭けて、この謎きっと解いてみしょうぞと約束する。

翌日、清国の曲戯団の舞学口の外では、せむし男(国一太郎)が何かを手に持って喜んでいた。

そこに清国人に扮した大井伝八郎がやってきたので、せむし男はテントの中の部屋に案内すると、大井はそこで服を着替え始め、印籠を机の引き出しの中にしまい込んでいた。

そんな様子を、大井をつけて来たお由が、簾の隙間から覗き込んでいた。

テント小屋の中では金輪を使った手品を披露していた。

楽屋では、大井が変装用の口髭も取って酒を飲んでいた。

続いて舞台に登場した王宗江は、タージャン、タージャン、私、日本友達、皆々友達、私、清国手品やる、みんな見る宜しいなどと口上を述べていた。

客席には京弥と主水之介も座って見ていた。

何にもない壺、何にもしてないと言いながら、王が小さな壺の中を客席に見せる。

そのツボに蓋をし、綺麗な壺から何出そう?何出る?と王は言いながら、その蓋のついた壺をそばのテーブルの上に乗せ、扇で壺の蓋を軽く叩いて開けると、中から白鳩が出て来て飛び出したので、王がえい!と飛び出した鳩に気合をかけると、急に鳩は落下して来て下にいた道化役が捕まえ、あいや~、この鳩は気合いで死んだ、とほほ~、可愛いそうな~と客席に向かって泣く真似をしながら言う。

可哀想な~と言いながら座員に鳩を手渡すと舞台中央ステージに飛び乗った道化役は、この箱な、何も入ってないよ、わかるか?この別嬪さんをこの箱に入れるよと、大きな箱の蓋を開けて中を確認させた後、清国の衣装を着た娘呉翠玉(佐久間良子)を紹介する。

その横に大きな矛を持って控えていた王が、私、この鉾で刺す!と言うと、大きな箱の穴の部分に刺して見せる。

あいや~、あの別嬪さん、死んでしまうな、赤い血出るな、あいや~と道化役が客席に大袈裟に泣く真似をしながら呼びかけ他ので、客席には笑いが起きる。

ステージ上では、翠玉が階段セットを登って大きな箱の中に入り、王が、私、気合いであの薬玉割る、これ清国自慢、一番自慢、剣刺し、カイハオ、クーニャンと言うと、

主水之介は、薬玉を割るときの構えをよく見ておるのじゃ、良いか?と隣の席の京弥に告げる。

心臓押さえて見るよろしと王は客席に呼びかけ、イーアルサンスー!と言いながら合掌のポーズを取り、右手を差し出す。

すると薬玉が割れ、龍と三つ葉葵が描かれた旗が中から垂れ下がる。

すると場内が暗くなり、奥から大勢の娘の踊り子たちがステージの周囲を取り囲み歌い踊り出す。

明かりが当たっていたステージ部分の箱の中に、翠玉が笑顔でしゃがみ、上から蓋が閉められる。

主水之介は京弥に目で合図をし、京弥は席を立って何かを調べに行く。

舞台上では、王が箱の蓋の鍵を閉めるが、奈落では、箱の底面と床面を開いて、翠玉が下に脱出する準備をしていた。

舞台上では、王が大きな箱に鉾を何本も突き刺していた。

京弥は割れた薬玉の間近まで来て周囲を観察していた。

席に戻ってきた京矢は薬玉の下で拾った小型手裏剣を見せると、主水之介は他の殺害事件の現場で拾ったものと同じであることに気づく。

舞台では道化役が、ハオ、クウニャン、ハオ?娘、天国に帰ろうか、うまくいったならならば、褒め褒めの言葉たくさんたくさん頼むねと客席に投げかけ、またテント内が明るくなり、演奏と踊りが始まる。

箱から矛が抜かれ、鍵を開けて蓋が開けられると、翠玉が一座のスター~♩と歌を歌いながら中から姿を見せる。

客席から拍手が起きる中、テント内に入ってきたのはお由だった。

道化役の尻から煙が出始めたので、客席から笑いが起きる。

主水之介は隣の席に来たお由にも謎の手裏剣を見せていたが、道化役がすぐそばに近づいてきたので、慌てて手裏剣を懐に隠す。

出し物が全て終わり、客が全員で払ったテントの中に再び戻ってきた主水之介と京弥、お由の3人だったが、天井近くの梁からその様子を監視していたせむし男がいた。

そのせむし男が投げた短剣を、間一髪避けた主水之介が振り向くと、せむし男は慌てて逃げだす。

主水之介は床に刺さった短剣を抜くと、京弥見い、これは両刃じゃ、山惣の胸を一突きにしたのも両刃の短剣!と指摘する。

その時、どこからともなく、ねんねん~と子守唄がテントの外から聞こえてくる。

外に出てみると、二胡を弾きながら歌っていたのは翠玉だった。

翠玉は、舞学口から外に出た主水之介らが自分を見ていることに気づくと恥じらって立ち上がると背を向ける。

どうしたのじゃ?江戸の子守り唄は清国人のそなたにももの悲しいものか?と主水之介が問いかけると、はいと翠玉が答えると、其方の両親は国で帰りを待っているであろうと主水之介は聞く。

すると私は両親の顔を存じませんと翠玉は言うので、戸惑った主水之介は、そなたは日本の言葉が巧みじゃ、誠の清国人か?と問いかけ、お由も、娘さん、キズのお殿様には嘘を申してはダメですよ、なんでもお見通しなんだからと言葉を添える。

京弥も、何がそのように悲しいのです?と聞くと、振り返った翠玉は、私は日本人でございますと打ち明ける。

今度日本に行くと言うので、矢も盾もたまらずついて参りました、でも両親の顔さえ知らない私は、探しようもございません、お母さんの背中で聞き覚えた子守唄…、それしか覚えておりませんと翠玉が言うので、それは其方の両親も同じこと、どのように探しておられることか…、心を強くして時の来るのを待つのじゃ、主水之介、力になろうぞと励ます。

そこに近づいてきた役人が、主水之介らをあやしみ、こりゃ、何者だ!と聞いてくるが、これは早乙女の御前!と気づいて頭を下げると、この夜分にいかなる所用にてこの場所に?と役人は聞いてくる。

退屈の虫が夜泣きしおったのでの~、してその方どもは誰の訴えでここに参ったのじゃ?と主水之介が聞くと、我らは御老中様の下知にてこの曲戯団を警務いたしております、不定な輩が徘徊する折から、曲戯団に間違いがあってはならんと…と役人は答えたので、老中とは酒井美濃守か?と主水之介は聞くと、あ、左様にございますと役人は答える。

それを聞いた主水之介は、いよいよ匂ってきたの~と呟き、その場から立ち去ろうとするが、そんな主水之介たちを待ち受けていた黒頭巾の一団が主水之介ら3人を取り囲む。

主水之介は、ほお…、今夜は野党の黒覆面とは違う、いずれの家中じゃ?と問いかけるが返事はない。

しかし、1人木の陰に隠れていた素顔の侍に気づいた主水之介は、貴様、施薬院に来ておった犬の番人!と思い出す。

その侍は正体がバレたと気づいた途端、斬れ!斬るのだ!と黒頭巾たちに命じる。

主水之介は、酒井の家中か!と声をかける。

翌日、酒井家の屋敷に籠の一行が到着し、太刀持ち役の京弥が、出迎えの家臣に、直参旗本早乙女主水之介、天下の一大事に罷り越し申し、酒井殿にさよう取り継がれいと告げる。

その頃、酒井美濃守は、で、小判を払開するとして公儀の御用金はいかほど増すのじゃ?と屋敷を訪ねていた後藤広三郎(香川良介)に聞いていた。

はい、千5~6百万両にはなると存じますと後藤は答える。

同席していた隆光は、ほお、金座を預かる後藤としては答えられんのう、分一としても、15~6万輌は其方の手元に残ると揶揄うので、いやいや、小判に混ぜ物をいたします故、諸費用が嵩み、なかなか思う通り手元には残りません、これで軍用金も整い、御老中様の御企ても十中八九成就したも同様で…と後藤は答える。

美濃守は嬉しそうに、これこれと後藤を嗜めていた時、申し上げますと家人が来たので、なんだ?と聞くと、早乙女主水之介様天下の一大事と申し、お越しにございますと家人は伝える。

何?早乙女が参った?会わんと申せと美濃守は答える。

家人を通してそれを聞いた主水之介は、たわけめ!直参旗本1200石、格式通りの供揃えで罷り越したのじゃ、天下御免の向こう傷で通って参るぞ!と家人を叱ると、京弥から刀を受け取りずかずかと屋敷内に入る。

勝手に上がり込んだ主水之介に対座した美濃守は、天下の一大事などと人騒がせなことを申しよってと叱るが、御公儀御執政の酒井殿が天下騒乱の兆しに心づかれるとはいかがなる次第なるや!直参旗本の名にかけて質問致すと主水之介は迫る。

戯けたことを…、この太平の御代に天下騒乱の兆しなど愚かなことを申すなと美濃守は答える。

主水之介は、ご存じないとは笑止、江戸死中には毎夜キリシタンを名乗る怪盗が出没し、斬り盗り、火付、婦女誘拐と凶悪を欲しいままに致し、かつ生類憐れみはかつてなき愚劣過酷なものとして怨嗟の声高く、また区政の逼迫は庶民を困窮に陥れている!これ全て幕閣にあって御政道に携わるものの失態!と追求したので、その方、何を申す!と美濃守は気色ばむ。

諸々の悪の根源は深いところになる、黒覆面の悪辣な所業はキリシタンの名を騙ってなされておるが、実はキリシタン宗徒にあらずと主水之介が指摘すると、その方はキリシタンに加担致すのか!と美濃守は逆に聞いてくる。

それが市の探索によれば曲戯団こそ数々の不審あり、公儀においては厳しく詮議を致さねばならぬはず、それをかえって妨げるものあり、例えば、犬係の用人に命じて闇討ちを仕掛け…と主水之介が指摘すると、黙れ!御政道を云々するにおいては、直参旗本とても容赦はせんぞ!と美濃守は逆上する。

それに対し、控えおろう!東証権現様の御遺訓にもある通り、その方共旗本はロク少なきとはいえども、心格式自ら癒しをするべからず、すなわち時期さんが徳川旗本の重責なれば、子々孫々に至るまで将軍家お手足と心うべき…、早乙女主水之介、この天下御免の向こう傷を持って天下御政道を乱す輩から、心ゆくまで打ち懲らしますぞと主水之介は言い放つ。

激怒した美濃守は、無礼者!早々に立ち去れ!と命じる。

王臣、長に遣われれば国に長の政あり…、そう腹を立てられるのがおかしゅうござるな~と主水之介は言い、少し笑って、御免!と言って立ち上がる。

帰り際、主水之介は、庄司を締め切った別室の前で一瞬泊まり、そのまま通り過ぎるが、その部屋から後藤と共に出てきた隆光は、曲戯団に目をつけるとは…、油断がなりませんなと近づいてきた美濃守に話しかける。

「告 1.足の速き者

 1.足の速き者

 1.人の噂に耳早き者

 1.人のアラ探しを得てとする者

 1.鼻の利く者

 1.その他心意気にいさむ者

 右の條々に當る者老若男女を問わず余が邸へ参らば金子1両を遣わす者也

本所長割下水 傷の旗本 早乙女主水之介」と書かれた何枚もの高札を菊路が読むと、これでさぞや亡者どもがたくさん参ろうぞと、文字を書いた主水之介は愉快そうに言う。

これはまた、なんと致したことですかな?と喜内が聞くと、喜内、これなる立札、早々に目抜きの場所に立てさせいと主水之介は命じる。

私めにはもう何が何やらさっぱりわかりません、もう…と喜内は呆れ果てると、うん、その方に分からんでも良いと主水之介は言う。

早速目抜きの場所に立てられたこの札を目にした町民どもは驚き集まる。

その中には加代の姿もあった。

早速、主水之介の屋敷には長蛇の列が並び、へへへ、あっしは素ッ飛びの又八(トニー谷)と言いましてね、30里は一日ですっ飛んじまいますよ、これがちょっといっぺん景気付けに、キリキンコンカンっと引っ掛けやすとねえ、50里なんざ朝飯前で、さっと吹っ飛んじゃう、へい…などと足の速さを申告する。

すると、聞いていた主水之介は、頼もしき嘘をつく奴じゃ、気に入ったぞ、金子1両遣わす、喜内!と命じたので、又八は大喜び。

喜内は、正真正銘の小判じゃぞ、1年働いてもお前たちには拝めん大金じゃ、あれにて控えてろと言い、又八に小判を手渡す。

続いて挨拶してきたのは、あっしは厠の権三(渡辺篤)、あっしは助十(内海突破)で、どう言うもんか、あっしたち生まれつきはウサギの耳で、ええ、人の噂ときたら大江戸八百八町隅から隅まで、どこかでカミさんがよろめいているとか、どこの誰から金をいくら借りたとか、何から何まで森羅万象を聞き逃したことはございませんなどと自己紹介する。

その耳買って取らすと主水之介は答え他ので、へい、毎度ありがとうございますと2人は頭を下げ小判をもらいに行く。

続いて、主水之介の前にかしこまった老女は、私は厭がらせのお杉ババア(武智豊子)と言われてましてね、人の粗探しは江戸随一と異名を取り、それにおしゃべりときたら瓦版売りも逃げ出すと言うなどと自己紹介すると、うん、気に入った、それへと待機の椅子を主水之介が指し示す。

次は男の子(宮崎照男)で、御殿さん、俺は戌年生まれなんだよ、花がピックぴくしてなんでもわかるんだよ、あの小判のおじさんは今朝お饅頭をつまみ食いしたよ、俺にはよくわかるんだと喜内のことを指すので、これはバカなことをもうすもんでは…と言いながら機内が近づくが、口のあんこを拭いたので、ね、御殿さん、そのものズバリだろう?オイラには鼻利き小僧ってあだ名があるんだと自慢したので、その鼻、大事にいたせと主水之介は許可する。

その直後、喜内が並んだ列の中に、先日、曲偽団のテントのそばの雑踏でぶつかって、コマもの袋を拾ってやった女性に気付きデレデレし出す。

お前は何が得意じゃな?と機内の方からその女に近づき聞いたんで、女は急に扇子を開いて舞ってみせたので、踊りか、名は何と申す?と喜内が聞くと、女は言葉が喋れないようだったので、機内は諦めで小判の元へ戻る。

主水之介の前では、あっしはご覧のように刺青者で、押しがり強請、忍びに押し込み、すりかっぱらいと指折りながら罪状を明かし、天下無宿の石川屋五郎衛門(上田吉二郎)というケチな野郎でございますと笑って頭を下げる。

石川屋五郎衛門?紛らわしい名じゃな、不敵な面構え、愛い奴じゃと主水之介が許可したので、へえ、ありがとうございましたと石川屋五郎衛門は礼を言う。

続いて登場したのはお由で、お殿様、私は心に勇むものでございます、どうぞお仲間に入れてくださいませ、あ、お金なんかはいりませんよと言い、勝手に控えの場所に向かう。

続いて登場したのは、加代とキリシタンの宗徒たちだったので、ああ、そなたは!と主水之介は驚く。

加代は、はい、私たちにもお手伝いを申し付けくださいと言うと、他の宗徒たちもお願いしますと地面に頭を下げて願い出る。

阿修羅を正に建つべし、気風の志は奪うべからず、良くぞ参ったと主水之介は称賛する。

そこへ菊路がやってきて、お兄様、お城より御城主のお着きにござりますと伝え他ので、何?御城主!と主水之介は驚く。

平伏して出迎えた主水之介を前に大久保将監は、その方儀、身分柄も弁えず、御禁制のキリシタンと語らい、御聖堂を誹謗する段、重々不届の至り、よって閉門仰せ付けるものなりと書状を呼び上げる。

隣室でそれを密かに聞いていた京弥、菊路、喜内らも顔を見合わせる。

かくして早乙女主水之介の家は閉門され、役人たちが入り口を監視すことになる。

お殿様、これはいかがいたしたことでございましょうと、座敷に引き篭もった主水之介に、京弥が問いただすと、上様の仰せとは思われん、酒井忠勝、閉門致せば主水之介が動けぬと思うは笑止じゃ、策をめぐらし自ら正体を表す、ずんと面白うなってまいったぞと主水之介は微笑み、喜内、すぐさま亡者どもを呼び集めいと命じる。

これにはさしもの喜内も、お殿様、閉門中にあのような者どもを屋敷内に呼び入れましては、御公儀への聞こえもございますし…と言い返す。

しかし主水之介は、心配致すな、亡者どもは一癖も二癖もある輩じゃ、見張りに気づかれぬように潜って参るわと答える。

その言葉通り、夜半、見張りの目を盗んで、石川屋五郎衛門や鼻利き小僧、又八らは、闇の紛れて早乙女の屋敷内に忍び込む。

主水之介の部屋にはすでにほとんどの仲間はすでに集まっており、遅くなりましたと主水之介らは恐縮して座に加わる。

主水之介は、目指すは曲戯団と唐人屋敷じゃ、その者たちの得手を生かして何なりと拾って参れ、褒美は一両増しじゃと指示したので、権三や助十やお杉らも、俺たちはついてるねえと喜ぶ。

曲戯団のテント小屋の裏手から出てきた王や大井伝八郎と名乗っていた清国人に、野次馬に紛れていた又八や権左、助十らが慣れなりしく話しかける。

ねえ大人、髭の旦那、日本娘いかがざんす?、旅の恥はかきすて、恥ずかしいないよ、国の土産、日本娘、いかがざんす?などと勧める。

ええ、まずは吉原の大間垣、え~、松の位の太夫色、月八文字の花魁京成、え~、粋で良いのが深川芸者ね、賛助泥棒に月でがっぽり鯛女、がっと下がって、夜鷹に比丘尼、地獄に蹴っ転ばし!などと会話のきっかけを探そうとするが、せむし男が通路を作って清国人たちを去らせたので、ちょっと旦那!などと3人は虚しく呼びかけるしかなかったんで、おいらは全くついてねえな~と3人揃って腕組みをする。

その夜、唐人屋敷に来たのは酒井美濃守、隆光、後藤広三郎の3人で、王によって秘密の扉から隠し部屋に招かれる。

待たせたのと美濃守が、出迎えた頭巾姿の男に言うと、本日、流絵での御協議、いかが相成りました?と覆面男が聞いてくる。

上々の首尾じゃ、明後日、辰の刻に江戸城御出門と確定したぞと美濃守が教える。

貴国の曲戯団御上覧は今まで前例のないこと、酒井様の御進言によってじゃと隆光が言葉を添える。

いよいよ時節到来と後藤が言い、変を犯すにはこの時より他はない、将軍を支持したまい、一挙に天下を手中に収めるのじゃと美濃守は覆面男に伝える。

手筈は万端整っております、恨み重なる徳川一族を倒すは我らの真願と覆面男は答える。

覆面男は美濃森たちを座敷牢に案内すると、中に捉えられていた大量の娘たちを、この者たちは船でマカオに送り、武器弾薬と交換致しますと説明する。

日本の女は向こうでは大変喜ばれると聞いているが、手もつけずに売り渡すのはちょっと惜しいような気がしますなと隆光が嘯く。

いかがでございます、お一人?と勧められた隆光は、愚僧は仏に仕える身じゃと答えたので、こやつ、その手で大奥を丸めておるのじゃな?と美濃守は揶揄う。

そんな唐人屋敷に忍び込んだ石川屋五郎衛門は、腰元として忍び込んでいた加代が料理を運ぶ途中、庭に投げ捨てた文を拾い上げる。

中を読みかけると、鼻利き小僧も先に忍び込んでおり、暗がりから近づいてきたので、脅かすんじゃないよと叱って文を読み始める。

おじさん、この奥の地下牢に女の人がたくさん入れられているよと鼻利き小僧は教える。

そいつは手柄だと答えた五郎衛門は、この鼻で探してきたんだよ、鼻効きの名も嘘じゃないだろう?と自慢する鼻利き小僧に、馬鹿野郎、こんなとこで呑気に自慢するんじゃねえと叱ると、そこに見張りのものが近づいてきたので、2人は縁の下に潜り込んで隠れる。

その後、五郎衛門から「将軍家 御上覧 明後日 辰の刻 加」と書かれた投げ文を届けられた主水之介は、京弥、今夜は留守番じゃ、あまり連れて歩くと菊路に恨まれるでの~と笑って告げる。

まあ!と菊路は恥じらい、お殿様、どっかお出かけでございますか?と聞く機内に、ちと夜風に当たって参ろうと言い残し、主水之介は出かけようとするので、とんでもない、閉門破りはお家断絶です、身は切腹でございますと喜内は必死に留めようとする。

心配致すなと主水之介は言うが、心配致します、出ると申されても裏もおこても役人が厳重に見張っておりますと喜内は説得しようとするが、それが出られるのだ…と主水之介は笑って答える。

お由と又八に幕張を命じてあると主水之介は言う。

そのお由と又八は、見張りの役人たちに、もう一杯行きましょう、あっち行って飲みましょうよなどと酒を飲ませていた。

またはちらが役人の目を逸らせている間、五郎衛門と鼻利き小僧に案内され、主水之介は小門から外に忍び出る。

一方、封鎖された早乙女家の表門を警護していた役人は、覆面の一団が接近してきたので、何者だ!と呼びかけると、先頭にいた覆面男が、これをと書状を役人に店う。

その書状の裏には酒井美濃守の名があったので、役人たちはどうぞと覆面の一団を屋敷の中に招き入れてしまう。

屋敷の中では、お由や又八が、菊路や機内と茶菓子を楽しんでいたが、京弥が侵入者の気配を感じる。

外の様子を見た京弥は、覆面の一頭と戦い始めるが、それに気づいた又八は、お由から急かされ、夫、合点承知!と言いながら救援を頼みに飛び出してゆく。

しかし、そんな中、敵の首領は菊路に麻酔薬の染み込んだ布を嗅がせ、拉致してしまう。

それに気づいた喜内が、京弥様!菊路様が!と急を知らせるが、京弥1人の力ではどうすることもできなかった。

その頃、唐人屋敷にやって来た主水之介は、加代の手引きで、五郎衛門と鼻利き小僧を引き連れ屋敷内に侵入する。

しかしカヨに導かれ、座敷牢のところに来た主水之介たちは、すでに捉えられていた娘たちが1人もいなくなっていたことに気づく。

牢の横の川には小舟に乗った警護の侍がおり、主水之介に気づいたぁれらは、貴様!と言いながら降り立って斬り掛かってくる。

その1人を捕まえた主水之介は、女どもはいかが致したのだ?と聞くが、背者は知らぬ!と言うので、その方が知らぬはずがない、白状いたせ!と主水之介は迫る。

相手は、船!と言うので、船?どこの船だ?と主水之介が聞くと、品川沖というので、何!品川沖!と驚いた時、他の警護の侍に見つかってしまう。

取り囲まれた主水之介は、五郎衛門!加代殿と小僧を連れてそこの小船で逃げい!と命じる。

お殿様、あっしがお手伝いをいたしますとドスを手にした五郎衛門が申し出るが、良いから先に行け!と五郎衛門は叱りつける。

頷いた五郎衛門は、小僧と加代を連れて小舟で逃げ出す。

生兵法を致すと大切な命を落とさねばならんぞと主水之介は警護の侍たちに忠告する。

それでも相手がかかって来たので、良く良く斬ってもらいたいと見えるというと、主水之介は抜刀し相手になる。

早乙女家の屋敷内では、菊路を抱えて逃げようとする黒頭巾の一団を京弥が孤軍奮闘戦っていた。

素ッ飛びの又八は、大変だ!大変だ!と叫びながら、途中、按摩とぶつかりながらも夜道を直走る。

唐人屋敷では、主水之介が1人戦っていた。

そこに駆け込んだ又八は、お殿様、一大事だよ、お屋敷に黒覆面がバーッと来ちゃった!と報告すると、しまった!と主水之介は叫ぶ。

菊路は黒頭巾の一段によって川の船に乗せられようとしていたので、菊路様!と京弥が駆けつけ賊と斬り合う。

船に乗り込んだ首領が短筒を構えていることに気づいた京弥は、木の影に身を隠すしかなく、その間に黒頭巾の一団は全員二隻の船に乗り込んでしまう。

そこに加代と小僧を乗せ、五郎衛門が漕ぐ小舟が接近して来他ので、それに気づいた京弥は喜んで駆け寄る。

黒覆面の一団は品川沖の南蛮船に乗り換える。

菊路が連れ込まれたその船底には唐人館の座敷牢に入っていた大勢の娘たちが連れ込まれていた。

その南蛮船に、京弥と五郎衛門が乗り込んでいた。

甲板に潜んでいたところを清国人に気づかれ、京弥と斬り合いになる。

黒頭巾の連中も斬り合いに加わるが、京弥は菊路さんを探せと五郎衛門に命じる。

そんな京弥を、檣の上から短筒で狙うせむし男がいたが、京弥は気づいていなかった。

その時、せむし男が捕まっていた綱が突然切れ、せむし男は甲板位落下して果てる。

その時、京弥!と呼びかけたのはいつの間にか南蛮船に乗り込んでいた又八と主水之介だった。

京弥は、お殿様!と感激する。

へへ、傷の御前のお出ましとなりゃ、こちとら千人力、万人力でい!と又八は見栄を切る。

黒頭巾一味を斬っていた主水之介は、黒頭巾の首領と対峙するが、その時、辰の刻を知らせる鐘が聞こえて来たので、主水之介は、辰の刻じゃ!と驚く。

江戸城から将軍を乗せた駕籠が出発する。

敵の首領の覆面男と斬り合った主水之介は、相手の覆面を切り裂くと、現れた素顔を見て、あ、大井伝八郎!と見抜く。

船底に逃げ込んだ大井を見て、京弥に追え!と命じる主水之介

しかし大井は、娘たちのいる船底まで降りると、格子戸を内側から閉めてしまう。

甲板上では主水之介、一つ下の層では京弥が戦い続ける。

大井伝八郎と黒覆面一味は、菊路を連れてまた船底の秘密の扉から、会場の小舟に気を失ったままの菊路を移し替えていた。

船底に降りた京弥は、娘たちに菊路は?と聞くと、連れて行かれた!と知り、上に戻りかけるが、部屋の隅で気絶していた五郎衛門に気付き、近づいて喝を入れて息を吹き返らせる。

甲板に登ってきた京弥が、菊路様がどこにも見当たりませんと主水之介に報告すると、ちょうど船酔いで苦しみ海の方で吐きかけていた又八が、海上を指差す。

主水之介は、何!と驚く。

その頃、将軍の駕籠の列は、清国曲戯団のテント会場に到着していた。

一刻を争う、行け!と主水之介が命じると、へえ、あっしのすっ飛びはね、丘の上だけじゃないんですよ、海の上だってねと言いながら、着物を脱いだ又八が海に飛び込もうとすると、自慢は後にして、馬を忘れるでないぞと主水之介は命じ、くしゃみをした又八の背中を押したので、又八はあっと言いながら海に落ちる。

テント小屋の2階の特等席には将軍綱吉(徳大寺伸)が座り、その様子を少し離れた二階席の酒井美濃守、隆光、後藤広三郎の3人が見守っていた。

ステージでは、玉乗りの芸を披露していた。

大井田八郎と王は、まだ眠っている菊路をテント小屋の楽屋に連れ込んでいた。

海岸に泳ぎ着いた又八が、お殿様~!お殿様~!早く!馬の用意がしてありますぜ!と小船で戻ってきた主水之介を呼んでいた。

曲戯団のステージでは歌手の歌が始まっていた。

楽屋では、王から着付けの薬を飲まされた菊路が目を覚ましていた。

そこに近づいた翠玉に、翠玉、この娘にそなたの服を着せろと大井が命じる。

どうなされます?と翠玉が聞くと、その箱に入れて刺し殺すんだと大井はあっさり言ってのけたので、翠玉は驚く。

将軍を亡き者にし、我らが願望成就の宴に祝いの花として捧げるのじゃと大井は言う。

その頃、品川の浜から、主水之介と京弥は二頭の馬に乗ってテント小屋に向けて疾走していた。

ステージではハシゴ乗り芸を披露していた。

奈落の箱の下部分には曲戯団の見張りがおり、そこにやってきた翠玉が何してるの?と笑顔で聞くと、行けない、今日は大人命令、誰も来る行けない、この鍵開けない、日本の娘さん本当に殺す、本当に死にますと見張りの男は言う。

楽屋では、菊路が清国の服に着替えさせられていた。

馬を走らせる主水之介と京弥

ステージでは曲芸が続いていたが、いよいよ次の曲芸で…と、隆光が美濃もりに囁きかけていた。

何とか菊路を助けようと焦る翠玉

菊路は楽屋で猿轡をされていた。

失踪する主水之介の馬

ステージ前では、清国自慢の剣刺し~!御小覧に乗じます~と道化師の口上が始まる。

そこに連れてこられた菊路は、口が塞がれているため助けを呼べず、道化役と王が無理やり両脇から菊路の頭を下げさせる。

二階席の美濃守と隆光は互いに顔を見合いほくそ笑む。

将軍綱吉は、訳もわからず見物していた。

照明が落ちた中、綱吉の部屋の隅のカーテンから手が伸び、上様、これをと言う声と書状を持った手が伸びて来たので、綱吉はそれを受け取る。

王が大きな矛を持って披露する。

ステージの周りは踊り子たちが踊っている。

王は一旦矛を鼻の穴に半分通し様子を見るが、道化役が首を横に振ったので、一旦矛を収める。

中にいた菊路は迫り来る鉾の刃の先端に身を引くが、ひとまずホッとする。

舞台上では道化師役が矛を持って焦らしていたが、二階席の美濃守と隆光の方を伺いながら、刺すタイミングを見計らっていた。

道化師が綱吉の席を見ると、席の前面に薄い紗幕がかかっているので反射して外から内側ははっきり見えない。

美濃守が自分の顎を触って合図したので、道化役は持っていた矛を綱吉の席に向かって投げつけ、悲鳴のようなものが聞こえ、紗幕が崩れる。

美濃守が立ち上がり、将軍綱吉公はお隠れになった!徳川の御代は終わり、本日只今より、酒井忠勝、天下を掌握する!と宣言する。

客席を埋めていた徳川の配下たちは唖然とし、依存はないか?と美濃守が聞くと、依存はある!と言う声が将軍席から聞こえてくる。

何奴だ!と美濃守が誰何すると、暗い将軍席の横から、覆面を被った清国衣装を着た人物が薄明かりの中に姿を現し、酒井忠勝の天下に大いに依存がある!と答えたところでテント内が明るくなる。

何奴じゃ?面を取れ!名を名乗れ!と美濃守が命じると、覆面の人物は足元に転がっていた綱吉の衣装の人物の顔を転がして見せる。

あ、後藤!と美濃守は驚く。

それは猿轡をされた後藤広三郎だったからだ。

将軍席の面の男が高笑いを始めたので、舞台上の王と道化役が矛を投げつけるが、面の男は素早く避け、早替わりで衣装と面を外す。

それは早乙女主水之介だったので、美濃守と隆光は仰天する。

見たか酒井!天下御免の向こう傷、早乙女主水之介推参!と言うと、背後から故障姿になった加代も姿を現す。

おのれ、早乙女!と美濃守は悔しがる。

大逆無道の酒井忠勝、隆光!上様に代わって天誅を下す!と言い放った主水之介は、ステージ城で後ずさろうとした2人を睨みつけ、道化師張幻泉!実は黒覆面の首領!またの名はキリシタンの名を騙る大井伝八郎!何時こそは慶安4年謀反の企破れ自沈したした由比民部之助の一子由比道雪であろう!と主水之介は指摘する。

その時、王が薬玉を割る動作に入ったので、主水之介はすかさずその手に小柄を投げつける。

王は小柄が刺さった手を開き、大量の極小小柄をその場に落とす。

王宗江!行列の馬上より、稲葉越前守をその牙にて刺殺!道雪と共に清国酒井、隆光らと計って幕府乗っ取りを計りし大逆人、実の名は由比正雪の一族、由比大典!

由比道雪!今こそその道化の仮面、取り立てい!と主水之介が命じると、道化師はその場で仮面を脱ぎ捨てる。

衣装もかなぐり捨てたその正体は、紛れもなく大井伝八郎を名乗っていた男だった。

さすがは天下御免の向こう傷、良くぞ見破った、いかにも由比道雪、異国に逃れて会得した刺殺無双剣、汝が自慢の面上に勲章を刻んでくれる!と道雪は言い放つ。

我らが一族に敵する小癪な奴、まず手始めに、何時の妹菊路から血祭りにしてくれるわ!と言い、王こと大典が矛を手に取り、見ろ!と言いながら箱に矛を刺すが、手応えがないことに気づき驚く。

奈落の見張り役は気絶しており、床面と箱の底面はすでに開けられ、菊路は救出されていた。

箱の鍵を開けようとした大典は、主水之介が笑い出したので、計画が失敗したと気づき振り返る。

奇術箱にはカラクリがあることを忘れたか?人を計るものは計られるのじゃ、良く見い!と主水之介が指摘する。

大典が箱の鍵を開けると、中から出てきたのは京弥だった。

ステージに駆け寄った翠玉が、道雪様、おやめくださいと呼びかけるが、おのれ翠玉、裏切ったな!と道雪は睨みつける。

父や母の国で血を流すようなことは、お願いでございます、やめてくださいと翠玉は訴える。

言うな!裏切り者の制裁、分かっていよう?こうだ!と言った道雪は刀を抜いて翠玉の方を切ったので、驚いた主水之介がステージに駆けつけ、道雪、血迷ったな!哀れな身の上を知りながら、刃を変えるとは鬼畜の奴め!と叱る。

ほざくな!恨み重なる徳川一族、必ず倒すと答えた道雪は、出会え!と呼びかける。

するとテント小屋の背後から黒頭巾の一段んが現れ、さらに、将軍のお供で客席に座っていた家臣と思われた連中も抜刀して主水之介に向かってくる。

謀反に加味する愚か者、早乙女主水之介の破邪の一刀、容赦はせんぞと言うなり、主水之介は抜刀する。

たちまち主水之介と京弥と謀反の連中との斬り合いが始まる。

矛を振り翳す大典を主水之介が切り倒す。

テント小屋の表口から外に逃げようとした美濃守と隆光は、そこに将軍を守る護衛隊が待ち構えていたのを知る。

道雪と対峙する主水之介はジリジリと接近して行く。

飛びかかってきた道雪を一頭の元に斬り捨てる主水之介は、菊路と加代たちに抱かれていた翠玉にかけ寄り、翠玉!しっかり致すのじゃ!と呼びかける。

うっすら目を開けた翠玉は、ああ、御殿様、私は幸せでございました、お父様、お母様には巡り会えませんでしたが、夢にまで見た日本の国でお殿様のようなお優しい方に巡り会え、私…、幸せでございました…と言いながら息を引き取る。

翠玉!死んではならん!翠玉!翠玉!と呼びかける主水之介だったが、翠玉はもはや目を開けなかった。

舞楽口から逃げ出すとした美濃守と隆は、そこに喜内や又八、小僧らが、待て、逃げるか!と竹棒を持って迫ってきたので、慌ててテント小屋に舞い戻る。

しかし、逃げ道を京弥に阻まれ、翠玉を看取った主水之介が近づいてくる。

酒井忠勝!汝は由比道雪と結び、天下に謀反を企てる大悪人、隆光!汝もまた多くを惑わし、陰謀に与したる罪状、ことごとく判明致したぞ、尋常に縛につけ!と主水之介は言い渡す。

おのれ!と言いながら斬り掛かってきた美濃守を交わした主水之介は隆光を捕まえると、救われぬ亡者め!と言うなり、隆光の腹に拳を当てて気絶させると、美濃守を斬り捨てる。

その時、将軍綱吉が姿を見せたので、あ、上様!と驚いた主水之介は、主水之介、今日の働き、過分に思うぞと綱吉から言葉をかけられ、は、もったいなきお言葉と恐縮する。

今後共に天下御免の向こう傷にてただ式を守り、悪を撃ちこらせよと綱吉は命じる。

主水之介は、ははあと答える。

テント小屋の前に主水之介らが出ると、そこに集まった群衆を前に、俺が音頭を取るからなと又八が声をかける。

向こう傷の御前様!と又八が主水之介に呼びかけると、俺たちのお殿様!と権三が後を続け、よ~と又八が両手を広げ、群衆たちが揃って三三七拍子の手拍子をし、もう一つおまけ!と又八が叫ぶと、また手拍子が繰り広げられるのだった。


幻燈館

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