「なにはなくとも 全員集合!!」
松竹とナベプロが組んで始まった「ドリフ映画」の第一弾 とは言え、まだこの時点では、ドリフ中心で話や笑いが組み立てられているという印象ではなく、東宝の「社長シリーズ」や「駅前シリーズ」などで活躍していた三木のり平さんが主役で、ドリフは脇役風に登場しているように見える。
カトちゃんなどは、まだ顔にあどけない感じが残っている。
東宝風にあえてタイトルをつければ「駅前父娘」ではないだろうか。
とは言え、東宝喜劇より、やや人情噺にウエイトが置かれているのは松竹らしいとも言える。
ヒロイン役は二人いて、1人はナベプロの新人だった中尾ミエさん、三木のり平さんの娘役で登場するが、共に東宝のイメージが強いだけにちょっと意外性がある。
そのミエさんの恋人を演じるのが、若手時代の古今亭志ん朝師匠で、当時テレビでも売れっ子だった方である。
もう1人は松竹の新人だった中村晃子さんで、ちょうど「虹色の湖」で歌手として売れる同時期の映画でもある。
もう一人重要な役所は、水谷良重さん演じる飲み屋のママ、こちらはのり平さんの憧れの存在になっている。
そののり平さんが、劇中で「ゴジラ」などと発言しているように、怪獣ブームの作品でもあるので、劇中でのり平さんの息子役が「宇宙怪獣ギララ」のプラモデルを組み立てたりしているのが時代を感じさせる。
新東宝では二枚目として主役を張っていた名和宏さんも、この当時は立派な悪役として登場している。
「なにはなくても江戸むらさき」とか「アサヒスタイにー、アッ!」などというTVCMネタは、流石に当時を知らないと意味がわからないのではないかと思うが、この当時はまだ、笑いのシーンを作ろうと、アイデアがいくつも詰め込まれている感じはする。
それが今見て笑えるものになっているかは別だが…
【以下、ストーリー】
1967年、芸映プロ+松竹、田波靖男原作、石松愛弘脚色、渡辺祐介脚色+監督作品
松竹ロゴに、ハワイアンエレキ風の音楽が重なる。
「この映画は湯町草津を舞台とした架空の物語であり、実在のモデルはありません」のテロップ
「社訓 1.所員は忠節を尽すを本分とすべし 1.所員は武勇を尚ぶべし 1.所員は質素を旨とすべし 社長」と書かれた額縁が壁に貼ってある。
1つ!所員は忠節を尽すを本分とすべし!と所員が読み上げると、つまり我が西武バス草津営業所員である諸君は、上司であるわしのためなら、例え火の中水の中といえども命を惜しむなていうことである!次!と碇谷長吉(いかりや長介)が解説する。
1つ!所員は武勇を尚ぶべし!と所員が読み上げると、つまり物事最後は腕力がものを言うと言うと、イヤホンでラジオを聴いて荒井(荒井注)の頭を竹刀で叩いた長吉は、次!と言う。
き取れはい 1つ!所員は質素を旨とすべし!つまり全て節約の精神である、お客の顔は10円玉と思え!後1週間でいよいよ待望のバスが開通する、ライバルである草津高原電鉄に負けないよう勝ってもかぶってもいいのよ、この精神で行こうと長吉は言って、訓示をしめる。
はい以上、礼!と長吉の号令で所員全員が社訓の額に向かって最敬礼する。
それではせーのと所員たち全員が掛け声をかけ タイトル(草津の風景と軍隊の突撃ラッパとともに)
「西武バス 草津営業所」の外に取り付けられたスピーカーから、草津良いとこ、一度はおいで…、こちらはいよいよ1週間後に開催しますチームバスでございますと宣伝カーから訛りの強い女性の声が響き渡る。
(「八月一日西武バス 草津線開通」と書かれた宣伝カーが街中を走り抜ける映像に)スタッフ・キャストロール
草津の皆様、それから草む折りかの皆様、今や街をあげてのバスチームにございます、無料券はもちろん御通学に御通勤に新しく路線の金バスをご利用くださいまし、新橋と草津と結ぶ排その快適な私どものバスが走るのもあかのご存にございますバは69年型新型バスデイ付きのディラックスバスにございます 草津良いとこ、一度はおいで、どっこいしょ、お湯には~花が咲くよ~♩と訛りの強い歌が響きだしたので、ちくしょう、こっちが黙ってりゃ良い気になりやがってと、草津高原鉄道、草津駅の駅員加藤登(加藤茶)が言うと、全くだよ、このクソ暑いのにガーガーがなりやがって、頭きちゃうよ!と、同僚の仲本幸助(仲本工事)も文句を言う。
ぶっ飛ばされるぞ、この!と加藤はアナウンスに脅しをかける。
ああ、忙しい、何言ってるんだ、本当に…飛び焼きながら、加藤はタバコを両耳に詰め、仕事を再開しようとする。
ほっとけほっとけ、いずれ騒音防止条例にでも引っかるさと、そんな加藤の耳に刺さったタバコを一本抜くと、自分で咥えた長谷川(福岡正剛)がいう。
その時、草津高原鉄道、草津駅舎事務所の入り口から見知らぬメガネの男が入りかけて来たので、あ、そこダメよ、切符ならこっちで買ってちょうだいと加藤が切符売り場を教えると、 実は「旅の友社」から取材に来たんですけどねと編集部員(鶴賀二郎)は言う。
「旅の友社」?と加藤が聞き返すと、いやあどうもどうもどうも、いや暑いですな、と言いながら部屋に入り込んできたその男は、名刺を長谷川に渡すと、あのスピーカー、伝鉄さんとしては被害甚大なんじゃないかな?といきなり取材してくる。
いや君ね、本来ならね、共存共栄と行きたいとこなんですけどね、ああ挑戦的に出られちゃね、君、受けて立つより仕方がないでしょうと長谷川はいう。
そういうことです、売られたケンカは買わずばなんめえと加藤も言うと、なるほどなるほど…、じゃあ、その辺の対策を1つ駅長さんに…と編集部員が言うと、いませんよと長谷川が言うので、いない?と編集部員が驚くと、今日来るの、だから、俺たち首長くしてまってんのと加藤が答える。
ああ…と編集部員が答えると、16時59分着若草2号でお見えになりますと長谷川が教える。
はあ…、じゃあ新人の駅長が来るってのはこの駅?と気づくと、白坂栄造、御年46歳!と加藤も情報を教える。
噂によると柔道5段、空手6段、しかも本社切っての切り物だそうだよと仲本も教える。
だからね、バス会社の豚共が騒いてられんのも、後数時間ってわけよとか党が言うので、編集部員は、なるほど…と答える。
その話を編集部員から聞いた長吉は、ギャングがムショから出てくるわけじゃあるまし、柔道や空手が強くて駅長が務まるならだよ、大鵬や柏戸は総理大臣になれるって寸法だ、そうだろ君!と笑い飛ばす。
「旅の友社」の編集部員は、なるほどなるほどと笑、で?と聞くと、問題はここ!と長吉は自分の頭を指してみせる。
うん不肖碇谷長吉、大命を受けて当地に赴いた以上、喧嘩相手の駅長だって1人や2人じゃ物足たらんよ、5~600人ごそって来りゃんだいいんだ、ごそっとと言い放つ。
そこに出てきた長吉の妻碇谷サダ(若水ヤエ子)が、粗茶でございますが…と茶を出そうとすると、おお!また駅と違って女中さん置くなんざ違いますな~と編集部員が感心したので、女中! 家内だよと長吉が言うと、サダも、家内だよ!見りゃ分かりそうなもんだ 本当になんだ、人、馬鹿にしやがって…、冗談でねえよとサダは怒って奥へ引っ込む。
16時59分、列車が草津駅に到着する。
加藤と仲本がホームに出て列車を待つ、その二人の制帽などを直してやった長谷川が、歳の頃なら45~6、恰幅の良い紳士だ、わかったなと新駅長の特徴を教える。
はい、じゃあ後ろにつけ!と長谷川は2人に命じる。
列車が駅に到着すると、草津~!草津~!と言いながら、長谷川と加藤は、降りてくる新駅長を探す。
加藤も、草津~!草津!と言いながら、降りてくる客からそれらしい人物を探すし、仲本も探していた。
駅前には、幾つもの旅館の出迎え人たちが、旅館の旗を持ち、降りてくる客に呼びかけていた。
大阪屋商事の皆様でございますね、あ、大阪屋でございます、お車は向こうでございます、さあ、どうぞ、どうぞと呼び込みをする。
1にやまだ屋、2にやまだ屋、3、4がなくて5にやまだ屋!、と繰り返しながら旗を見せていたのは山田風太(高木ブー)だった。
列車が次の「やとこ」へ向かって出発すると、長谷川が加藤と仲本に、いたか?と聴き、いなかったなと確認すると、じゃ次の便だと言い、3人は駅舎に引き上げる。
その直後、トイレから出てきた白坂栄造(三木のり平)は、全く不潔なトイレだな…、花の 1つも生けときゃええのに…とぼやくが、その時、お疲れ様でございましたと呼びかけられたので、ああ、ご苦労と言いながら、栄造は声をかけた山田に持っていたバッグを手渡そうとして、君は?と聞く。
すると相手は、やまだ屋旅館でございます、お待ち申しておりましたどうぞこちらへと、半ばバッグを奪い取るように受け取る。
その日の夜、「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」にやってきた加藤と仲本から話を聞いた女将のみゆき(水谷良重)が、そう…、じゃ待ちぼうけなの?と聞くと、そうなんだよ、おかしいんだな~、管理側じゃ確かに乗ったって言ってんだよと仲本が答えると、ちくしょう、こっちは親分が蒸発するっというのによ、バス野郎は今頃マジで高明なお偉方を招待してなペンぺン付きのご機嫌取りだそうじゃないかと加藤も言う。
何よ、ペンぺンって?と春子(谷雅子)が聞くと、 これだよ、これと何か演奏するような手振りを加藤がしたので、 あら?中気の人も集まってんの?と言うので、ずっこけた加藤はバカだなあ、おいと仲本にいい、芸者だよ、芸者!と訂正する。
「やまだ屋」旅館の大広間では、長吉が招待客を招いての歓迎会宴を仕切っており、何にもございませんけどご遠慮なくどうぞおやりになってくださいませと招待客たちに挨拶していた。
その後、客たちの間を回り、尺をして回る長吉は、よろしくお願いいたしますと挨拶をすると、そこに山田が座ってきたので、えっとこちら様はあの~おビールでございますか?お酒でございますか?と聞く。
すると山田が、どちらにいたしましょう?と逆に聞いてきたので、いやですからそれを私がお伺いしてんでございま、はいと長吉は戸惑う。
そうでございますか?ビールを1ついただきましょうか?などと山田が答えたので、おビール?はいはい、どうぞと長吉は山田が持ったコップにビールを注いでやる。
恐れますが、ご尊名を一つ…と長吉が聞くと、 当家の番頭でございますと山田が答えたので、山田が飲みかけていたコップを取り上げ、そういうことは早く言うもんですと長吉は睨みつける。
局長こっちですよ、こっち!と呼ばれた男が席を立った直後、部屋に入ってきたのが栄造で、どうも、皆さんお揃いで…と周囲に笑顔を振り撒きながら座り込む。
すぐに、お1つどうぞと酌をされた栄造は、おや?鄙には稀れなる美人だなと驚きながらも、お名前は?と聞く。
若子(中村晃子)です、どうぞよろしくと芸者は答える。
その様子を隣で見ていた宮田(曾我廼家明蝶)が誰だ?と若子に聞いて来たので、バス関係のお偉い方じゃない?と若子は耳打ちする。
盃をあけた栄造も宮田と目が会い、会釈する。
そこにやって来た長吉は、どうもこの度は…、どうぞ今後ともよろしくお願いいたしますと尺をすると、栄造も微力ですがこちらこそ…といい、盃を差し出す。
それを飲んだ栄造はは、あ~…と発言しようとするが誰も注目しないので戸惑う。
荒井(荒井注)も、接待要員として歓迎会に来ており、あ、酒もきっと!お酒!と芸者からお銚子を受け取っていた。
たまりかねた栄造は舌打ちすると、突如上着を脱いで立ち上がり、一言ご挨拶申し上げますと大声を出す。
荒井が長吉に誰です?と聞くと、さあね、農業組合あたりじゃねえか?と長吉も答える。
ええ、この度は、不肖私のために、かくも盛大に歓迎会を開いてくださり、この興奮、この感激、何に例えましょうやと栄造は語り始めただの、長吉も荒井も唖然とした顔で聞く。
いやいや、ご不安な気持ちはよくわかります、だが、しかしかの大政治家ケネディも言いました、バッツ、レッツビギン!とにもかくにもやろうじゃないかということであります! 宴会の出席者は、挨拶している栄造の正体がわからないので、全員あっけに取られていた。
不肖白坂栄造、草津駅駅長の職に骨を包める覚悟でおりますと言うので、何だと!と長吉と荒井は顔を見合わせる。
場内が騒然となったので、ああ、お静かに!お静かに!ええ…、聞くところによりますと、最近この町に新しいバスの路線が敷かれることになっておりますが、御心配は無用であります、さらにケネディは言ました 、汝の敵を愛せよと…、この崇高な…と話していた栄造の顔に小鉢の白和えのようなものが飛んでくる。
腰を抜かし、何だい?と聞いた栄造に、大体この宴会をどこの宴会と持ってんだ?と長吉と新井たちが怖い顔で迫ってくる。
ですから不肖私の歓迎会…と栄造が答えると、ふざけるな!我が西武パスが地元の方をお招きした鉄道追放の宴会だ!と荒井が怒鳴りつけたので、ええ!バス会社の宴会!と栄造は驚く。
翌日、またしても、列車から降りてくる駅長を発見できずにいた長谷川、加藤、仲本らだったが、事務所に戻ると、見知らぬ制服の男がいたので、ああ、ええ…と狼狽する。
私がこの度、当駅長を拝明した白坂栄造である、え~、とりあえず当駅員全員を集めてもらおうかと栄造がいうので、さらに長谷川らは言葉が出なくなる。
その後、駅前に踏み台を置き、その上に立った栄造は、着任の挨拶をするにあたり、ケネディの言葉を引用させていただく、当駅員全員に告ぐ!いいか?彼は言った…、民衆の声を聞き、民衆にその生命を捧げよ、つまりこれは我々鉄道マンの客に対するサービス精神を言っとるのである…と栄造はいうが、それを向いのバス会社の営業所の窓口から聞いていた長吉や荒井ら所員たちは笑い出す。
あいつはケネディしか知られねえんだなと長吉が嘲笑うと、ケネディってのはあのどこのチームの選手です?バカだな、おめえは…、ケネディは有名なイギリスの小説家だよと長吉は答える。
では早速サービスの第1回より始める、その前に各自の住んだ空気を腹いっぱい十分吸い込むように、深呼吸始め!と栄造は自ら実践し始めるが、長谷川や加藤らは、あっけに取られた挙句、三人三様バラバラなスタイルで深呼吸する。
その後、駅の便所掃除を命じられた加藤と仲本は、おい、もうだめだ!ろくなこと言わねえな、あいつもここでやったのかね!などと不満を言い出す。
そこに、花を瓶に刺したものを持ってきた栄造が、ああどうかね?と言いながらやって来たので、あ、真面目にやっております!と仲本は答える。
駅のトイレというものはね、お客様の大事な大事な落とし物を授かるところだね、いささかの汚れがあってもお客様は不愉快…と言いながら、栄造は花を刺した瓶を置く。
え?これが大切な落とし物ね~と加藤が聞いている時と、便意を催した長吉が駆け込んで来て大便所の方へ入ったので、それに押されて栄造は小便器の方に倒れ込んでしまう。
思わず便器に手をついてしまった栄造は、軍手が汚れたのも気にせず、しかしたったこれだけのサービスでも、もうお客さんに喜んでいただくなどと言い出したので、え?今の男、誰だか知ってるんですか?と仲本が聞くと、お客さんじゃないの?と栄造は戸惑うが、やだな~、バス会社の所長ですよと加藤が教える。
それを聞いた栄造は急に軍手で自分の鼻を摘み、ああこの廃気ガスはひどいねと便所から少し離れたところへ逃げ出しぼやく。
しかも奴は不正入場なんですよと仲本は教える。
自分のところを使わないで来るんですからね、当然入場券を買うべきですよと加藤もつけくわえる。
よ~しと何かを決意したような栄造は、便所の中に入ろうとするが、そこで長吉と出くわしたので、早いねまた…と驚く。
早飯早クソ芸の内ってね、ああスッキリした、ではごめんと長吉は言いながら栄造の方を気安く叩いて帰ろうとしたので、おいっ!と止めようとした栄造は、それ以上何も言えなかった。
その後、私服に着替えて栄造の自宅に行った遺贈だったが、栄造の妻のサダが栄造を見つけ、おじさん待ってたのよ、とりあえず水道用のホース40m、ポリバケツ5個、それにタワシも3つほどもらっとこうかしら?全部でくいらよ?などとメモを見ながら言って来たので、たわし?と聞き返した栄造は、わしは雑貨屋ではない、所長を呼びなさい、所長を!と要求すると、何だろう?おかしな人だね…と呟いたサダは、父ちゃん!父ちゃん!と呼ぶ。
何だい?と長吉が出てくると、 変な人…とサダが栄造の方を見ていうので、ほほお!さっきはどうも!と長吉は愉快そうに挨拶する。
君はさっき、入場券を買わずに駅の構内へ入ったな?と栄造が指摘すると、あああれね、そんで?と長吉が町はすると、入場料、金20円を請求すると栄造が言うと、では当方も夕べの宴会で飲んだあなたのビール代金2000円を請求する!と長吉も言い返して来たので、栄造は目を見開く。
そして栄造は何も言い返せず、長吉の玄関先をウロウロするだけだった。
暑いねえ、本当…などと言いながら、改札で切符切りしていた加藤に、ああ、君、駅長のご家族がつくよと長谷川が知らせに来たので、分かってますよ、どうせ駅長の家族じゃね、チンケな顔した…と悪口を言いかけた加藤だったが、すぐ後ろに駅長が立っており、何だい?チンケってと聞いて来たので、いや…、あの…、荷物の話にチッキの…、あの向こうから来る…あの…と加藤はしどろもどろになったので、チッキ?と聞き返した栄造は、そうですという加藤に、標準語を使えたまえと注意する。 直しておきますと加藤は答える。
次の列車が到着し、栄造の妻白坂政子(丹阿弥谷津子)長女白坂悦子(中尾ミエ)長男白坂勇(高塚徹)が草津駅に到着するや、いたいた!と夫を見つけて喜ぶ政子に、脅かしちゃいましょうよと誘う悦子、 出発した列車を見送る栄造の背後に近づいた悦子は、お父さん!と呼びかけ、政子もあなた!と呼びかける。
勇も背後からぶつかり、お父ちゃん!と呼びかけるが、落ち着いて振り返った栄造は、仕事中は邪魔していかんよと勇の頭を抑えて言い聞かせる。
悦子が栄造に敬礼し、白坂一家がただいま無事到着いたしましたと挨拶したので、うんと栄造は答え、そこに駆けつけて来た長谷川が、どうもどうも、皆さん、お疲れ様でした、私、あの助役の長谷川でございます、お荷物どうぞと言って、家族の荷物を持つと、さささ、どうぞどうぞと案内する
目の前を通り過ぎていった悦子らを見ていた加藤と仲本に、おいおい何してると小旗を振って注意する栄造に、あの方たちが駅長の?と加藤が聞いて来たので、そうだよ僕の家族だと栄造は答える。
あの綺麗なお嬢さんもですか? 悦子がわしの娘じゃおかしいというのかね?と栄造が聞くと、へえ~!と加藤と仲本が感嘆した声を出したので、何だ?へえ~!とは?と栄造が聞き返すと、いや鼻元が綺麗!いや目元が…、もう何でも良いよ!と加藤と仲本はあれこれ適当なことを言ってごまかす。
その後、トラックで届いた栄造の家族の荷物運びを手伝うことになった加藤は、駅長のためならえんやこ~ら!と荷物を下で受け取る仲本に渡すと、俺はお嬢さんのためだよなどと仲本が言いながら運ぶので、俺だってそうだよお前…と加藤はぼやく。
そこに、悦子が荷物を撮りに来たので、あ、良いんですよ、お嬢さん、休んでてくださいよと加藤は止める。
仲本も悦子と一緒にに元を家まで運ぼうとするので、大丈夫、大丈夫よ悦子は言うが、トラックの荷台にいた加藤は、あ、あいつ良いなあ、あつ!手に触った などと仲本を羨ましがる。
駅長!持ってくださいよ!と加藤は呼びかけるが、当の栄造は、庭先で植木鉢などを並べていた。
足元気をつけて!と悦子が言うと、一緒に運んでいた仲本は、汚れますねと言うので、まあ大変な、すいませんねと悦子は恐縮するが、あとお風呂沸かしますゆえと仲本は親しげに話かける。
そこに、あの~、お嬢さん、これどこ置きましょう?と、一人で荷物を加藤が運んでくると、それお父さんのだから、その辺に置いといてくださいと悦子はそっけなく答える。
お父さんの?なら良いやこんなもんと加藤は荷物を放り投げる。 栄造はそんな加藤らに、君らのねご好意はありがたいがね、駅が助役 1人じゃいかんよ、どっちか1人帰りなさいと呼びかける。
仲本が家の中に置いていたバッグを持つと、あ、それ私のだから良いですと悦子が断ろうとするが、良いですよ、持ちましょうと仲本はそのまま持ち続けたので、これは俺が持つの、お前まだトラック残ってるぞと加藤が奪い取ろうとすると、いやお前が行ったら良いだろ?と仲本は言い返し、良いから俺に任せろ、俺が持って区などと仲本と加藤が取り合いになり、バッグが開いて中のカラフルな下着が畳に溢れてしまう。
悦子は慌てて下着を拾い集めようとするが、弟の勇が1枚のパンツを拾い上げ、君たち、これビキニツンパって言うんだぜと見せびらかしたので、勇!もう知らない!と悦子は怒ってその場から逃げ出したので、お嬢さん、ちょっと!と加藤たちは慌てて呼びかけるが、あらあ?俺知らないぞこの野郎!と加藤が仲本を押して抗議すると、俺だって知らないぞと仲本も言い返してくる。
バカだな!お前が素直にしてりゃ、こんなことになんなかったんだよ!と加藤は抗議をするが、仲本の方も、バカ野郎お前が割り込んできたんじゃないか、ここへ!と言い返してくる。
しかし、加藤は、バカだな、お前は!どだい、俺の言う通りにしてれば、こんなにお嬢さんに恥かせるような…としつこく文句を言うので、 2人ともいい加減にしてさ、女のパンツなんかで揉めないでよと一人でバッグの中の下着を整理した勇が言い聞かせる。
それを聞いた仲本と加藤は、思わず吹き出し反省する。
夕食時、辞令!白坂栄造!草津駅駅長を命ず、白坂栄造!と事例を読み上げるので、いやね、お父さん、さっきからこれで5回目よと悦子は呆れる。
この紙切れ1枚に30年かかったわけだ…と栄造が感慨深げにいうと、 お父さんの汗と涙がどっさり染み込んでる紙ですからね、せいぜい眺めてくださいと言いながら、政子はお銚子を差し出す。
思えば新潟での切符切りが初めだったっけな~と栄造が思い出すと、私がこの赤んぼの悦子を連れてお嫁に来た時、あなた北海道のローカル機関車の罐焚きしてましたわと雅子が言うと、そうそう、寒かったっけな~、ほら、持ってきてくれた弁当がカチカチに凍っちまってさ、釜で温めたら今度は真っ黒にこげちまったなと栄造は懐かしげに言う。
そんなことがありましたよね~と政子も笑うと、念願の駅長さん、おめでとうございますと悦子が改めて言いながら酌をしてやると、ありがとう…、こうやってみんなで元気で乾杯できて…、これに勝る幸せはないなと栄造はしみじみという。
おかげで悦子もこんなに大きくなって…と政子が喜ぶと、本当にあなた自分の子供以上に…と政子が言いかけたので、やめなさい、母さん、血は繋がってなくたってね、悦子は間違いなくわしの子だ、そんなこと考える方がおかしいよ と栄造は言い聞かす。
さあ今日は私だけの父の日よ、お父さん腰が抜けるまで飲むといいわと悦子が言うのと、 とか何とか言って、姉ちゃん、自分が飲みたいんだなどと勇が茶々を入れたので、 勇は!と悦子は弟の頭をつっつく。
翌日、駅には「お詫び 菅沢口崖崩れのため上下線とも不通」の貼り紙が貼ってあった。
ああ静かに、お静かに!と駅に集まった客たちを前に加藤は説明をする。
ただいま本社の電話では、急遽対策を協議中とのことでございますので、本当にどうもすいませんと謝るが、おい!すいませんね済むんだったら警察はいらないよ!と客から文句を言われたので、本当にそうですよねと加藤は調子を合わせる。
女房が高崎で産気づいたんだ!君は責任持って赤ん坊を生ませられるのか!と赤ん坊を背負い、両手で女の子二人の手を引いた中年男が抗議する。
いや、あいにく私そういう体を持ち合わせておりませんので…、あっ!奥さんの安産間違いらなし!と加藤は変な太鼓判を押す。
もう無責任なこと言うなよ!復旧の見通しの方はどうなってんだい?と別の客が聞くので、ああ…、今夜半とのことですので、すでに切符をお買い求めの方は払い戻しの上どうかもう1晩当地にお泊まり願います!と仲本は説明する。
そんな役の様子を見ていたバス営業では、いや~、これはいきなり結構な眺めですな所長…と荒井がうどんを食っていた長吉にいう。 残念だなここでバスが回通してたら濡れ手に泡じゃんと長吉は悔しがる。
駅事務所では、どないてくれるんだよ、おっさん!と机を叩いて文句を言っていたのは、え?電車が走れへんやったら、走れへんで、せめて今夜の宿賃ぐらいを慰謝料として出す、これがほんまのサービスちゃうか?そやろ?とサングラスのチンピラ(村上不二夫)が文句を言っていた。
しかし特定のお客様にだけそういう便宜を測るということは…と栄造が答えると、サングラスの男の横で、女が痛いと机に突っ伏しており、見てみ?連れは病人やで、ひでみよ、痛むか?と男は女の体をさすり、痛い?ものすごい痛い?と語りかけると、この通りや…、まさか急病人放っておくようなことはせえへんやろな?とサングラスの男は言ってくる。
それとも何か?わいはスケちゃん連れて流っちゅうので、舐め晒してんのとちゃうんかい?こら!わいはこない見えてもな、大阪は難波ですみれ五郎で名前売れとるねん?おう!どうしてくんだこの始末と言いながら、男はサングラスを外して凄む。
長谷川の顔をチラ見した栄造は、まあ、善処しましょうというと、チンピラの肩を叩く。
だからと言ってうち連れてくることたじゃないの?崖崩れもう直ったんでしょう?と政子はその夜栄造に小言を言う。
しかし、最終も出ちまったしさ、それに泣いてわしにすがるんだもんな…、つい仏心出しちしちまったんだと栄造は言い訳する。
すげえや!と興奮したような勇と、お父さん教育上良くないようよと言う悦子がお茶の間に来て文句を言う。
その時、廊下を、そやけどお前、ほんまについとったで、もう一晩泊まるか?などとチンピラと女が仲良く肩組んで通り過ぎてゆく。
勇がそんな二人の様子を見ようとするので、よしなさい!と叱った政子は、全くうち温泉マークのつもりでいるんだから、本当に!と憤慨する。
悦子が揶揄うように栄造を睨みつけると、栄造はバツが悪そうに苦笑いしておかきを食う。
さあ早く寝なさいと、悦子に台所に連れて行かれた勇は、やだな~、台所なんかで寝るのと文句を言うが、良いのよ、さあ、文句があったらお父さんにおっしゃいと悦子は叱る。
悦子が障子を閉めてさった後、そっと障子を開けた勇の目の前に顔を出した栄造は、すまんな、勇と詫びてきたので、高くつくぜと勇は答える。
分かってる、わかってる、で、お母さんの様子は?と栄造が聞くと、 ちょっとうちにいない方が良いと思うなと勇は答えて寝床で寝る。
そんな怒ってんのか?と栄造が聞くと、ケネディも言ってるじゃないか、君子危うきに近寄らずってさ…と勇は教えたので、栄造はしょげる。
アサヒスタイニー、あっ!か…と、TVCMの真似をした飲み客は、頭来たよな~、今日の崖崩れな~と世間話を始める。
同じ「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」にきてカウンター席で飲んでいた栄造は、情けは人のためならずなんてバカなこと言ったやつは一体どこのどいつだ、全くこの町は乱れとる…!とぼやいていた。
みゆきが、そんな栄造おコップにビールを注いでやり、お客さん、この町初めてなんですね?と聞く。 みんな揃いも揃って乱れとる!けど、たった 1人例外がいるな…、マダムそれは君であるなどと栄造が見え透いたことを言ってきたので、まお上手とみゆきは笑い飛ばすが、いやいや本当…と言いながら、ビールを一口飲んだ栄造は、ところでマダムは電車に乗る?と聞く。
するとみゆきは、私って滅多に街から出ないから…というので、たまには乗るのも良いよと栄造は勧める。
あ、そういえばね、今度来た駅長さんってとっても素敵な人ですってねとみゆきが急に言い出したので、えっ?へえ~、新しい駅長が?あ、一杯行こうと自分が飲み干したコップをお上の前に置き、で、どんな風に?と聞きながらビールを注いでやる。
何でもね、指導力、唐卒力が抜群でね…富之が言うと、ふんふん、それで?と栄造は急かす。
おまけに、柔道5段空手6段の第二枚目なんですって…とみゆきが言うので、ちょっと栄造はしらける。
気は優しくって力持ちっていう、あれだわねぇ…、背もドーンと高いんじゃないかしら?とみゆきが続けたので、栄造はすっかり気落ちするが、ママってそういうタイプの男性に弱いのよね?と春子が茶々を入れてきたので、あらそんな素敵な人だったら私だけじゃないわよ誰だって憧れちゃうわあ 1目でもいいからお会いしたいもんね~ねえ?とみゆきが同意を求めてきたので、 さあ、もう帰ろうかな…と栄造は言い出す。
あ~ら、まだ良いじゃない?とみゆきは止めるが、カエルが鳴くから帰~ろかっと言いながら、財布から金を出して栄造が帰ろうとするので、そんなお急ぎにならなくても…、今、お茶淹れるわねとみゆきが言うと、マダム、あんまり駅には近寄らん方がいいかもしれんなと栄造は忠告したので、そう?とみゆきは答える。
いよいよ朝から花火が打ち上がり、西武バス草津線開通の日を迎える。
西部自動車草津営業所の前には横断幕が張られ、モール飾りがついたバス6台と、大勢の見物客、テントの中には招待客も集まっていた。
サダが、挨拶をする長吉のスーツの胸に花びらをつけようと近づくと、それを違うと払い除けた長吉は、え~っと話し出すとするが、横にたった佐田がネクタイを直そうとしたりするので、うるさい!と拒絶して、サダを押しやる。
え~、まず町長のお手によりテープをお切り頂きます、続きまして、記念すべき本日の第1便に乗りまする新川運転手をご紹介いたします テント内で待機していた複数の運転手の中から1人緊張気味に立ち上がり、マイクに近づくと、新川運転手ですと長吉が再度紹介し、宮田とともに招待されていた若子が花束を進呈に登場する。
役の方では、ホームにいた栄造が、バス営業所から聞こえてくる花火や音楽に気を取られてウロウロしていた。
その時、駅長さんよ、 俺は絶対高原電鉄に乗るぞと言いながら酔っ払い(立花新)が近づいてきたので、ありがとうございます、もうまもなく、下りの電車が参りますと栄造が答えると、良し、乗合自動車なんかに負けるんじゃないぞと酔っ払いは励ましてくる。
心強いですな~、あなたのようなお客さんの味方があると本当に…と栄造が感動すると、いや~、来たら起こしてくれよという酔っ払いは、その場で寝ようとするので、え?いや、ダメですよ!こんなとこで寝ちゃ!こんな所で…、困りますよ、ちょっと起きてください!あのすぐ電車が参りますから…と栄造は酔っ払いを起こしていたが、そこに電車が到着したので、ちょっと!電車来ちゃいましたよ、さささささ、来ましたよ、ねえ、困るよな~本当に…と栄造は酔っ払いの荷物を拾い上げる。
出発した電車を見送っていたのは酔っ払いで、お~い駅長、どこ行くんだい?と駅長が持っていた小旗を振りながら呼びかけたので、加藤と仲本、長谷川らがホームに飛び出してきて、駅長!と去っていった電車を見つめる。
電車に乗り込んでいた栄造は、窓から身を乗り出し、お~い!誰がいないか!と過ぎ去ってゆく草津駅に向かい、持っていた酔っ払いの荷物を見せながら呼びかける。
おい加藤いないか!と呼ばれた加藤が列車を追いかけながら、ただ乗り!と駅長に呼びかける。
その夜、祝賀会を終えた長吉と荒井ら所員たちは、草津良いと~こ、一度はおいで~♩などと上機嫌で歌いながら歩いていた。
一方、加藤と中本も、酔って歌いながら歩いていた。 そんな二組が無人の街中で鉢合わせになる。
長吉が、何だ?鉄道のお芋ちゃん!と揶揄うと、そういうおめえはオンボロバスのゴリラじゃねえか!と加藤は言い返す。
やかましいやい、知恵足らずのおこなす!と荒井も暴言を投げかけてきたので、ふん、バスと酒で悪酔いすんな!動物園!と仲本も言い返す。
すると、何だと~!と長吉が仲本の襟元を掴んでくる。
そして、仲本を投げ飛ばした長吉は、加藤も殴りつけ、他の所員も喧嘩に加わる。
酔った荒井は見境がつかなくなり、長吉につかみかかったので、俺だよ、俺だよ!と長吉は言うが、荒井はうるせえと言うだけ。
誰だ?逃げろ!ズボンを引き摺り下ろされた加藤は、止めろ、エッチ!と恥ずかしがる。
長吉は、加藤につかみかかっていた仲間の所員を引き剥がすと、加藤に手で挨拶するが、加藤の方が殴りかかってきたので、タイマン勝負になる。
やがて野次馬が集まりだし、その中にいた山田が暴力はいけませんと止めにくるが、酔った長吉と加藤からボコボコに張り手を受ける。 騒ぎを聞きつけ、なぜか消防車がやってくる。
その頃、「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」にまた来ていた栄造は、柔道5段空手6弾の大2枚目には参ったよと先日のことを蒸し返してみゆきを笑わせていた。
駅長さんも人が悪いわと言いながらお銚子で酒を注ぐみゆきだったが、知らん顔してて人に喋らすんだけど…やだあ!と恥ずかしがる。
その時サイレンが聞こえてきたので、あ、火事か?と栄造は呟くが、その時、入り口から新たな客が入ってきたので、栄造は、よお!と驚き、入ってきた若子は、まあ、駅長さん!いつぞやはどうも…と笑顔で挨拶してきたんで、こりゃついとるね、両手に花、あ、こっちおいでとわか子を手招く。 しかし、若子は動かず、すぐ背後から宮田が姿を見せたので、こりゃどうも…と栄造は一気にしょげる。
うんと横柄に答えた宮田は、 ママちょっと2階借りるよというと、若子は困ったようにその後について行ったので、 どうぞ…と答えたみゆきは、春ちゃん、おしぼりねと指示し、春子ははいと答える。
2回に上りかけた若子は、急にみゆきの方を振り返り、ねえ、お願い!また選挙の時はよろしく!と笑顔で頼んでくる。
誰あの男?と栄造がみゆきに聞くと、 宮田って言ってね元県会議員よとみゆきが言うので、あれが!へえ~と栄造が驚くと、あれも黒い霧の1人、誰も宮田さんには頭が上がんないんだってさと春子が言うので、なんとね~と栄造は感心する。
今日の開通式だってね、あの人に息がかかってたからできたんですって…、もっぱらの噂よ…とみゆきが教えたので、へえと栄造はまた感心する。
駅の加藤君たちもだいぶ頭来てましたもんね~、人騒動なけりゃいいけど…などとみゆきが言うので、いやいやそれは大丈夫、あの 2 人にはね、わしが厳重に釘さしといたからね、まかり間違っても喧嘩するようなことは絶対にありませんよと栄造は太鼓判を押す。
その頃、長吉や荒井ら、バス営業所の所員達と、加藤と仲本は、全員豚箱の中でケガにうめいていた。 巻き込まれた山田風太まで、顔が腫れ上がっただけでなく牢に入れられていた。
長吉も加藤もタバコを吸いたがるが、長吉は火をつけるものを持っておらず、加藤はマッチは見つけたが、タバコはなかった。 長吉は自分のタバコを加藤の前に放り投げ、それを拾おうとする加藤を揶揄い、また一悶着起きる。
加藤の方も、自分のマッチを擦って火をつけ、長吉の方に差し出そうとしたので、長吉はタバコを口に咥えて近付くが、加藤は寸前でマッチを床に落とし足で踏み消したので、自分も熱がる。
その後、両者はマッチとタバコを床に置き、互いに相手に近づけて牽制し合うが、お互いが飛びついた瞬間、頭をぶつけて両者とも目的のものは手に入らなかったが、その隙に近づいていた颯太が床に置いてあったタバコとマッチを取り上げ、勝手に吸い出す。
それを唖然と観た長吉や加藤や他の面々は、風太からタバコを取り上げると奪い合いが始まる。
その後、悦子が自転車に乗って駅にやてきたので、バス営業所の所員達は冷やかしの口笛を吹いてくるが、加藤は嬉しそうに、お嬢さん!と出迎える。
こんにちは!と自転車を降りた悦子が弁当も持って降りてきたので、いらっしゃいませと帽子を取って歓迎する加藤だったが、父のお弁当を渡してくださると悦子が言って弁当を差し出したので、かしこまりました!万難を拝しましても!と笑顔で答えた加藤に、オーバーね、じゃあお願いします都悦子は手渡す。
はい!と弁当を受け取った加藤は、自転車で帰る悦子に、途中狼やゴキブリに気をつけてくださいよ!と呼びかける。
その言葉にバス営業所の所員が反応して向かってきそうだったので、残念でした、ペンペンだと自分のお尻を叩いて揶揄うと、ネズミ!南京虫!と所員達から罵倒されながら、駅舎に走り帰る
線路脇のゴミ拾いをやっていた栄造を見つけて駆け寄った加藤は、駅長!大事なものが到着いたしました!と声をかける。
ああ悦子は来たかと栄造が振り向くと、はっ!くれぐれもお食事はよく噛んで召し上がるようにとのお言付けでございましたと加藤が言うので、オーバーだよ君はと注意した栄造は、何だ、それにその顔は?喧嘩はするなとあれほど言ったじゃねえかと付け加えると、はあ~、しかしね、僕のメインフックが入ってんですよ、バシっと!と加藤が自分のパンチ自慢するので、仕方ないね~、もうじゃあ飯にするかと栄造は答える。 駅舎に戻る途中、駅長、素晴らしい娘さんですな~と加藤が話しかけたので、ああ、まあな…と栄造が答えると、あの~、縁談なんかもさぞかし多いでしょうねと聞くので、うんまあな…と栄造は気が乗らないように答える。
あの~、お好みの相手はどんなタイプでしょうかね?と加藤が聞くと、まあわしの考えでは、できれば鉄道員と一緒に…と栄造が言いかけたので、 はいどうぞ、お手をどうぞと言いながら、ホームから加藤が手を差し伸べて栄造を引き上げるが、させたくはないなと栄造は続けで加藤はズッコケるが、その手から弁当を受け取った栄造は、鉄道員の苦労はわし1人でたくさんだよという。
それを聞いた加藤は、はあ~と答え、栄造から受け取ったゴミ取りクリップで自分の鼻を挟んでみる。 そんな中、新川が運転するバスが走っていた。
その後、駅事務所に電話がかかってきたので、昼飯中だった加藤が出て、はい、こちらはいはい…、えっ!何?ぼ、坊っちゃんが!はいはい、それからどうしたんです?え?はいはい、分かりましたと狼狽したような口調で話しているので、弁当を食べていた栄造や長谷川、仲本らも注目する。
駅長!坊っちゃんが、西武のバスに轢かれました!と、電話を切った加藤は報告したので、栄造は、えっ!と驚いて立ち上がり、弁当を床に落としてしまう。
急いで、長谷川を伴い病院にやってきた栄造は、勇と同じ年頃の少年がリハビリをしている姿を見て、怖々外科医の部屋を開ける。
すると、部屋から飛び出してきた勇が、あ、どうしたの父ちゃん?と聞いてきたので、どうしたのって…、勇と気がついた栄造が聞くと、 赤ちん塗っときゃすぐ治るってさと答えた勇だったが、あれ?お父さんと悦子も出てきて、一緒んじ出てきた新川が、お騒がせして申し訳ありませんですと謝罪してくる。
君か?勇を轢いたのは…と栄造が聞くと、面目次第もございませんと新川が言うので、謝って済むことかねえ+と皮肉を言い返す。
お父さん、元を正せば勇の方が悪いのよ、いきなり飛び出したんだから バカもん!ブレーキがあるだろう、ブレーキが!と栄造は怒るが、いえ…、その…、ブレーキを踏んだ途端に飛んだ石が…と新川は答え、そうよ、それが勇の膝小僧に当たっただけなのよと悦子も宥める。
いや、君たちのバスは、走る凶器だ、許さん、わしは断じて許さんよ!と栄造は興奮する。
止めてよ、お父さん、悪いのは勇の方なのに、この方路線を変更して病院まで運んでくだたのよ、なかなかできないことだわと悦子が言い返してきたので、そんなこと当たり前のことだ!何を言ってんだ?常識だ…と栄造の怒りはやや収まったものの、反論は続ける。
まずい、まずいったらまずい!何もよりによって駅長の息子を刎ねることはないだろう!と、長吉が苛立っていた営業所に、あ、ご心配かけましたと新川が帰ってくる。
すると長吉が、バカ野郎!ニタニタ何が嬉しんだ?こっちは偉い迷惑だと叱りつける。
その後、また花束を持って白坂家の近くに新川が来たので、外で遊んでいた勇は、あ、お兄ちゃん、また来たの?と聞く。
え?ああ…、いや君の傷が心配でねと新川が言うので、もう治ったよと勇が言うと、そう良かったね~、じゃ後言いながら、白坂家の向かった新川は、ごめんくださいと呼びかける。
はい!と出てきた悦子は、荒川と知り、あ、どうもと笑顔を見せる。
あの~、弟さんのご容態はいかがでしょうか?と新川が聞くと、もうすっかり…と悦子が答えたので、そうですか…、これ…、あの~、悦子さんのお見舞い…、いや、あの弟さんのお見舞に…と言いながら、新川は持参した花束を渡す。
あら綺麗だ、毎日どうもすいませんと悦子は礼を言って受け取る。
いえ…、あの~と新川は何かを言いたげだった…。
どれにしようか、あの子~のために~、は、どっこいしょと加藤は悦子にプレゼントする品選びで迷っていた。
お?ブルーのパンティ…?ピンクの方が良く似合うんじゃないでしょうか?などと女性客がパンティーを選んでいるのを見てたが、その女性が怖い目つきで睨んできたので、慌てて振り向くと、これに決めようかな?白い手袋を購入することにする。
ありがとうございます、300円いただきますと店員が言う。
パンティを選んでいた女性客は、やっぱりこれにするわと赤いパンティを選んだので、はい200円いただきますと女店員は受け取る。
女店員は、二つの商品を同じテーブルで包装し、お待たせいたしましたと加藤と女性客に渡して、どうもありがとうございましたと送り出すが、2人の買った商品は入れ替わっていた。
翌日、いつものように花束を持って白坂家に向かう荒川と、購入したプレゼントを持った加藤が鉢合う。
二人は白坂家の前で、互いんじやり過ごしたりして牽制し合うが、結局、われがちに玄関に向かう。
ごめんくださいと2人揃って声をかけると、出てきたのは政子で、あらまあまあ、いらっしゃいと出迎える。
はあ、これあの、お坊っちゃんにと新川は花束を渡すと、もういつもご丁寧にすいませんねと政子は礼を言い、あの~、これはあの~、僕からですと加藤もプレゼントを渡したので、勇でしたら、もうとっくに元気になってるんですのよと雅子が言うと、いえ…、あの…、これはお坊っちゃではなくって…、いや、そりゃ喜びますと政子が礼を言うと、あの~、色もサイズも十分吟味したつもりですから…、ね~君…と、加藤は荒川に当てつけるようにいう。
その夜の夕食時、帰宅した栄造が、菊にカーネーションか…、けど、もったいないんじゃないか?こう毎日変えてちゃ…と花瓶の花のことを話題にすると、平気だよ、元手ではロハだもんと勇が横から口出ししたので、 ロハ?と栄造は驚くが、勇!と悦子は叱るが、ほら、あのバスの運転手さん…と勇が教える。
え?奴が毎日持ってくるのかい?と栄造は聞くと、勇にお見舞いですよ、別にどうってことありませんよと政子は答える。
見舞いたって…と戸惑う営造に、あ、そうそう…、お父さんにも何かプレゼントがありましたっけと政子が言い出したので、やつがかい?と栄造が聞くと、いえ、駅のほら…、加藤さんとかいう若い方、暑中見舞いのつもりじゃないんですか?と言いながら加藤が持ってきたプレゼントを手渡す。
おお…、あいつ、抜けてるように見えて気が利くんだな~と栄造は感心するが、色もサイズも十分吟味したって言ってましたよと政子が言うので、おお、何だろう?と言いながら包みを開けてみる。
しかし、中から出てきたのは赤いパンティだったので、どうなってんの?これ色もサイズも吟味したって…、お前、すごい赤だね~、これ私に履けっての?いくら何でもわしには派手すぎると思うよと栄造は戸惑う。
翌日、駅事務所で思い出し笑いして高遠に、もらった赤いパンティを差し出した栄造は、いくら何でもわしには派手すぎると思うよと文句を言う。
加藤はは?と戸惑うだけだった。 そこの、あの~と声がしたので、栄造は、よお!今日はまた何かね?と聞く。
ちょっと駅長さんのお耳に入れたいことが…と来たのは若子で、ほう…、このわしに話が?あ、ここじゃ何だから、さあというと栄造は駅長室に若子を外へ誘う。
それを見た加藤は、良いな、良いな、駅長さんは良いな…と羨む。
どうでもいいけど、何だそのパンツと仲本がきいてきたので、いや…、何でこんなパンツ俺に履かせたがるんだろうね、エッチ!と加藤はぼやく。
外で若子に話を聞いた栄造は、わしがあの元県会議員に挨拶に行く?と聞き返していた。
いいね、選挙も近いことですし、是非一度駅長さんと一献酌み交わしたいから、私に言って来いって…と若子はいう。
選挙ね~と栄造は考え込むが、何てったって、あの人、町の影の実力者でしょ?この際あの人と付き合ってた方が駅長さんにとっても何かとお得だと思うんですよと若子はいうので、ふ~ん…、得ね~と栄造は考え込む。
また、あのバス会社の親玉がね、調子良く食い込んでるんですよ、抜け抜けと…と若子が言うので、良し、会いましょう、会って逆にわしの考えを聞いてもらおうと栄造は答える。
その後、座敷で会った宮田は、黒い霧とか何とかは、君、どだい後ろ暗い人間が発明した言葉で、わしはあくまでも潔白だよと言う。
そう…、大体パパって綺麗好きよねと若子は調子を合わせながら、営造に酌をしてやる。
そのために、わしはもう一遍、次の選挙に打って出る、よろしく頼むよと宮田は要件をいう。
すると若子が、あら?パパ…、頼むだけじゃだめよ、こちらの方にも力になってあげなきゃと若子が言うので、そりゃそうだね、噂によると西武バスとはうまくいってないらしいね?と宮田は聞いてくる。
いや、わしはあくまで一介の…その理想に近づこうと努力しとるんですがね…、とにかく連中のやり方があんまり露骨なんで、つい…と栄造は答える。
その時、失礼します!と山田颯太が顔を出し、あ、すいません…、あの若ちゃんお座敷なんですけど…と声をかけてくる。
何?わしの座敷と承知でか?と宮田が不機嫌そうに聞き返すと、いやいや…あの…、その…と颯太がしどろもどろになったので、はあ~、分かった!バスの連中だなと栄造は推測する。
い、いえ…と風太は否定するが、ちょっと行ってきます、この際、釘を刺しとかないと今後のこともありますから…と栄造は言い、自ら部屋を出ていく。
しかし、座敷にネコおろがってたのは、サングラス男の奇妙な男だったので、この男か?と栄造は風太に確認する。
そうですと風太が言うので、何者だね君は?と栄造が声をかける。
するとその男が、ほっときなさいよ、人のことなんか…と言い返してきたので、そうはいきませんよ、それに何だ、その西洋のお化けみたいな格好して…、大体ね、サングラスなんてものは昼間日向でかけるもんだよと栄造は注意する。
うるさいな…、お宅、何しに来たの?と男が聞くので、え?何してんだっけ?と栄造も風太み聞く始末。
ああ…、大体君がね!と栄造は文句を再開しようとすると、不愉快な顔ね…、どけてくれないと男は寝そべったまま言うので、何だと?君のようなできそこないを産んだ親の顔が見たいよ、親の顔が!と栄造は男の横に座り込んで説教を始める。
そこにやってきたのが宮田で、サングラス姿の男を見ると驚いて近づいたので、お化けみたいなやつですよ、どうせこんな男のね、親なんてのものはゴジラみたいな奴に決まってますよと栄造が断定すると、親はわしや!と宮田が怒鳴り返す。
お前大学は?と宮田が聞くと、サングラスをかけた息子の秀夫(住吉正博)は夏休み…と言うので、若子、知ってんのか?と宮田が問いただすと、うんと答える。
若子はわしの女じゃ!と宮田が叱ると、親のもんは子供のものと秀夫は言い返す。
何!と言い、息子の胸ぐらを宮田が掴んだので、パパやめなさい!およしなさい!と栄造が間に入って仲裁しようとするが、逆に喧嘩に巻き込まれ、床の間の柱に顔面を打つっけるなど痛い目に遭ってしまう。
帰宅した栄造は、芸者さんと飲んで怪我するなんて褒められた話じゃありませんよ、反省してくださいと薬を塗る政子から叱られてしまう。
はいと栄造が反省すると、狭い街なんですからね、油に火つけたみたいにパーっと広がっちまうんですよと雅子はいうので、はいとおとなしくいうことを聞く栄造だったが、悦子は?と聞くと、とてもじゃないけど、恥ずかしいって言って寝ちゃいましたよと政子は教える。
ふ~んと答えた栄造は、「ギララ」のプラモデルを寝室で組み立てていた勇に、勇、姉ちゃんは?と聞きに行くと、うん?と言い、同じ部屋で寝ていた悦子の様子を見ると、良く眠ってる、絶対に起こすだってと言うので、ふーん…と納得し、襖を閉め去ってゆく。
しかし、それを確認した勇は、隣の布団の掛け布団を剥がし、100円、いただき~!と布団に寝転がって笑い出す。
布団の中に悦子はいなかった。
その頃、温泉の湯もみ板のそばに座っていた新川は、どうしてこう急に仲良くなっちゃったんだろうな?と話しかける。
すると浴衣姿の悦子が、私には分かってるわと言いだしたので、分かってる?と新川が驚くと、怒っちゃいやよ、新川さんってね、私のお父さんにそっくりなのよと悦子が言うので、あの君のお父さんに!と新川は驚く。
もちろんハートがよ、何て言うのかな?ボワーッとしてて、とっても暖かくて、ほんのちょっぴり間が抜けて…、それでどっか剃刀みたいに鋭いのと悦子は言うので、うん、抜けてるとこだけはあってる…と新川は答える。
ううん、真面目な話よ、うちのお父さんってお宅の営業所の人たちは目の敵にするけど、でも私にとっては世界中で1番素晴らしい男性だな…と悦子はいう。 酔っ払いで短気なくせに、すぐ誰でも愛しゃうの…、偉い人の言った言葉は、みんなケネディが言ったって錯覚するぐらいそそっかしくって、それでいて、こと鉄道のこととなると人が変わったように執念を燃やすの…、新川さんってそういうお父さんにどっか似てるのよと悦子は言う。
悦子さん!僕、悦子さんのこととても好きです!も、も、もしかしたら愛してちゃってんですと新川が打ち明けると、悦子も新川さんと呼びかけ、互いに湯船の敷居の上で歩み寄り、悦子の足はつま先だつ。
カメラは二人の足元から下にティルトし、湯船に映る二人が抱き合う姿が水面で揺れる。
後日、悦子は新川が運転する西武バスの一番前の席に座っていた。
互いに見つめ合う瞳は輝いていた。 新川が厚がっていることに気づくと、すごい汗!と気づいた悦子がハンカチで顔を拭いてやる。
そこに車掌(有崎由見子)がやってきて、お客さん、切符は次の湯が沢までですけどと悦子に話しかけてきたので、あの~、終点まで行って引き返すわと悦子は笑顔で答える。
悦子は、新川の顔の汗を拭きながら、大変ね~と同情し、耳元で頑張ってねと囁きかけるが、それを見ていた乗客は注目してしまう。
たまたまそのバスに乗っていた秀夫に恋人(光映子)が何事か耳打ちすると、あれ?駅長の娘?とヒドはサングラスを外して驚く。
その夜の「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」には、加藤と仲本を連れ、栄造が飲みにきていた。 だめね~!それじゃ2人ともお婿さんとして落大じゃないとみゆきは笑いながら加藤のタバコに火をつけてやる。
いやいや諦めるのはまだ早い!いずれはね、この駅長も定年でポンコツになるなと仲本が言うので、おいおい、酷いこと言うなよ、その頃多分助役の僕がですよ、悦子さんにとって頼もしく見えるんですよなどと仲本は論ずる。
それを聞いた加藤は、長生きするよ、幸助は…とからかうと、そうね…と仲本は答える。
俺はね、早とこ諦めてね、ママか春子で我慢しよっとなどと加藤はいう。
どうでしょ?この態度…とみゆきが笑うと、私の方でお断り言っとくけど、加藤ちゃんのツケ3倍よと春子も言い返す。
それでも加藤は、平気だね、給料3倍になったら返すからよろ笑って答える。
でもね、駅長さん、こないだお嬢さんにお目にかかったけど、この2人が夢中なるの分かりますわ~、可愛らしくて、とっても良いお嬢さんでしょ?などとみゆきが言うので、まああいつはね、親を親とも思わないんで本当に苦労するよなどと栄造は答える。 あら、お楽しみのくせに…とみゆきが言うと、ママさんお2階空いてるかしら?と秀夫と恋人がやってきたので、あらいっしゃいませ、どうぞと勧める。
すると栄造に気づいた秀夫が、あら駅長さん、先日はどうも…と挨拶してき、春ちゃん、何か見繕って…、お酒はウィスキー…、それからおしぼり4つ!と注文して2階へと上がってゆく。
4つ!と春子が驚くと、4つ、皆まで言わせないでよ、何故か4つなのよと秀夫は笑い、一旦階段を登りかけ、戻ってくると、そうそう駅長さん、今日お嬢さんにお目にかかったわよと言い出したので、それがどうしたの?と栄造が聞くと、だってすごい熱々のとこ見えちゃったんだもん、ちょっとショックだったけどさ~、でも相手がバスの運ちゃんじゃ張り合う気もないわと言うので、バスの運ちゃん?と栄造が驚くと、ほら今度開通したやつ…と英夫が言うので、駅長、まさかあの野郎!と加藤が興奮して栄造に突っかかる。
悦子に限ってそんな…、お前、バスの運転手なんかバカも休み休みえと栄造が叱ると、加藤も休み休み言え!と秀夫に言い返す。
あれじゃとっくに良い仲だと思うんだけど、まあ良いや、人のことだものね …、じゃあなどと秀夫は言って、二階へ上がって行く。
人のことって何?駅長!と加藤と仲本は心配する。
心配だね、本当に…という加藤に、心配するな、うちの娘はな、鉄道員以外は絶対嫁にやらんからというと、栄造は酒をお銚子からラッパ飲みして苦々しそうに2階を見上げる。
白坂家では、悦子と政子が、フランス語の映画をテレビで見ていたが、玄関で大きな音が聞こえたので、ちょっとお父さんじゃない?と政子がいう。 玄関先に出てみると、栄造が酔い潰れていたので、しようがない、一体どこでそんなメートル上げたんです?と言いながら政子が起こそうとする。 ああ?どこで飲んで来ようとな、俺の勝手だ!と栄造はいつもと違い強気発言してくる。
ほんとお水飲む?と悦子が聞くと、 水?おい、お前はね、そうやってあのバス野郎にも親切にすんのか?と栄造は悦子に絡み始める。
何よ、出し抜けに…と悦子が狼狽すると、ふん、何が出し抜けだ?お前の方がよっぽど出し抜けじゃねえか!と栄造が怒鳴ったので、大きな声出さないでくださいよと注意した政子は、あんた先に寝なというので、おいおい!まだ寝ちゃいかんよ、悦子!今夜お前にね、お父さん聞きたいことがあるんだよという栄造は、茶の間に座り込むと、おい!そこに座れ!と悦子に命じ、お前ら今日どこ行ってきたんだ?言えないのか?親にも言えないようなことしとんのか?お前は!と栄造は悦子を追求し始める。
さ、その話、明日にしましょうねと松前が言い聞かすと、お前は黙ってろや、わしは悦子に聞いとるんだ!と栄造は抵抗する。
新町まで行ったわと悦子が答えると、ふーん、歩いてか?それとも逆立ちしてか?と栄造は追求するので、バスに乗って…と悦子が気まずそうにいうので、バス?誰と?と栄造は追及する。
新川さんのバスですと悦子が打ち明けたので、お前はね、親の顔に泥を塗るつもりか!お父さん、今まで黙ってたのはごめんなさい、でも私たち真剣なんですと悦子は答える。
真剣?どこでそんな言葉を覚えてきたんだ?いかん!絶対いかん!と栄造は拒絶したので、仕方ないわ…、だって私たち、好きになっちゃったんだもんと悦子は答える。
なっちゃったんだもん?歌の文句のようなこと言うな!と栄造は怒鳴りつける。
あなた、悦子の言い分も聞かないで…、そんな一方的に怒ったてしょうがないじゃありませんか!、ね?と政子が仲裁に入ろうとすると、ほお~、わしには怒る権利がないと言うのかね?お前には実の娘だから、こいつのめちゃくちゃを許す権利があるとでも言うのかよ!と栄造は政子に絡んでくる。
お父さん、どうしてそんな風に取るの?私がいつ…、いつむちゃくちゃをしたのよ?と悦子が聞くと、栄造は思わず悦子の頬を叩いたので、お父さん!と政子も驚く。
栄造は咄嗟に叩いてしまった我が手を見つめて動揺するが、いかん!絶対にいかん!と言うと、悦子が黙って部屋から出て行ったので、ほっとけ!好きなようにさせとけと栄造は政子に言い聞かせる。
だってあなた…と昌子は抵抗するが、俺はもう知らんぞ、どうなろうと絶対知らんぞ!と言うと、栄造も立ち上がって部屋から出ていく。
台所で、1人ビールを飲んでいた悦子のもとにやってきた政子は、お父さん、あんまり悦子が可愛いもんだから、あんなことしかできないのよと言い聞かす。
私にお父さんの気持ちが良く分かる…、だけど人を好きになっちまった悦子の気持ちももちろん分かるのよ…、でもね、ああ興奮してるんじゃ今何言ってもだめ、今頃お父さん自分の部屋で後悔しながら、オロオロしてるわよ、きっとそうよ…、そういう人なのよと政子はいう。
その言葉通り、布団を敷いた寝室で、栄造はウロウロ歩き回るだけで、寝巻きに着替えることもできず、布団に座り込んで後悔していた。
台所では政子が、そうね、今夜泊めていただいた方が良いかもしれない、お母さんもこないだみゆきさんにお目にかかってるし、若い人同士でおしゃべりすんのもいいわねと笑って許してくれたので、じゃお休みなさいと言って、悦子は出かけて行く。
寝室では政子がやってきた気配を感じた栄造が、洋服姿のまま掛け布団をかぶって寝たふりをする。
寝室に入ってきた政子は、狸寝入りしている栄造を見て笑い出す。
「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」では、大丈夫かしら?ねえ、大丈夫?と、カウンターで4本目のビールを飲み、酔い潰れかけていた悦子に声をかける。
お代わりちょうだい!と悦子がねだるので、もうだめよとみゆきが断ると、あんな親父糞食らえ!と言いながら悦子はビールを煽る。
明治の人間なんなんてどっか間違ってるわよ!と悦子は言う。
それくせ2言目にはね、ケネディ、ケネディって言うんだからね、分裂症も良いとこだわ、お願い、お代わり!と悦子はねだる。
だめよ、お父さんそっくり…とみゆきは笑い、2階にお布団敷いてあるからね、上がってお休みなさいと言い聞かせると、素直に悦子は、うんと答える。
すでに春子も帰り、店じまいのため、外に暖簾を外しに行ったみゆきは、坂の上の物陰に立っていた頬に傷のある男の姿を見て愕然とする。
岩崎…とみゆきがつぶやくと、その岩崎(名和宏)が、しばらくだったな…と言いながら近づいてくる。
店に入ろうとする岩崎の体をみゆきが押し返したので、どうした?と岩崎が聞くと、え?良いのよとみゆきはいうが、誰かいるのか?と岩崎が気づいたので、お客さんよとみゆきは言って、店から遠ざける。
探したぜ、新宿の「ブラック」ってバーで聞いたんだよと岩崎が言うので、 で、いつ?とみゆきが聞くと、昨日って言いてえんだがな、逃げてたんだよと岩崎が言うので、脱走!とみゆきが驚くと、しっ!大きな声するなよと岩崎は警戒する。
5年前に切れてくれるって言ったじゃないの…とみゆきが言うと、 言ったよ、だから今より戻しに来たんじゃねえんだよと岩崎は言う。
じゃあ…とみゆきが聞くと、ずらかる金が欲しいんだよと岩崎が迫ってきたので、急にそんなこと言われたって…とみゆきは困惑する。
有り合わせで良いんだ…、早くしろ!と岩崎は脅してくる。
店に戻ると、ちょうど悦子が2階へ上がったところで無人だったので、みゆきは暖簾をしまいながら中に入ると、岩崎もついてきて、ほお?結構粋な店じゃねえか、今度のこれはどんなんだよと親指をあげて聞くが、ひどいこと言うのね、人を散々食い物にして…とみゆきは言い返す。
ああ良いから、良いから早くしろと岩崎は急かす。
持ってくるわ、付いて来ないでねと念を押し、みゆきは2階に上がってゆく。
岩崎はその感、店に置いてあったビールやりんごを飲み食いするが、金を持って降りてきたみゆきが、ねえ、もういっぺん聞くけど、本当にもう来ないわね?と念を押したので、くどいなと岩崎は答える。
5万円あるわ、最後のお願い、自首して頂戴とみゆきは頼むが、自首?相変わらずお節介だけは治っちゃいねえな?良いな?念のために言っとくが、サツに垂れ込んだらややこしくなるぜ、じゃあな…と言い残し、岩崎は店を出てゆく。
翌朝、歯を磨いていた栄造に、お早いんですね、覚えてますか?昨夜のこと…、とうとう帰ってきませんでしたよと政子が皮肉を言うと、好きなところ行きゃいいんだよ、バチ当たりの野良犬めと栄造は歯磨き粉を吐き出しながら答える。
バスの営業所でバスの車体を洗っていた新川は、駅の前で栄造が自分を睨みつけていたので、おはようございますと挨拶するが、何がおはようだよ、わしは騙されんぞと言いながら、栄造は新川に近づいてくる。
わしの娘をどこにやったんだよ?と栄造が詰め寄ってきたので、 あの~…、いないんですか?と新川が案じると、とぼけるのもいい加減にしろ!絶対許さんよ!と栄造は追及してくる。
そこに、何だ、何だ、新川、どうしたんだよと長吉と荒井が姿を見せたので、いやいや、駅長の娘さんを僕が誘拐しただなんて…と新川が説明すると、誘拐?と長吉は聞き返す。
そう、君の部下がね、一言の断りもなく人様の娘をね拐っていったんだよ!と栄造は主張する。
いや、それは違う!だいいち、11日、僕は悦子さんに会っていませんと新川が説明したので、笑い出した長吉は、こりゃ駅長さん、何かの間違いだよ、ほら陽気も良いし、草津には良い男が多いからさ、きっと今頃はフラフラどっか出歩いてんじゃないのか?と気安く栄造の肩を叩いたので、無礼なことを言うな!と栄造は激怒する。
そうですよ、そんなバカな!と新川も持っていた水が出ていたホースをつい興奮して持ち上げてしまったので、水流が長吉の顔を直撃する。
長吉は新川に、バカも~ん!と怒鳴りつける。
その時、駅から騒ぎを聞きつけた加藤と仲本が飛んできて、駅長、何事です!と聞いてくる。
仲間が来て勢いづいた栄造は、こいつらがグルになって、わしの娘を誘拐したんだと言い出したので、えっ!悦子さんを!と驚き、やいやいやい!今まで俺たちはな、耐え難きを耐えてきたんだ、ことと次第によってはぶっ飛ばされるぞ、この野郎!と加藤は喧嘩腰になる。
面白いじゃねえか、てめえんとこの娘にサカリがついてるの棚に上げて、俺たちにアヤつけようってのか、この野郎!と長吉も喧嘩口調になる。
野郎だ?、上等な口聞いてくれじゃねやかよ、出っ歯!と加藤が罵ると、やかましい!山猿! と長吉も言い返す。
山猿で悪かったな~、おい、本人、何とか言ったらどうなんだ、この野郎!と加藤は新川を指出して挑発する。
僕は知らんよと新川が前に出て答えると、じゃあ聞こう、この男がもし隠してることがバレたらどうするんだ?と栄造が尋ねたので、その時は不肖碇谷長吉、この首を差し上げると長吉が自分お首の後ろを叩いて答えたので、けっ!ゴリラの首なんてクズやも買わないってと加藤が茶化したので、やかましいってんだ!と長吉は怒るが、バスの背後からこの言い争いを見ていたサダは、酷いわ…、うちの大事な父ちゃんをゴリラだなんて…とぼやく。
「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」の2階に居座っていた悦子に、皆さん、心配していらっしゃるわよ、もういい加減で帰ったらどう?とみゆきが勧めると、ねえ?もう少し置いといて…、今お父さんに会ったって無駄なんです、うんと心配させてやんなきゃ効果がないんだわという悦子は、あちょっと待ってと言い、みゆきが下げようとしていた皿から沢庵を取って食べる
駅でイラついていた栄造は、電話がかかってきたので、はい、もしもし!と出るが、はいはい…、ああ…、貨物3便異常なし!はいはい、了解!と答えて電話を切る。
そのちき、加藤が窓の外に走ってきて、目をミッ開き何か言いたげだったので、な、何だ?口ばかりバクバクして…、金魚じゃあるまし…と栄造は呆れるが、え?悦子でも見つかったのか?と聞くと、バグ、バグ、バグ、爆弾!と加藤がなんとかいうので、ば、爆弾!と栄造も仰天する。
ホームのベンチに、コチコチ時計の音が聞こえる怪しい金属の箱が置いてあったのだ。
慌てて駆けつけてきた仲本が近づくとすると、待て!時限爆弾かもしれないぞと加藤が止める。
お前、すぐ警察に電話してくれと栄造は長谷川に指示し、はいと答えた長谷川は駅舎に戻る。
やがて、消防車が駅に駆けつける。
消防署員や警官がベンチに近づこうとした時、突然走ってきたサダがその金属箱を抱き抱えて座ったので、近づいてた男たちは全員頭を抱えてしゃがみ込み、おい、気でも狂ったのか!と怯える。
サダが金属箱の蓋を開けると、中に入っていたのはただの目覚まし時計だった。
長吉や荒井も含め、サダに近寄った消防署員が、おい!どうしたんだ?と聞くと、あの~、これ、私がやったんですとサダは白状する。
え!と全員が驚く中、長吉はさだに寄ると、何だってお前…と訳を聞くと、 だって駅の人が父ちゃんことゴリラだなんてこくんだもんとサダが答えたので、その場にいた加藤は思わず笑い出した後、ごめん!と謝る。
その後、問題の金属箱を駅舎に持ち込んだは、ちょっと待てよ?これが実際に爆弾ならもう犯罪だ、しかしこれはれっきとした弁当箱だ、むしろこれを爆弾なんて騒ぐ奴らの方が問題だ!とサダと一緒に栄造らの前に座った長吉が説明すると、バカこの!そういうのを屁理屈ってんだよと加藤が抗議すると、屁理屈で結構、これは単なる弁当箱、私の昼飯だと長吉が言い張るので、ほお…、昼飯?よろしい、では、みんなの前でその昼飯を食べていただこうかと栄造は要求する。
すると長吉と佐田は狼狽えたので、驚くことはないだろ?母ちゃんが心を込めて作った弁当じゃんかよと加藤が横から口を出す。
父ちゃん…とサダが焦ると、良し!食ってやろうじゃないか!というと、長吉は目覚まし時計を分解しようとし始めたので、所長!冗談やめやめてください、栄養はないんだからと荒井たちは止めようとし、栄造も加藤も唖然とするが、 危ない、危ない!身体壊しますよ!と周囲の静止も聞かず、長吉は目覚ましの部品を口に入れ始めたので、さすがの栄造もあっけに取られる。
本当にね、所長、所長!と部下たちが止める中、長吉はまだ食べ続けようとしたので、見ていた加藤は愉快そうに笑い出す。
面白がって、加藤が湯呑みをサダに渡すと、長吉はその湯呑みに部品を吐き出そうとする。 これには栄造も長谷川と顔を見合わせて困惑するしかなかった。
そんな栄造は、引き出しの中から取り出すと、何はなくと江戸紫はいかがです?と長吉に勧める。
おかげさまでもう良いです、やめやめてくださいと荒井は必死に止め、食べるんなら、良く噛んで…などと言っていたが、長吉が加えた部品が口の中で鳴り出して、長吉も気を失いそうになったので、所長!と荒井は呼びかける。
その頃、「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」の2階では、そう…、それほどあなたが思い詰めてるとは知らなかったわ…、ここで待ってらっしゃいよ、駅長さんに叱られるかもしれないけど、ま、ともかくやってみるわとみゆきは悦子に言い、立ち上がる。
その後、バスの営業所に帰ってきた長吉とサダは、署員たちの手当てで口の中をゆすいだりしていた。
新川、こうなったら意地だ、死んでも駅長の娘と結婚しろ!俺も一肌脱ぐぞと長吉は新川に命じる。
ですが肝心の彼女が…、 何、草津中、しらみ潰しに探すんだ!と長吉はいうので、新川は、はいというしかなかった。 長吉が所員に水!と要求している時、そこにやってきたのはみゆきで、あの~と、大騒ぎの所内に声をかける。
「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」の2階で苛立っていた悦子だったが、いや、だから一体何なの?という声が下から聞こえてきたので、パッと顔が明るくなる。
急いで下に降りると、長吉に押されて店の中に入りかけていた新川がいたので、新川さん!と悦子は呼びかける。
悦子さん!と気づいて抱き合った新川は、うち飛び出しちゃったんだって…?と聞くと、うん、だってお父さんがあんまりわからんちんなんだもん…と悦子が甘えるので、そう困っちゃったね~と言いながら新川は目を閉じてキスをしようとしたので、長吉もつい下唇を突き出し、さあ、もうその辺で良いんじゃないかな?第3者もいることだし…と、抱き合った二人に注意する。
え~、ただ今から2人に策を授ける、つまり≠、それは掛け落ちである!と長吉が告げたので、掛け落ち!と悦子は驚く。
バスから降りてくる乗客に向かい、1にやまだ屋、2にやまだ屋、3、4がなくて5にやまだ屋!と繰り返しながら旗を見せていたのは山田風太の方を叩いたのは長吉だったので、所長さんですか?と風太が驚くと、いや実は山田さんに折り入ってちょっとお願いがあるんですと言ってきたので、 この私に?と風太は驚く。
ちょっとそばに移動し、長吉から耳打ちされた風太は、えっ、駆け落ち!と驚く。
午後10時に私のライトバンで?とさらに耳打ちしてきた長吉から話を聞く風太。
それを駅前で見かけた加藤は、また何かやってやがんな?インディアンゴリラめ…と仲本に話しかける。
これは悦子さんに関係あるぞ、おい…と仲本が言うので、うん良し!徹底的にマークすっかと言いながら、加藤は改札鋏を回して鉄砲のように息を吹きかける。
自宅に戻った悦子が、お母さん、お母さん!と呼びかけると、悦っちゃん、帰り!と政子は笑顔で近づいてくる。
お父さんどうしてる?と悦子が聞くと、うん、強がり言って平気な顔はしてるけどね、内心はお前のことばっかり考えてるようだよと政子は教える。
そう?ねえ、お母さん、私、お母さんにね、もういっぺんだけ無理を聞いてもらいに来たのと悦子が言うので、無理?と政子は聞き返す。
うん、実はね、お父さんの気持ちがほぐれるまでしばらくこの家にいない方 が良いと思うの、別に大時代の家出じゃないんだからさ、ね?うん…、色々考えるとその方が良いかもしれないね~、でも悲しむだろうな、お父さん…と政子は言う。 うん…、あ、それがちょっと弱いんだ…と悦子も考え込む。
ふ~ん…、そいつは臭いなあ~と、駅で加藤と中本から長吉と風太の動きを教わった栄造は、やっぱり秘密はあのゴリラが握っていそうだねと答える。
こうなったらですん、撃ちてし止まん!これですよと加藤が言うので、ケネディ曰く…と栄造が言い出すと、また言いましたか?と加藤は驚く。
言ったね~、毒を制するには毒を持ってせよと…と栄造が言うので、なるほど…と言うので、仲本と加藤はなるほど!と納得する。
一方、「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」では、長吉、新川、みゆき、春子らが、駆け落ちの打ち合わせをしていた。
これが良いと所員が勧めると、そこは景色が悪いからだめよ、女の子の身にもなってとみゆきが反対する。
そんな中、苛立って腕時計を機にする新川に、落ち着け!お前男だろ?と長吉が叱るが、ママ聞いてよ、僕のね…とまだ署員が自分の意見を通そうとするので、うるさい!と長吉もキレる。
そこに両手に荷物を下げた悦子が走ってきたので、お、来た来たと長吉は安堵し、どうした?お母さんに会ってきた?と新川が話しかけると、心配しないで、楽しくやってこいってと悦子は答えたので、そう…と新川は安心する。
良っしゃ、そうと決まったら、早速スケジュール発表するよと長吉は言い出す。
10時にだ、山田屋のブーが…と長吉が作戦を話し始めた時、 大変だ!おい駅長たちが来たぞ!と荒井が知らせにくる。
え?お父さんが!と悦子が狼狽する中、ちょっとあんたは2階行こうとみゆきが手招く。
焦って悦子が2階へ駆け上がった次の瞬間、おう、みなさんお揃いで…、何の相談ですかな?と店に入ってきたのが加藤と仲本を連れた栄造だった。
いらっしゃいと平静を装ったみゆきがカウンターに入ると、いやね、昼間の事件でいささか胃を悪くしましてな…、もっか洗浄中ってとこですと長吉がごまかす。
あ、ママ、特級酒と長吉が頼むと、じゃあこちら超特級と行こうかな?などと栄造は言い出し、加藤が超基地を揶揄うようなポーズをする。
すると長吉が、5000 円の刺身!と言い出したので、栄造は仰天しながらも、 あのね、月賦で払うらしいなと加藤に笑いかける。
そんな栄造は、背後でウロウロしていた新川に、おいおい、何をまごまごしてんだよ?別に取って食うとは言わんよと栄造が話しかけたので、新川は狼狽する。
おい先方様回しちゃってくださるんだ、こっち来て飲めよ、飲めよと長吉も新川に声をかける。
そんな中、1人2階に上がった悦子もどうしていいのか分からず、ウロウロしていたが、気になってそっと階段から下の様子を伺う。
ダメですな駅長、客種が悪いと酒までまずいっすねと加藤が言うので、ああ、そうだな、おい、2階でやろうか?と栄造が言い出したので、長吉たちは階段の前に立ち上がって妨害し、2階の悦子も慌て出す。
おい、何だ、何だよ?と栄造たちは戸惑うが、あ、あの、今2階だめです!と春子が言う。
何で?と栄造が聞くと、あの~、あの~、ま、まだママの布団敷きっぱなしで…と春子が言うと、そうそうそう…、あのまだ布団引きっぱなしとみゆきも話を合わせる。
あ~良いよ、良いよ、そんなら僕ら片付けるから…と栄造たちが言うので、 いやいやいや…と、必死に二階へ行くのを阻止していた長吉は、強引に栄造をカウンター席に座らせると、いや、すいません、いや、いや…、水虫ですなどと言い出すと、まあまあまあ、こっち、こっち…と、加藤と中本も席に座らせる。
いや~、水虫ってのはひどいですな、もう夏が来ると生きた心地しないんですよなどと、長吉は栄造に突然話だす。
何だ?突然水虫の話になぜなるんだ?と栄造は迷惑がるが、そこに飛び込んできたのが風太で、所長!苦労しましたよ!と長吉に話しかけてきたので、長吉と荒井はジェスチャーで黙らせ、荒井は2階を指さして風太に知らせる。
ああやっぱり夏はこれに限るねと言いながら、栄造や加藤と中本がビールを開けると、ちょっとごめんなさいと言いながら、風太が栄造と加藤の間に割り込んでくる。
迷惑がる栄造に、駅長、何の話をいたしましょう?などと言いながら、颯太は突然ビールを注いでくる。 話なんかないよ、君なんかとは…と栄造が露骨に嫌がると、おいおい、あの2階行こうか?と再び加藤らに声をかける。
加藤と中本が立ちあがろうとすると、あの~、おつまみできましたから、どうぞとみゆきが勧めてきたので、ああ、そうっすかと答え、加藤たちはまた席に座る。
2階の悦子は、加藤らの声を聞いていた。
そんな中、風太は、2階に上がる階段の下に座り込む。
加藤が立とうとすると、長吉たちバス所員も全員立ち上がろうとするので、あれ?何だ、この野郎!と加藤は意図が分からず気色ばむ。
おいおいどうでも良いけど、何で君はそんなとこで飲んでんだ?と風太の位置を不思議がる。
風太は、あの~、私ね、ちっちゃい時から階段で飲むのが好きなもんでしてね~とごまかす。
変なのと栄造が呆れると、あ、駅長さん さっきの水虫の話ですけどねと長吉がまた蒸し返したので、何だよ?と栄造が嫌がると、いや…、何かあの良い名薬ないでしょうかね?と長吉はしつこく聞くので、そんなものないよ!と栄造は冷たく言い放つ。
いや、私あのね、もう毎年夏は泣かされるんですわ、これで…、お願いします、何か、あの…、良い薬があったら1つ…と長吉はねばる。
そんなに困ってんの?と栄造が聞き返すと、これ、困ってんですよと長吉が言うので、実はね…、水虫には僕も毎年泣かされてんだと栄造は堪える。
そうでしょう?と長吉が話を促すと、あのね~、大体君ね、あの水虫が鳴くっての知ってるかい?と栄造は言う。
鳴くんですか?あいつら…と長吉が聞くと、 鳴くとも…、水虫の鳴き声聞いたことないの?と言う栄造は、なんて?と長吉が聞くと、あれ鳴くんだよ、あの水曜日の晩にね、夜更けて…、2時頃だな~、イッヒッヒ!と言うので、長吉は、はあ…と答えるしかなかった。
荒井が新川に名の語とか耳打ちしている中、特に妙薬は?と長吉が聞くと、妙薬はね、この世界中の博士が今ね、研究してんだけど、ないね、なかなか…、あところがね僕は1つね妙法を発見したな…などと夢中で栄造が自説を述べていると、その背後をそっと新川が通り抜け、店から外へ出ていく。
あの水虫ってものは足の裏に住むだろ? ね?これをね、足の裏だと思わせるからいけない!足の表とね黒々と書いちゃうんだよ、足の裏に向かって…と栄造はまだ話し続けていた。
そうするとね、ある日1人の水虫が出て来てね、その字を読むだろう?足の表と書いてあるからびっくりするね、おいここは足の表だぞ~、俺たち足の裏行け~って…とくだらない話を続ける栄造の話を聞いていた悦子は、吹き出しながらも、馬鹿馬鹿しいと白ける。
山から1人1 出てきたのも抜いてね、最寄りの木の糸でも縛って…などと、下からはまだ栄造の水虫話が聞こえていた。
その時、二階の窓に梯子らしきものの先っぽが見えたので、警戒した悦子だったが、顔を見せたのが新川だったので、新川君!と喜ぶ。
新川は、早く、荷物!と呼びかけたので、悦子は自分の荷物を渡す。 最後に悦子自身がまどか邦子氏をかけ降りようとしたので、大丈夫?と新川は心配する。
そんな中、周囲を見回していた栄造が、ママ!バカに人が少なくなったようだけど?と不思議がったので、 あらそうかしら?とみゆきはとぼける。
おトイレよ!と手を叩いて思い出した振りをしたみゆきが言うと、そうそうそう、おトイレ、おトイレね!いやあいつらの便所と来た日には世界的に長いからななどと長吉が言うので、そうそう…とみんなで頷きあう。
その時、加藤が栄造に、臭いですね~と耳元で囁きかける。
うん、あのな、俺、あのゴリラ見張ってるから、お前たちな、2人で新川つけろと栄造は加藤にこっそり命じる。
バスの営業所前で待っていた、やまだ屋のライトバンの所に悦子を連れてやってきた新川は、色々ありがとう、車は草刈駅前に置いてきますからと待ち受けていた風太に言うと、悦子も、すいません感謝しますと頭を下げる。
早く行って、早く、早く!と風太は2人を急かし、車に乗り込んだ2人に、元気でねと声をかける。 風太が去った直後、その様子をバスの横から見張っていた加藤と仲本は、ちくしょう、やっぱりそうか!知らせようか、駅長に?と話し合うが、ぐずぐずしてられないよと加藤は答え、中本が持ってきたバイクに二人乗りして後を追うことにする。
とうとうと私たちやったのね…と、版を運転する新川の方に悦子が頭を乗せながら聞いてきたので、ええ…、いつか分かってくれます、いつかあなたのお父さんだって…と新川は答えるが、その後頭部に拳銃が突きつけられているに、しばらく新川は気づかず、拳銃を片手で押し除けようとしていた。
触り心地ですぐに拳銃に気づいた新川と悦子が背後を見ると、命が惜しけりゃ、俺の言うことを聞いてもらおうか?と、いつの間に乗り込んだのか岩崎が命じて来る。
蛇行し始めたバンの動きに気づいたバイクの加藤と仲本は、どうだ、あの運転?嫌だな~、もう始めちゃってんだろうか?ラブシーンを…などと勘違いする。 平根を越えて飯山に抜けるんだ、間違えるなよ?と岩崎は新川に命じていた。
「小料理・お茶漬け 山妻(さんさい)」では、戻ってきた風太が、手真似で作戦成功を知らせたので、それを見たみゆきは栄造にさあとビールを注ぎ、長吉は、さて、だいぶ飲んだな、ぼちぼち引き上げとすっか…と言って席を立つ。
すると栄造も、さ~て、だいぶ飲んだな、ぼちぼち引き上げるとすっかと言うと同時に立ち上がる。
その頃、新川は、いったん通り過ぎた道に引き返して道を変えたので、おい道が違うんじゃねえか?と岩崎が脅すと、いえ、こっち回った方が近道なんですよ それを比丘していたバイクの仲本も、加藤!道が違わねえか?と呼びかけるが、恋は盲目っていうからね、おおかた道が見えねえんだろう?と加藤はまたしても見当違いなことを言う。
新川のライトバンは、いつの間にか元来た道を帰り始めていた。
店の外に栄造と並んで出た長吉が、さあそろそろお別れですなと言うと、いやいやそうはいきませんよ、今夜はね、徹夜で付き合いますからねと栄造は答える。
そんな長吉と栄造の横を通り過ぎたのは、戻ってきた新川のライトバンだった。
その直後、止まったバイクに乗った加藤が、あ、駅長、いました、前のライトバンですと呼びかける。
ライトバンは駅前で停車したので、え孕っ!と驚いた栄造や長吉とバス所員たちは車のほうに走り出す。
飛ばし 騙しやがったな!と気づいたいわさきは、先に悦子を外に出していた新川を拳銃で殴りつける。
それに気づいた悦子も、新川君!と戻ってきたので、逃げるとぶっ殺すぞ!といわさきは銃を突きつける。 走り寄ってきた加藤と仲本は、いきなり岩崎が発砲してきたのでその場に伏せる。
そこに駆けつけて来た栄造と長吉も、これ、どうなってんだ?と物陰に身を潜めて呟くが、その時、車から飛び出してきた新川が、ライトバンの中に脱走犯のギャングが!と長吉と栄造に伝えたので、えっ!悦子!と栄造は驚く。
すると、車から降り立った岩崎が、近寄るな!近寄るとこの子の命はないぞ!分かったなと悦子を外に引き摺り出して、銃を突きつけながら叫んだので、栄造は狼狽する。
そこに警察のジープと消防車が到着する。 身を隠したバスの横から顔を出し、包囲された事に気づいた岩崎は、くそ~と吐き出すと、悦子を自分の前に出して盾にすると発砲してくる。
これで警官隊は動けなくなったので、よ~しと覚悟を決めた栄造が前に出ようとしたので、危ない!警官に任せなさい!と長吉は止める。
悦子はわしの娘だ、わしは助ける!勇気を出して全員集合させてくれ!と栄造は長吉に頼む。
良し、全員集合!と叫んだ長吉に、加藤や中本やバス営業所員たちが集結してくる。
みんなで円陣のスクラムを組むと、じゃあ良いな?頼んだぞ!と栄造は言い、加藤らは真顔で頷くと、全員でオウ!と叫んで解散する。
警官(大屋満)が、おい、抵抗はやめえ!おみゃあの罪は重くなるだけだぞ!とマイクで呼びかける。 しかし岩崎の返事は発砲だった。
ステップオーバーしてねえや!おめえはもう袋のネズミだ!早えとこ観念して出てこい!と警官の呼びかけが続く。
その後も発砲する岩崎が隠れていたバスの反対側に走り寄ったのは、女装した加藤だった。
加藤はバスの後部を回り込み、悦子と岩崎の背後に回る。
鉄砲ば捨てえ! 捕まるぞこれ以上の罪を重ねるなと警官が呼びかけている隙に、乗降口までやってきた加藤は、悦子の背後から毛叩きの棒で合図をする。
驚いた悦子が振り返ると、そこに加藤がいたので喜ぶ。
加藤は悦子に接近し、岩崎が一瞬、悦子の手を離した隙に自分の手を代わりに掴ませ、悦子はバスの背後から逃げ去る。
戻ってきた悦子を見て、悦子!と栄造は喜ぶが、悦子は栄造に抱きつく。
その間に、もう1人がバスの後部から回り込んで乗降口に走り寄り、車内に隠れる。
加藤はなんとか岩崎の手を振り払おうとするが、振り向いた岩崎は後ろを向いた加藤が別人にすり替わっていることに気づかず、また手を掴んだので、加藤はその腕を噛み、乗降口に逃げ込む。
岩崎も素早く乗降口からバスに乗り込んだ途端、バスは発車し、その場でグルグル回転走行を始める。
あっけに取られてそのバスを見守る栄造と悦子、新川、荒井と風太と仲本がいた。
乱暴な運転を散々続けたバスがようやく停車すると、乗降口から最初に出てきたのは、口から白煙を噴き出した女装の加藤だった。
次に降りてきたのは、やはり白煙を吐き出した長吉で、最後には岩崎もフラフラになって降りてくる。 そこに警官たちが突進してくる。
大喜びする栄造と悦子の元に、作戦成功…と言いながら、ヨレヨレな姿になった長吉が戻ってくるが、その場に倒れそうになったので風太や中本が腕を掴んで支えてやる。
そんな長吉の手を握った栄造は、なにはなくとも全員集合のおかげだよと言い、全員大喜びする。
悦子は新川さん!と言いながら抱きついて行く。 それを目撃した加藤は、あ!俺だって好きだったのに~と言いながら、バスの横に崩れ落ちる。
人を 3枚目にしやがって!泣いちゃうから、殺せ~!と加藤は1人で地面に転がる。
ある日の草津駅の改札口からホームに入って来たのは、新婚姿の新川と悦子、そして礼服で結婚式に出席した長吉やサダ、政子たちの姿だった。
みゆきの側に来た栄造は、ママ、今度のことはね、言わばあんたが結びの神だ、あの岩崎のことは忘れて、さあ一言言ってやってくれ、さあ!と頼む。
少し躊躇っていたみゆきだったが、気を取り直し、悦子さんおめでとうと祝いの言葉をかけると、ありがとうと悦子も例を言う。
すると、ちょっと待った!結びの神はこの私じゃなかったかな?と言い出した長吉が前に出て、お礼を言うなら、このわしに言ってほしいねと悦子とみゆきに言う。
そんな中、何を言ってやんで~、月夜の晩ばかりあると思うなよ…と背後から睨んでいたのは加藤だった。
すると栄造が前に出てきて、ケネディも言いました、栄光は戦いの後からやってくると…というと、毛沢東じゃなかったかな?と長吉が茶々を入れる。
いや、ケネディです!これからも駅とバスは草津の発展のためにお互いに切磋琢して共存共栄の気持ちで戦い抜きましょう!と栄造が演説口調で言うので、ストップ!と止めた悦子が、さらにケネディ曰く、忘却は人間の特権である!今までことは忘れてちょうだいと言いながら、栄造と長吉の手を握らせたので、2人は苦笑いしながら握する。
その時、忘れられないものが1人ここにいますよ!と加藤が叫んだので、全員が笑いだす。
列車に乗り込んだ新川と悦子をホームに見送りに来た一同だったが、新川君、悦子のことはよろしく頼むよと栄造が声をかけると、はいと新川は答え、ありがとう皆さん、じゃあ行ってきますと悦子も答える。
汽笛が鳴り、ありがとうございましたきますという新川の声を共に、電車が出発する。
みんなが手を振って見送る中、電車を追った加藤は、悦子さん、早く新川と喧嘩して戻って来いよ〜!俺は真面目に待ってるぜ〜!と遠ざかって行く電車に呼びかけ、制帽で隠した顔は悲しそうだった。
栄造は駅長らしく、遠ざかって行く列車に敬礼していた。
終
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