「警視庁物語 一〇八号車」

シリーズ第10弾で、上映時間54分の中編

 共同監督というのもちょっと珍しいように感じる。

 悪役イメージが強い山本麟一がレギュラー刑事を演じているのでも知られる本シリーズだが、今回は同じく悪役イメージが強い関山耕司さんまで巡査部長役として登場しているのが嬉しい。

昔から、刑事とヤクザは、どちらも強面で顔の区別が浮かないと言われているくらいなので、悪役ができる役者が刑事をやれるのも自然なのだろう。

 梅津栄さんが、メガネをかけた新聞記者役で出ていたり、浜田寅彦さんも、前歯がない、エプロン姿の主夫のような奇妙な役を演じてチラリ登場する。 

曽根晴美さんも若いし、東野英治郎さん演じる町工場の主人役も自然。

さらに、警官の殉死事件というショッキングな出だしとは裏腹に、調書類を調べる地道な捜査が描かれているのもかなり異色だと思う。

つまり、動きのあるシーンがほとんどないのだが、それでも飽きさせないのがすごい。 刑事たちの執念を感じるからだろう。

 映像的にも、平板になりがちの室内劇を、照明を工夫して、人物たちに色々な陰影を加えているので、それなりに緊張感を表現できている。 なかなかの良作だと感じた。

 【以下、ストーリー】

 1959年、東映、長谷川公脚本之、若林栄二郎+村山新治監督作品 

明け方、パトカーが警邏中、至急、至急!警視46から警視庁!警視46から警視庁!と言う呼びかけの無線が聞こえてくる。 

警視46どうぞと司令部から返信があると、110番で通報があった窃盗被害の模様をお知らせします、被害状況は日通新地大崎第二工場で、被害はトランジスタラジオ約20ダース、なお、被害時刻は本日午前2時から4時の間と推定されます、どうぞ!警視庁了解!とやりとりが無線から聞こえてくる。

 助手席の石川巡査(相馬剛三)が、もう30分以上も経ってますね、ホシが逃げちまったんでしょうと話しかけると、運転をしていた金原巡査部長(関山耕司)もうんと生返事をするが、その時、車外に何かを発見しパトカーを停車する。

 それは怪しい軽トラックが停まっていたので、石川巡査にうなづいてみせた金原巡査部長はゆっくりパトカーを接近させてみる。

 パトカーを降りた石川巡査は、懐中電灯でトラックのナンバーを悪人すると、「4 す-1946」となっていた。

 運転席の中を照らすと、寝ていたらしき男がいたので、どうしたんですか?と聞くと、何も言わず急発進したので、停まれ!と呼びかける石川巡査を外にぶら下げたまま走り続けるので、金原巡査部長は急いで反転し、後を追跡する。

すると前方から銃声が聞こえたので、サイレンを鳴らして接近すると、振り落とされたらしい石川巡査が路上に倒れていた。

 パトカーを降りて、そばに駆け寄り、石川君!と呼びかけそのテクブの脈を探った金原巡査部長は急いでパトカーにかけ戻ると、至急、至急!警視108から警視庁!と無線電話をかけ始める。

 警視108どうぞ!と応答があると、金原巡査部長です、同僚の石川巡査が撃たれてただいま重症です!場所は三河大知町27番地、すぐに病院に運びます!犯人は小型トラックで逃走、ナンバーは「4ハイフォン、雀のす1946、二人乗りようです、至急手配願います、どうぞ!と通報する。

警視庁了解!の応答がある。

 総合司令室を背景にタイトル 連絡を受けた交番の警官が、捜査主任(神田隆)の自宅に知らせに行く。

 スタッフロール 警視庁青葉寮 キャストロール 長田部長刑事(堀雄二)や林刑事(花澤徳衛)、渡辺刑事(須藤健)らの自宅にも警官が駆けつける。

 事件現場では、すでに鑑識作業が始まっていた。

遠巻きに野次馬や新聞記者たちが見ている中、おい、これとここを写してくれ、これが薬莢ですかね?などと刑事たちが鑑識に指示したり互いに話し合っていた。

鑑識がタイヤコンの石膏採りをしている横で、すると石川巡査は即死だったわけか?と捜査第一課長(松本克平)が聞くと、いえ、脈はまだ微かにあったんですが、病院に運んだ時にはもう…と金原巡査部長は答える。

 その小型トラックには2人乗っ取ったんだな?と主任が聞くと、そのようでしたと金原巡査部長は答え、ナンバーは「4すの1946ですか?」と林刑事(花澤徳衛)が確認し、型はわかりまでんか?ときくが、さあ、見ればわかると思いますが、幌が掛かっていて、ボディはグレーでした…と金原巡査部長は言う。

 横っ腹に文字のようなものは?と長田部長刑事が聞くと、そこまではよくわかりませんと金原巡査部長は答える。

 うん、しかしナンバーは取れているんだから、調べたら持ち主はすぐ割り出せるだろうと課長は言い、ともかく病院兵隊を見に行こうと指示する。

 移動し始めた時、後方から自転車で近づいた警官が、課長!今本書から連絡がありまして、小型トラックの持ち主が判明したそうですと伝言してくる。

そのメモを受け取った課長はそれを主任に渡すと、よし、じゃあ、林くんと山村君はすぐここへ行ってくれと命じる。

 縄張りで足止めされていた記者たちは、警官に、ねえちょっと入れてくれよ、すぐ終わるからと頼んでいた。

 じゃあ、失礼しますと敬礼し、金原巡査部長が離脱すると、課長!と呼びかけ記者たちが、車に乗り込もうとしる課長目がけ一斉に近づいてくる。

 課長、お願いしますよ、ナンバー取れてるんだって?などと記者たち(清村耕次、梅津栄、大木史朗)は口々に質問してくるが、まあ、待ってくれ、追って話すと課長は答えるだけだった。

 林刑事と山村刑事は「サガミ電機株式会社」に来ていたが、ナンバーはみんな違うようだねと林刑事が山村刑事(南廣)に指摘すると、今、ご主人呼んでもらいましたというので、ああ、そうと答える。

 主人(石島房太郎)が顔を見せると、どうもお忙しいところ…と林刑事は恐縮する。

いや、トラックのことで何か?と主人が言うので、ええ、お宅のトラックは全部で何台ですか?と林刑事は聞くと3台ですと言うので、3台?というと、その横丁においてあるやつだけですか?と聞くと、そうですと主人は答える。

 しかし、私の方で調べたところによりますと、「4 す-1946」ってナンバーのトラックが…と山村刑事が聞いていると、それを横で聞いていた店員(日置三郎)が、ああ、それなら旦那、先月の初めに売ったやつですよと教える。

それを聞いた主人も、ああ、53年型のかいと思い出す。

 売ったとおっしゃいますと?と山村刑事が聞くと、ええ、先月新車と取り替えたもんですからと主人は言う。

 ああ、じゃあ、売った先は分かりますね?と林刑事が聞くと、さてそこまでは…と主人が言うので、わからないですか?と林刑事は聞き返す。

 ええ、人に頼んだものですから…と主人が言うので、ああ、その人っていうのは?と林刑事が聞く。

 ええ、いつもうちが頼んでいる修理屋さんなんですがね、えっと、なんて言ったかな?と主人は先ほどの店員に聞くと、フジイガレージですと店員が教えたので、フジイガレージですねと山村刑事は手帳に記す。

 その足で林と山村刑事はフジイガレージに向かい、そこの主人(東野英治郎)と面会する。

 実はさっきサガミ電機の社長さんから電話がありましたんで、だいたいわかっております「4のすの1946」をお調べだそうで…と主人が言うので、ええ、そうですと林刑事が答えると、ええ、それですと、ええ、先月の5日に、この方にお売りしてるんですと名刺を見せてくる。

ああ、そうですかと言いながら林刑事が見ると、はあ、堀和彦ですか…と確認する。

いくつくらいの人ですか?と山村刑事が聞くと、30くらいですかな?と主人は言う。

 うちで新聞広告出したらそん日のうちに見えて、即金取引で乗って帰られたんですよと主人は教える。 その時、誰か一緒でしたか?と林刑事が聞くと、いえ、1人きりですと主人は言う。 

そうすると運転はできるわけなんだなと林刑事は呟き、電話番号も書いてありますねと山村刑事が名刺を見ながら指摘する。

 しかし主人は、ええ、書いてはあるんですが、どうも偽電話らしいんですよと言うので、偽電話?と山村刑事が聞き返すと、ええ、実は名義変更もまだなもんですから、税金がサガミ電機さんの方に来ちゃいましてね…、そのことを私から連絡しようと思って電話したんですよと主人は言う。

そしたらその電話はもう2年も前から銀行が持ってるんだそうですと主人は言うので、ああ、なるほどねと林刑事は納得する。 

これがその徴税令と言いながら、主人は林刑事に見せる。 ああ、そうですか、この名刺の住所もお調べになったんでしょう?と林刑事は確認すると、ええ、やはり偽でしたと主人は即答する。

ああ、そうですか、この堀って男の人相わかりますか?と林刑事が聞くと、ええ、会えばわかると思いますと主人は言う。 

ああ、そうですか…、堀は1人で運転してったんだから免許証はもっとたんだろうな、府中の試験場で免許台帳から選び出して人相を見ていただいたらどうかね?と林刑事が提案すると、そうですねと山村刑事も賛成したので、ご協力願えますか?と林刑事が頼むと、ええ、それはもう、私の方も責任上困ってたくらいなんですから…すぐでしょうか?と主人は承知する。

 あ、それから、その小型トラックと同じ型のカタログかなんかないでしょうか?と山村刑事が聞くと、ええ、あれはトヨタSG53年型だから…、え~っと、これですと主人はカタログを見つけ差し出してくる。

 捜査本部で山村刑事から報告を受けた主任は、昼食のそばを食べながら、うん、しかし念の為、このかたに間違いないかどうかを、パトカーの金原部長に確かめた方が良いなと指図する。

なあ、それからこっちの名刺ですが、一応印刷の割り出しを手配したらどうでしょうかと山村刑事は提案する。 そう、案外、その線からホシが割り出せるかもしれんからなと主任も賛成する。

 「警察官殉職事件 特別捜査本部」から出ようとした山村刑事に、帰ってきた長田部長刑事がどこへ?と聞くので、はあ、ホシの名刺が手に入りましたので…と山村は答えると、長田は、ああ、そうと納得する。

 部屋に入ってきた長田刑事部長に、やあ、解剖の結果はどうだったね?と主任が聞くと、やっぱり心臓に一髪入ってました、鑑定の結果、凶器は28口径のコルトと分かりましたと長田は報告する。

 28口径コルトと…と主任が繰り返すと、はあ、ライフルマークで未検挙の犯罪に使われたことがあるかどうか、金子君が引き続き調べてますと長田は言うと、そうか…、ご苦労さんと主任は労う。

 ところで、例のナンバーの方はどうなりました?と長田が聞く。 

その頃、府中の自動車運転試験場に、フジイガレージの主人と共に来た林刑事は、係員から呼ばれたので、ありましたか?と聞くと、堀和彦さんでしたねと係員から確認されたので、ええと答えると2人いるんですがねと言われ、免許台帳を受け取ると、フジイガレージの主人に見せる。 

違いますか?と林刑事が聞くと、はあ、眼鏡もかけておりませんし…と主人はいうし、ああ、年も大正6年っていうと40代ですね、この人は…と林刑事も納得する。

係員から、こっちは32歳ですよと言われて渡されたもう一枚の台帳を受け取った林刑事は、はあはあ、これはどうですか?と主人に見せるが、違いますねと主人は首を傾げる。 

それを聞いた林刑事は、堀和彦ってのは、この2人だけですかね?と係員に再確認するが、ええと言うので、うん、そうするとあの名刺の掘ってのは偽名かもしれんぞと呟く。

 一方、本部に呼び出された金原巡査部長は、見せられた車のカタログを見ると、主任さん、この型に間違いありませんと答える。

 うん、とすると、この型で、「4ダッシュす−1946」か…と、主任は資料整理の作業を始めるが、金原巡査部長が腕時計に目を落としたので、急ぐのかね?と聞くと、はあ、これから石川君のお通夜の準備を…と言うので、ああ、それは悪かったな、じゃあ、もう良いですから…と主任は言い、長田部長刑事は、運ばれてきた茶を金原に勧めると、かかってきた電話に主任が出る。

 はい捜査本部、府中の運転試験所?あ、林君か!見つかったかね?と長田部長刑事は林刑事からの電話に聞く。 えっ!偽名?うん、北区中里…と主任は繰り返すが、じゃあ私は帰りますからと金原巡査部長は言うので、長田がどうもご苦労さんと礼を言う。

よしわかった、するとそっちは謙虚台帳の人相で通商堀和彦の本名を割り出そうってわけだな、うん、大変だが、よろしく頼むよと言って電話を切ると、渡辺君と高津君!と一服していた渡辺刑事(須藤健)と高津刑事(佐原広二)を呼ぶと、どうも我々が探している堀和彦は、この2人じゃないらしいんだな、一応、手分けしてアリバイを取ってみてくれんかと頼む。

 2人が出ていくのとすれ違う形で金子刑事が戻ってきたので、おお、ライフルマークと一致するのはあったかい?と主任が聞くと、ありませんでしたねというので、拳銃の線は打ち切りだな、これで…と主任は言う。 

その頃、府中の運転試験場では、免許代長から該当者探しをフジイガレージの主任と林刑事が続けていた。 そこに、こんにちは、カツ丼2つ、こちらですか?と岡持片手の出前(植松鉄男)が来たので、ああ、ここだ、どっかそこへ置いてってくれと林刑事が声をかける。

 はい、あ、どうも、遅い昼飯になちゃいましたけど、どうぞと林掲示は主人に勧め、あ、お嬢ちゃん、すいません、お茶を!と試験場の女性に声をかけ、主人と一緒にカツ丼を食べ始める。

 渡辺掲示は中古車展示会で客に車を勧めていた係員(杉義一)に、堀和彦さんって方は?と聞くと、あ、堀でしたら」今、出てますがというので、出てる?今日朝からずっと来てたんですか?と聞くと、ええと係員は怪訝そうに答える。

いや、警視庁のものですが、奥さんの話だと昨夜お宅に帰らなかったそうなんで、まあ、その辺のことが参考までに知りたいんですが…と渡辺刑事は誤魔化す。

 ああ、そうですかと納得した係員は、昨夜でしたら、堀君は僕たちを一緒でしたと言うので、何時頃までですか?と聞くと、一晩中です、麻雀で徹夜してしまいましてねと係員は苦笑しながら答える。

 夜、捜査本部に戻った渡辺刑事からそのことを聞いた主任は麻雀?と驚くが、間違いありません、裏付けも取れましたからと渡辺刑事は言うので、やっぱり人違いかと主任は落胆する。

 高津君、お前さんの方も白だったのかい?と渡辺刑事が、店屋物を食べていた高津刑事に聞くと、うん、ハイヤー会社の運転手でね、昨夜は一晩中、神宮外苑で映画のロケーションに雇われてたらしいんだと言う。 

名刺の線はどうだったかな、山村君?と長田部長刑事が聞くと、ああ、手配は進めているんだがね、今の所どうも当てにはならんようだと主任が答えたんこで、ああ、そうですか…と長田は納得する。 

そんな主任は、亡くなった石川巡査の「御霊前」袋に捜査一家と記名していた。

ちょっと崩しすぎたかな〜と呟いた主任に、主任、ホシを人相から割り出すせんを林くんが進めていますから、直接ナンバーから割り出す線を追ってみたらどうでしょうと長田部長刑事が提案してくる。

と言いますと?と渡辺刑事が聞くと、うん、つまり通商堀和彦と名乗るホシは、先月の5日に小型のトラックを手に入れているんだから、それより後に起こった交通事故の長所を調べれば、あるいは問題のナンバーが見つかるかもしれないと長田は言う。

 ナンバーが見つかれば、当然自動車には所有者は乗ってるはずですからねと長田部長刑事が指摘するので、なるほど…、そいつは良い思いつきだな〜と主任も納得する。 

しかし、ホシが交通事故を起こしているかどうかですねと金子刑事が指摘すると、だったら、ついでに、スピード違反とか駐車違反といった道路交通取締法違反の長所も調べてみたらどうでしょうか?この方が可能性があるかもしれませんねと山村刑事が発言する。 

それを聞いた主任は、そうだな〜、じゃあ早速、二手に分かれてやってもらおうかと言い、刑事たちは全員、はい!と答える。 山村君、僕ら違反の方を探そうと、隣にの机の高津刑事が切り出す。 

それを聞いた長田部長刑事は、そうか、じゃあ、俺たちは本朝に戻って事故を調べようと言い、よし、この署の刑事にも応援を頼もうと主任も提案する。

 府中の自動車運転試験所で、著書を確認していたフジイガレージの主任に、お疲れでしょう?と林刑事が、夜間から急須に湯を入れながら聞く。

 流石に疲れた主人は、ええまあ、ここにあるだけ見ちゃいましょう、私もなんとかあの人を探さんことには税金がサガミ電機さんの方に来ちまうから…と言うので、そうですか…、すいませんね、どうも…と、林刑事は恐縮する。 

「墨田区検察庁」「警視庁交通第一課分室」の看板が出た建物では、大勢の刑事たちが、交通違反の調書を確認していた。

桜田門の本庁の「交通総務課 管理係」でも、金子刑事、渡辺刑事、長田部長刑事らによる交通事故の調書の確認作業が行われていた。

 捜査本部に一人残った主任も、流石に疲労の色を隠せなかった。 

そこに巡査がやって来て、今日の被害伝報ですと渡して来たので、ああ、もう今日は遅いですから休んでくださいと言葉をかける。

 じゃあ、お先に…と警官が会釈して来たので、ご苦労さんと主任は労う。

その後主任は、新聞に載った「日東通信 大崎工場に窃盗」という記事と、被害電報に記載されていた「トランジスタラジオ 約20ダース」が盗難された記述で、「犯人は2〜3名と推定」「現場付近に小型のタイヤ跡」「品川方面」という記述に注目する。

そして、電話をかけると、もしもし?捜査係願いますと頼むが、そこに林刑事が帰って来たので、どうだった?と聞く。

 林刑事は、今日はまだ…と答える中、電話の相手が出たので、あ、こちら警察官殉死事件の捜査本部ですが、今朝お宅の館内で窃盗事件がありましたな?トランジスタラジオ20ダースが盗まれた…と聞く。

 被害伝報や新聞によると、その現場に小型トラックのタイヤの跡があったそうですが、そのトラックの型はもう分かりましたか?と主任は聞く。

 え?トヨタのSG53年型?するとうちの方と型が一致するんですが、何か他に手掛かりは?と主任は尋ねる。

え!足跡!と主任が声を上げると、側で聞いていた林刑事も驚く。

 ラバーソウルの靴らしい…、なるほど、で、その他には?と主任が聞くと、そうですか…、いや、もしかすると、うちの方とホシがくっつくかもしれませんな〜、いやどうも…と言って電話を終える。

 3時20分というと、辻褄の合わんこともないわけですねと林刑事は新聞記事を見ながら聞くと、うん、ラバーソウルの靴か…と主任も上着を着ながら答える。

さらに、主任の机の上の書類を見た林刑事は、あ、交通事故と道交法違反から割り出そうってわけですかと気づく。

 ああ、2つに分かれて行ってるんだがねと答えた主任は、林くん、ちょっと留守を頼むよ、ちょっと石川巡査のお通夜に顔出してこようと思うんだと説明する。

 ああ、そうですかと納得した林刑事に、君の分も入れてあるよと主任が御霊前袋を見せたので、あ、どうもと林刑事は感謝し、じゃあ、後で出しますからと伝える。

 部屋の外に出た主任を取り囲んだ記者たちが、主任、どこ行くんですか?いい線が出たんですか?などと聞いて来たので、お通夜に行くんだよ、石川くんのと主任が答えると、怪しいな〜などと記者は疑うので、本当だよ、つけて来ても構わんぜと主任は答える。

 それでもしつこく付きまとおうとする記者たちに、ほら!と主任は御霊前袋を出して見せると、流石に記者たちも黙ってしまう。

 長田部長刑事らによる調書調べはその後も続いていた。

 金子刑事が立ち上がり、これ済んだと、係官に調書の束を戻し、別の係官が持って来た調書を受け取る。

そんな刑事たちに、別の係官が茶を持ってくる。

 主任が本部に戻ってくると、ソファーに座った林刑事が新聞を広げた姿勢で寝ていたので、1人で茶筒の蓋を開けようとするが、その物音で目覚めた林刑事は、慌てて、顔を擦ると、随分早かったですねと言って来たので、ああ、焼香だけして来たよと主任は答える。 

ああそうですかという林刑事に、何も連絡はなかったかいと主任が聞くと、ええ、何もまだ…と言う。 

うまくナンバーの線から割り出せると良いんだが…と主任はぼやく。 

そうっすね、うちの課長見え取りましたか?と自分も茶を淹れながら林刑事が聞くと、うん、総監も部長連中もみんな見えとって賑やかだったよと主任は答える。

 明日ですか?葬式は?と林刑事が聞くと、そうだ、それから分骨を弥生廟に収めて、奥さんは夜行でお骨を田舎に持っていかれると言っておられたと主任は教える。

これで今まで殉職した景観の数も相当なもんでしょうねと林刑事がしみじみ言うと、うん、さっきの話だと弥生廟に来たのは石川君で2235人目だそうだと主任が言うので、ああ、そうすかね…、石川巡査は子供さんはなかったんですか?と林刑事は気になるのか聞いてくる。 

うん?うん…、まだおっぱいを飲んでる女の子が1人…と主任が教えると、あ〜あ、そうですか、これはせめてホシでも挙げんことには…と林刑事はつぶやく。 

ああ…と答えた主任が腕時計と部屋の掛け時計で時間を確認すると、すでに深夜の11時20分だった。 さらに掛け時計は深夜の1時24分になる。

山村刑事はまだ著書の確認を続けており、途中立ち上がって窓を開けると、夜の空気を吸う。

 中にはもう椅子を並べて眠っている刑事もいた。 長田部長刑事たちのグループも同様で、渡辺刑事のようにすでに机に突っ伏して寝ているものもいる中、いやあ、ありませんね〜と金子刑事が長田部長刑事に話しかける。

 まだわからんぜ、しかし…と長田部長刑事が言うので、金子刑事もああ…と答えて、作業を続行するしかなかった。

 仮眠から醒めた渡辺刑事もまた作業に取り掛かるが、畜生…、ねえか…、とうとうありませんでしたねとぼやく。 

引き上げますかと金子刑事が聞くと、うん、山村君のはどうかね〜…と長田部長刑事は気にする。

 その山村刑事は椅子の上で仮眠をとっていたが、1人道交法違反を調べる高津刑事はまだ作業を続けていた。

 やがて、あった!と高津刑事が叫んだので、その声で起きた山村刑事らが、あったか!と高津の周囲に集まると、うん、間違いない!と長所を見た山村刑事は答える。

 そこには木谷三造の名前が書いてあった。

 捜査本部に詰めていた主任は鳴り出した電話を取ると、配本部、おう高津君かと答えたので、その声で林刑事も立ち上がってくる。

 何!見つかった!と言う主任の声で、本庁から帰ってきて部屋のソファで仮眠していた渡辺刑事や金子刑事も目覚める。 

うん、木谷三造…、39歳!と刑事たちが机の周囲に集まった中、主任はメモを取っていく。 

スピード違反で今月の7日に?そうか…、で、奴の住所は?うん、うん、良し!当たってみて怪しかったら任意で同行するんだなと主任は聞くと、うん、ご苦労と労って電話を切る。

 じゃあ一応、この木谷って男の前科を調べておきましょうか?と林刑事が提案すると、ああ、頼むよと主任は答える。

 林刑事が出ていくと、やっぱりありましたねと渡辺刑事が感心しながら、主任が書き留めたメモをmkいる。 そこには「木谷三造 39 北砂町9ー752」と書かれてあった。

 翌朝、山村刑事と高津刑事は、とある団地に車でやってくる。 

1階の126号室の前がでくると、俺は裏を回ろうと言い、山村刑事は走り去る。

 ドアの前で様子を見ていた高津刑事は、隣のドアが開いて、エプロンをつけた男(浜田寅彦)が姿を見せたので、あの〜、木谷三造さんのお宅はこちらですよね?と声をかける。

ええと男が答えたので、実は警視庁のものですがと手帳を見せていると、そこに山村刑事が戻って来て、いないらしいと告げる。

 するとエプロン姿の男が、木谷さんなら引っ越しましたよと言うではないか。 引っ越した?と高津は驚き、いつですか?と山村が聞くと、はあ、引っ越したのは昨日の朝ですけどね、トラック持って来て急に…と言うので、トラック?どんな型でしたか?と山村刑事が聞くと、さあ…、前にも何度か見かけた車でしたけどね、小さくって幌のある…と男が言う。 

そのトラックのナンバーわかりますか?と高津が聞くと、さあねえ、そこまでは…と男は前歯のない口を開けて笑う。

ここには、木谷さん1人で住んでいたんでしょうか?と山村刑事が聞くと、メガネをかけた妻らしき女が出てきて、あなた、言ってくるわよと言うと出かけて行ったので、男は行ってらっしゃいと頭を下げて見送る。

そんな妻を呆れたように見送る刑事たちに、いや、僕はテレビの台本書いてるんですよとエプロン男は言い訳する。 

それでいつもうちにいるんですけどね、お隣は、住んでるとは言っても、ほとんどお留守のようでしたよと笑顔で言う。

 すると一昨日の晩は?と山村刑事が聞くと、朝までずっと留守でしたと言うので、昨日の朝までいなかったんですか?と高津が確認すると、ええ、立て替えていた電気代を、朝やっともらえたんですと男は言う。

 で、その後、木谷さん、引っ越して行ったんですね?と山村刑事が聞くと、ええと男は答える。

引っ越し先は?と高津刑事が聞くと、さあ?あまりお付き合いしてませんでしたからねと男は言う。 このアパートで、誰か来たんじさんと付き合っておられた方はありませんか?と山村刑事が聞くと、そうですね〜、そう言えば、この胸にいる大学生が、自動車の教習所で多b度あったような話は聞きましたけど…と男は言う。

 その足で、千住自動車練習場に来た山村刑事たちは、お待ちどう様、木谷三造様ででしたね?と係員(岡部正純)が出て来て、えっと、先々月の末、うちで試験をパスしておりますがと言い、写真付きの出席簿を見せる。

本部では、木谷の写真をもとに、こいつが木谷三造か…と主任が言うと、窃盗の前が二つもあるんですね、おかげですぐわかりましたが」…と林刑事が報告する。

 富山刑務所で約1年間服役してるんだね?と長田部長刑事が確認すると、ええ、その時、共犯で金山五郎って奴がいたらしいんですがね、木谷は今でもそいつと関係あるんじゃないですかね?と林刑事は言う。

 とすれば、小型トラックにいたもう一人の男ということも考えられると長田部長刑事が推理する。

 その時のレツの奴はわかってるのかね?と主任が聞くと、ええ、王子署の管内なんですと林刑事は答える。

 そうか、じゃあそいつを洗ってみようかと主任が言うので、あ、じゃあちょっとこれ!というと、木谷の写真を持って林刑事は出掛けてゆく。

 高津君はアパートの聞き込みを続けると言っておいたが、木谷の引越し先はわからんだろうなと主任は呟く。 

その時、電話がかかって来たので主任が取って、そうですと答えるが、うん?サガミ電機さん?と繰り返すと、例のトラックの前の持ち主だろう?と聞いて来た主任が電話を代わり、はい、捜査主任ですと電話に答える。

 ほお…、今朝お宅へ電話が?木谷…、いや堀和彦からですか?違う人?おお、なるほど、じゃあすぐ刑事をやりますからよろしくお願いしますと言って電話を切ると、別の男が小型トラックの名義変更をしたいからサガミさんの印鑑証明書にハンコをもらいに行くと言ってきたと主任が伝えると、じゃあ早速と長田部長刑事が答え、金子君も一緒に…と主任は指示する。

サガミ電気にやってきた長田部長刑事は、困惑顔の主人のそばに客を装って近づくと、捜査本部のものですが…と話しかける。

 お待ちしておりましたよと主人が答えたので、来ましたか?とさりげなく聞くと、いえまだ…と言うので、そうですかと言い、まだ物色している客のふりをする。

 その頃高津刑事と山村刑事が本部に戻ってきたので、どうだった?と主任が聞くと、はあ、人相は取れたんですが…と山村は写真を見せる中、引越し先はどうしてもわかりませんと高津が残念そうに言う。 そうか…。

疲れているだろう?少し休みたまえと主任は労う。 昨夜は交代で休みましたからと山村刑事は言うが、うん、林君の持ってきた手口別写真と同じ人そうだなと主任が言うと、手口別写真…と山村刑事は繰り返す。 サガミ電機で長田部長刑事が張っている中、一人の青年が店に入ってくる。

 あの、さっき電話でお願いしといたものですが?と主人に青年が話しかけたので、ええ、印鑑証明のことでしょうか?と主人が確認すると、そうです、李君局で書類を作ってもらってきましたからと言って書類を取り出しながら青年はいう。 

その時、近づいた長田部長刑事が手帳を見せながら、警視庁のものですが?と名乗ると、青年は、えっ!と驚く。 

あなたが名義変更なさる本人ですか?と聞くと、ええと目線を逸せて青年が言うので、ちょっと書類拝見します、山西一郎さんですか?と聞くと、ええと言うので、ナンバーは「4ダッシュす-1946」となってますね?と長田部長刑事は確認する。

 すると青年は、何だってんです?と態度を豹変させる。 

長田部長刑事は、このナンバーが殺人事件に関係あるんでねと答えると、そんなこと私は知りませんよ、私は人から買っただけなんだから…と青年はとぼけるので、買った?誰からですか?と長田部長刑事は突っ込む。 

そんなことどうでも良いでしょう!と青年が向きになってきたので、いや、言っていただかないと…、ともかく一緒に来てくださいと長田部長刑事は青年に近づき、その手を取ろうとすると、嫌だ!と長田を突き飛ばした青年は表に飛び出すが、そこに車から出て待ち構えていた金子刑事が待て!と飛びかかり、長田部長刑事と共に取り押さえて手錠をかける。

 警察署に青年を連れて戻ってきた長田部長刑事らは、待ち構えていた記者たちから、これはホシですか?などと追求させるが、そのまま本部の部屋に連れて行く。

 出迎えた主任は、やあ、ご苦労さんと労う。

 その頃、王子警察署を単身訪れた林刑事は、通路で出会った刑事(岡野耕作)に、すみません、本町から来たんですがね、お宅の方で、昨日の朝、カメラの故買で金山五郎ってホシ挙げたそうですが?と聞くと、ええ、いますがと啓示は答え、部屋に案内する。

 ホシが挙がったのは何時頃です?と林が聞くと、昨日の朝の8時ちょっと過ぎでしたと刑事は答える。 8時ちょっと過ぎね〜、ちょっと会わせてもらえませんか?実は本部事件と関係がありそうなんで聞き取りたいことがあるんですがね…と林刑事は頼む。 

すると刑事は、ええどうぞ、故買の事実は認めているんですが、自分でカメラを盗み出したものやら、仲間がいるものやらは、まだ口を割らんのですよという。 

その頃、捜査本部に連れてきた青年を前にして、君が本当に小型トラックを買ったんなら、相手の名前くらい言えるだろう…うん?と聞いていた。

 しかし青年は腕を組んだまま口を開こうとしないので、黙秘権か?と金子刑事が問いかける。

 主任も青年のそばの椅子に腰かけ直すと、まあ良い、この書類に記載してある名前の人物が実在するかどうか今調べているからなと長田部長刑事は青年に話しかける。

 同じ頃、王子署では、待っていた林刑事の部屋に、 金山五郎(清水一郎)という男が先ほどの刑事に連れて来られる。

 刑事も同伴の上、椅子に座った金山に、あんた金山さんだね?ときき、ええと相手が答えると、あんた、木谷三造って男知ってるだろう?と林刑事は聞く。

 え?と金山が驚くと、この男だよと言いながら、林刑事は写真を取り出すと、富山の寄場で一緒だったろう?と聞く。

 金山は、あ、はいと打ち明けたので、今でも付き合いがあるんだろうね?と林刑事が聞くと返事をしないので、付き合いがあるんだろう!と所轄の刑事が語気を強める。

 昨日の朝、警官射殺事件があったんだがね…と言いながら新聞を取り出した林刑事は、やったのは奴らしいんだ、ところでその時もう1人男がいたんだが…と聞く。

 すると金山は、とんでもない、旦那!付き合いはありますよ、けどそこにいたのは私じゃありませんよ、私はただ…と否定してくる。 ただ?ただ、どうしたんだね?と林刑事が攻める。 

捜査本部にかかってきた電話をとった長田部長刑事は、はいはい、そうです、ああ、渡辺君かと応答する。

 うんうん、ああ、そう、うん…、はい、ありがとうと言って電話を切ると、その番地に山西一郎なんかとかいないそうですと主任に報告する。

 頷いた主任は、もうここらですっかり吐いたらどうだ!と青年に呼びかける。 

青年は黙ったまま足を組むが、その足に履いていた吐きものを見た主任は、高津刑事を呼ぶと、何事かを指示し、高津は部屋を出てゆく。

 その時、また電話がかかってきたので、長田部長刑事が取って、はい、本部と答えると、ええ、ああ、そうですか…、ちょっと待ってください、ブンヤさんが夕刊の最後の〆切だから、中間発表してくれって言ってますがと主任に伝える。

そうか…、ここまで追い込んで飛ばれでもしちゃ敵わんからな、下行って、ブンヤさんに協力を頼んでこようと主任は答え、部屋の外に出ていく。

 今すぐ主任がそちらに伺いますと長田部長刑事は電話の相手に答え、電話を切る。

 その頃、王子署では、そうすると、あんたは故買が専門で、キャメラの窃盗はこの木谷と、もう一人、久我なんとかって奴がやったっていうんだね?と金山に確認していた。

 金山は、へえと答えると、ところであんた、木谷三造のヤサを本当に知らないのかね?と林刑事は追及する。

 金山は、知りません、いつもブツは奴の方から私のとこへ運んでくるもんですからと言うので、そうか…、じゃあ久我のヤサは?と聞くと、知りません、でも久我にも前があるようなことは聞きましたと金山は答える。

久我にも前科が!と林刑事は驚く。

 へえと金山が言うので、そうか…、じゃあ、久我のヤサは、鑑識で割れるかもしれんぞと所轄刑事に語りかけると、そうですなと刑事も答える。

 本部では昼食時間になっており、おい君、臭くはないぞ、食べたらどうだ?と金子刑事が青年に、食事を勧め、部屋の電灯を灯すと、明らかに青年の貧乏ゆすりは激しくなっていた。

 そこに高津刑事が何かを持って帰ってきたので、お、ご苦労!と主任は労い、高津が持ってきた足形を前にすると、ほほお、あんたの靴の裏にそっくりじゃないかと主任は青年に語りかける。

 これは昨日、トランジスタラジオ20ダース盗まれた工場の現場にあったもんなんだがね、お前の足跡だろう!と主任は語気を強める。

その時帰ってきた林刑事が、主任の隣の席に座ると、前科カードを見せる。 そこには、久我恵太、窃盗と名前と罪状が書いてあり、写真も添付されてあった。

 主任はその犯罪カードを長田に渡し、長田部長刑事はそれを渡辺刑事や金子刑事にも見せる。

さらに山村刑事や高津刑事にもカードは渡る。 主任は青年に、おい、久我恵太!と呼びかけると、黙っていた青年久我(曽根晴美)は驚く。

 お前が10ほど前、木谷三造とカメラ工場へノビで入ったことはちゃんと裏が取れてるんだぞ、昨日、トランジスタラジオを盗み出したのもお前と木谷だろう?お前たちはそれから警官を射殺したんだな?と主任は久我の顔の目の前にしゃがみ込み、問いかける。

 お前か!殺しやったのは!と主任が怒鳴りつけると、違う、違う!木谷がやったんだ!奴は28口径のコルトを持ってるんだ!本当だ!と久我は白状する。

 じゃあ、木谷はどこにいる?どこにいるんだ!と主任が聞くと、7時に有楽ビルの地下駐車場に…、そこで落ち合う約束になってますと久我は言う。

 7時?と主任は聞き返す。

 本部の掛け時計が示す時刻は6時34分だった。 木谷は車で来るのかね?と長田部長刑事が聞くと、あの小型トラックで…と久我は答える。

「4ダッシュすの1946」ってやつか?と主任が確認する、ええ、でもおそらく、替えナンバーで来るはずだよと久我は言うので、ナンバーは?と聞くと、知りませんと言うので、正直に言うんだと攻めると、知らないんです、奴は申請してつけてくることになってるんだからと久我は言う。

 良し、じゃあ、長田君、林君、金子君、すぐ行って手分けして探してくれ、私は山村君と令状を持って行く、令状を請求してくれと山村刑事に主任は指示を出す。

 木谷はコルトを持っているかもしれんからな、気をつけろと主任は忠告する。

 刑事たちは拳銃を持参しながら、はあと答えるが、それからブンヤさんに勘付かれないように裏から出て行けよと主任は助言する。

 刑事たちは、行こうと言って部屋を出ていく。

 主任は久我に、木谷と落ち合ったらどこに行くつもりだったんだ?と聞くと、関西方面にずらかるつもりでしたと言う。

 関西?あてがあるのかい?と聞くと、いえ…、トランジスタラジオとあのトラックをバラせば、当分食っていけるって、木谷が言ったんで…と久我は自白する。

 こいつは飛ばんうちにパクらんと面倒なことになるぞと主任は山村に語りかける。

 はあ、次行きますか?と山村刑事は聞き返し、うん、渡辺君、後を頼むと指示すると、主任は机の引き出しから拳銃を取り出す。 

渡辺刑事は、用意してあった食事を久我の前に持っていき、どうだ?と聞く。

ネオンがきらめく銀座の街。

 有楽ビルにやってきた金子刑事、林刑事、長田部長刑事たちは、エレベーターでそれぞれ地下1〜3階にある駐車場に1人ずつ降りると、目当ての小型トラックを探し始める。

 地下2階駐車場で探していた長田部長刑事は、すぐに目当ての小型トラックらしきものを発見する。

 服部時計店の時計が7時の時報を鳴らし始める。

 やがて、山村刑事が運転し、高津刑事と主任が乗った乗用車が地下1階の駐車場に入ってくる。

そこに待機していた金子刑事が近づいて来て首を横に振る。

主任の乗った車は動き出し、地下2階の駐車場に向かう螺旋スロープを降りる。

 待機していた林刑事が近づいて来て手を横に振ったので、乗用車はさらに地下3階駐車場に向かう。

 待機していた長田部長刑事が近づいてきて、あのトラックらしいです、仮ナンバーで、53年のトヨタSG型ですと知らせると、うん、で、持ち主は?と主任が聞いたので、30分ほど前に駐車して上がって行ったそうですと報告すると、主任は、そうかと答える。

 車を降りた主任は、あの隣に付けろと運転席に指示する。

 高津刑事も降りると、君はこの辺を張っててくれと主任が頼む。 

山村刑事は車を小型トラックの隣に停めると、姿勢を低くして誰も乗ってないように装う。 長田部長刑事と主任は、それぞれ柱の影に身を潜める。

 やがて、木谷らしき男がエレベーターで地下3階に降りてきたので、それに気づいた長田部長刑事が主任のそばに行き知らせる。 

木谷は駐車係員部屋でタイムレコーダー用の札を差し出す。

 係員がカードにタイムを打ってレシートを渡すと、その男はトラックとは別の乗用車で出て行ったので、刑事たちは人違いだったと気づく。

 その直後、木谷本人が地下3階にやってくる。

それに気づいた主任は新聞を取り出しながら、ジャイアンツはやっぱり強いななどと長田相手に雑談を始める。 長嶋はちょっと止まりましたねなどと長田部長刑事も調子を合わせる。 

手土産のようなものを下げた木谷は駐車係員部屋で札を差し出す。

 タイムを打ったレシートを受け取ったと、木谷は周囲を警戒しながら小型トラックの運転席に乗り込む。

隣の車の運転席で寝そべっていた山村刑事はその気配を察する。

 素早く運転席から外に出た山村刑事は、木谷三造、殺人容疑で逮捕します!と叫びながら木谷に飛びつく。

 木谷は驚いてポケットに手を入れると、拳銃が暴発し、床に弾が当たる。

 山村刑事はその右手を押さえつけたので、木谷は銃を天井に向ける。 

そこに駆けつけた長田部長刑事が、木谷の拳銃を弾き落とす。

 拳銃は隣の車の下に転げ落ちた中、男たちの争う息遣いが響く。 後日、「弥生廟」を訪れた7人の刑事たちは、そこで深々と礼をする。

 主任は、これできっと故人も満足してくれるだろうと刑事たちに語りかける。 

そこに、パトカー108号車でやって来た金原巡査部長も弥生廟の階段を登る。 

行こうか?と促した主任は、しかし石川君も気の毒したな…と呟くと、一緒に帰り始めた刑事たちも、しかしこれで奥さんもこれで諦めてくれるでしょうと言い、うん、もう田舎に着かれた頃だろうと主任も答える。

 そこに金原巡査部長が姿を現し、敬礼してきたので、やあ、あなたもお参りですか?と主任が問うと、ええ、奴にホシが挙がった報告をしようと思って来たんですが…というので、そうですか、じゃあお先に…と言って主任と刑事たちが帰ろうとしたので、あのう、主任さんと呼び止めた金原巡査部長は、立ち止まった刑事たちに、皆さん、ありがとうございましたと制帽を取って、金原巡査部長は深々と頭を下げるのだった。 

金子刑事も帽子を脱いで居ずまいを正すが、主任は、いやあ、ホシを挙げるのは、私たちの勤めですから…、じゃあと言い残し、刑事たちと帰って行く。 

それを見送った金原巡査部長は、1人弥生廟の方へ向かって行く。

 終

幻燈館

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