「警視庁物語 追跡七十三時間」
シリーズ第3弾、上映時間1時間足らずの中編
上映時間からして二本立ての添え物映画なのだが、ちょうどテレビの1時間ドラマくらいの長さなので、見ている側からすると見やすさはある。
この当時の宮川刑事役の南原伸二さんは、痩せていてカッコ良い。
劇中で若い女性が、宮川刑事の良い男ぶりを褒めているくらいだから、イケメンキャラだったことは確かだろう。
出番も多く、東映としても売り出そうとしていたように見える。
劇中登場する「泣き売」という詐欺商売が面白い。
上野という場所が重要そうで、地方から出てきて純朴な老人が多いので、騙しやすかったのだろう。
「焼き鳥キャバレー」と言う店も珍しい。
店内に「ストリップ」の看板が出ていることもあり、お色気ショーの実演があるキャバレーらしいが、この時代から司会者のこと「MC」とホステスが言っているのが興味深い。
屋台の焼きそばが二人前60円と言うのもびっくり。
今の感覚だと安すぎるように聞こえるが、当時は店のラーメンも100円しなかったはずだから、嘘ではないだろう。
金子刑事を演じている山本麟一さんは、クラーク・ゲーブルのような口髭を生やしており、風格がある。
このシリーズに度々登場する星美智子さんの泣き芝居もなかなか上手くて感心させられる。
今井俊二さんなども、若すぎて、ちょっと見には誰だかわからないほど。
中でも一番注目点は、この後、シリーズの刑事のレギュラーになる花沢徳衛さんが別の役で登場していることだろう。
全体的に、地道な張り込みなどリアルといえばリアルだが、地味といえば地味な展開になっている。
【以下、ストーリー】
1956年、東映、長谷川公之脚本、関川秀雄監督作品
ネオン輝く銀座の夜景を背景にタイトル、スタッフ、キャストロール
その都会を通過し、ガソリンスタンドに到着する一台の車。
店員(田川恒於)が車のそばに近づくと、車の中から手が伸びてメモを差し出し、それを読んだ店員は、東洋タクシーさんですね、ご苦労さんですと答え、メモは胸ポケットにしまいながら車の後部に回ると、後部トランクを開け、20リッターでしたね?と運転席の帽子を被った運転手に確認しながら、ガソリンを注入し始める。
運転手は小声でああ…と答えるだけだった。
20リッター注入した店員がトランクを閉めると、ありがとうございましたと運転席に挨拶し、車は走り出す。
しかし、その車は店の前を旋回しただけまたガソリンスタンドに戻ってくると、運転手は車を降り、店内に入るなり店員に拳銃を向けてくる。
店員は怯え後ずさるが、すぐさま発砲され倒れてしまう。
その背中に二発目が撃ち込まれ、運転手はテーブル上に蓋が開いた状態で置いてあった小型金庫から札束を掴み取ると、そのまま車に乗り込み逃走してしまう。
翌朝、ガソリンスタンドの前は、野次馬とそれを防ぐ警官の奥で、鑑識作業が行われていた。
新聞記者もカメラマン近づこうとして警官に制止され、お願いしますよ、1枚撮らせてください!お願いしますと頼み込んでいた。
それと、交代の朝8時までは、被害者が1人で勤務してたわけですな?と捜査第一課長(永田靖)が店員に聞くと、はい、深夜の当直は毎晩1人になっているんですと店員は答える。
で、盗まれた金額は?と聞くと、大体現金だけで3万5200円と帳簿の上ではなっておりますが…というので、課長、これは明らかに物取りの犯行ですなと捜査主任(神田隆)が指摘する。
遺体が運び込まれると、宮川くん、君は解剖に付き添って、被害者から弾が取り出されたら、鑑識へ回って、特徴その他を鑑定してもらってくれないかと主任は頼む。
はいと答え宮川が出かけると、いくら真夜中と言っても銃声が2度も聞こえたはずだから、近所の情報を十分集めてくれたまえと第一課長が主任に指示を出す。
課長、営業日誌の最後の欄とチケットを照らし合わせましたら、このタクシーが最後とわかりましたと長田部長刑事(堀雄二)が報告したので、うん、東洋タクシー5のA1044か…と課長は業務日誌を確認する。
はっ、この運転手に当たったら何かわかるんじゃないでしょうか?と長田部長刑事は言う。
それを聞いていた主任も、うん、何か重要な資料が取れるかもしれんなと期待し、君、早速当たってみてくれんかと長田に依頼する。
長田が店を出てのとすれ違う形で到着したパトカーから降り立った警官(岩上瑛)が、警視57号、ただいま、八山下に拳銃で殺された死体が発見されたと入電がありましたと課長に報告したので、何、拳銃で?と課長は驚く。
主任も八山下?と確認する。
八山下の川沿いに死体は置かれており、毛布がかけられていた。
そこに道から斜めにかけられた梯子を伝い到着した課長と主任らは、現場の警官らに、やあと声をかけ、遺体の側に来る。
所轄の刑事(関山耕司)が毛布を捲ると、うつ伏せの遺体の背中に銃痕があったので、やっぱり拳銃だなと課長は判断する。
死体を仰向けにして、服のポケットを探ると、免許証らしきものが出てきたので、身元は?と主任が聞くと、はあ、自動車免許によれば阿部一郎、大正9年4月3日生まれ、36歳ですねと諸葛刑事が言う。
タクシー会社に来た長田部長刑事は、阿部一郎ねと伝えると、5104の運転手でございますか?と配車係(菅沼正)が聞いてくる。
ちょっと聞きたいんですが?と長田が言うと、外に配車係は呼びに行く。
おい、阿部くん!と外で配車係が呼びかけると、まだ戻ってませんよと同僚(岡部征純)が教える。
そうか、変だな~と社員は戸惑い、部屋に戻ると、もう交代時刻はとっくに過ぎているんですがねと長田部長刑事に伝える。
その阿部さんの乗っている車はどんな型ですか?と長田が聞くと、うちは皆同じですよ、そこにあるような56年…と外に停まっている車を配車係は指差す。
一方、阿部一郎の遺体が運び込まれた東京都監察医務院についてきた林刑事(須藤健)は、先に来ていた宮川から林さん!と声をかけられ、宮川くん、八山でね、また別な死体が出たんだよ、これも拳銃でね…と教えたので、撃たれたんですか?と宮川は驚く。
うんと答えた林刑事は、あ、それは解剖室に運んでくれないかと阿部の遺体の方に声をかける。
仏さんの身元は?と宮川が聞くと、運転免許証で割れたよ、ああ、今解剖中のガソリンスタンドのと、主事機一本じゃありませんかねと宮川は指摘する。
両方の死体から出る弾次第だねと林刑事は答える。
その頃、旦那、あれですよと警官を連れて放置自動車に連れてくる発見者があった。
ナンバーは「5 え-1044」だった。
運転席を覗き込んだ警官は、シートに血痕を発見する。
発見者が、旦那、血でしょう?と聞いてきたので、この辺に電話はないかね?と警官は聞く。
さあ…、橋向こうに行かねえと…と発見者は困惑するが、もう一人の発見者が運転手の帽子が落ちていたのに気づき拾おうとしたので、触らんで!と警官が注意する。
連絡を受けて駆けつけてきた第一課長以下刑事たちは、鑑識の様子を見ながら、どうかね?と問いかけると、はあ、ひさしの左に血紋がありますと鑑識員は答える。
血のついた指紋かね?と主任が聞くと、はあ、確かに血紋ですと鑑識員は答える。
「化学検査所」「銃器室」
左側があなたが持ってきた弾で…と林刑事を見た銃器技師(片山滉)は、右側があなたのですと宮川刑事の方を見る。
「警視庁 品川警察署」「特別捜査本部」に資料を持ってきた金子刑事(山本麟一)は、写真を見せながら、ひさしのこの部分、つまり右側にあったのは全部被害者阿部一郎さんの右手と一致しましたが、左側のこの血紋は被害者のと一致しませんと主任に報告する。
指紋技師の判定では、流線の状態から見て、左人差し指による血紋らしいとのことでした、
左人差し指で血紋の血の型は?と主任が聞くと、あ、それは被害者のと同じA型ですと金子刑事は答える。
双かいぎ、すると何者かが被害者の血のついた人差し指でこの帽子の庇を摘んだと言うことになるなと主任は推理する。
主任、これは私の推理ですが、犯人は被害者を拳銃で撃った後、その血のついた左手で帽子を被ったのじゃないでしょうか?と長田部長刑事は言う。
左手で被った…と主任が繰り返すと、つまりひょっとすると左利きかもしれないですな…と長田は答える。
う~ん、左利きね~…と主任が考え込んだ時、電話がかかってきたんじょで、受話器をとった主任は、はい、はい、本部と答え、あ、宮川君か、何?弾は3つとも?それとガソリンスタンドの2発と阿部運転手の1発は、皆同じ米軍軍用拳銃で撃たれたと判明したんだね、よし、わかった、じゃあそこの技師さんに最近の拳銃事件でその軍用拳銃によると思われるもんがないか調べてもらいためえ、また、じゃあと言って受話器を置くと、やはり同一犯人の仕業と考えて良いですな?と長田部長刑事が言うので、うんと主任も答える。
被害者2人の死亡時刻などから推定すると、犯人はまずタクシーを襲い、八山下の川に阿部運転手の死体を捨て、この帽子を被ってガソリンスタンドへ回った…と主任が推理を述べると、勤務員にガソリンを入れさせてる間にガンを突きつけ、それを殺して、土手で乗り捨てた…と言うことですな?と長田部長刑事が続ける。
うん、このホシは、ひょっとすると運転手崩れかもしれんなと主任が言うと、あ、私もそう思いますと長田部長刑事も同意する。
そうだ、金子君、その質問で前科を洗ってくれないかと主任が指示すると、金子ははいと答えて部屋を出てゆく。
その時、また電話がかかってきて、受話器をとった長田が、はい、はい、捜査本部と答えると、おお、林君か、どうした軍用拳銃は?と聞くと、ええ、今調べてもらいましたら、昨日の晩、同じ軍用拳銃が上野署の管内で使われました、ええ、倉庫破りの窃盗事件なんですが、パトロールに追われて、その犯人が発砲したらしいんですと、「化学検査所」「銃器室」にいた林刑事は答える。
その軍用拳銃はライフルマークで米軍の方に問い合わせ中だそうですから、いずれナンバーその他はわかると思いますが、え?宮川君ですか?上野署に事件の概要を聞きに行ってますと林刑事は伝える。
上野署では、その犯人を追い詰めましたら、やにわに振り向いて撃ちやがったんですなと、所轄の山田刑事(沢彰謙)がやっ来た宮川刑事に話をしていた。
外勤の若い巡査で怪我をしましてねと言うので、で、その逃げた犯人の人相や特徴はわかりませんか?と宮川刑事が聞くと、暗くてよくわかんなかったらしいんですな、なんでも20歳前後だとは言っていましたが、こっちの外勤も負けずに威嚇を一発撃ったんですが、それが命中したらしく、翌朝その場所を調べたら、血が流れておりましてね、かなりの地と思われるんで、犯人はそう遠くへは飛んでおらんと睨んで操作をしておるんですよと山田刑事はいう。
本部に帰り、主任にその報告をした宮川刑事は、その倉庫破りが殺しのホシかもしれませんねと言うと、しかし、それほどの怪我をしているとなると、わずか24時間後にあれほど大胆な殺しをやってのけるってことはできんのじゃないかな?と一緒に聞いていた林刑事が指摘する。
うん、それも一理あるが、使った拳銃が同じ米軍軍用のものという点は、ちょっと捨てられんなと主任は言う。
そこに戻ってきた金子刑事は、例の左人差し指による指紋ですが、前科はありませんでしたと言うので、双かいぎ、当てにしてたんだがな~と主任は落胆する。
その時電話がかかってきたので、金子刑事が取り、」捜査本部!うん、銃器室?と答えると、良し!と受話器を受け取った長田刑事が代わり、はい、うん、米軍将校からの回答…、うん、うん、すると問題は米軍将校宅に入った強盗が14点の貴金属と一緒に盗んだものに違いないんだね、え?うん、うん、あ、そう…、はい、どうもありがとうと答えて電話を切る。
それを聞いた主任は、良し、じゃあ、その盗難品リストを取り寄せて、その線から洗おう、宮川君、すまんが太陽軒へ中華蕎麦を人数分だけ頼んできてくれないか?大至急だぞと頼んだので、宮川は笑顔ではい!と返事する。
翌日、上野の西郷隆盛像のそばで、中学生くらいの少年(泉三平)に青年(瀬川純)が、え?どうしたね?はっきり言わなきゃわからねえじゃねえかと聞いており、その周囲に野次馬が集まっていた。
少年は、嫌だ、嫌だと拗ねたので、困ったねと青年が言うと、おじさんは悪い人じゃないんだよ、だからさ、見せてくれと優しく話しかけるが、少年はやはり、嫌だから、嫌だと手の中のものを見せようとはしない。
でも君は、そこに持っているものを売って田舎に帰らないといけないんだって言ってたじゃないか、売れるもんだったら見せてごらんと青年は言い聞かせる。
それでも少年が嫌だを繰り返すので、何事かと、好奇心に惹かれた野次馬がますます集まってくる。
そんなこと言わないで、おじさんは君は可哀想だともえばこそ品物によっちゃ買ってあげようってんだよと青年はいう。
それでも少年は嫌だと拒絶する。
おじさんはね、親切で言ってるんだよ、貸してごらん、貸してごらんったら、良い時計だな、は~、驚いた、こりゃ、スイスの一流品じゃねえか、これをいったいいくらで売るの?と青年は少年に聞くが、そこにやってきたのが、上野署の山田刑事たちだった。
少年は5000円なくちゃ、家に帰れないと悲しげに答えたので、え?たった5000円で良いのかい?本当に良いのか、おい、全く掘り出しもんだと青年は時計を見ながら感心する。
しかし弱ったな、おじさん、あいにく持ち合わせがないし、惜しいね、店で買えば2万円はたっぷりだなどと青年が言っていると、野次馬の中の老婆が、ワシが買ってやるべと言い出す。
すると山田刑事が出てきて、おばあさん、よしなさいと止めると、その時計ちょっと見せてくれと青年に頼むと、青年は急に逃げ出したので、君、続き頼むよ!と相棒の刑事に頼んで後を追いかける。
階段を逃げていた青年は転んだところを追いついた刑事に捕まり、こら、あんまり田舎もんをいじめるんじゃないよ、一緒に署まで来てくれと言われる。
留置所に警官が来て、おい、11番、取り調べだぞと泣き売青年に声をかける。
この米軍将校宅の盗難リストの時計と一致しますねと、再び上野署を訪れた宮川刑事が指摘すると、その坂本というのが窃盗犯らしいんですが、黙秘権使って口を割らないんですよと山田刑事は答える。
取調室に11号と名付けられた青年が来ると、ま、かけたまえ、タバコどうだ?この頃の景気は?と山田刑事はまず世間話をする。
すると青年は嬉しそうにタバコを吸い、そうですね、まあまあかななどと気楽に答える。
これ本物じゃないか、実際に2万円の値打ちのあるものをなんだって5000円で売りに出すんだい?と山田刑事は聞く。
青年はニヤリと笑って、スペシャルサービスですよと答える。
それを聞いた宮川刑事は、スペシャルサービスか、これは良いやと笑い出し、しかし5000円だって良いはずだよ、元はタダだもんな、盗難品だってことわかってるんだよ、お前知らないのかとせめる。
さあ、知りませんねと青年がとぼけるので、本物だってことは知ってたんだろう?と山田刑事が聞くと、まあねというので、どこで手に入れたんだ?と宮川慶次が問いかける。
仲間から買ったんだというので、いくらで?と山田刑事が聞くと、これを仲間から買って5000円で売ったんじゃ儲からんだろう、おかしいじゃないか、お前が盗ったんだろう?と宮川刑事が追及する。
すると青年は、バレたらしょうがねえや、俺が盗ったのさというので、そうか、じゃあ、時計と一緒にあった拳銃のことはお前知らないか?と宮川刑事は優しげに青年の肩に手を置いて聞く。
パチンコ?あんなやべえものいつまでも持ってねえよと青年が言うので、拳銃は表じゃ売れんだろう?誰に売ったんだ?と宮川がさらに優しく聞くと、刑事さんパチンコ追っかけてんだな?それが本筋だろうと青年は気づ木、俺のネズミの方のこと大した事ねえんだろ?とカマをかけてくる。
それは山田さんに聞いてみるんだなと宮川刑事は答え、村小山田刑事は、もったいつけんじゃないよ、え?誰に売ったんだ!と厳しい表情で迫る。
すると青年は観念したのか、源さんだよと答えたので、源さん?どこの源さんだと宮川刑事は聞く。
青年は「焼き鳥キャバレー」だよと言う。
その夜、ハンチング帽の2人が「やきとりキャバレー」にやってくる。
いらっしゃいませ、いらしゃいませ、連日のご来店厚く御礼申し上げますと店員が挨拶する。
みなさまお待ちかねの特別ショーをこれからお送りするわけでございます、さてここに取り出しました大きな桃を、これから皆様方にお裾分けするわけでございますが、この桃につきましては曰く因縁、故事来歴、若干少しちょびっと申し上げますと、鬼を退治した桃太郎の生まれた桃でございますね、そう言えば、私が優しく力持ちですって?上手いことをおっしちゃって…、では、早速お切りしましょうと、ステージ上の司会者が大きな包丁の作り物を手にする。
舞台上で、大きな包丁を持った司会者が桃の作り物を切る真似をすると、もm子の作り物が二つに割れ、中からはメタリックなビキニ姿の女性が登場し、司会者とちょっと絡んだのち、客席に降りてきて客に愛想を振り撒きながら踊り始める。
客に化けた宮川刑事は、ねえ、お姉ちゃん、源さんに会いたいんだけどなとさりげなく和服姿のホステスに聞いてみる。
あそこにいるじゃないとホステスが言うので、あそこってどこ?と聞くと、あら、ご存知ないの?とホステスは不思議がる。
まあ、早く言えばねと宮川が笑顔で答えると、面白い人ね、源さんってここのMCよとホステスは教える。
MC?と宮川刑事が聞くと、司会者よとホステスは言うので、ああ、あいつかと宮川刑事は得心し、ホステスがついだビールを片手に、トニー谷風のメガネをかけた源さん(大東良)に近づくと、よ、色男!どうだい、いっぱい行こうやなどとはやしながらビールを勧める。
すでに、他の客からビールを奢ってもらっていた源さんだったが、どうも、ご機嫌ですねと言いながらビールをコップに受ける。
源さんだろう?とビールを注ぎながら宮川刑事が聞くと、ええ…と、ちょっと警戒しながらも答える。
ちょっとと舞台袖に宮川刑事が呼ぶと、何か用ですか?と源さんは警戒する。
宮川刑事は買ってもらいてえもんがあるんだよと持ちかけると、え?と言いながらも、ブツはあるのかい?とこっそり聞いてくる。
宮川が上着の内側を覗かせると、良し、この曲が終わったらな、俺の後についてきなと源さんが言うので、よし来た、急いで金が欲しいんだ、頼むぜ!と宮川は返事する。
源さんはメガネを外し、急に厳しい顔になると、甘ったれるんじゃねえ!と言って立ち去る。
先ほどの和服のホステス(稲植徳子)が源さんの後をつけて楽屋裏に入り、宮川はカウンター席で飲んでいた長田部長刑事に目で合図をすると、自分も源さんが入った舞台袖に入りこむ。
すると先ほどのホステスが、源さん、変なもの買うんじゃないよ、やばいもの、どうしてくれんのよと注意していた。
わかってるよ、あっち行ってろよと源さんは答える。
ホステスが去った後、宮川が近づくと、おめえ、俺のこと、誰から聞いたんだいと源さんは聞いて来たので、野上で泣きやってる奴だよと答えると、サブのことかと言うので、そう、サブのやつが源さんに頼めば力になってくれるって言ったぜと答える。
すると源さんは、変なお世辞はよせよ、おい若いの、おめえ、いつサブに会ったんだと聞くので、昨日だと言うと、昨日?何時頃だ?と聞くので、そうだ、昼過ぎ頃だったかな?と答えると、昼過ぎ?おい、若い衆、帰んなと源さんは言い出す。
どうしてだよ?と聞くと、サブ公はな、昨日の午後はずっとここで遊んでたんだよと源さんは言うので、宮川は諦めて舞台裏から帰るが、おう、2度と来るんじゃねえぜと源さんから釘を刺されてしまう。
そんな宮川の様子を見ていた客の一人が立ち上がる。
長田部長刑事はカウンターから立ち上がり帰りかけるが、同じく帰ろうとしていた宮川に、立ち上がった客が、兄さんと背後から声をかけてくる。
何でえ?と宮川が振り返ると、パチンコだろう?とその客は言う。
宮川は誤魔化そうとするが、パチンコ売るなら源一人じゃないんだぜとその客は言うので、それじゃ一丁手をつけてくれないか、ちっとは値が嵩張っても構わねえぜと頼む。
よし、じゃあ、30分したら、裏のガード下で待ってなよと客はいうので、ああ、頼むぜと宮川刑事は喜ぶふりをする。
客は、やばいから気をつけろよと忠告する。
宮川刑事は、OK、OK、任しとけ!と軽薄に答える。
その客は店を出ると、宮川は出口付近で待っていた長田部長刑事に顔で合図する。
長田はすぐに客の後を追って店を出て行く。
ビール瓶をラッパ飲みしていたけど宮川刑事は、ちょっと貸してねと断って、店内から電話をかける。
夜の捜査本部では、林刑事と金子刑事が将棋を指し、主任は居眠りを仕掛けていたが、そこに宮川刑事からの電話が入る。
はいはい、あ、宮川くんか、賑やかだねと応じた主任だったが、何?「やきとりキャバレー」の中?と驚き、うん、うん、ほお、すると拳銃を売ると言う別の線が出たんだな…と主任は答える。
尾行する?長田くんがね…、良し、じゃあ、その支えにともかく乗ってみたまえと主任は指示する。
将棋をやめて立ち上がった、林刑事と金子刑事に、主任は、新橋の焼き鳥キャバレーだがね、そこの舞台で司会をやっている通称源さんという男を一応任意の形で同行してきてクラネイかと頼む。ガード下で待っていた宮川刑事に、おい、タバコ1本くれよとねだってきた男がいた。
宮川はタバコを一本恵んでやり、ライターで火でつけてやると、あっちへ行けと言って追い払う。
そこにキャバレーであった男が近づいてきて、おお、持ってきたぜと話しかけてくると、右手を差し出して、さ、この上に一枚ずつ札積みな、良いと思ったところでブツ渡してやるよと要求してくる。
宮川は吸っていたタバコを放り投げると、死んだところで去っていかれちゃたまらねえやと笑いながら反論すると、唾を吐いて、ともかくブツを見せるだけ見せてくんなと逆要求する。
男は良しと答えると、コートの内側から拳銃を取り出して見せる。
宮川は自分も上着の下に手を入れて金を出すと見せかけ、警察のもんだと言いながら相手の拳銃を奪おうとする。
相手が落とした拳銃を靴で押さえながら、捜査一課のものだ、拳銃の不法所持だぞと言いながら、宮川は男を抑えようとする。
相手は畜生と言いながら、宮川を突き飛ばすと逃げていったので、宮川も落ちていた拳銃を拾って後を追跡する。
近くで張っていた長田部長刑事も一緒に追跡するが、逃げていた男は接近してきたトラックにぶつかって撥ねられてしまう。
駆けつけた長田部長刑事たちの手の中で、男は頭から血を流し意識を失う。
その頃、焼き鳥バーに来た林刑事と金子刑事に、応対した着物姿のホステスが、源さんですか?と言いながら店内を見まわし、源さんはあそこで酔っ払って黒眼鏡をかけてる人と教えていた。
モステスにしがみついて絡んでいた源さんに、もしもし?源さんだね?と林刑事が体を叩いて声をかけると、なんだよ、チッ!もう飲めないよ、俺…と源さんはハメつけてきたので、ちょっと来てもらいたいんだけどと言いながら、林刑事は警察手帳を見せる。
ホステスが警察の人ですよと教えると、急に酔いが覚めたような源さんは逃げ出そうとするが、金子刑事が取り押さえる。
ホステスが駆け寄って、暴れていた源さんに、源さん!と声をかける。
一方、トラックに撥ねられた男は病院に入院しており、宮川刑事が付きっきりで脈を見て様子を伺っていた。
そこに捜査主任がやって来て、やあ、ご苦労だったと声をかけると、出血多量で、頭蓋骨にヒビも入っているらしいですと宮川は教える。
意識がないんだなと言いながら、主任もガイシャの脈を見ながら、で、拳銃は?と聞くと、本庁の銃器室の方へ回しておきましたと宮川は報告する。
そうか…と答えた主任は、長田君は?と聞くので、こいつの拳銃を撮りにいったうちを張り込んでおります、こいつに母ちゃんがいるらしいんですと宮川は言う。
ふ〜ん、そうか…と主任は答える。
長田部長刑事は、深夜、男の家の前で張り込んでいた。
署に連れて来た源さんが机に突っ伏したままなので、おい、源さん、お前さん、酔うといつもこうなのか?と林刑事が呆れたように聞いていた。
しっかりしろよ、おい!と声をかけると、あっしはしっかりしてますよ、ああ、しっかりしてますよと源さんは答える。
うん、そうだ、そうだと応じた林刑事は、あのな源さん、お前さん、上野の三公から米軍の拳銃買ったろう?それをどうしたい?うん?と聞くと、言わなきゃ行けねえことは、言っても言えないことはあるんですけどね、そう、そう、そう言いますよね、そう言えますと源さんは訳のわからないことを言って、また机に突っ伏す。
そこに金子刑事が、コップに入った水と手拭いを持ってきて、突っ伏していた源さんを起こすと顔を拭き、驚いた源さんに、源さん、水だよと林刑事がコップを差し出す。
源さんはそのコップを受け取ると美味しそうに水を飲み干す。
翌朝、本町の銃器室では、銃器技師(片山滉)が、昨夜持ち込まれた拳銃を調べていた。
技師は中央病院に電話をかけると、こちら警視庁ですがと名乗り、ええ、お願いしますと頼む。
看護婦から呼ばれた捜査主任が病院の受付の電話に出て、はいはい、ああ、銃器室の…と答えると、うん、うん…、ほお〜、すると、ここに収容した怪我人が持っていた奴が盗まれた米軍軍用拳銃に間違いないんですな?と確認する。
ああ、そらあ、どうも…、あ?ええ、何しろ意識がないんで取り調べようが…、ああ、ご苦労さんでしたと言って主任は電話を切る。
そこに長田部長刑事が怪我人の妻らしき女性を連れてきて、怪我人の名前は小森留吉(佐原広二)、32歳、あれが小森の内妻ですと主任に教える。
アヤ子(星美智子)を見ながら、うん、小森の拳銃は殺しの凶器に間違いないそうだと主任が教える。
病室では小森の容体を見た医者(牧野狂介)が、ダメですなと宮川刑事に伝えているところだった。
そこにアヤ子を連れた主任と長田部長刑事が入って来たので、医者は、たった今、息を引き取りましたと主任に伝える。
アヤ子は小森の顔に縋りつき泣き出す。
主任は宮川刑事を部屋の隅に連れて行き、拳銃の艦艇によれば、この仏様はホシだったよと教えたので、やっぱりそうでしたか…と宮川は納得する。
その間、アヤ子に寄り添った長田部長刑事は、あんたの悲しみはよくわかるよ、だが、もうこうなったら仕方がない、さあ、あっち行こうと慰める。
しかしアヤ子は長田の手を振り払い、かわいそうだよ、この人、この人が…と遺体から離れようとはしなかった。
そんなアヤ子に、実は小森はね、今騒いでいるガソリンスタンドの犯人だったんだよと、長田部長刑事は教える。
うちの人、そんな…とアヤ子は信じようとしなかったが、あんたの庇いたい気持ちはよくわかる、しかし小森は、先一昨日の夜、ガソリンスタンドに…と言い聞かせようとすると、先一昨日の夜?うちの人にそんなことができたかどうか、警察の方が良く知ってるじゃないか!とアヤ子は立ち上がって言い返してくる。
それはどういう意味だよ?と長田部長刑事が聞くと、うちの人、昨日出て来たんだよとアヤ子が言うんで、昨日?どっから?と長田部長刑事が聞くと、冗談じゃないよ、半年も小菅にぶち込んどきやがって!とアヤ子は怒り出す。
小菅!と聞いた主任は宮川刑事に目で確認を依頼する。
署に戻った主任は、金子刑事から報告を聞くと、酔っているうちは源の奴、散々手こずらしましたが、一旦冷めたら、急にシュンとなってスラスラ吐きました、源の自供によると、サブからかったあの軍用拳銃を見慣れぬチンピラに売ったそうですと言う。
チンピラに?と主任が聞くと、はあ、どうやら例の逃げた倉庫破りらしく思われますがと金子は答える。
威嚇射撃で撃たれた奴かね?と主任が聞くと、はあと金子刑事は答える。
そこにきた宮川刑事は、主任、小森の指紋を照会しましたところ、やつは昨日の昼近くまで確かに小菅にいたそうですと報告する。
ふん、すると、殺しのホシは別にいると言うわけか…と主任は苦笑する。
一方、アヤ子を尋問していた長田部長刑事は、じゃあ何故留吉は拳銃を持ってたのかね?留吉は小菅を出るとすぐその足で、どっかから買って来たと言うのかい?と問いただす。
そこへ入ってきた林刑事が何事かを長田部長刑事の耳元に囁きかける。
改めて、アヤ子の前に座った長田主任刑事は、お前さん、枕探し(旅客の寝ている間に、その枕もとに置いてある金品を盗み取ること)の前科があるねと聞く。
背後に座った林刑事も、お前さんの諮問で前科を調べたんだよと教える。
あの拳銃を手に入れたのは、ショットしたらお前さんじゃないのかい?え?さあ早く正直に話して仏様を浮かばせておやりと長田部長刑事は語りかける。
アヤ子は急に気弱そうになり、私、あの人がいない間、ずっとぱんぱんしてたんだよと打ち明ける。
あの人がいなくたって食ってかなきゃなんないし、それ、やっと出て来たから2人で地道にやっていこうって話やったんだけど、一文無しじゃどうにもならないし…とアヤ子は泣き出す。
私も男なんか取りたくなかったし…とアヤ子が言うので、そこでお前さんが手に入れておいた拳銃を止め基地が売ろうとしたわけだねと長田部長刑事が推測すると、アヤ子は頷き、こんなことなるくらいなら、いっそ私が身体売ってた方が…と悔やむので、で、拳銃はどうして手に入れたね?と長田部長刑事は聞く。
一昨日の夜、終電車が通った後、明日うちの人を迎えるんだから、ご馳走ぐらいしてやりたいと思って…、そしたら新宿の宿屋から出て来た男がどうだって言うから…と、私、その旅館まで連れて行かれて…とアヤ子は言う。
するとあの拳銃はその男が持ってたと言うわけかね?と長田は確認する。
最初、最後ポケットを探るつもりでポケット当たったら、あれが入ってたもんで…とアヤ子が打ち明けたので、それで頂いちまたってわけだね?と林刑事が確認すると、ええ…とアヤ子は項垂れる。
その男の年恰好は?と長田部長刑事が聞くと、40くらいと言うので、他に何か特徴は?と聞くと、さあ…と迷ったアヤ子だったが、左利きだった…と思い出す。
左利き?どうしてわかったね?と長田が聞くと、タバコを左手で飲んだり…と言うので、自分も左手で吸っていた林刑事が、タバコくらい時には左手で吸うよと言い返すと、でもあの人は左利きよとアヤ子が言い張るので、どうしてそれがわかるね?と長田部長刑事が聞き返すと、だってあの人、何をするにも左手が先なんだもんとアヤ子は答える。
ふ〜ん、で、朝シンは何て呼んだんだ?と長田が聞く。
「双葉ホステル 一泊200円均一」と書かれた旅館に一人やって来た林刑事だったが、玄関を入ると、女中らしき女(谷本小夜子)が出てきて、いらっしゃいませ、お待ち合わせかね?と聞いて来たので、え?いやちょっと…と林刑事が言いながら警察手帳を見せると、女中は慌てて女将を呼びに行く。
出て来た女将(不忍郷子)は、まあなんですか、ご苦労様でございます、ま、どうぞお上がりになってくださいませ、さささ、どうぞと愛想よく誘う。
あ、いやいや、ここで結構と遠慮した林刑事は、ここのお客で40歳ぐらいの左利きの男はおりませんかな?と聞くと、さあ?あんた知ってるかい?左利きのお客さんだってと女将は座布団を持ってきた女中に確認する。
左利きなば、あの人ですかね?一昨日の夜、2人連れで来て、朝起きながら女に逃げられたつって…とと女中が思い出したので、うん、それらしいな!と林刑事は食いつく。
すると女将は何事かを思い出したようで、じゃ、あの事で?と聞いて来たので、あの事?と林刑事は聞き返す。
あの人左利きだったかね〜?いえね、時々見えるんですけど、あの朝、枕探しにかかったなんて大騒ぎで、でもうちじゃあ、お客さんのお連れにまで責任持てませんって言いましたんですよと女将は答える。
うん、で、その男の宿帳は?と林刑事が聞くと、たみちゃん、宿帳!と呼びかけ、もらった宿帳をめくりながら、なんですか、大事なもののようでしたけど…、3号室でしたから…と女将は答え、宿町を見せる。
林刑事はそれを見て、うん、鳩山一郎、妻トヨか…、うん…と困惑するが、そこにカップル客が入って来たので、女将は、いらっしゃいませ、たみちゃん、7号室へご案内して、どうぞと声をかける。
林刑事は、そんなカップル客の後ろ姿w見ながら、ちょっと電話を貸していただけませんかと女将に頼む。
本部にいた主任は鳴り出した電話の受話器を取ると、はい、本部、あ、林君かと気付き、うん、アヤ子の供述通りだったんだなと答え、で、男の方は?鳩山一郎?そりゃ偽名だな…と笑い出す。
何!時々やってくるらしい?じゃあ、ご苦労でも、張り込んでみてくれんか?長田君たちは今新宿の宿屋に…、うん、左利きが出て来たと言う宿屋だな…、そこに張り込みに行っとるよ、どっちへ立ち寄るか…、ま、よろしく頼むと主任は伝える。
その言葉通り、長田部長刑事は「ベッドハウス 新生館」と言う宿屋の前で聞き込みをしていた。
夜、長田と一緒に張り込みをしていた宮川刑事は、出て来た女性(藤里まゆみ)に、あ、ちょっと…と話しかける。
あら?あたい?と驚いた女性に、うん、ちょっと付き合ってくれないかと宮川刑事は頼む。
しかし女性が、あたい、今日休業なのよと言うので、え!と宮川は驚くが、ダメなの…と女性が言うので、ああ、いや、君、このドヤに住んでんだろう?と意味を悟った宮川刑事は苦笑して付け加える。
女性がうん…と頷くと、ちょっと聞きたいことがあるんだと宮川刑事はいう。
あんた、刑事さん?と女性が言うので、ん?うん、あ、付き合えよと言いながら、目の前にあった「新宿名物焼きそば」の屋台に誘う!
二人前!と宮川刑事が頼むと、あら、刑事さんにご馳走なんか…と女性は恐縮するが、実はね、あのドヤに若い男が寝てるって聞いたんだけど…と宮川は要件を切り出す。
うん、そうらしいわ、おじさん、胡椒聞かせてねと女性は、中華そばを鉄板で焼き始めた店主に注文する。
どんな男だい?と宮川刑事が聞くと、あたい、あんまり人のこと構わないタチだからよくわかんないけど…、20歳くらいねと女性が言うので、ほおと宮川は答える。
こないだ夜中に大怪我して帰って来たんだって、お医者さんらしい人が来るから本当らしいわと女性はいう。
その時、へい、胡椒の効いたの…と言いながら店主が焼きそばを差し出してくる。
いくら?と宮川刑事が聞くと、60円で…と店主は答えたので、100円札を渡すと、どうもありがとうございますと店主は礼を言い、お釣りを差し出す。
宮川は割り箸を渡し、お上がりよと勧めたので、あら、そう?ご馳走様!と女性は喜び、あたいは昨日から休業でしょう?ドヤ代は取られちゃったし…、お腹ペコペコと言いながら焼きそばを食べだす。
その若い男って、1人で寝てるの?と宮川が聞くと、ううん、もう一人40くらいの…、ちょっと良い男よ、刑事さんほどやないけど…と女性はお世辞を言って来たので、宮川刑事は苦笑しておだてちゃいけないと答える。
刑事さん、冷めちゃうわよと女性が焼きそばを勧めてきたので、宮川刑事は君にあげよと答えると、良いわよと女性は遠慮したので、俺、さっき飯食ったばかりなんだと言うと、刑事さんって案外景気良いのねと女性は感心する。
で、その40ぐらいの男って言うのは左利きかい?と宮川が真顔になって聞くと、左利き?さあ…、わかんないな〜、ほら、あの人よ、あのびっこ!あの人もお医者さんらしいわと女性は、背後を通りかかった男に気付いたようで、宮川に教える。
宮川が暖簾をめくって外を見ると、黒いスーツに黒い帽子で杖をついた足の悪い眼鏡の中年男が「新生館」に入って行くのが見えた。
店を出た宮川は、張っていた長田部長刑事のそばに来て、頷いて見せる。
宿の入り口で、黒服の男が振り向いたので、反射的に身を隠した宮川と長田だったが、すぐさま宮川が宿に後から入ってみる。
黒服の医者らしき男(花沢徳衛)が入った部屋の前まで来た宮川刑事は、ダイヤ型のドア窓の割れ目部分からそっと中を覗いてみると、同室の左手に包帯を巻いた若い男(今井俊二)に何かを渡しながら、ああ、そうだ、約束の弾だ、一時はお前の体の中に入ってたもんだ、大事にしな…と医者は言って手渡す。
受け取った青年は、余計なお世話だと言い返すが、医者が傷口を押さえたので、痛え!と喚くが、騒ぐんじゃないよ、俺の手当が良いから、あらかた直ってらあなと医者は傷口を見ていう。
外で貼っていた長田部長刑事の元に戻って来た宮川刑事は、もう医者が来ますと報告する。
その言葉通り、もぐりの医者が「新生館」から出てくる。
電柱の影で張っていた宮川刑事が、医者が通り過ぎた時、背後から近づき、もしもし、警察のものですが‥と肩を叩いて呼び止める。
何だよ?と医者は文句を言うが、すみませんが、ちょっと署まで来てくださいと宮川は頼む。
一方、「双葉ホステル」の女将の室で張っていた林刑事に、女将がお銚子を持ってきて、冷えますね、何もありませんけど…などと言ってきたので、いや、もうそんな…と林刑事は恐縮する。
まあよろしいじゃ…と女将が言うので、私は酒はやらんもんですからと林刑事は教えると、親、そうですか…と女将は驚きながらも、廊下を通る客に気づくと、もうお帰りで?またどうぞと挨拶する。
署に連れてきたもぐり医者に、するとあんたは、医師法違反ということになるが、それを承知でもぐり医者をやっとったのかね?と主任が聞いていた。
そうだよと壁に貼ってある地図を見ながら医者が平然に答えるので、よく拳銃弾の摘出手術なんかできたもんだなと宮川が呆れると、うん、俺は軍隊にいた時4年ばかり衛生兵をやってたからね、それに、引け目なんて、こっちだけじゃねえんだよ、奴だって医者に行けば体の中から出てきた弾がサツのもんだってことはすぐにバレちゃうしね、わしに頼みゃ料金は高いけど、どこで撃たれたなんて野暮な詮索はしないからねと医者は答える。
実料、いくら取ったんだい?と宮川が聞くと、え?と医者がトマフォったので、手術料だよと繰り返すと、うん、口止め料込みで3万円だと医者は答える。
そんな大金いつ受け取ったね?と主任が聞くと、うん、奴の兄貴分って奴が出した、ああ、無理しやがったね〜、ありゃ…などと医者が言うので、兄貴分?と主任は聞き返す。
うん、奴と一緒に住んでいる坂田五郎ってんだよ、新聞見て驚いたね〜、タクシーにガソリンスタンドか?…と医者が教えたので、主任も宮川刑事も目が光る。
何〜!じゃあその坂田が…と主任が睨むと、宮川刑事と顔を見合わせる。
その頃、「双葉ホステル」では、女将が、旦那、ご苦労さんですねと言いながら、今度は茶を持ってきたので、どうぞお構いなくと林は答える。
その時、新客が入ってきたので、あいすみません、今お部屋、全部塞がってますんですよと、応対に出た女将が断ると、部屋にいた林啓示に首を振って見せる。
客の中年男は、いっぱいなんだってさと女に言い、失敬と言って出て行ったので、すいません、またどうぞと言って女将は送り出す。
部屋に戻ってきた女将に、女将さん、繁盛するね〜と林刑事は冗談を言うと、いいえ、こんなこと珍しいんですよ、本当に、それに皆さん、お時間でさっさと帰っちゃいますからねと女将は言い訳する。
そうかね?と林刑事が興味なさそうに答えると、あら、本当ですよと女将は憮然としたように答える。
一方「新生館」前でまだ張っていた長田部長刑事は、ハンチング帽の男が「新生館」に入るのを目撃する。
ハンチング帽の男坂田五郎(加藤嘉)は、先ほどもぐり医者の手当を受けていた弟分の青年の部屋に入ると、どうだい?まだ痛むかい?と笑顔で聞き、弟分は首を横にふる。
そん部屋の前に、長田部長刑事が忍足で近づき、ダイヤ型のドア窓の割れ目部分から中を覗き見る。
兄貴、こんなのが出てきやがったんだよと、青年が坂田に銃弾を見せる。
どれ?と言ってその銃弾を受け取った坂田は、良し、良いとこに捨ててやるからな、安心しなと優しく言い聞かせる。
これでもう、サツを恐れることはねえやなと言った坂田だったが、いきなり長田部長刑事が踏み込んだので、慌てて青年と共に反対側の窓から逃げ出す。
長田部長刑事は待て!と呼びかけ、窓から裏道に飛び出すと二人の後を追いながら、呼子を吹き鳴らす。
その音に気づいた宮川刑事と金子刑事らが、二人を発見し後を追う。
途中で青年が転んだので、坂田は起こそうとするが、そこにやってきた長田部長刑事が青年を押さえようとし、反対側の階段を降りてきた宮川刑事らが到着し、さらに逃走しかけた坂田と青年を追い、金子刑事が青年に手錠をかける。
坂田は、長田部長刑事と宮川刑事の二人がかりで確保する。
刑法第240条
強盗 人ヲ死ニ至シメタトキハ
死刑又ハ無期懲役ニ処ス(と、確保した2人の容疑者を連行する刑事たちの後ろ姿にテロップが重なる)
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