「二階堂卓也・銀座無頼帖 銀座旋風児」

小林旭主演の「銀座旋風児(ぎんざ・マイトガイ)シリーズ」第一弾

「月光仮面」でお馴染みの川内康範氏らしい明朗ヒーローの通俗活劇もので、スーパーヒーローのようなファンタジー設定ではないものの、気がつくと姿を消すすばしこさを持っていて「風のような旋風児」と呼ばれている設定などがわかるし、女性にモテモテキャラクターで、いつも得意げに笑う青年という設定になっている。

彼の本職である装飾デザイナーというのが今一つわかりにくく、建築デザイナーなら1人で銀座に事務所を構えるのは無理ではないかと感じる。

実際劇中での二階堂卓也は事件の捜査にかかりきりで、スマホもない時代、事務所の電話番すらいないし、これでどうやってデザイナーとしての営業するのか理解できない部分がある。

劇中での二階堂は変装の名人という特技も披露しており、これが後の東映作品での二代目「多羅尾伴内」起用につながるのではないかと推測している。

本作のクライマックスやラストの書き置きセリフの演出なども「多羅尾伴内」そっくりである。

主人公が当たり前のように拳銃を持っているのも、西部劇ブーム、拳銃ブームだった当時ならではで、荒唐無稽アクションと割り切って見るべき作品。

「渡り鳥シリーズ」でもお馴染みの宍戸錠さんとのコンビも一作目から始まっているし、同じく「渡り鳥シリーズ」の常連の一人白木万理(マリ)さんも重要なポジションで登場している。

浅丘ルリ子さんや高品格さんなど、お馴染みの俳優の若い頃も楽しめる。

意外だったのは、東宝に入社する前の浜美枝さんがエキストラとしてチラリ出ていること。

まだ歯並びなどが悪いことから、矯正前ではないかと想像する。

【以下、ストーリー】

1959年、日活、川内康範原作、織田清司脚色、野口博志監督作品

ネオン煌めく夜の銀座

クラブ「コパカバーナ」のフロアでは男女客がバンド演奏をバックに踊っていた。

演奏が終わると、フロアにスタンドマイクを持って来て立った支配人(高野誠二郎)が、こんばんは、みなさん、ただいまの演奏は渡辺宏とスターダ・スターズの皆さんでございました、さて今晩は珍しいお客様がおいでになっておりますので、ご紹介したいと思いますと口上を述べ出す。

装飾デザイナーの二階堂卓也さん!人呼んで「銀座旋風児」!と支配人が言うと、バンマスの合図でファンファーレを演奏し、スポットライトが場内を探し出すが、肝心の二階堂卓也(小林旭)は姿を消していた。

タイトル

狼狽した支配人が従業員に探させ、フロアでは再び男女客のダンスが始まる店内情景を背景に

スタッフ・キャストロール(小林旭が歌う主題歌の中)

マイトガイスタイルデザイン 長沢節のスタッフ名

翌日、路面電車が走る真昼の銀座には、森永キャラメルやナショナル、ビクターの広告塔が目立つ

「大島宝飾店」の店内で宝石の横に置かれた札束をバッグにしまっていた中国人の衣装を着た王徳宝(芦田伸介)は、店員らに見送られ店を出て、停まっていた車に乗り込むが、その様子を近くに停めた車の運転席から監視していたのは情報屋の政(宍戸錠)で、これで二軒目だとつぶやき、手帳に書き込む。

「京美堂」と言う別の宝飾店の前で車を降りた王を、追跡していた政はさらに監視する。

続いて王は「山野宝石店」と言う別の店に移動し、店の前に出てきた店員からバッグを受け取った店長(雪丘恵介)が、今度の店は大変だったでしょうな?と話しかけられると、全財産をかけての勝負ですよ、まあ見ててくださいと王は返事したので、いや、で、開店はいつ頃でしょう?と聞きながら、店長は王にバッグを手渡す。

王は、そう…、後半月はかかるでしょうと答え、じゃあと挨拶して帰って行き、店長と店員はありがとうございましたと会釈して見送る。

「モナコ改築工事 施工・沢村建設 設計管理・藤沼健二郎 主任技術者・川久保三郎」と書かれた看板がかかった工事現場に車で帰ってきた王を、「モナコ」のボーイ長で俵藤組組員村沢彦次(弘松三郎)はお帰りなさいましと慇懃に出迎える。

そんな村沢にバッグを渡し、工事中の店内に入る王。

そんな「モナコ」の前に車で乗りつけた政は、確かに何かあるとつぶやくと、また手帳に書き留める。

夜の「あぶはち横丁」

ギターとアコーディオンを抱えた二人の流しが通っていた小道に、「おでん お春」と看板がかかった店があった。

店内には「遠慮無用 足ラズバ呑マレヨ 心ユクマデ 銀座旋風児」と書かれた針貝が貼ってあったので、それを音読していた酔客丸山進之助(西村晃)が、銀座旋風児って?と不思議そうに聞くと、人呼んで銀座旋風児、またの名を銀座退屈男!と女将お春(南風夕子)が教える。

それを聞いても、分からんな?と首を傾げる丸山に、嬉しそうに微笑みながらお春は、そりゃ分からないでしょうよ、あの人を理解する…なんてことは誰にだって出来はしないわと真顔になって答える。

そこに、新しい紳士風の今村善平(藤村有弘)がこんばんわと言いながら暖簾をくぐって顔を見せると、お春は不機嫌そうに、来てないわよと答える。

今村は、そうツンツンしなさんなよ、先生はここにいなくても、いどころをあんたが知らんわけはないだろう?リベートは出しますよ、教えてくれればと言いながら店内に入ってくる。

教えてもらいたいのは私の方ですよと答えたお春は、丸山がコップ酒を飲み干したので、あら?お帰りですの?と聞く。

席を立った丸山は、あの~、私、こういう者ですと言いながら名刺をお春に渡すと、どうぞ、あの~、なんて言ったっけ?あ、退屈さんによろしくお伝えくださいと張り紙を指しながら言い残し店を出てゆく。

ありがとうございましたと送り出したお春に、丸山の後ろ姿を見ながら、ずいぶんしょぼって…と呆れた今村が、誰?と聞くと、名刺を見たお春は、社長さんの知らない人よとだけ答え、名刺を懐にしまうと、お店はもう閉めるんですよと言い出したので、閉めるんですよって、私がいるじゃないですか?と今村は言い返す。

それとニューフェイ子何か、お飲みくださいますか?と言いながら店の電気を消していくお春に、飲めって…、飲みますけどね、ねえ、お春さん、私は何もね、お前さんを口説こうってんじゃないんですよ、私はね、二階堂先生の居所がわからなくって…と続けたので、だからどこにいるのかわからないって言ってるんじゃありませんかとお春は迷惑そうに答える。

諦めて店の外に出た今村はタバコに火をつけるが、勝手口から出てきたお春が、店の前で一服していた隣の焼き鳥屋「はこだて軒」の主人由兵衛(河上信夫)におやすみなさいと挨拶して帰るで、焼き鳥屋の主人もお疲れと挨拶を返すが、今村もご苦労さんと焼き鳥屋に挨拶してお春の後を追いかけ、一緒に歩こうやと呼びかけ、本当にふて腐れてからに…とぼやく。

その時、お春がタクシーを停めたので、私も一緒に乗せてくださいと今村は縋りつくが、変なことしないでよとお春は座席から叱りつける。

先生の居所はどうする?と今村が食い下がるので、知らない!欲の虫!とお春は言い返し、タクシーはそのまま走り去る。

なんでしょう?欲の虫とは…,欲の虫とは酷いことになりましたな、やっぱりあれは先生の居所知ってるんだな、チェッ!畜生、本当に…と後に残った今村は悔しがり、別のタクシーを呼び止める。

それを見ていた由兵衛は、看板をしまうが、その時、焼き鳥屋の店の中から外をのぞいていたのが二階堂だった。

暖簾をしまいながら乗ってったらししいですよと由兵衛が教えると、見てたよとパイプを咥えた二階堂は答える。

それを聞いた女将勝子(福田トヨ)は、罪ですよ、先生とお春に同情する。

何が?と言いながら、二階堂が勝子の前のカウンター席に座ると、何がって、あれじゃお春さんが…と勝子は案じる。

扉を閉めた由兵衛も、分かんねえな、惚れられて迷惑って顔しているし…と二階堂に話しかけると、さあ、どうかな?僕にはわからんですよ、女ってものはねと二階堂は答え、盃の酒を口に運ぶ。

それを聞いた勝子は笑い、じゃあ、嫌いなんですか?と意地悪で聞くと、そりゃ、時には良いと思うこともある、ありがたいと思うこともありますよ、しかし煩らしいですなと二階堂は答える。

カウンター席の二階堂の隣に座った由兵衛は、贅沢だね~と苦笑する。

まだまだ大人ぶってはいますけど、女の正体なんて分からんですよと二階堂は言う。

その時、カウンター席の隅に置かれた電話がかかってきたので、立ち上がった二階堂は、俺だと言って受話器を取った由兵衛から受け取り、二階堂卓也だ、うん?わかった?良し、すぐ行く、ああ、「アルル」だな?と答える。

その直後、「BAR アルル」にやってきた二階堂は、待たせて悪かったなと、待っていた政に侘びながら近づくと、取引はここでやるんですか?と電話してきた政は確認する。

いや、場所は変えるよ、一緒に来たまえと二階堂は答える。

政は、どうせ先生に頼まれてきたんだ、良いっしょと答え政は立ち上が理、会計で金を払って帰りかけると、先に階段を登っていく二階堂を見たホステス(木城ゆかり)が、誰なの、あの人?と聞くので、なんだよ、知らないのかよ、もぶりだな、あれが装飾デザイナーの麒麟児と言われる二階堂卓也と政が教える。

すると、階段を降りて戻ってきた二階堂が、迷惑そうに呼びかけたので、素敵ね…、二階堂卓也‥とホステスはうっとりする。

「二階堂卓也 装飾美術研究所」とドアのガラス窓に書かれた事務所に戻ってきた卓也に連れてこられた政は、中に入って、二階堂が室内灯を点けると、ほ~、ここが事務所ですかいと感心する。

そうだよと二階堂が答えると、助手は?と政が聞くので、そんなものはおらんよと二階堂は言い、タバコを差し出すと、わかったそうだな?と聞く。

先生の睨んだとおり、王徳宝ってのはダイヤの密輸入かなんかやってるのに違いないですよと政は報告する。

だったら裁き方は他にあるはずあ、何軒ぐらい歩いた?と二階堂は聞く。

政は、銀座で4軒、横浜で2軒、渋谷で1軒、7軒!金額にしてざっと4500万円ぐらいになりますかね?と苦笑しながら答えると、「モナコ」と言うキャバレーは?と二階堂が聞く。

今、改装中でさあと政が、勝手に部屋にあったジンの瓶を手に取りながら答えたので、ふ~ん、資金の一部に売り出したか?と二階堂はつぶやく。

どっから手に入れたんでしょうかね?大変な貴金属ですぜ、しかも王の奴はどうも日本人臭いんですよと、グラスにジンを注ぎながら政は指摘する。

一度会ってみるか?と二階堂が言い出すと、そいつは危ねえ、今先生が出張ったとなると敵はかえって警戒しますよと政は忠告する。

だろうな…、しかし王徳宝が本当の中国人だとしてもこの銀座のど真ん中で堂々と悪事を働かせておく手はねえと二階堂が言う。

警察でもねえ先生が何も…と政は呆れるが、政、この情報を売り込んだのは貴様だぞと二階堂は言い返す。

政は諦めたように、そう言っちゃね…と答える。

どうも匂うんだ、王徳宝のやってることは俺のアンテナにな…と二階堂は指摘する。

すると笑い出した政は、こう見えても情報屋の政は勘だけは良いんですよ、つまり王の身元のことをもっと突っ込んで洗えば良いんでしょう?と答えたので、苦笑した二階堂は頼むぞと言う。

翌日、二階堂は山野宝石店のショーウィンドーを眺めるが、それに気づいた女性たちが、あら?旋風児よなどと言いながら集まってくる。

まあ素敵!芸術家なんでしょう?などと言う女性(浜美枝)までいて、自分のことを噂されていることに気づいたと感じた二階堂はその場からさろうとするが、その時、二階堂先生!と呼びかけながら駆け寄ってきたのは、料亭「かどや」の女将菊千代(雨宮節子)だったので、二階堂は慌てて店内に逃げ込む。

菊千代も一緒に店の中に入り、あ、これは菊千代姉さん、毎度と女店員(月玲子)が挨拶すると、先生いなかった?と菊千代は二階堂のことを聞く。

は?と女店員が戸惑ったので、二階堂先生よと菊千代が繰り返すと、さあ?ッド・オア・リベンジんな方でしょう?お客様はどなたも…と言うので、おかしいわね~と菊千代も困惑する。

奥の部屋で主人と二人きりで会っていた二階堂は、秘密は絶丁に守りますよと約束していた。

あのウィンドーに出ている5カラットのダイヤ、あの型は戦時中のものじゃないですか?と二階堂が聞くと、いやあ、流石に二階堂さん、よく見抜かれましたなと主人は感心する。

やっぱりそうか…と二階堂は納得していると、先生!あ、先生、大変だと言いながら政が飛び込んでくる。

どうしたんだ?と二階堂が聞くと、王の野郎が香港に飛ぶらしいんですぜと政がいうので、香港へ?と二階堂も驚く。

旅客機が飛ぶ。(ミニチュア特撮)

機内には王がタバコを吸いながら乗っていたが、その背後の席には二階堂が座って王を監視していた。

香港の夜景

香港に到着し、車で海岸線の道路を移動する王を別の車で追跡する二階堂。

とある建物の前で車を降りた王の背後から、別の車から降りた二階堂も近づくが、その時どこからともなく銃声が響いたので、思わず危ない!と声をかけ、二階堂は王の身を庇う。

王は自分も銃を取り出し相手を探すが、また銃弾が近くの壁に当たる。

二階堂は王の拳銃を握ると、お待ちください、拳銃は僕が預かる、あなたはお逃げなさい、あとは僕が引き受けたと声をかけたので、王は怪訝そうに二階堂の顔を見ながらも、うなづいてその場から立ち去る。

拳銃を手にした二階堂は、撃つな!俺は日本人二階堂卓也だ!と奥の通路に呼びかける、それを聞いて拳銃を引っ込めたのは、男装した女性だった。

女が逃げ出そうとしたので、待て!王徳宝に恨みある者なら待て!と拳銃を構えた二階堂が制止する。

それでも逃げようとする女に駆け寄り腕を捕まえた二階堂は、君は一体何者だ?と聞く。

振り返ったその女は、あなたこそ、いったい何のために!と二階堂を睨んでくる。

それを聞いた二階堂は、君は日本人だな?と見抜く。

その時、背後が騒がしくなったので、慌てて二階堂はその女村越明子(浅丘ルリ子)を物陰に連れ込み身を隠す。

男たちがさったのを見届けた二階堂は、さあ、今のうちに逃げるんだと明子に声をかけ一緒んその場を逃げる。

羽田空港に到着した日本航空機

展望台には、政民党代議士、陣野笠太郎(小泉郁之助)を出迎えるものたちに混じり、二階堂の帰りを待っていた今村と菊千代、勝子と由兵衛ら、大勢の女性ファンや近所の仲間たちが待ちかねていた。

人のを待つ選挙民たちは、周囲にいた二階堂ファンの芸者たちにもバンザイを強制したりしていた。

タラップから降り立った二階堂を見つけたお春が、あ、来たわ!と嬉しそうに指差すと、周囲にいた女性たちも黄色い歓声をあげる。

二階堂は香港で出会った男装の村越明子を連れて降りてきたので、それに聞いづいた今村は、あのもう一人の男は誰じゃ?と不思議がるので、ちょっと良い男じゃない?社長さんとはダンチねと、隣にいた菊千代がからかう。

それはまあそう…と乗り掛かった今村だったが、何を!と憤慨する中、

タラップを降りた二階堂の周囲には記者たちが集まり、二階堂さんお願いしますよと何かコメントを取ろうと張り切る。

あ、帰ってきた!と一部の女性ファンたちが出迎え口に向かうが、そこにやってきたのは秘書(山口吉弘)を引き連れた代議士の陣野笠太郎だったので、何だがっかりだわ~と言い捨てて立ち去ってしまう。

そんな事情も知らず陣野は、いや~、陣野、ただいま欧州視察を終わって帰ってまいりましたと挨拶する。

本日はかくも盛大なると挨拶を…と続けようとするが、そこに集まっていた大半が二階堂ファンの女性ファンだったので、退いて!と陣野を押し退けると、明子を伴って近づいてきた二階堂に駆け寄り花束を手渡す。

そんな女性陣に押し捲られた今村は、危ないから!と注意するが、何とか通り抜けた二階堂と明子の前にまたもや立ち塞がった記者たちが、二階堂さん、日本を離れた理由を一言?とマイクを向けて来る。

なんかありますか?ただの旅行なんですか?そんなことはないでしょう?銀座の旋風児と言われるあなたがただの酔狂で香港へ行くわけないでしょうなどと記者たちはしつこく聞いてくる。

二階堂は、だから退屈凌ぎですよとごまかすと、しかしそんな…と記者はさらに食い下がろうとするので、いや何もありませんよ、ほら、あの白い雲のようにねと二階堂は答え、窓の方を指さしたので、記者たちも全員そちらに目をやるが、振り向いた時にはもう二階堂の姿はいなくなっていた。

二階堂さん!と呼びかける記者たちも女性ファンたちもパニックに陥る。

車で銀材に向かっていたニキ堂は、隣に座った明子に、さて、忙しくなるぞ、明人君、覚悟は良いかね?もう東京だ、この900万人の中からたった4人の男を探すんだと話しかける。

先生、お願いしますと明子が答えると、ほらまた女になった、君は今日から木村明人という青年に生まれ変わったんだよと二階堂は言い聞かせる。

はいと明子が答えると、まあ、しっかりやろうよ、君個人の問題じゃないんだと二階堂は指摘する。

王徳宝はやはり今でも一味のものと連絡をとっているのでしょうか?と明子が聞くので、さあと二階堂が答えると、せめて全部この東京にいてくれれば良いのですけどと明子は言う。

すると二階堂は、うん、それはもう手を打ったと即答する。

手を?と明子が驚くと、いきなり知らない車が二階堂たちが乗っていたタクシーの前に回り込み停まったので、何するんだ?危ないじゃないか!とタクシーの運転手が窓から身を乗り出して文句を言う。

すると、前に停まった車の後部座席から降りてきた男が、二階堂さん、やっと追いつきましたよと、後部座席の二階堂の所に駆け寄って言うので、何だ、荒木君か?君はいつからサーカスに入ったの?と二階堂が呆れると、はは、すいません、こうでもしなくちゃ風のようなあなたを捕まえることはできませんからねと新聞記者の荒木浩司(青山恭二)は言い訳し、今頃、空港じゃ他所の連中、先生を探してますよと言う。

うん?しかし僕を捕まえても何もないよと二階堂が困惑すると、そうは言わせませんよ、捕まりませんか?と断って、荒木は隣に座っていた明子にも、失礼しますよと断って乗り込んでくる。

二階堂が運転手に合図をしたので、タクシーは再び走り出す中、二階堂さん、あなたの香港行き、この広告と関係ありませんか?と言いながら、荒木は新聞広告を出してみせる。

広告?と答えた二階堂は差し出された新聞広告に目を通す。

そこには「堀田剛造 中村利策 木原銀次郎 丸山進之介ーに次ぐ 国民のものは国民に返えせ 村越雄二郎」と言う広告記事が載っていた。

これが僕と関係あると睨んだんですよね?と二階堂が聞き、さすが慧眼と言いたいが、知らないねと惚ける。

第一僕は今日本に着いたばかりだし、この新聞を見るのも初めてだと二階堂は続け、新聞を明子に手渡す。

うん、それならこれは何でしょう?国民のものは国民に返せとは…と荒木は新聞を指差しながら聞くが、二階堂は、さあと答える。

村越雄二郎という人物を洗ってみたんですがと荒木が言うと、二階堂も明子も驚いたように顔を見るが、それで?と二階堂が先を促すと、手がかりなしと荒木が言うので、思わず笑い出した二階堂は、手がかりなしか…、ああ、紹介しとこう、今度から僕の助手になった木村明人君だと明子を紹介する。

その頃、同じ新聞広告を見ていた王は、どうする?と「モナコ」の応接室に来た2人の男に聞いていた。

どうするって、こんなバカなことなんてたまるか!村瀬は死んでる、死んでもう14年も経ってるんだと弁護士の中村利策(伊藤寿章)が言い返す。

それはわかっている、村越が死んだのを誰よりも知っているのは俺たちだ、しかしこの文句は俺たちのことをよう知っている奴でなければ書けないことだぞと王は言う。

俺たちのことを知っている奴と言えば…と中村は考えるが、その時突然入ってきた「モナコ」のママ、マキ(白木マリ)が、3人の様子を見て、どうしたのよ?と聞いてくる。

王は、いやなんでもないよ、ちょっと込み入った相談をしてるんだ、外してくれないかと、急に中国人訛りになって頼む。

だって、もうバレエ見に行く時間よとマキが戸惑ったので、すまんが、お前1人で行ってくれと王が頼むと、マキが拗ねたので、行け、行けと言うんだと王はドアを開けて強引にマキを追い出す。

マキが立ち去った後、知ってる奴と言えば…と言う王に、丸山しかないと俺は思うんだと中村は指摘する。

うん、俺もそう思う、しかし丸山でないとすれば…と王が続けたので、バカな、丸山進之助以外に誰が我々のことをしてるんだ?奴は今頃になって分前の少ないのを持ち出して嫌がらせをしようってんだと中村は指摘する。

しかし王は、そうかな?そんなら話は早いが、しかしこれがあのアル中男にできる芸当かどうかだと反論する。

とにかく奴を探そう、丸山さえ探し出せばわかることだと中村は言う。

その丸山進之介は、改装中の「モナコ」に自らやってくる。

ふらつきながら建物に近づいた丸山に、危ないですよと声をかけた村沢に、すみませんと丸山が礼を言うと、工事人に頼むよと指示して村沢は奥に消える。

一方、「アルフレッド・シャター舞踊団 マリエッタ・藤田バレー団」に車でやってきたまきは、建物の前でチンピラと二階堂が殴り合っている現場に遭遇する。

周囲には野次馬も集まっていた。

二階堂が庇っていた女性木原久美子(稲垣美穂子)を見たマキは、久美ちゃんと驚く。

二階堂は数人のチンピラを前に、この喧嘩はこっちの勝ちだ、やめたまえと笑いながら制止する。

何!とチンピラが言い返すと、やめた前と言ってるんだ、ここは文化の園だからね、君たちのようなものに荒らされたくないんだよと二階堂は言い聞かせる。

チッ!と舌打ちをしたチンピラが襲いかかってきたので、二階堂はそれを交わし、他のチンピラも投げ飛ばしていく。

前転をした二階堂はちょうど目の前にいたマキと目が合い、マキは思わず微笑む。

その時、野次馬の背後から姿を現した俵藤組組員ウスクダラの辰(高品格)が、おい、まだ話は澄んでねえぜと凄んでくる。

二階堂がその男に近づいていくと、ふざけやがって!俺たちをなんだと思ってるんだ!と辰が息巻いたので、二階堂は久美子に、行きたまえとこの場から去るように勧める。

はいとくみが返事して距離を置くと、さあ?小僧かな?でなければ蠹害ヤクザだと二階堂は辰に向かって言い放つ。

それを聞いた辰は、何!このウスクダラの辰を蠹害だって?と言い返す。

そうよ、ヤクザの道は外道だ、その中でも3流以下を蠹害と言う、覚えとけ!と二階堂がいうと、畜生!と言いながら辰がパンチを繰り出すが、それを素早く避けた二階堂は空手チョップでたつを倒したので、転がった辰は、覚えてろ!いずれたんまり礼はするからな、おい!と言い捨て、何見てるんだ!と野次馬を叱りながらその場からさっていく。

その姿を二階堂は笑いながら見送る。

その時、野次馬の女性が、あら?旋風児がないわと気づく。

本当!風みたいと他の女性も言うので、マキも、銀座旋風児か…と思わず呟くが、ママさんと久美子から声をかけられたので、久美ちゃんどうしたの?と聞き返すと、切符売り場の前で因縁つけられたの、それをあの方が…と二階堂の姿を探しながら久美子が言うので、それは見てたわ、途中から、ずいぶんすばしこいじゃない?消えるの早くて…とマキは感心する。

ママさん、ご存知の方?と久美子が聞くと、名前は聞いてたわ、銀座旋風児、貴族の出とも、有名なヤクザの血を汲んでいるとも正体不明の噂に取り巻かれた男、でも見たのは初めてだわとマキは答えると、私も初めてと久美子も言う。

魅力だわ~、誘惑しちゃおうかしらなどとマキは笑って言い返すと、あら、ママさんったら!と久美子は揶揄う。

それより荒木さんは?とマキが聞くと、だめ、忙しいらしいのと久美子は恥ずかしそうに答える。

特種?新聞記者ってどうしてそんなものに血道を上げるのかしら?恋人ほったらかしてさ…とマキは言い、久美子と一緒にバレーのある建物に向かう。

東都タイムス社の編集局

荒木さん、御面会ですよと、デスクで記事を書いていた荒木のところに、学生服姿の坊や(内藤捷雄)が知らせにくる。

え?御面会?と驚いた荒木が、誰だか知らないが断ってくれ、それどころじゃねえんだ、国民のものは国民に返せか…、どうもこのセリフの意味がわかんねえなと答えると、あの~、村越さんって方なんですけどと坊やは教える。

え?村越!と驚いた荒木は、それを早く言ってくれよと坊やを叱り、すぐさま面会室へと向かう。

2階から1階に降りた荒木だったが、それらしき人物がいないので、受付(紀原耕)に、きみ、今、ここに男の人が来てたはずだが?と聞くと、あ、それが急に会えなくなったと言いまして、お言付けを残して行きましたが…、え~、広告を出してくれるよう頼んであるからと言ってと受付係は答えて紙片を手渡す。

広告?知らんぞ、俺…と荒木は戸惑いながらも、言付けとやらを開いてみると、「木原銀ニ郎に告ぐ 貴下にもし一片の良心あれば 9月25日9時30分 築地三吉橋のたもとにて待て 村越雄二郎」と書かれてあった。

9月25日…、あ、今日だ!と荒木は気づくと、受付係も驚いて、どうかしましたか?と聞くので、いや…と荒木はごまかし、一旦は外に出かかるが、思い直して戻ってくると、君、どんな男だった村越って男…と受付に聞く。

まだ22~3の女のような美少年でと受付が言うので、何?女のような?と荒木は不思議がる。

それで広告料は忘れなかったね?と二階堂が確認すると、出かけていた明子は合流した喫茶店で、はいそれはもう…と答え、でも先生、なぜあれを広告部に渡さないで社会部のあの人に?と質問する。

含み笑いをした二階堂は、それはそれだけの意味があるよ、僕は今日「モナコ」に行ってきたよと言うんで、明子が驚くと、もちろん、王に招かれてさと二階堂は明かす。

香港で王の命を救った人、しかも装飾デザイナーの二階堂卓也としてねと二階堂は言う。

あの「モナコ」の内部改装のデザインをやってくれって言うんだ、偶然にも王の店の装飾は広告業の今村からも頼まれていたことだし、そこで正式に王と会った訳だと二階堂は続ける。

びっくりしたでしょう?と明子が聞くと、うん、びっくりした、王は奇遇を喜んだよ、しかしもっと驚いたのは僕の方だ…と二階堂は言う。

じゃあ誰かと…と明子が聞くと、君のお父さんを殺した中村、木原、堀田、丸山…と言いながら、二階堂は内ポケットから古い写真を取り出して見せる。

そこには王こと堀田剛造、中村利策、丸山進之助、木原銀次郎(山田禅二)と村越雄二郎の5人が「明華飯店」と言う店の前で写っていた。

この4人の内、丸山を除いた他の3人が…と二階堂が話し続ける。

(回想)木原君はうちのマネージャーでねと、王が「モナコ」の応接室で二階堂に紹介していた。

二階堂月よろしくと挨拶すると、私のところの顧問弁護士の中村利策ともう一人を王は紹介すると、酒どうぞと王はジョニ赤を勧めてくる。

(この男が王徳宝と堀田剛三の二つの名前を持つ一味の主導者だと二階堂の声が解説する。)

はい、マキー!とその王こと堀田が呼びかけたのは、部屋に入ってきたマキで、二階堂先生だと紹介する。

マキは笑顔で、存じてますわ、銀座旋風児、今日、久美ちゃんを救ってくれた方ですものと答える。

それを聞いた木原は、娘を!と驚いたので、二階堂も久美子と木原の間柄を知り驚く。

(回想明け)まあ、木原さんの娘さん!と話を聞いた明子も驚く。

うん、世の中って不思議なもんだな、木原の娘久美子とは…、ああ、君も知っているだろう?いつか車に乗り込んできた東都タイムスの荒木君、彼らは婚約者同士なんだよと二階堂は教える。

すると私が渡してきたあの広告文は…と明子が聞くと、無論、新聞には出まい、そして荒木の手から木原に渡る可能性があある、それによって敵がどんな反応を示すかだと二階堂は説明する。

じゃあ荒木さんは…と明子が言うと、まさか奴らに味方するはずもないが、少なくとも警戒を要する、その答えはひょっとすると今夜に…、いや、もう出てきても良いはずだ…と二階堂が指摘している時、店内の電話が鳴り出す。

あの~、先生…とウエイターが近づいてきたので、電話だねと二階堂は答え、立ち上がる。

電話の相手は政で、「モナコ」の店の前の公衆電話からだった。

あ、先生ですか、さっき荒木は「モナコ」に入りました、ええ、睨んだ通りです、指定の時間には後20分くらいありますは、ここで見張ってますか?と政は聞いてくる。

うん、そう…、出てくるとすれば荒木も一緒だ、うん、それからもう1人、おい、キャメラの用意しとけと二階堂は電話で命じる。

情報屋の政に手抜かりないっすよ、ええ?男を?とすでにカメラのケースを肩から下げていた政は驚く。

その時、政は、「モナコ」から出てきた木原とあわきに気づき、先生、来ましたと知らせるが、その背後に何物かの影が見えた。

政、目を離すなよ、その後からつけて来るやつだ!と二階堂は指示するが、その直後、受話器から聞こえてきたのは2発の銃声だったので、おい、政!と慌てて呼びかける。

公衆電話のガラスは割れており、垂れ下がった受話器のから、おい、政!良いな、木原から目を離すんじゃないぞという二階堂の声だけが聞こえていた。

返事がないのを気にしながら受話器を置いた二階堂は、腕時計で9時19分であることを確認すると、席に戻り、お腹の店で連絡を待つんだと明子に伝えると、自分は出かけていく。

一方、政は無事で、カメラ片手に尾行を続けていた。

荒木と木原は指定の築地三吉橋に来ていた。

腕時計で9時28分になていることを知った木原は、ダメだ、もし奴らにわしだけこれに応じたことが分かれば…と躊躇したので、木原さん、言ってください!村越雄二郎とあなたの関係、国民のものは国民に返せとは何を指すのです?もしあなたがこれに関係あるならば、ぜひ打ち明けて欲しいんです、僕だってあなたとは他人じゃない、お願いしますと荒木は問い詰める。

そんな二人の様子を少し離れたところで監視する政。

時間が来たので、帰りましょう、さあ行きましょうと、まだ立ち去ろうとしない木原に声をかけてたが、そこに近づいてきた男が荒木の肩を掴んで、そのまま橋の欄干に放り投げたので、政は慌ててカメラのフラッシュを焚くが、その時、車が男のそばに近づき、男は木原を撃って車に乗り込むとすぐさま走り去る。

そこにやって来た二階堂は、驚いて倒れた木原を介抱する荒木の姿を目撃し、呆然と立ち尽くすと、しまった!と呟く。

新聞の印刷輪転機が周り、翌日の朝刊には「三吉橋殺人事件 犯人は呼出状の男か?」の記事が、木原の写真とともに掲載される。

「モナコ」の応接室で、力を落とした木原久美子も招き、荒木を前に朝刊の記事を読んだ王は、いや本当に皮肉なものですね、久美子さんの許嫁である荒木さんがこの記事を書くようになるとはと話しかけていた。

考えりゃ考えるほど腹が立つよ、誰に言わしてみたって犯人は村越雄二郎に決まっているんだ!と同席した中村は断言すると、いや、そうとばかりは言えないでしょうと翁は言い返し、木原さんが村越から呼び出されて死んだと言うことは世間の誤解を招くことになると指摘する。

しかし久美子は、私、やっぱり村越に殺されたんだと思いますと言い返したので、翁は、はいと頷く。

それにしても村越っていう人物は一体何者なんですか?なぜ久美子さんのお父さんを狙ったのか、あなた方も一度は新聞広告で脅迫されててるんですからと荒木が聞くと、何か?いや、それが私にも全く…、ねえ中村さんと王は戸惑ったように答える。

うん、そうなんだよと中村も顔を背け、覚えのあることだったら僕だって善処するんだけどね、皆目見当がつかないんだよとごまかす。

あんなにお父さんが人に恨まれるなんて考えられないわと久美子も指摘する。

とにかく僕はなんとかして反ハンガ人を探し出しますよ、古臭い言葉ですが木原さんは僕にとっても未来の父親だったんですから放っておけませんと木原は義憤に駆られて言い切る。

いやそれは私もどんな協力でも致しますよ、店の開店を間近に控えてマネージャーの木原さんに亡くなられたんですから、本当に私もてんやわんやです、荒木さん、久美子さんをどうぞ労わってあげてください、ねえ久美子さん、気を落とさないでくださいと王も久美子の隣に座り慰める。

村沢とマキの案内で「モナコ」の内装を見物していた今村は、なかなか良い塗りですねと感心してた。

そんな様子をバイトに紛れた政が、掃除をしながら監視していた。

どうです、このモード?このムードね、モとムの違いでこれだけ立派なものができるんですよ、流石に二階堂先生だけのことはありますなと今村は指摘する。

するとマキは、その代わり値段も高いんじゃないの?今村さん、運と儲けてるんでしょうと探りを入れてくる。

ほらほらほら、あなたまでそんなことをおっしゃらなくても良いでしょう、私はただ紹介料だけですよと今村は言い返す。

そこに久美子と荒木が出てきたので、あら、もうおかえり?とまきが聞くと、ああ、ちょっと社の方にまいりますからと荒木は答える。

久美ちゃん、元気出してねとマキが励ますと、くみ何たらは小さな声でハイと答え、荒木と共に出ていく。

それを見送る今村は、なるほどね、若い人は良いですな、羨ましいと呟く。

今村たちがセットの奥に消えたのを見た政は、すぐさま電話をかける。

「東京地方検察庁」デスクの電話を取った斉土検事(菅井一郎)は、君だと言って来訪していた二階堂に受話器を差し出す。

いやどうも…と礼を言いながらそれを受け取った二階堂は、うん、僕だ、うん?うん、分かった、すぐに手を打とう、うん、後は頼むと言って電話を切った後、斉土さん、そろそろ真相を明かす時期が来たようですと二階堂は言う。

それを聴き、早くはないかね?と斉土検事が聞くと、いや…、黙っていたんでは、木原の娘は犯人が村越雄二郎だと思うでしょう、荒木記者もそう考えている、無論、王徳宝実は堀田剛造、それと中村利策はそれを良いことにして…と二階堂が言いかけたので、中村利策という弁護士は弁護士の風上にも置けん男だ、よほどしっかりやらんとねと斉土検事は忠告する。

いやご心配はご無用、悪は自らの悪によって滅びますよと二階堂は答える。

その頃中村は、どうもおかしい、俺は村越は断じて死んでいると確信してるんだ、ただ気になるのは奴に娘がいたということで、生きていて、もし日本に帰ってきてるとすりゃ、確か21になるというので、王こと堀田も、とすると香港で俺を襲ってきた怪しい奴…と、そいつが…と呟いたので、誰か村越の娘をバックアップしてるんじゃないかな?と中村は指摘する。

見当がつかんな…と堀田も考え込むと、それに荒木も危ないと中村が言うので、荒木が?と堀田も驚く。

やつは同の河野といっても新聞記者だ、久美子のためにこの事件を徹底的に洗うことはわかってると中村は指摘する。

そうすると俺たちのことも…と呟いた堀田は、やるか?と提案する。

すると中村は、その方法だが、我々が直接手を下すのはまずいと中村は言うので、良し!と何事かを考えたらしき堀田は立ち上がり内線電話のスイッチを入れ、おい、俵藤組に連絡しろと命じる。

「東都タイムス」編集局に戻ってきた荒木は、ちょっとここで待ってよと一緒に連れてきた久美子に椅子を差し出す。

その時、荒木の隣のデスクで電話していた記者が、お名前は?と聞き、荒ちゃん、村越という人から電話だよと言いながら受話器を差し出してくる。

何、村越?と驚いた荒木は、受話器に向かって、もしもし荒木ですと答える。

あ?村越さんの代理の方ですって?それで要件は?と聞くと、今夜8時久美子さんと一緒に?ちょっと待ってくださいと言い、受話器を塞いで久美子を見ると頷いたので、良いでしょう、どこで待ってくれますか?はい、はい、わかりましたと答え、電話を切る。

その夜、車で指定の場所に出かけた荒木と久美子は、二階堂卓也装飾美術研究所のプレートが貼られたビルの前で降りると、出迎えた明子がいたので、間違いないですねと荒木が確認すると、信じてくださいと明子は言う。

3人が階段を登った直後、その様子を近づいて伺ったのはウスクダラの辰だった。

明子が荒木と久美子を案内したのは3階の二階堂の事務所だった。

ドアのガラス窓に書かれた事務所名を見た荒木は、これは!と驚くが、どうぞ、村越さんは中でお待ちですと明子が言う。

中から入りたまえと言う声がしたので明子がドアを開け、荒木と久美子が中に入ると、薄暗い照明の中にいたのは、デスクに腰掛け、拳銃を向けた見知らぬ中年男だったので、緊張した荒木は卑怯だと言う。

すると相手は、荒木君、正面から堂々と撃つのが卑怯、それとも背後から闇討ちするのが卑怯か、ゆっくり話し合おうじゃないか、まあかけたまえと言う。

僕は君を撃つためにこれを構えていたんじゃないんだと拳銃をいじりながら言う中年男は、デスクの上に拳銃を置くと、さあ、これで良いだろう、お望みとあれば君が僕を撃つこともできるよと二人に説明すると、明子、君はここに来たまえと指示する。

僕に用と言うのは?…と荒木が聞くと、お嬢さん、あなたは木原さんを射殺した犯人はこの私とお考えでしょう?いや、構わんからおっしゃってください、荒木君もそう考えていると久美子に問いかける。

荒木がもちろんですと言いながら前に出ると、そう、あの呼び出し状は確かに私が出したものですからねと中年男は言う。

次の瞬間、デスクの上の拳銃を奪い取った荒木は、村越さん、自首してください、どんな事情があるんです、あなたは大変なことをしてるんだと迫ってきたので明子は驚くが、そう、私がもし村越雄二郎であり、木原銀次郎を射殺した犯人だとすればだ、荒木君、村越雄二郎はもうこの世にはおらんよと中年男は教え、立ち上がる。

なぜなら村越は14年前、ある男たちの奸策に落ちて非業の死を遂げたんだと中年男が言うので、一体あんたは誰なんだ?と荒木が問いかけると、荒木君、わからんかね?俺だよ、二階堂卓也だよ教える。

二階堂?と荒木が驚くと、中年男は室内の照明をつけ、変装を解いてみせる。

先生!と久美子も驚くと、二階堂は笑い出し、驚いたかね?荒木君、こう見えても銀座旋風児、伊達を気取っての芝居じゃねえ、君もブンヤなら少しはブンヤらしい勘の配りでこれを見ろと、壁に貼られて一枚の写真を指差す。

それは政が撮った写真で、車の中から銃を撃つ王こと堀田の姿がはっきり写っていた。

王徳宝!と荒木が驚き、王のおじさんが!と久美子も動揺する。

そう、君の握っている拳銃も彼のものだ、香港でひょんなことから僕の手に渡ってねと言いながら荒木から銃を取り戻すと、いずれ時がくれば警察に渡すのうと二階堂は言う。

王徳宝と測りの名前、本当は堀田剛三という二重国籍の歴とした日本人だ、君のお父さんを殺したのも彼以外の誰でもないんだよと二階堂は久美子に向かって断言する。

じゃあ、何の為に二階堂さんは?と荒木が聞くと、村越という名を使ったか?それはこの人に聞きたまえ、どっかに見覚えがあるでしょうと二階堂は答える。

明子の顔をまじまじと見た荒木は、ああ、あなたはあの時の…とと思い出す。

明子は、村越明子ですと名乗ったので、するとあの呼び出し状も新聞広告も…ち荒木は勘付く。

明子が頷くと、荒木君、今こそ全てを君たちに話そうと二階堂が口を開く。

その頃、「モナコ」の応接室では、マキを隣に座らせた堀田が、いよいよ明後日は開店だな…と彼女の髪をいじりながら話していた。

そう…、二階堂先生のおかげで大変な評判、明日新聞社が店の中の写真を撮りに来るそうよと嬉しそうにマキは言うので、嫌にウキウキしてるねと堀田は指摘する。

あんたは嬉しくないのとマキが言い返すと、俺は当分香港へ行くかもしれないよと堀田は言う。

その時ノックの音が聞こえたので、はい!とマキが答え、堀田が隣室に向かうと、入って来た辰が、あ、大将と言うので、どうした?と聞くと、荒木の奴が…と辰が答えたので、マキも隣から聞き耳を立てる。

じゃあ、二階堂と荒木の奴は何か繋がりができたな…と、話を聞いた堀田は気づいたので、ええと辰も頷く。

一方、二階堂事務所では、戦争中、軍の特務機関員だった彼らは軍が国民に供出させた莫大な貴金属をある特殊なルートを通じて戦争に必要な物資とバーターしていた。ところが敗戦でこの貴金属の大半は不要になった…と、二階堂は戦時中5人が写った写真を見せながら荒木たちに説明していた。

それらの貴金属は当然国民の手に返されるべきものだったんだと二階堂は指摘する。

それで?と荒木が聞くと、ところが堀田をはじめとする中村、木原、丸山の4人は、これを私しようとして村越雄二郎をスパイとして中国に密告、時価何億円もの貴金属を奪い、その一部を持って日本に逃走した。ために村越は銃殺に処され、その妻は当時8歳だった娘明子を連れて中国を放浪、病苦の果てに4人を呪って死んだんだ、しかも堀田は自分の悪徳を隠すために王徳宝と名前を変え、香港に残してある貴金属を日本へ運んでは現金化していた…、僕はたまたまこれを知り、偶然にも香港で堀田に復讐しようとしていた堀越君と知り合ったわけだと二階堂は明かす。

そうでしたか…と荒木は合点し、その話を聞いた久美子は涙ぐむ。

この次は誰が狙われるか…堀田はおそらく中村と手を組んで丸山進之助を闇に葬るに違いないと二階堂が指摘すると、久美子は泣き出す。

泣いている時ではありませんよ、あなたも明子君もお互いに手を取り合って、これから共同の敵である堀田たちと戦うのですと二階堂は指示する。

しかしそれだけの証拠があれば…と立ち上がった荒木てで指摘するが、うん…、僕もそう思う、君たちは復讐のためにのみ働いているはいけない、あくまでも堀田たちを逮捕するためには行方不明の丸山は必要だ、その上で国民のものは国民の手に!と二階堂が言い返したので、わかりましたと荒木は承諾する。

まず、久美子さんを安全あ場所に案内する、その上で丸山を探し出す、良いですね?久美子さんと二階堂は提案する。

久美子ははいと賛同すると立ち上がり、明子さん、父の罪を許してくださいと詫びたので、いいえ、私の方こそ…、なみふだがでます明子も答える。

明子君は久美子さんをお春の店へ、危ない時には「はこだて軒」へ移すと計画を話す。

明子ははいと承知し、二階堂は、荒木君は中村利策を洗ってくれ、彼こそは法律を逆する国民の敵だと指示する。

その時、外で物音が聞こえたので、荒木がドアを少し開け廊下の様子を見るが、人影はいなかった。

荒木が二階堂に向かって首を横に振ると、さあ早く、久美子さん、裏から出るんだよと二階堂は明子に指示する。

ビルの下では辰ら俵藤組の連中が打ち合わせをしていた。

そこまで一緒に行こうかと、事務所に残った二階堂が荒木に申し出て部屋の電気を消して出ようとした時、デスクの上の電話がなり出す。

荒木は先に出てますと言って部屋を出たので、受話器を取った二階堂が、もしもし、もしもし!もしも~し!もしもしと何度も呼びかけるが返事がなく、背後のドアを見ると、ガラス戸に人影が映ったので、荒木君!と呼びかけ部屋を飛び出る。

ビルの下に降りていた荒木を目掛け自動車が突っ込んできたので、降りてきた二階堂が、危ない!と言いながら荒木の体を押しやる。

車が走り去ったので、転んだ荒木を大丈夫か?と二階堂が助け起こしたその時、バットを持った兵藤組のチンピラが角から出てきて2人を襲撃してくる。

荒木はバットで殴られ負傷するが、一瞬早く身を避けた二階堂はチンピラを押し退け、荒木君!と声をかけるが、そこに俵藤組の他のチンピラたちが集まってくる。

たつの顔に気づいた二階堂が、貴様!いつか!と叫ぶと、礼に来たんだ、覚悟しろと辰は脅してくる。

俺ではない!金をもらって頼まれて来たろう?と二階堂が指摘すると、何!と顔を歪ませてたつが殴りかかってきて、それを合図に他のチンピラたちも二階堂に向かってくる。

二階堂が素早くチンピラたちを捌くので、それを見た仲間は、おい、みんな逃げろ!と命じる。

逃げ遅れた辰を後ろ手に捕まえた二階堂は、悪党は悪党らしく観念しろ!と叱りつけたんで、勝手にしやがれ!と辰は悪態をつく。

させてもらうよと苦笑した二階堂は、さあ荒木君、しっかりするんだと声をかけ、手を貸して立ち上がらせると、まず怪我人をおぶってもらおうと辰に命じる。

辰は舌打ちをしながらも、荒木を背負って歩き出す。

「モナコ」の応接室にいた堀田は、辰が捕まった?と報告を聞いて驚いていた。

ええ、何しろ旋風児の野郎ときたら…、あんな腕の立つ男はちょっとおりませんぜと組員は報告する。

感心してたんじゃ困るな、今に銀座の顔役はみんな二階堂にしてやられると、同席していた中村が指摘する。

組員は、そうはさせませんや、そんなことになったら俵藤組の顔も丸潰れでさ~と答える。

警視庁に送り込まれるとまずいぞと堀田が言うのを、隣室にいたマキも聞いていた。

な~に、もらってくるさと中村が答えると、二階堂の奴はきっと斉土検事に辰を渡しているはずだと指摘する。

うん、じゃあ何とかなるな…と堀田が言うと、斉土って奴はうるさ方だが、法の盲点という便利なものがあるよと中村も言う。

証拠がなければ手は出ないだろうが、問題は二階堂卓也だと堀田は言うと、消すんだな、早いとこと中村も勧める。

店の開店の日じゃどうだろう?とタバコを吸い始めた堀田が言い出す。

良いだろう、できればその前の方が良いが、うまく引っ掛かるかな?やつは一緒不在の男だよと中村は案ずる。

広告屋の今村に連絡させるぞ、うまく誘き出せればこっちのもんだと言っていた堀田は、牧が出かける様子なので、マキ、どこ行くか?と聞くと、今村を探してくるわ、たまには私も役に立たなくちゃねとマキは笑って答える。

そうか…、わかったら連絡しろよと言って堀田は送り出す。

応接室の外で張っていた政は、出かけたマキの後を尾行する。

その頃、料亭「かどや」の女将は、客として訪れた今村の相手をしながら、ねえ教えてよ、社長さんが知らないってことないでしょう?と二階堂のことを聞くと、そりゃお前、二階堂先生は我が社の顧問芸術家でいらっしゃるから、今日はどこ、明日はどことか、何だって知らんことはないが、お前、本当に惚れとるのか?と今村が聞くと、もちよ、死ぬほど好きだわと菊千代は言うので、そのお前に俺が惚れとると今村は返すと悲劇ねと菊千代が答えたので、何だと?と今村は機嫌が悪くなる。

ねえ、教えてよ!本当に教えてくれたら、私、社長さんと…とまだ菊千代が思わせぶりでせがむので、本当か?と言いながら菊千代の方を引き寄せた今村だったが、ごめんくださいと襖の向こうから声がかかったので、慌てて放し、何だ?と聞くと、近づいた仲居(横田陽子)が、あの~、「モナコ」のママさんからお電話でございますけど?と言ってくる。

「モナコ」のママ?と不思議がった今村だったが、電話口に出てみると、あ~、もしもし?お待たせいたしましたと声をかける。

あ、今村でございます、はあ、毎度ありがとうございます、は?二階堂先生の居所?困りましたですな、実はもう風の如き先生でありましてな、ええ、もっか私もお探し…はい、はいと答えると、公衆電話からかけていたマキは、じゃあ良いわ、見つかったらすぐにねと頼んで電話を切る。

すると電話ボックスの入口をノックされたので、恐る恐る振り返ると、そこにいたのはバイトの政だった。

どうしたん、あんた?と不思議そうにマキが出てくると、すみません、ちょっとママにお話があるんですが…と政が言いながら、公衆電話ボックスの反対側に連れて行き、実はさっきママさんに電話がありましてね言うので、誰から?とマキが聞くと、銀座旋風児と政は答える。

え!二階堂さんから?とマキが喜んだので、はい、すぐにお知らせしようと思ったんですが、ママさんに悪いと思いましてねと政が答えると、教えて!ぜひ話したいことがあるんだからとマキはバッグから出した金を政の胸ポケットに押し込んで急かす。

政は、マスターには内緒ですよと言うのでうん、決まってるじゃないのとマキは喜ぶ。

じゃあ、ここに電話番号がありますからね、さっき書いといたんですと言いながら政は手帳のページを破ってを手渡すと、48の2785と教える。

村電話に出たのは斉土検事の自宅書斎にいた二階堂で、はあもしもし、あ、私です、あなたは?ああ、王さんの奥さんですかと答える。

ええ、何かお電話をいただいたそうで…と、またもや公衆電話からかけて来たマキは嬉しそうに聞いてくる。

はあ、お店の開店日をお聞きしたいと思いましてねと二階堂が答え、ええ?私に何か御用ですかと逆に聞く。

ええ、もしおよろしければ、築地のええ、電停のすぐ横丁ですから…、「かどや」と言う…とマキは伝える。

わかりました、30分後に必ずお伺いしますと答え二階堂は電話を切る。

その会話を聞いていた斉土検事が、どうやらナンパ作戦に出たらしいねと話しかけたので、将を得んとすればまず駒をですよ、もっともこの駒、堀田剛造とは無関係くさいと二階堂は答える。

「おでん お春」にやって来た政は、店の外に出てきた従業員(角田真喜子)に、ねえママさんいる?と聞く。

従業員は、ママさん、中よと言うので、ちょっと読んでよと頼むと、ママさん、政さんよと店の中に呼びかける。

料亭「かどや」にタクシーで乗りつけた二階堂は、マキが待っていた部屋に案内され、仲居は、お連れ様、お見えでございますとマキに伝える。

部屋に姿を見せた二階堂は、やあ、早かったですねと詫びるが、マキは仲居に初めて頂戴と頼み、二階堂のコーチを甲斐甲斐しく脱がせてやると、どうぞと席を示す。

その頃、斉土検事の自宅に来客があり、で、ご用件は?あなたがわざわざいらっしゃるからには相当重大な事件らしいですなと斉土検事は応接室で客に聞く。

いや、重大な事件というほどの問題じゃないんですが…と答えた客は中村利策だった。

一方、「かどや」でマキから酌をしてもらいながら話を聞いた二階堂は、ほ~、ウスクダラの貰い下げに…と中村が斉土検事の元に向かった事情を知る。

ええ、今頃はもう中村が斉土検事を訪ねてるはずですわ…とマキは説明するので、そうですかと二階堂は受け流す。

斉土検事は、全く何も知りませんな、第一二階堂くんから何の連絡もない、嘘だとお思いでしたら、警視庁に問い合わせてみるんですな、もし警察に突き出したとすれば、留置されているはずですと中村に説明していた。

それを聞いた中村は、いや、失敬しましたと詫びる。

一方二階堂は、お店の開店日に?と聞いていたが、ええ、お気をつけになって、王はともかくとしても俵藤組が…とマキは案ずるので、なるほど…、ありがとうと二階堂は礼を言い、最もそのことでしたら、僕の方から先に乗り込むかもしれませんよと付け加える。

まあ、孫どg、お由になって、私、あなたにもしものことがあったら…とマキは心底心配する。

その言葉にちょっと躊躇したかに見えた二階堂は外の様子に気づき、ああ、雨らしいですねと呟く。

ガラス戸を開いた二階堂が、その雨を見るためにそこに腰を下ろすと、近づいて来た薪は、二階堂さん、好き!私、あなたが好きだからこそ!と迫ってくるが、二階堂は黙ってその手を押し退け、帰ろうとする。

それを見たマキは、私が嫌いなのねと睨んで来る。

襖を開けた帰る途中、振り返った二階堂は、女の人は独断感が多いようですね、好きか嫌いか、右か左か、はっきりしないと気が済まないと言うと、でも私は…と言ってマキが近づいたので、マキさん、あなたのご好意にお答えして僕も良いこと教えてあげましょうと言い、王徳宝は堀田剛造と言うれっきとした日本人ですよ、あなたも日本人ならば、誰が好きという個人的感情は抜きにして、もっと日本人らしく生きることですね、ダイヤよりパールの美しさが良いと二階堂は告げ、帰ってゆく。

「かどや」の外に出て、雨に濡れて帰りかけた二階堂に、そっと傘を差し掛けて来たのはお春だった。

政の奴がしゃべったんだな、僕が持つよ、さあ、行こうと言って、傘を受け取って二人で歩き出す。

そんな二人の様子を入り口で恨めしそうに見つめるマキだった。

雨の中、相合傘で歩くお春と二階堂の後ろ姿に、雨が呼んでる~♩と小林旭が歌う主題歌が重なる。

ここでありがとう、傘ありがとうと礼を言って、二階堂がお春に傘を渡すと、じゃあこれから…とお春が察したので、ああ、用があれば連絡するよ、じゃあ明子君を頼むと二階堂は託す。

ええとお春が答えると、雨の中、二階堂は一人で立ち去って行くので、その後ろ姿を見送るお春は涙ぐんでいた。

「おでん お春」の店先では、雨止んだね、これ、じゃあまたと言って帰る客をありがとうございましたと明子が見送っていた。

そこに、明子さんと声をかけて帰って来たのがお春で、気づいた明子は、あ、お帰りなさいと出迎える。

忙しかった?とお春が聞くと、ううんと明子がいうので、遅くなってごめんなさいとお春は詫びる。

さっき久美子ちゃんからお電話があったわと明子は報告したので、どうなの、荒木さん?とお春は案じて聞く。

とっても良いから安心してくださいってと明子は教えながらも、でも私のために皆さんにご苦労かけてるの、なんだか済まなくて…と落ち込むので、良いのよ、そんなこと、今度の事件は国民全体の問題なんでしょう?と言いながら、お春は濡れた足袋を脱ぐ。

ええ、でも先生にもしものことがあったら…と明子が案ずるので、世の中どうしてこうなのかしら…と答えたお春は、入口のガラス戸に人影が見えたので、明子さん、顔見られるとまずいわ、奥へ入ってらっしゃいと注意する。

その言葉に従って明子が奥へ引っ込んだ直後、酔った丸山がふらりと顔を見せる。

いらっしゃい、良いご機嫌ですのね?と言いながらお春が出迎えたので、うん、今夜はね…私が奢りますと丸山は上機嫌で言うので、何か良いことがあったんですねとお春は察する。

うまくいけばね、いっぱいワン リユアン、知ってる?100万円!と丸山は言う。

奥の部屋でその声を聞いていた明子は、テーブルに置かれていた「丸山進之助」と書かれた名刺を見つける。

ずいぶん景気の良いお話ですのねとお春の声が店から聞こえてくる。

私は黒でも、昔は大陸の獅子でね、丸山って言やあ、あの政財界に色々な友達がいたと言う丸山の自慢話も聞こえてきた。

明子は店先が見える小窓を少し開いてその声の主を確認する。

ごちそうさまねえお従業員が運んでくれたビールを前にお春が礼を言うと、マダム、何でも好きなもの飲んでくれよな、今夜「遠慮無用 足ラズバ呑マレヨ 心ユクマデ」かと、お春にビールを注いでやりながら、壁に貼られた銀座旋風児の言葉を読む丸山は、一度ご馳走したいな、私の方から、あの銀座旋風児って人にと言い出す。

その頃、二階堂と喫茶店であっていた斉土検事は、中村弁護士がだいぶあわてて帰ったわけ読めたよと愉快そうに話していた。

二階堂も、奴ら、藪を突いて蛇を出しましたねと面白がる。

だが、ウスクダラを君の所にいつまで抑えておくつもり?と斉土検事が聞くと、ああ、こんばん一晩待ってください、僕に考えがありますからと二階堂は答えると、良かろうと斉土検事も承諾する。

後は丸山進之助ただ一人か…と二階堂は呟く。

「おでん お春」の店では、その丸山が遅いな…とぼやくので、どなたかが来るんですか?とお春が聞くと、うん…と返事をごまかしていた時、俵藤組の組員が顔を出したので、あ、来た、あ、マダム、ちょっと…と礼をした丸山は組員の後を追って一旦店の外に出て行く。

その直後、奥から出て来た明子が、お春さん、大変、あの男、丸山新之助ですと教える。

人気のない路地裏で俵藤組の組員と会った丸山は、さあ、持って来たものを渡してもらおうとニヤニヤしながら言う。

すると、組員が受け取ってくれと言いながら出したのは拳銃で、仲間も近づいて来たので、丸山は驚き、くそ!いっぱい食わせたな!と喚く。

騒がん方があんたの身のためだ、堀田の旦那はただご案内しろと俺に言っただけだと組員が言うので、貴様!俵藤組の!と丸山が言いかけた時、仲間がその口を押さえて黙らせる。

さあ、みんなで行こう!と急に酔客仲間の真似をし始めた組員たちはそのまま丸山を連れ去る。

その様子を窓から見ていたお春は、俵藤組だわと明子に教えたので、明子は思わず、勝手口から表に飛び出していくが、止めようとしたお春は、お姉さん、お電話ですよと、その時かかって来た電話のことを従業員から教えられたので、やむなく電話に出る。

あ、政吉さん、大変よとお春は電話してきた政に伝える。

何!丸山が連れ出された?しまった!お春さん、すぐに先生に連絡してくれと政は頼む。

丸山は王に強請をかけてきた、王はそれを利用して丸山を殺そうとしているんだと政が電話で説明していた時、突然入って来たのは、堀田とマキと俵藤組の組員たちだった。

堀田は薄笑いを浮かべ、警察の犬か?と言ってくる。

二階堂のよとまきが憎々しげに告げ口する。

お春は返事をしなくなった政に、もしもし、もしもし?と呼びかけるだけだった。

喫茶「アマンド」に駆けつけた明子が、あ、ボーイさん、先生は?と聞くと、さっきお帰りになりましたとボーイ(荒木良平)は教え他ので、ちょっと電話をと明子は頼む。

カウンターの電話で事務所にかけた明子だったが、事務所は無人のままで、電話に出るものは誰もいなかった。

「モナコ」の地下室で痛めつけられていた政は、くそっ!てめえはそれでも日本人か!と罵倒していた。

やい王徳宝、てめえが堀田だってことは最初から分かってたんだ!と言う政に、それが言いたくてここに潜り込んだのか?と拳銃を突きつけた堀田が答え、急に笑うと、バカめ!分かった時がこのざまだと言い返す。

その様子を上からマキが眺めていた。

政は側にあった缶を拾い上げ立ち上がって堀田と対峙する。

見かねたマキが、あんた!と言いながら階段を降りて来たので、マキ、日本人じゃ不服か?と堀田は問いかける。

そんな…とマキが戸惑うと、その日本人も廃業だ、俺は明日香港へ飛ぶと堀田は言うので、だって明日は!とマキは反論する。

堀田は、店が開くまではここにいる、それから先のことは頼んだぞと堀田は言う。

そこにマスター!と呼びっけ、先ほど丸山を拉致した俵藤組の組員が降りて来て、堀田に何事かを耳打ちする。

良し、あとのことは俺が発ってからのことだ、分かったな?と堀田が言うと、ええと組員は答える。

畜生!馬鹿野郎!と言いながら政が持っていた缶を投げてくるが、それを避けた堀田は政に体当たりして隣の部屋に倒しこむ。

そこには後ろ手に縛られ転がされていた丸山がいた。

起きあがろうとした政を足蹴にした堀田は、頭でも冷やしとけと捨て台詞を残して隣室のドアを閉めてしまう。

そこに上から従業員が降りてきて、マスター、辰から電話です、部屋の方に回してありますがと報告に来る。

何?と堀田が驚くと、なんだか、旋風児からようやく逃げ出したとか言ってますが…と従業員は言う。

そうか…、逃げたか…と答え、堀田は部屋に戻る。

俵藤組の組員も従業員と共に階段を上がって行く中、マキだけが地下室に残る。

隣室で起き上がった政はドアを開けようとするが施錠されているので開かない、その時、床に倒れていた丸山に気づき、上半身を起こしてやると、あんた…、あんたが丸山進之助か?と聞く。

助けてくれ〜、殺されちゃう!と丸山は情けない命乞いをしてくる。

畜生…、そうか…と納得した政は、丸山を縛ったロープを解いてやる。

受話器に出た堀田がはいと答えると、マスターですかい、実は旋風児の居所…と、二階堂事務所で二階堂から銃を突きつけられた辰が言い淀むと、浜町ビルにいると言え!と二階堂が小声で指示を出す。

浜町ビルにすぐ来て欲しいんで…とと辰が伝えると、分かった、よく見張っておけと答え、堀田は電話を切ったので、それを聞いていたマキが、あんた!と諌めようとするが、堀田は従業員に、中村は?と聞くと、はい、事務所に帰って来てますがと言うので、良しと堀田は答える。

中村の部屋に向かった堀田は、中村、とうとう来たぜ、銀座旋風児が…と伝える。

何!と中村は驚くが、一緒について来たマキが、どこへ?どこへ来たって言うのよと聞いてくる。

来ていると俺は見ている…と堀田は答え、隠し窓を開けて地下室の様子を見ると、はたして、政と丸山を助け出した二階堂の姿が見えた。

開いた隠し窓に堀田を認めた二階堂ら3人が地下室から見上げる中、手袋をはめた堀田は、ガラス窓を拳銃の台尻で割ったので、危険を察知した3人は身を隠す。

堀田は地下室を見下げながら、銀座旋風児も地に堕ちたな、あれぐらいな小細工で俺が倒せると思ってるのかい、バカめ!とあざけ理、銃を撃ち込んでくる。

二階堂も撃ち返して来て、政と丸山と共に地下室の外に逃げ出す。

そこに俵藤組と中村が駆けつけて来たので、二階堂と政は地下通路で戦い始める。

中村に気づいた二階堂は、逃げ道を確認した上で銃を突き付けるが、政などを助けているうちに逃げきれないと感じ、下の地下室に戻ると、そこには銃を構えた堀田と俵藤組の組員が待ち構えていた。

二階堂らは、また俵藤組が集まっていた通路の方に逃げ込むと、中村と組み合いながらもさらに逃走しようとする。

しかし、先ほど発見していた逃げ道にも俵藤組の組員たちが拳銃を持って待ち構えていた。

背後から堀田たちも迫ってきて、二階堂は袋の鼠状態になる。

堀田は黙って近づくと、二階堂の拳銃を取り上げる。

次の瞬間、堀田が二階堂の頬を殴りつけたので、二階堂は背後にいた政らの腕を掴んで中村らが出てきたドアの前に逃げる。

すると、ドアが開いて、そこにいたマキが、逃げて!早く逃げて!と声を掛けてくる。

ありがとうと答えた二階堂は、丸山を先に逃すと、政!この人と逃げろ!と命じる。

先生は?と政が案じるので、命令だ、政!と二階堂は指示する。

追え!と俵藤組に命じた堀田は、マキ、裏切ったなと言い、両手に持った二丁拳銃で発砲してくる。

背中で鉄扉を閉じた二階堂は前転して体勢を変える。

しかし背後の壁がどんでん返しになっており、そこには落とし穴があったので、二階堂はそのまま川に転落する。

そこに堀田が上から二丁拳銃を撃ち込み、バカめ!その先は太平洋だ、魚の餌になりやがれ!と嘲る。

翌日はキャバレー「モナコ」の改装開店日だった。

開店祝いの花輪が並び、村沢をはじめ従業員たちが、やって来た招待客に黄色い菊の飾りを胸につけ、いらっしゃいませと頭を下げていた。

菊千代を乗せ、スポーツカーでやって来た今村も、あっちへやっといてくれとボーイに車のことを頼み、ほら、あの角など良いとこ行ってるだろう!流石は二階堂先生だけのことはあるなどと菊千代に自慢し入店する。

入り口で今村は自分の胸に花の飾りをつけるホステスに、また彼氏騙して買ってもらったな?などと軽口を叩いて、周囲の笑いを取ると、さあ、行こうと菊千代を誘ってフロアに向かう。

場内では、銀色のマスクをした「松本伸とニュー・パシフィック・オーケストラ」が軽やかな演奏を繰り広げており、一部の男女はフロアで踊っていた。

流石名物男のデザインだけあるね、うん、ちょっとしたモナコかラスベガスだとと、客席で噂になっておた。

旋風児、来てないのかしらと女性客が聞くと、そうねと同席の女性も応じる。

先生、本当に来るかしらと菊千代も案じていたので、そらあ、お前、今夜の主役だもんと今村は微妙な表情で答える。

すると菊千代が、会いたいわ〜と言うので、私で我慢しときなさいと今村は答える。

ママさんの姿は見えないわねと菊千代は不思議がるが、マキは捉えられ椅子に縛り付けられていた。

そばに座っていた堀田は、余計なことしやがって…、女はわからないもんだと愚痴る。

二階堂に惚れたわけか?と中村も聞いてくる。

苦笑した堀田は、その旋風児も今頃は地獄でカンカン踊りをやってるさとからかう。

丸山と政はやばかったなと中村が言うと、な〜に、いくら奴らがジタバタしたって証拠があるわけじゃない、それに後3時間もすれば俺たちは香港行きだ、一緒に連れてってやるから安心しろと堀田は薪にも話しかける。

しかしマキは、フンと鼻で笑って、お前さんなんかに自由になるもんか、私、あんたに騙されたんだと言い返す。

すると、立ち上がった堀田がマキの両頬を殴りつけ、マキは悲鳴を上げる。

そこにボーイ長の村沢が来て、マスター、俵藤組の組長がみえられましたと知らせる。

通せと堀田がいうと、やあと言いながら俵藤組組長(天草四郎)が応接室に入ってくる。

ソファに座らせ、隣に座った堀田が、辰の行方は?と聞くが、わからんと組長は言う。

丸山と政の方はお春の店を洗っているが、どいつもこいつもずらかって行方知れずだと組長が報告したので、まさか斉土検事が?…と堀田は聞くが、いや、検事局はまだ動かん、動くとすれば明日か、早くとも今夜閉店後だろうと中村が答える。

腕時計を見た村沢が、マスター、そろそろお時間でございますが、お客様へのご挨拶はどうします?と聞いてくる。

堀田は、良し、支度すると答えると、中国服に着替え、ホールのVIP席に向かう。

バンド演奏が終わり、客たちが拍手する。

そこに赤いマスクをかけた口髭の青年が登場し、マイクの前に立ったので、また客たちが拍手する中、レディスアンドジェントルマン、ハロー、エブリバディ!皆さんこんばんは、え〜、今晩はようこそいらっしゃいました、東洋一を誇るモナコキャバレーと「松本伸とニュー・パシフィック・オーケストラ」の演奏のご気分はいかがでございましょうかと挨拶を始める。

ええ、ではこれより当「モナコ」のマスター王徳宝氏のご挨拶を皆様にお送りいたしますが、その前に王氏の隠れたる美談を皆様にご紹介致しましょうと言い出したにおで、また拍手が巻き起こる。

ありがとうございます、皆さん、王徳宝こと、実は日本人堀田剛造に代わりまして熱く御礼申し上げますと青年が言い出したので、常敗にいた俵藤組が動揺し出し、堀田自身も何だあいつは?と不機嫌になる。

兵頭組の組員が立ち上がって近づこうとするt、テーブルに座っていたサングラスの政が組員の手を掴み拳銃を突きつけて制止する。

見かねた堀田が、おい、イタズラはよせ!と司会者に向かって声をかけると、イタズラではない、私は堀田剛造、中村利策、それに金をもらって抱き込まれた俵藤組長の御三方が、日本国民の敵であることを皆さんにお知らせしているまでだとマスクの口髭青年は答える。

貴様、何者だ!なんのためにそんなデタラメを!と組長も怒鳴りつけるが、出鱈目ではない、堀田と中村は戦時中、軍が国民よりかき集めた数億に及ぶ貴金属を私しているのだと続けた青年は、堀田が中国服の内ポケットで拳銃を構えたことに気づき、一瞬早く自分も拳銃を向けると、遅い!手を離せと命じたので、客たちも異変を察知し、思わず立ち上がりかける。

やあ、皆さん、ご心配なく!どうぞご着席ください!と青年は呼びかける。

立ち上がった堀田は、貴様、二階堂だな?と気づく。

言い当てられた口髭の青年は急に笑い出し、海の藻屑にならなくて悪かったな、いかにも俺は人呼んで銀座旋風児、二階堂卓也だ!と銃を向けながら、マスクを取って正体を表す。

あ、二階堂先生だ!と喜んで立ち上がった菊千代に、待ちなさいよ、なんですよ、みっともないと今村が注意する。

すると笑い出した堀田は、大した役者だ、それならそれらしく、証拠を見せろ!見せろ!と迫る。

二階堂の方も含み笑いをすると、まず第一に、あなた方は大陸で無実の罪に陥れた村越雄二郎の娘明子を見ろ!と指摘する。

するとサックス奏者が立ち上がり、銀色マスクをとると、それは村越明子だった。

そんなものは知らんと堀田はシラを切るが、次に堀田は事件の発覚を恐れて仲間の一人である木原銀次郎を三吉橋のたもとで殺害したと二階堂は指摘する。

デマだ!と堀田が否定すると、あれを見ろ!と二階堂が指差すバンドの方向には天井からスクリーンが降りてきて、そこに車の後部座席から銃を狙っている堀田が写った写真が映し出される。

まだある、生き証人、丸山進之助!それに俵藤組に暴力を加えられた「東都タイムス」の荒木記者!それに加害者ウスクダラの辰!と、口髭を取った二階堂が言うと、斉土検事率いる刑事と警官が連れた3人が入り口から入ってくる。

堀田剛造、中本利策、俵藤四郎を殺人、傷害、横領罪により逮捕する!と斉土検事が発言する。

裏口からも警官が傾れ込んできたので、政は手を掴んでいた俵藤組の組員を押して渡す。

ステージから降り立った二階堂は、銃を向けたまま、さあ、国民のものは国民に返したまえと命じる。

手を挙げて座りかけた堀田が隠し持っていた銃を発砲すると、二階堂も撃ち返し、柵を乗り越えて堀田を蹴り倒す。

村沢が二階堂にビール瓶を投げつけたので、客たちは驚いて逃げ惑う。

警官隊が場内に傾れ込むと同時に、俵藤組の連中がフロアの照明を壊し始める。

階段を上がって2階へ逃げようとした組長も先回りした二階堂が蹴り落とす。

堀田の首根っこを抑えた二階堂の姿を荒木が写真に収める。

そんな荒木の元に久美子が嬉しそうに駆け寄る。

その姿を嬉しそうに眺める斉土検事。

部屋の隅で立ち上がった明子がに階層の下に駆け寄る。

それを見ていた今村は、なるほどね、あれじゃ女性にモテるのは無理はないや、良いとこ行ってますよと認める。

二階堂先生!と菊千代が声をかけると、いつの間にかワイングラスを持った丸山が、銀座旋風児!と言いながら飲み始める。

それを見た今村は、相変わらずしょぼたれて…と嫌味を言うと、はあ?退屈男ですよと丸山が二階堂の方にグラスを向けながら訂正する。

二階堂はそんな声援に唖然としながらも、明子と目を合わせあう。

その後、喫茶「アマンド」で二人きりになった二階堂は、政、また退屈になるなとぼやくと、これから私はどうすりゃ良いんです?と政が聞くので、マキさんがバーを開くかもしれん、そこで働くんだねとアドバイスする。

その時、入り口に、マキや菊千代や明子、その他の女性ファンたちが駆けつけてきたので、顔を見られないように慌てて席を政と交換した二階堂はタバコに火をつける。

階段を上がって二階席に行った女性たちは、そこにも二階堂がいないので不思議がって又、下に降りてくるが、その時、政の前の席には誰も座っていなかった。

政さん、先生は?とお春が聞きに来るが、政は方をすくめ、いないよと答えるだけだった。

いないって?と言いながら、明子やマキ、「はこだて軒」の由兵衛と勝子も近づいて来るが、政が手にした紙には「風ノ如ク マタカヘリ来ム」と書かれているだけだった。

主題歌が重なり、夜の銀座を歩く二階堂

翌朝、新聞配達少年が走り抜ける銀座風景

朝刊には「堀田剛造等逮捕 国民の手に戻る数億円の貴金属」「銀座旋風時吹きまくる!!」の見出しが躍っていた。

東京都清掃係の散水車が銀座の路上を洗い清めていく。


幻燈館

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