「トップ屋取材帖 迫り来る危機」
島田一男の連作を原作にした「トップ屋取材帖」の第一作で、上映時間56分の添え物中編モノクロ作品
B級通俗ハードボイルドとでも言う作品で、ヒロイン役は白木万理(白木マリ)さんで、何やら大人の男女話のような要素もあるが、時代が時代だけに際どい描写などはない。
当時47歳くらいだったはずだが、今見るとかなり老け顔に見える水島道太郎さんと、こちらも大人っぽいイメージの白木万理さんで客が呼べたのかは疑問
あくまでも二本立ての添え物なので、こう言うスター不足感のある内容でも何とか成立したのかもしれない。
クライマックスの喧嘩アクションも、パンチが相手に全然当たってないのが丸わかりというお粗末さ。
ただ、高品格さんなどが出ていて出番もセリフも多いので、高品さんファンには必見かもしれない。
【以下、ストーリー】
1959年、日活、雑誌「明星」連載、島田一男「地獄波止場」原作、星川清司脚色、井田探監督作品
振動に合わせ羽が羽ばたくように見える鶴のアクセサリーが吊るされてる車内。
パトカーのサイレン音
港の突堤に集まる野次馬たち
パトカーと警察車両がそこに到着する。
海面を見下ろし、中には写真を撮るものまでいる野次馬たち
海面には仰向けに浮かんだ男の水死体があった。
その写真が掲載された雑誌「週刊進歩」には「特集 恐るべき 東京租界の全貌」というタイトルがつけられていた。
畜生!抜かれた!どうするつもりなんだ?「週刊新風」の客とガチャンするって方があるか?何?黒木がいない?どこ行ったんだ!と雑誌「週刊実話」編集長の柳生(西村晃)が電話口で怒鳴ると、カメラ付きライターのフィルムを交換していた猪股ユリ(葵真木子)が、さあ、分かりませんね。うちの大将は風の吹くまま気の向くまま…、え?あたいは助手よ、知ってんじゃないの?助手兼キャメラマン!と答えると、バカ、狂気の悪口だ!惚けやがって!と悪態をついた柳生は、ああ、そんなことはどうだっていいんだよ、黒木を探せ、黒木を!と怒鳴りつける。
え、何?電車賃がない?と答えた柳生は急に笑い出したかと思うと、バカ!伊達にトップ屋に書かせてるんじゃないよ、 2番煎じの材料が使えるか?と柳生は言う。
心配無用よ、「新風」さんのあのネタは本物だよ、ドキンとするような記事を書かせますよ、大丈夫、任せときと言い電話を切り掛けたユリだったが、すぐに受話器を耳に戻し、柳生さん、現稿の締め切り、締め切りは?と聞くので、4日!いやいや、3日だ!3日だけ待ってやる、ギリギりだよ、良いか?今んところこっちには他のトップ屋用意してないんだ、穴開けたら黒木の首ともおめえの首を捻ってやるからな!と柳生はパワハラ全開で脅し、電話を切る。
すると近くの編集者が立ち上がり、編集長、他のトップ屋に当たりをつけてみましょうか? バカ!他に黒木ほどの腕っこきがいるぐらいならとっくに書かせてるよと言いながら、湯呑みの蓋を開けて中を覗いた柳生は何も入ってないことに気づき、小僧!、小僧、お茶!とバイトの書生相手に怒鳴るが、返事がないので、畜生!抜かれたよ!と言いながら、ライバル誌「週刊新風」を机に叩きつける。
何種類もの週刊誌が積み重なっていく背景にタイトル
スタッフ、キャストロール(ミラノ座などが見える新宿の街並を背景に)
(そんな新宿の通りをユリが走り回っていた)
新宿駅前の路上雑誌売りに話を聞いたユリは、本当だね?どこで会ったのさとゆりが聞き返すと、 後で先生に叱られると具合が悪いからなと雑誌売りが言うので、分かった、女だねと百合が推理すると、ズバリご名答!と雑誌売りが茶化してきたので、どんな?と百合が聞くと、気になるか?2つしか知らないから、聞きたかったら買いなと雑誌売りは言う。
やむなくユリが台上の「週刊実話」2冊を手に取ると、すげえグラマーと一緒さ、渋谷の駅前でよ自家用でよ、先生ったら柄にも嬉れしそうな顔しやがってさなどと嬉しそうに言うので、ユリは雑誌売りの額を押しのけて去って行ったので、ざまあみやがれ!たまには騙してやらなきゃなと雑誌売りは忌々しそうに、相棒役の弟に言うと、兄ちゃん、金払わないで行っちゃったよと、まだ小学生の弟は教える。
あ、畜生!やられた!と雑誌売りは悔しがる。
横浜 伊勢崎町通りに向かって歩いていた黒木三郎(水島道太郎)に、停まった車がクラクションを鳴らしたので、何事かと黒木が振り向くと、車の運転席から顔を見せたサングラス姿のお蝶(白木マリ)が、クロさん!私!ほら私よと、サングラスを取って声をかけてくる。
ああ…、何だ、お蝶さんかと気づいて黒木が運転席に近づくと、しばらく、さ、お乗りなさいよとお蝶は勧める。
夜、クラブ「ソンブレロ」に黒木を連れてやってきたお蝶は、いらっしゃいませと出迎えたボーイにコートを渡すと、カウンター席に黒木と並んで座り、思い出すわね~と話しかける。
もう8年になると黒木が答えると、若かったわ、お互いに…とお蝶は感慨深気に言う。
うん、どうした?あれから大阪で?と黒木が聞くと、ご想像に任すわ、あんたこそどうしたの?今何してるの?とお蝶が聞くので、な~んて、風来坊さ、残念ながらと黒木は言う。
新聞社は?とお町が聞くと、辞めたよと黒木が答え、そうとお蝶は答える。
例の疑獄事件のスクープでお偉方とどえらい喧嘩をしてね、それを潮に足を洗ったといえば聞こえはいいが体のいい首さと黒木は打ち明ける。
私の言った通りね、まだお題目唱えているの?社会悪叩きのめしたとかなんか言ってとお蝶が聞くと、いつまでもガキじゃないさ、綺麗さっぱり宗旨を変えたよ、世間はそんなに甘くないと悟ったからなと黒木は答える。
8年前にそれ聞きたかったとお蝶が言うんで、黒木が顔を見ると、ねえ、上行かない?とお蝶は誘ってくる。
上?と黒木が訝ると、私の部屋とお蝶が言うので、誰かに恨まれるんじゃないか?と黒木が冗談めかして聞くと、バカねとお蝶は言う。
恨まれるくらいなら良いが…と黒木が言うと、まさか私そんな人がいると思うの?とお蝶が苦笑しながら席を立って2階へ向かうので、さあ、どうだか…と黒木は返事をはぐらかしながらもその後についていく。
2階のお蝶の部屋に入ると、何見てるの?そんなとこで?と寝室でバッグを置いたお蝶が聞くので、 あ?関心してるんだと黒木は答えるが、こっちいらっしゃいよとお蝶は誘う。
大したもんだ、君はとうとう欲しがったものを手に入れたと黒木が言うと、この店見かけほどじゃないわとお蝶が謙遜するので、そうかね、しかし嬉しいよ、俺を覚えていってくれて…と黒木は言う。
するとお蝶は、悪いけど一度も思い出したことなかったわ、そう言いたいんだけど…、残念ながら覚えてるわ、何もかも…とお蝶は答え、じっと黒木の顔を見たので、黒木はバツが悪くなって視線を逸らす。
黒木は部屋の壁に一部窓のような枠があるに気づき、その部分を上に上げてみると、先ほどの店の中が丸見えになる隠し窓だった。
それに気づいたお蝶の表情が真顔になる。
見ているとカウンター席の客が支配人を呼び止め、金を渡すと、支配人が売り子の女性に目で合図をし、女性が金と引き換えに何かを手渡しているのが見えた。
あれはただのタバコじゃないな? と黒木が指摘すると、とくダネを求めて嗅ぎ回っていたあんたの癖はまだ治らないのね、今でもまだブンヤの匂いがするわとお蝶は言い、何が欲しい?何でもあるわと酒のことを聞いて聞いてくる。
すると黒木は、欲しいね。金も女も…と答えたので、戸惑ったお蝶が、私は?と言いながらジョニ黒を持ってきたので、もう遅いよと笑いながら、黒木は受け取った2つのグラスにウィスキーを注ぐ。
そうかしら?と言いながら、黒木と乾杯をするお蝶だったが、これもあげるわと言いながら、隠し持っていた拳銃を黒木に手渡す。
お金が欲しいんでしょ? とお町が言うので、強盗でもしろっていうのかね?と黒木が聞くと、できたらおやんなさいとお蝶は言う。
だめだ、泥棒だけは…と言いながら黒木は拳銃を返す。
港でちょっとした荷揚げの用心棒なら…、暗闇みで人に隠れてやる仕事なんてあんたに合わないかしら?とお蝶は誘う。
密輸の見張りかね?と黒木が推測すると、いや?とお蝶が確認してきたので、ありがたいね、いくらくれる?と黒木が聞くと、3万!とお蝶は即答する。
それから?と黒木が聞くと、急ぐことはないわ、明日その人たちに紹介してあげる、だけど嗅ぎ回るのだけはおよしなさい、変な気を起こすとすぐにこれよと言いながら、お蝶は銃を黒木の頭に向ける。
これで欲しいものは全部揃うってわけかね?と黒木が聞くと、お蝶は薄笑いを浮かべる。
フロアでクルクル回りながら踊る踊り子の腰元。
翌日、港にある店にやってきた黒木は、いらっしゃいませ、何を差し上げます?と招き入れた雑貨店の主人芝六(高品格)に、口紅!マックスファクターセブン!と答えると、急に芝六の表情が変わったので、ナンバーセブンだと繰り返すと、あぁ、お蝶さんとこの人だねというと、タバコを投げて渡し、南京町の老一楼へ行きな、相言葉は中に入ってると芝六は言う。
その後、中華街に来た黒木が「老一楼」という店に入ると、いらっしゃいませと女店員が挨拶するが、そのまま奥へと進み、そこで雑誌を読んでいた老コックらしき男(井東柳晴)にコンファチュとメモを見ながら伝える。
コンファチュはいよ、料理何するか? と老コックが雑誌を読んだまま聞いてきたので、チャアロースと黒木はメモを読み上げる。
すると主人の目つきが変わり、黒木の全身を舐め回すようにみる。
老酒熱くしてくれと黒木が続けると、老コックは黙って頷いて立ち上がる。
その時、店内で新聞を読んでいた須藤(土方弘)が、ゆっくり新聞をおろし、黒木の様子を伺う。
黒木もその視線を感じるが、とりあえずタバコに火をつけて落ち着こうとした時、奥から老コックが老酒を持ってきたので、感情が気のようなものをおいたので、すぐにその裏を見ると、そこには「十時 バー窓」と書かれていた。
気がつくと、先ほどの須藤が立ち上がって近づいてきたので、黒木は慌てて紙をポケットに入れる。
須藤文字ジャケットのポケットに片手を入れ、火を貸してくれませんかと言いながら、口にタバコを咥えたので、黒木は警戒しながらもライターをポケットから出して火をつけてやる。
その後、指定のバー「窓」のカウンターで、芝六と先ほどの「老一楼」の老コックと落ち合った黒木は、西も東も分からないんだ、お手らかに頼むと、この店のマスター劉元徳(冬木京三)にタバコに火をつけてやりながら話すと、お蝶の所から来たんじゃあ良い顔もできねえけどもよと冷たくマスターが答えたので、まあま、劉さん、今日から仲間じゃねえか、こいつはなかなか気っ風が良いよ、男同士だ、一目見ればわかるよと芝六が間に入ってくれる。
手筈は良いんだな?とマスター劉元徳が聞くと、車はいつものとこに回してあるよと芝六が答え、サンパオは?と客の中国人にマスターが聞くと、指で丸印を返してくる。
マスターが奥へ引っ込むと、まあ気にするな、あんな男だ、さあ飲めと芝六は黒木に酒を勧める。
するとそこに、先ほど老一楼にいた須藤がやってきて、勝手に芝六のグラスを奪ってカウンターに座ったので、須藤ってんだ、仲間だよと芝六が黒木に教える。
そこに、小男のスーツ姿の男がやってきて、何かメモを劉元徳に渡す。
直後、劉元徳はウィスキーグラスと共に、今のメモが入ったグラスも、カウンターを滑らせて芝六達のところへ寄越す。
メモには「11時集合 六号岸壁」と書かれていた。
夜の11時、六号岸壁に来た黒木は、スーツとコート姿に着替えた劉元徳と「老一楼」の老コックが合流する。
桟橋では芝六と須藤が待ち構えていたが、そこにサンパン(小型船)が近づいてくる。
黒木がタバコを吸おうと一本口に咥えると、横に立っていたマスターが突然ライターを取り上げ、合図以外の火の気は一切禁物だと注意する。
サンパンから降り立った二人の船員が、待機していた須藤から何かメモを受け取ると、代わりにバッグを手渡す。
そんな倉庫街を二人の警備員が懐中電灯を照らし見回っていた。
そのまま老コックとマスターが歩き出そうとしたので、あ、劉さん、ライターと言って黒木は片手を差し出す。
ケッ!と言って、マスター劉はライターを放って寄越す。
見せかけの釣り道具をしまって帰りかけた芝六に、おい、芝六! とサンパンの船員が声をかけてきたので、何?こんちくしょう!と言い返すが、気安く言うな、芝田六郎次様だと芝六が言い返すと、 その六郎次様にお土産だと船員は言う。
お土産?と不思議がった芝六は、小型船の方を見て急ににやけた顔になる。
劉元徳がバッグを用意した車に積み込ませていた時、芝六が見知らぬ外国人女性(ジェニファー・M・ナイト)と男を連れて近づいてくる。
何だよ、ありゃ…と劉は驚くが、船底に盛り込んでやがったんだってさと芝六が説明し、香港からの密入獄ですよ、ストリッパーらしいんですがね、私たちも気がつきませんでした、なんとかよろしく頼みますよ、この際騒ぎは起こしたくありませんと中国訛りの男(榎木兵衛)が教える。
劉は承知しましたと即答すると、女を車の後部座席に乗せてやる。
出発した車の中で、芝六が、劉さん、どうするつもりだよ、その女と聞くので、ヤクと一緒にお届けするさと劉は答える。
しかしその女、取引の現場見てんですぜと運転していた須藤が指摘すると、いやあ、それをばらせば自分の密入国がバレる、心配ないよと劉は答え、What's your name?と女に聞く。
Oh my name?アトミック・テリーと女が名乗ったので、 ははは、原爆テリーかと劉は笑い出す。
黒木がタバコを取り出すと、タバコ飲まないで、私、嫌いなのと女が英語で注意してくる。
クラブ「ソンブレロ」に到着すると、テリーはバッグを両手に下げて降りた黒木に、Come on Let go!と呼びかける。
これで俺の仕事は済んだぜと、お蝶に会った劉が、芝六、須藤、老コックと共に落ち着いた席で言うと、神戸でおろしに上げられたそうね?警察の犬が組織に舞い込んでいたんだ、こっちにだっているかもしれねえぜ、新入りには十分気をつけてもらわなくちゃなと劉も言い返す。
よっぽどヘマだったのさ、もっとも俺でさえ何も知らない、運ぶ方と売る方をはっきり別にしてるからなと柴六が指摘する。
うちのボス、やり方上手、頭良いねと劉は感心する。
薬の売上を2倍にしろって命令が来たわ、次の日がすぐ入るそうよとお蝶が伝えると、 そうたびたびじゃこっちがたまらないよ、まぁ、それはそれにして今夜の所はこれで解散しようと劉が言い、一同は帰る。
その連中が部屋を出て行った直後、部屋に入ってきた黒木に気づいたお蝶は、あ、クロさん、あの厄介者どうした? と聞くと、アトミックかい?、衣装部屋に寝かしといたよと黒木が言って上着を脱ぐと、 女の子なら待ってるんだけどねとお蝶は言う。
取引を見られたし、裸にでもして使うんだな、良い体してるよと黒木がアドバイスすると、はいとお蝶はその場でギャラを渡す。
君が雇い主だと思わなかったよと黒木が以外そうに言うと、お蝶は恥ずかしそうに顔を背ける。
あんた力になってくれるわね、私狙われてるのよ、劉が私の商売横取りしようと企んでるらしいの…と、鏡台の前に座ったお蝶は黒木に打ち明ける。
私たちの仕事1度しくじればそれっきりよ、情けは無用、命まで飛んじゃうわ、そこが劉の狙いよというお蝶に、しかし仲間なんだろう?と黒木が聞くと、仲間だから狙うのよとお蝶は言う。
わからんねと黒木が首を捻ると、 今夜の取引で見たはずよ、私は薬の販売、劉は利上げの責任者、どっちにしたって儲けは薄いわとお蝶は告白する。
随分危ない橋を渡ってるんだねと黒木がベッドに腰を下ろして聞くと、でも他にどうやって私の望みが叶えられるっていうの?女の盛りは短いのよとお蝶が言うので、俺が密告したらどうする?と黒木は聞いてみる。
私とあんたの間で?とお蝶は問いかける。
あれから1人も出会わなかったわ、あんたほどの人に…、私たち巡り合わせが悪いのね、いつでも…、あんたと別れた時、私泣きながら街の中を歩きまったわ、一晩中…、悲しかったの、無性に寂しかったのよ、私は命懸けよ、今度こそ離さないわと言うと、お蝶は拳銃を黒木の腹に押し付けてくる。(和田弘とマヒナスターズの「泣かないで」が流れる)
私の死ぬ時はあんたも死ぬ時よとお蝶は脅してくる。
横浜の港には、今日も外国人や若い女性が遊びにきていた。
そんな中、劉のバー「窓」では、やれるのかやれないのかまずそれから聞こうと、劉が須藤に問いかけていた。
お前ほどの男がなぜあんな女の1人や2人バラせねえんだ?昔はそんなんじゃなかったはずだぜと劉は、ナイフをいじっていた須藤に迫る。
そんな店に、お入りよ、遠慮はいらないよと若い女が2人の友達を誘ってやってくる。
奴らの家にはあるんだろうな?と劉は連れ込んだ娘に、指で丸を作って聞く。
親父は社長、1人は校長先生さと連れ込んだ千代(月玲子)が答えると、劉はうんと納得し、財布を取り出すと、おいと小柄なスーツの男(星虎二)を呼び、何かを手渡す。
小柄な男はそれを持って、今入ってきた二人の娘のところへ向かうと、1本ずつそれを渡し、ライターで火をつけてやる。
一方、今、女二人を連れてきた千代はカウンター席で、劉から薬を一包み投げ出され、ねぇ、あたいには?ねぇ、たった1つかい?いつもも言われる通りにやってんじゃないか、あたいだって本当は友達なんか連れてきたくないけど薬が欲しいから言われる通りにやってんだ、ね、お願い!もっとおくれよと訴える。
1つじゃいらないってのかよ?良いお客さんは連れてくれゃいくらでもやるって言ってるじゃねえか!と劉は叱りつける。
千代は薬を急いでひったくると、黙ってカウンターの隅に引き込む。
ちょうどそのカウンターに須藤もいたので、須藤分かってんだろうな?と劉が確認すると、須藤は黙って立ち去ろうとしたので、須藤!須藤!と劉は呼び止める。
しかし須藤は黙ってちょっと振り返ると、そのまま出てゆく。
クラブ「ソンブレロ」のフロアでは、アトミック・テリーのセクシーダンスショーが行われる。
客席では、中国服の劉が愉快そうにそれを眺めていた。
一緒に見ていた小柄な男がカウンター席に移動すると、ハイボールを注文する。
カウンターには和服姿のお蝶と黒木も座っていた。
そんな中、須藤がお蝶の部屋に忍び込む。
2階の自室に戻るお町の様子をじっくり見つめる劉
自室に入ったお蝶は、人の気配を感じ振り向くと、そこには無表情な須藤がいて、ドアを内側から施錠する。
何の真似なの?と言いながら後ずさるお蝶
フロアでは、アトミック・テリーの踊りが伴奏の音楽と共に盛り上がっていた。
テリーがカウンター席の黒木にウィンクをすると、黒木もウィンクをし返す。
お蝶は須藤が出したナイフを見つめ、覚悟を決めていた。
須藤がナイフを握りかえ、お蝶に襲いかかると、お蝶は悲鳴をあげる。
フロアでは、テリーのダンスがますます熱気を帯びる中、お蝶は必死に抵抗していたが、須藤が執拗にナイフで攻めてくる。
お蝶の部屋では、須藤が苦悶の表情を浮かべており、お蝶の手には拳銃が握られていた。
須藤は結局倒れ込む。
フロアでまだテリーの踊りが続いている中、ボーイが劉の席にやってきて何事か耳打ちしたので、何!と劉は驚く。
急いでお蝶の部屋に向かった劉は、床でもがき苦しんでいる須藤を見つける。
鏡台に向かって座っていたお蝶はゆっくり劉を振り返り、立ち上がって近づくと、劉さん、あんた大変な人差し向けてくれたもんねと話しかけたので、いやいや、そんな…と劉は否定する。
でもこんなヘロ中だったのまずかったわと続けるお蝶に、いや、私は何も知らないと劉は必死に反論する。
いつの間に薬取ってったのか?この野郎きっと薬のせいだ、絶対にそんな真似はさせないって言ってるんですが…と劉は言い張り、クスリ…と言いかけた須藤の顔を殴りつけると、とにかくこいつの体私に任せてください、私が始末をつけますからと主張する。
フロアではテリーのショーが終わり、舞台裏で黒木と出会ったテリーは、私のショー、大成功、みんなあなたのおかげですと感謝して来て、私がこれからずっとここで働けるよう、マダムに頼んでくださいと頼む。
OKと黒井が答えると、オー、サンキュー!と言いながらテリーは黒木に抱きついてキスをしてくる。
ありがとう、あなたはとても親切な方だわとテリーは感謝する。
そこに2階からお蝶が降りてくる。
テリーとベタベタしているところを目撃したお蝶は機嫌を損ね、クロさん、この女、劉のとこへ返しておくれと命じる。
その頃、ヘロイン中毒でお蝶暗殺に失敗した須藤は、仲間たちから痛めつけられていた。
薬が切れて体に異常をきたした須藤は、勘弁してくれと命乞いをするが、須藤、薬なんか打ち上がって、今夜サンプル街に連れてったのは酔狂じゃねえぞ!ちくしょう、肝心な時に…!と劉は叱りつける。
劉さん…、薬!と須藤は懇願するが、誰がやる?薬を打つのは仲間の掟で止められてるんだ、忘れたか!と劉は責める。
何でも言うこと聞くから、劉さん、許してくれ!と劉の体に縋り付く須藤だったが、もう頼らねえよ、ヘロ中にお蝶がばらせるもんかと劉は吐き捨てる。
その後、また3人の仲間が須藤を袋叩きにし、須藤が力つき倒れ込むと、貴様はもう仲間から放り出してやると劉は言い、ナイフを抜いて迫ってくる。
須藤は必死に床を後退りする。
できるなら、やってみろ!あんただって、あんただって、こっそり薬を下ろして、下ろして掟破ってるじゃねえか!と須藤は訴える。
知ってんだ、横長し…、横流しの件だって…と須藤は最後の足掻きを見せるが、
そのまま無言の劉に突き刺され、うわあ!と悲鳴をあげて息絶える。
その後、夜の闇に紛れて須藤の死体は海に放り込まれる。
それを劉と小柄な男が見届けていた。
お蝶と黒木は連れ立って横浜の街を歩いていたが、週刊誌を買っていた黒木に、クロさん!とお蝶が親しげに呼びかける。
車の中から、そんな二人の様子を監視していた老コックは同乗していたけど劉に、だめですな、お蝶からあの男を離さんうちは…と忠告するが、離すと言ってもお蝶はあの男を離すまいと劉が言うので、な〜に、奴に消えてもらえば良いんですよと老コックが言うので、 しかし奴は相当の強かもんだぜと劉は警戒する。
いやあ、背中に目はないからねと老コックは笑いながら答える。
劉の乗った車は、その後も黒木とお蝶の後を尾行する。
港にやって来た黒木は、4日目だ、こんなことして良いのか?仕事は今夜なんだと、ビーチパラソルの下の椅子に座っていたお蝶に問いかける。
でも久しぶりで楽しかったわ、あんたと街を歩いて、荷揚げは明日に変更よ、司令が来たのとお蝶が打ち明けたので、黒木は思わず立ち上がって苦い顔になるが、今夜でないと困ることでもあるの? とお蝶が言うので、いや、さあ行こうかと黒木は誘う。
あら、あんたの奢り?懐かしいこと…とお蝶は喜んで、黒木と歩き出す。
そんな二人の様子を老コックが背後から見守っていたが、忌々しそうにタバコを投げ捨てる。
劉のバー「窓」に呼び出された芝六は、何だよ話ってのは?とカウンター席に座って聞くと、劉はグラスを出しながら、お前ちったあ、まともななりをしたくはないのかい?と聞いてくる。
手当ては今までの五割り増し、仕事をするたびに色をつけるがどうだ?と劉が酒を注ぎながら聞いたので、何をやらそうってんだ?と芝六は警戒する。
いつまでも大の男がお蝶のご機嫌を取ることはねえって話よと劉は明かし、そうだろう、男は男同士…と劉が続けるので、おっと、それ以上聞くとのっぴきならねえことになるからな、お互いに…と芝六は言い返す。
嫌かい?と劉が聞くと、嫌でも賛成でもねえ、見ざる聞か猿ざる言わざるさと芝六は答える。
六!と呼びかけた時、劉は見慣れぬ女が大きなバッグ片手で店に来たことに気づき、なんだテリーじゃないか、What?と聞く。
するとテリーは、「サンブレロ」首!とジェスチャーまじりに答えたので、Why?と芝六が聞くと、I don’t Knowと言うので、
そうか、それでここへご入来ってわけか、ま、話は後でゆっくり聞こう、アップステア!と劉が階段を指さして指示すると、テリーはオーケーと答えて階段へと向かう。
テリーのグラマーぶりを目にした芝六は、すげえ、これだ!と手振りで驚き、あら、スポンジじゃねえ、本物だろうなとテリーの胸のことを指摘する。
それにこのヒップの具合といい…と、また手振りでグラマーぶりに惚れ込んだように言う芝六はいやらしい笑い声を上げるが、劉は飛んだ預かりもんだと言う。
そうでもあるめえ、悪い役目じゃあるめえと芝六がからかうと、よせやいと言いながら、劉がまた酒を都合とするので、ああ、もうたくさんだ、店をほったら返しなんでね、俺帰るぜと言い残し、芝六は帰ってゆく。
劉は2階のテリーのことをちょっと気にする。
テリーは二階の窓から港を眺めていたが、そこにやってきた劉は、そうか、昨夜の踊りがあれほど受けてるんだ、惜しいな、じゃあまあ、当分ここで働いてもらうんだなと優しく語りかける。
テリーが色っぽく脚を組んだので、じゃあ、前祝いにいっぱいやろうか?と劉が誘うと、オーライというので、あれを取ってくれ、とっときのウィスキーだと、テリーが座ったソファの背後の棚を劉は指差す。
OKと言い、ソファの上に乗って酒を取るテリーの腰を劉は見つめていた。
テリーがオールドターキーの瓶を取って振り返ると、サンキューと言い、それを受け取ってテリーの横に腰を下ろした劉は、昨夜の踊りは素晴らしかったぜと言いながら、テリーの足に軽く触ると、靴を履くように仕向け、テリーが目線を外した隙を狙ってそのまま押し倒す。
しかし、テリーが抵抗し押し除けたので、飛び退いた劉が、何しやがる!と怒ると、それはこっちの言うことよ!とテリーも怒っていた。
それでも劉が再びテリーに覆い被さろうとすると、腹をパンチで殴られ、バカもん、アンペラカムときゃガツガツすんじゃないよ!といきなりテリーが日本語で叱って来たので、劉は唖然とする。
ア、アンペラカム?とアンペラカムが聞き返すと、 キスする時はもっと落ち着いてやれって言ってんのよ!とテリーが流暢な日本語で言うので、このアマ、な、なんて奴だ!と劉は唖然と立ち尽くす。
他にハクいスケはいくらでもいるでしょ?もっともそのツラじゃね、最低よ!とテリーに散々言われた劉は言葉を飲み込む。
その頃、お蝶は自室の寝室で着替えをし、居間で酒とタバコを飲んでいた黒木に近づくと、どうしたの?バカに沈んでるわ、そっけないのね、 なんか気に入らないことでもあったの?と黒木の背中を触りながら話しかける。
ないよと黒木が答えると、クロさん、今私に必要なのはどしょっぽねの座った男…、あんたよとお蝶は、黒木の手を触りながら告白する。(マヒナスターズの「泣かないで」がバックに流れる)
シャワールームに入ったお蝶は、来ない?良くってよと誘うが、黒木は、ああと生返事をするだけだった。
黒木はお蝶の鏡台の所へ行くと、そこに置いてあった「小野文子」「赤木吾郎」名義の航空券をチェックし、羽田から大阪まで3枚…と確認すると、後の1人は誰だ?と考える。
その時、ふと窓から外を見た黒木は、店の下の路地に助手のユリが来ていることに気づき、口笛を吹いて合図をする。
ユリは降りて来た黒木に気づくと、先に近くの公衆電話の中に入り、すぐ出て来たので、黒木もすぐ同じ電話ボックスん中に入る。
そこには、今ユリが置いた小箱が2つ置いてあったので、片方だけ手に取ってボックスを出ると、そこに立っていたユリに、ユリ帰るんだと指示する。
しかしユリは、あたいがそばにいた方が頼りになるぜ、大将などと言い返してくる。
その時クラブ「ソンブレロ」の前に、車で老コックと劉が来たことんじ気づいた黒木は、目でユリに公衆電話に入るよう命じる。
ユリはすぐさま、電話ボックスに入り、そこに置いてあったもう一つの小箱を手に取ってポケットに入れる。
劉大人直々のお出ましとは何事だねと黒木が聞きながら二人に近づくと、おめえなんかにつべこべ言われる筋合はねえぜと劉が言って店に入る。
その直後、百合が近くの路地に入り込んだので、その後に続いた黒木に、ねぇ大将、一緒に働かしてくれよとユリは食い下がる。
子供がいちゃ邪魔っけだ、お前には別に仕事ある、そのフィルムすぐ現像するんだと黒木が指示すると、子供なもんか、男なんて知り抜いてら〜とユリが見栄を張るので、生意気言うんじゃないよ、生娘のくせに、「週刊実話」の連中にはもう1日だけ待ってもらってくれ、無駄になるかもしれないが、明後日の朝俺から事務所連絡なかったらその写真を持って警察行くんだ、分かったな?と黒木はユリに命じる。
そんなにやばいの? とユリが心配したので、まあねと黒木は答えるが、やめて、今度だけはやめてくれよ大将、お願い!とユリが案じるので、心配するなよと黒木は答えるが、笑い事じゃないよ、大した金にもならないのに命まで賭けて、トップ屋なんてやめりゃいいんだ、世の中にも知られないしさとユリが愚痴っているので、黒木は通りに戻り、タクシーを呼び止めていたので、大将!と呼び止めながらユリが先にタクシーに乗り込むと、すぐにドアを閉めた黒木が運転手に、東京だと命じる。
タクシーはユリだけを乗せ走り去って行く。
店の前に来た黒木はばったり芝六に出会い、芝六は、あ、クロさん、俺あんたに話してえことがあるんだと言うので、一緒に人気のない港へ向かう。
停泊中の船を見ながら芝六は、俺小せぇ時から船乗りになりたくってな…、中学出るとすぐにうちを飛び出してここに来てよと打ち明け話をしだす。
けど乗ったのはサンパンだけさ、いろんなことやったぜ、あげくの果てがご覧の通り、なっちゃねえやと芝六がぼやくので、待てば海路の日和ありさ、な〜に、その内良いこともあるよと黒木が慰めると、クロさん、笑っちゃいけねえぜ。俺はお前が羨ましくてな、俺が仲間に入ったのは1つはお蝶さんなんだ、俺には自分で自分が分からない。所詮は高嶺の花さと芝六は言って自嘲する。
クロさん、どういうもんか、俺はお前とは馬が合うようだね、それにお前はお嬢さんの身内だから言っとくが、劉元徳には気をつけな、あの野郎、お嬢さんの足を掬おうって魂胆だと芝六は打ち明ける。
そうか…、伝えとくよ、芝六さんの志だってなと黒木が答えると、芝六は照れ臭そうに笑い、よせやい、さ行こう、商売商売!と芝六はごまかすと、じゃあと言い残し先に帰って行く。
一人帰る黒木の背後にコート姿の尾行者が二人続く。
倉庫の横を歩いていた黒木は、急に銃声が響いたので、咄嗟に身を隠す。
背後を見ると、2人のコート姿の男が走り去るのが見えたので、黒木はそれを追いかけてみる。
しかし途中で見失い、黒木は負傷した右手を気にする。
バー「窓」に来てみると、カウンター席には小柄な男は一人座っているだけで、テリーがカウンター内に入っており、劉は?と黒木が聞くと、出かけたわ、私1人…とテリーが答える。
どうしたの、その手は?とテリーが気づいたので、テリーは小柄な男をカウンター席から追い払い、黒木の手の手当てを始める。
酒のアルコールで消毒し、甲斐甲斐しく傷の治療をするテリー
小男が救急箱を持ってくる。
その時、千代が入ってきて、苦しそうに、薬!薬をおくれよ!と小男に要求する。
黒木は手当てをしてくれたテリーにありがとうと礼を言い、席から離れる。
薬おくれよとカウンター席に来て訴える千代だったが、小男はカウンター内に逃げ込み、テリーもノーというだけで相手にしなかった。
おくれよ、あたいちゃんと仕事やってるじゃないか!おくれよ、あたいの連れて来た客を麻薬の中毒にしておいて!それは種に金を強請っていることだって知ってるんだ!と千代は喚くが、小男も相手にしない。
ああ、だめだよ、薬、あ〜薬、 畜生!
そんなに薬もらえないで、薬くれなきゃ何でも喋ってやるぞ、畜生!ああ、畜生!と千代は床に倒れ込みのたうち回る。
畜生!くそ!あ〜あ!薬!薬!と千代は半狂乱になる。
どうしてやることもできない黒木はテリーと見つめ合う。
お蝶の部屋に戻った黒木の手の包帯を見て、私のためにあんたまで狙われてるのね。明日大きな荷揚げを済ませたらこの辺が見切り時かもしれない、私だってしくじった命だ、きっと殺し屋を差し向けられるわとお蝶は言う。
どこから?誰なんだ? と黒木が聞くと、わかんない、まだ誰も会ったことはないのよ、その男には…、その男の手から割符が出るわ、荷揚げの時私を通じて割符が劉に渡るのよ、劉はそれが不服なのよとお蝶は教える。
その割符は?と黒木が聞くと、明日朝、芝六が受け取るとお蝶が言うので、奴なら安心だと黒木も太鼓判を押す。
それを聞いたお蝶は黒木の方を笑顔で振り返り、もう時期よ、明日の仕事が終わったら2人で王様暮らしができるわ。
ありがたいねと黒木もお蝶の方を見ないで答える。
翌朝の港
サンパン(小舟)から降りた男(速水修二)が待っていた芝六に「ラッキーストライク」のタバコを手渡す。
芝六は空を見て、一雨人来きそうだなと言い残しその場から立ち去る。
一人港を帰る芝六だったが、とある倉庫を曲がろうとした時、急に苦しみ出し、その瞬間雨が降って来る。
ずぶ濡れになりながら、芝六は倉庫の壁伝いに息を弾ませ、お蝶さん!はい…と呟きながら必死に歩き進める。
クラブ「サンブレロ」の勝手口を開けた芝六はその場に倒れ込むが、その背中には太いナイフが突き刺さっていた。
クロさん…と呟く芝六の言葉に気づいたボーイが、クロさん、クロさん!と二階に呼びに行く。
2階から階段を降りて来た黒木は倒れている芝六に気づいて駆け寄ると、やられた!と言う芝六に、どうした?と聞き、おい、早く医者を呼んでくれ!頼む!とボーイに頼む。
もうだめだ、分かってくるぜ、あ!急所をやられた、達者な野郎だと芝六が言うので、喋るな!と叱る黒木だったが、クロさん、おめえも気をつけなと瀕死の芝六は、ナイフを抜いて必死に止血をする黒木に言う。
芝六はシャツの中から先ほど受け取ったタバコの箱を取り出すと、ほら、割符は守ったぜ、あ、お長さんにこれを…と芝六が最後の力を振り絞って言うので、そうか!劉だったのかと黒木は確信する。
クロさん、おめえ、ただの風来坊じゃあるめえ?頼んだぜ、お蝶さんだけは…と芝六が言うので、芝六、芝六、 芝六!しっかりしろ!芝六しっかりしろ!と黒木は呼びかけるが、芝六からは苦しそうな息が聞こえるだけだった。
その後、土砂降りの雨の中、バー「窓」にやって来た黒木は、カウンター席に集まった劉の仲間たちを見て、芝六死んだよ、劉さん、あんたどこにいた?と聞くと、お前変な物の言い方するじゃねえか?と劉は言い返してくる。
聞きようによってはねと黒木が近づいて言うと、何を勘ぐってるんだ? と劉は聞くので、それを俺に聞くのか?と黒木は言い返す。
劉大人ずっとここにいたよと老コックが言うので、そんなことはどうでもいい、お蝶の使いか?と劉は言うので、いやと黒木が答えると、何のことかさっぱりわからねえ、芝六、割符はどうしたんだ? と劉が聞くので、知らんねえ、あいつに妙な知恵をつけた奴がいるんだと黒木は教える。
おぉ、でかいツラするな、芝六との付き合いは俺たちの方が長いんだぜと劉は言う。
そんな会話を2階から階段を降りてきたテリーが、こっそり聞いていた。
お蝶の後ろ盾があるからってあんまりでしゃばらないことさ、俺たちの仕事はな、知らない所で知らないことが起こるんだと劉は説明すると、隣にいた小男も、 俺たちの仕事はな、知らないところで知らないことが起こるんだと繰り返す。
何? と黒木が気色ばむと、仲間たちが黒木を取り囲んだ中、帰ってお蝶にそう言え!取引は今夜だ、今になって仲間割れをボスに知られたら元もこもねえってなと劉は告げる。
劉とその仲間たち、そして黒木の顔に緊張感が走る。
部屋で待っていたお蝶は、今夜の荷揚げはあんたに任せるわと伝える。
可哀想に…、芝六は良い奴だった、 野郎!このままはじゃ済まさん!と黒木は呟く。
そんな黒木を見ていたお蝶は、思わず、クロさん!と呼びかけながら近づくが、その顔には苦悶の表情を浮かべる。
その夜、雨上がりの港に、洋服姿に着替えた劉たち一行が車でやってくる。
夜の海をサンパン(小型船)が近づいてくる。
突堤に劉や黒木が移動すると、中から降り立った船員の一人が老コックから割符を受け取り、交換に大きなバッグを持ったもう一人の船員が手渡す。
黒木がタバコを咥え、ライターをなん度もカチカチやり始めたので、劉がそのライターを叩き落とす。
黒木が落ちたライターを拾い上げると、劉は黒木の口からタバコを奪い取り、舌打ちしながら地面に叩きつけ、そのまま車に戻る。
車の横にバッグを置いた老コックがバッグを開け、中に入っていたガラス瓶の中の白い粉を取り出すと、劉がその粉を指につけ味見をするが、驚いたような顔になったので、老コックは次の蓋も開けて渡す。
全部偽物と知った劉に、バイメン!と老コックは告げ、劉は畜生!バイメンだ!と吐き捨てる。
その時、待機していた大勢の警官たちが一味を取り囲み、ライトを浴びせたので、一味は凍りつく。
武器を捨てろ!こちらは神奈川県警である、武器を捨てて指示に従え!と警官隊が呼びかけて来たので、一味は銃を打ち始めるが、警官隊の応戦で次々に撃たれていく。
そんな中、一人逃げ出した劉を追った黒木は、物陰に隠れた劉に、待て、劉!貴様は俺の手で警察に渡してやると呼びかけたので、貴様、犬だったのか!と応え、劉は発砲してくる。
劉は発砲して、追って来る黒木を牽制しながらコンクリート製の建物内の階段を登り、そこから滑車のフックに捕まって地上に逃走しようとする。
黒木もまた、同じようにフックを掴んで後を追っていく。
建物の途中階の屋上に到着した劉は、そんな黒木に銃を向け、黒木、地獄へ落ちろと言う。
しかし引き金を引いても弾は出ず、すでに弾倉が空になっていたことに気づいた劉に、降りて来た黒木が飛びかかる。
2人は取っ組み合いの喧嘩を始めるが、やがて2人は組み合ったままさらに落下し、土が積まれていた地面に叩きつけられる。
黒木は劉を近くにあった水槽に突き落とし、なん度も何度も水に浸けた後、殴り倒す。
すっかり怯えた表情になった劉を憎しみを込めたパンチで、黒木は何度も殴りつける。
さしもの劉も力尽きたのか、地面に倒れたまま動けなくなるが、そこに警官たちが駆けつけて来たので、黒木は素早くその場から逃げ去る。
ライトを浴びせられた劉は、ふらふらの状態で立ち上がり両手を上げる。
お蝶の部屋に戻った黒木は、マックなな部屋の明かりをつけていくが、お蝶はおらず、そこんは「黒木さま」と書かれた置き手紙が置いてあった。
その手紙を読もうとした黒木だったが、外が騒がしいので、秘密の窓からクラブの様子を見ると、警官隊が入り込んで来て、おい、逃げろ!と客たちが狼狽している所だった。
逃げ出そうと部屋を飛び出した黒木は、テリーを先頭に警官隊が2階に登って来たことに気づく。
警官たちにてで指示を出すテリーの横について来た警官が、君は密輸のピケにも立ったそうだね?君の正体は何だねと聞いて来たので、 こっちの正体から先に聞きたいねと、黒木はテリーを指差して聞き返す。
お〜、私?国際麻薬取締局員ねとテリーが答え、あなたは?と聞いてきたたので、俺はしがないトップ屋さと黒木が答えると、トップ屋?とテリーが不思議がったので、人呼んでねと言いながら黒木がタバコを咥え、ライターを持つと、テリーが、ダメ、撮らないで!私の写真、麻薬団仲間では1枚1万ドルよ、絶対秘密よ、人類の幸福のために…と言い、黒木のライター型カメラを見抜いていることを明かす。
お蝶の部屋にテリーと一緒に戻った黒木に、おい君!肝心の女はどこ逃げたんだ?と部屋を物色していた刑事が聞いてきて、麻薬も見つかりませんと他の刑事も報告する。
黒木はポケットから、先ほど手にしたお蝶からの手紙をテリーに渡す。
「黒さん、あなたはきっと私をひどい女だと思っていることでしょう。今夜の取引で
薬が全部偽物だということも私には分かっていました。
本物の薬は別の取引でそっくり私の手に頂いたわ。でもそれはみんなボスからの命令だったのです。
2人で一緒に逃げられたらと何度か思い、 2人で一緒に暮らしたらと何度か夢を見ました。でも私たちはやっぱり別れなければならない運命でした。
黒田さん許して、もうあなたには2度と会いできないでしょうが、いつまでもいつまでも御体を大切に」と手紙には書かれていた。
テリーがそれを呼んでいる間、黒木は、部屋のレースカーテン越しの窓から見える、隣のトルコのネオンサインを見つめていた。
羽田空港
ご搭乗をご案内申し上げます、お客様はお忘れ物ございませぬよう5番より御搭乗くださいと館内アナウンスが流れる中、小男と並んで国内改札口に近づいたお蝶は、そこに刑事と警官が待っていたことに気づき足を止める。
思わず逃げようとフリかあってお蝶だったが、そこにも刑事と警官、さらにはカメラを構えた記者もいることに気づく。
写真を撮っていたのはユリだった。
警官に取り囲まれ、小男と身をすくめるお蝶の写真が乗った雑誌には「麻薬密売団潜入記」というタイトルがついていた。
後日、良い腕だよ。あたいがが撮ったんだよ、あたいが!立派なもんだよ、この写真、ねえ、これならキャメラマンになれるだろ?とユリが、黒木が窓から外を眺めている事務所の電話で自慢していた。
え、何?何回言えばわかんのよ。黒木の助手のユリよ、忘れないでね!と言って電話を切る。
黒木が机を見ると、そこには「特集密輸団潜入記」「国際港横浜に巣食う麻薬ギャングの全貌を暴くルポルタージュ」と大きく見出しが乗った「週刊実話」と、ユリが撮った何枚ものお蝶の写真が置いてあった。
悪く思わないでくれ、お蝶、俺はトップ屋なんだよ…都心で詫びた黒木は、上着を取ってでっけようとするので、どうしたの、クロさん?どこ行くの?あたいも連れてって、ねえ!とカメラを片手に百合が頼むが、ガラス窓に「東都通信 黒木三郎事務所」と書かれたドアを開けたまま、黒木は返事もせずに出ていくのだった。
百合は振り返って、チェット言い、黒木は新宿の路上を立ち去ってゆく。
終
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