「銀座旋風児 黒幕は誰だ」
小林旭主演の「銀座旋風児シリーズ」第二弾だが、上映時間75分と前作よりやや短くなっている。
二本立て用のプログラムピクチャーなので、今の一本立てを見慣れた目には、この手の低予算通俗活劇は多少物足りないように感じるかもしれないが、慣れると独特の面白さに惹かれるはず。
ますます「銀座旋風児」の「多羅尾伴内化」が進み、本作でも二階堂が変装して神出鬼没なのだが、一体何のためにそんな面倒なことをしているのかわからなかったりする。
クライマックスで変装を解く見せ物要素だけではないのだろうか?
一作目で「別名 退屈男」などとも自称しているので、東映の「旗本退屈男」も意識しているのかもしれない。
もともと「多羅尾伴内」を元にして川内康範氏が作り上げたのがテレビドラマ「七色仮面」なので、同じ川内康範氏源ひとやくの本シリーズが「多羅尾伴内」任じているのは不思議ではない。
本作は何やら江戸川乱歩の「少年探偵団」や「怪人二十面相」のような仕掛け屋敷まで登場し、前作より子供向けになっているように見えなくもない。
一作目こそ、装飾デザインという仕事をいつの間にかしていた風の主人公だが、2作目の本作になると、まるっきり本業をやっている風には見えず、検事と組んで事件捜査ばかりやっているようにしか見えない。
前作で登場した明子役の浅丘ルリ子さんが、本作から助手という立場でレギュラー出演している。
本作ではボーイッシュなベレー帽にジャケットにスラックス姿で、他の作品とは違った魅力が出ている。
ストーリー的には通俗すぎるというか、ご都合主義な部分が目立ち、あちこちにそんなバカな!と言いたくなるような、リアリズムのかけらもない荒唐無稽の展開が目立つのだが、若者向けの二本立ての添え物映画と割り切ってみれば、気軽に見られる痛快活劇にはなっていると思う。
内田良平さんがひたすらカッコ良いのと、安部徹さんの芝居の上手さが見どころ。
【以下、ストーリー】
1959年、日活、川内康範原作+脚色、野口博志監督作品
ネオン煌めく夜の銀座を背景にタイトル(「二階堂卓也・銀座無頼帖 銀座旋風児」とまず赤文字で出て、次に「黒幕は誰だ」が黄色文字で出る)
スタッフ&キャストロール
新聞印刷の輪転機が回る。
翌日の路上新聞売り場の「東都タイムス」の宣伝張り紙には「二本開拓団後段にお食 謎をはらむ経理内容 腰村理事長を操るものは?!」と書いてあった。
夜行列車が走る。
線路脇の土手を転がる男
非常制御器のスイッチが押され、列車が急ブレーキで停まる。
客席の乗客たちも動揺し始めた中、デッキからその当巣を見ていた2人の男に気づいた車掌(山口吉弘)は、デッキは危険ですから中に入ってくださいと声をかける。
土手では、列車から転がり落ちた男のものらしい、血まみれの手が、そばに落ちていたバッグを掴むと、その場から逃亡しようとしていた。
車掌が客席を回りながら、皆さん、お騒がせしてどうも申し訳ありません、ちょっと事故がありまして…、どうぞお席にお付きになってくださいと説明していた。
次の車両に移動した車掌は、皆さま、大変ご迷惑をおかけして申し訳ありませんと繰り返し詫び、どうぞお席におつきくださいと頼んでいた。
先ほどデッキで外を伺っていた二人は席に着くと、どうする?と若い方の男が聞き、慌てたって仕方がねえよ、奴の行く所は決まってるんだともう年上風の男が告げる。
サツへはいかんだろうな?と若い方が案ずると、行くはずがねえよと年上は否定するが、しかし、こし…と若い方は不安そうだった。
そんな話を黒ソフト帽子で新聞を読んでいた客が聞いていた。
黒ソフトのその男は二階堂卓也(小林旭)で、読んでいたのは「日本開拓公団に汚職」「腰村理事長、贈賄容疑」「東京地検乗り出す」と見出しがついた記事だった。
記事には問題の人腰村理事長と説明書が付いた写真も載っていた。
朝方、列車は三宮駅に到着する。
2人組の男は駅前からタクシーに乗り込む。
黒手袋でタバコを吸う男…二階堂卓也
ああ、もしもし、あ、こちら、三ノ宮公安室、はあ、まだ該当者は見つかりませんか?はあ、こちらかも調査をかけておりますが、自殺かどうかはわかりませんが、え、おかしいですな?軽く見てもそうとな怪我をしているはずなんですが…と電話していた警官は不思議がる。
その頃、橋下の川の水で濡らしたハンカチを絞って、顔の怪我を拭っていた男がいた。
男は橋に通じる道をトラックが近づいてきたのに気づき、慌ててバッグを抱え道に上がって停めようと、おい、待ってくれ!と声をかけるが、トラックは気づかずに走り去ってしまう。
やむなく男はトボトボと歩き出す。
神戸の街並み
神戸行き夜行列車から死をかけて飛び降りた男は何か重大な使命を抱いているらしい、彼を狙う二人の追跡者、さらにそれを追っている黒ソフトの男…
4人の男を包んで、皆と神戸の夜は静かに更けていく…(とナレーション)
バッグを抱えた男は港近くの住宅地を独り歩き続け、とある家の前に来ると、雨戸をノックして、すみ子!すみ子!と呼びかける。
玄関口の方へ回って、また雨戸を叩こうとした男は、背後に追跡者の2人組が来ていたので驚く。
バッグを持った男は、やっぱりお前たちか!と気づくが、馬鹿野郎、あれで逃げたつもりだろうが、てめえの行き先くらいはちゃんと分かってるんだと若い方の追跡者が言う。
バッグを胸に抱えた男は、俺をどうしようってんだ?と聞くが、そいつはオメエの方に覚えがあるだろうと近づいて来た年上の男がいう。
バッグの男はその場から逃げ出そうとするが、年上の方が足を引っ掛け転ばすと、若い方の男が離せ
ってんだよ、この野郎!と言いながらバッグを奪い取ろうとする。
年上の男はバッグの男の口を押さえ声を出さないようにする。
バッグを奪おうと若い方が後ずさった時、背後に立った人影に気づいて振り返ると、その男は若い方を一瞬で倒してしまう。
驚いた年上の男が様子を見ると、そこに立っていた男に空手チョップを喰らって倒れてしまう。
バッグを持っていた男も驚き、あんたは?と聞くと、ニヤリと笑ったその黒のソフト帽の青年は、俺か?と言い、持っていた懐中電灯で自分の顔を照らしたので、起き上がった若い方の男は、旋風児!と気づく。
き、貴様、誰だ!と年上の男が聞くと、青年は銀座旋風児と答えたので、何?と聞き返すが、君たちがただの田舎者ならば俺の名は知るまいと二階堂は微笑む。
しかし、東京にウロウロしている殺し屋ならば…と二階堂が嘲ったので、くそっ!と言いながら若い方が拳銃を取り出すと、二階堂は足蹴にして銃を落とす。
年上の方も飛びかかるがあっさり跳ね除けられ、若い方がナイフを取り出して、畜生!と威嚇する。
乱闘の末二人の男が逃げ出したので、行け!ドブネズミ!と二階堂は罵倒する。
そんな中、バッグを胸に握りしめた男はまだそこに立っていたので、どうした?大丈夫か?と二階堂は声をかけながら近付いてくる。
はあ、どうもありがとうございました、命まで助けていただいてと男が礼を言うので、命を助けて温情を売る、そんなケチな根性は持ってないよ、さあ、来ないかね?と二階堂は声をかける。
はあと男は言うが警戒して動こうとしないので、安心した前、僕はデカじゃないよと二階堂は説明する。
はあと男が安堵すると、汽車の中で見ていたんだ、君が汽車から飛び降りたことも、あの2人の男が君を狙っていることもねと歩きながら二階堂は言う。
それがなぜかは知らないが、僕は興味を持ったと二階堂が続けると、しかし私は…と男が言い訳しようとするので、奥さんならこの神戸にはいないよと二階堂は指摘したので、えっ!と男は驚く。
東京にいると二階堂は教える。
あなたは誰です?なぜ私の女房のことまで知ってるんです?と男が不思議がるので、いや、別になぜと言うことはないが、見たまえ、そこに書いてあるじゃないか、奥さんからの電報を誰かが貼っておいてくれたんだろうと二階堂は板壁に貼られた電報を指差し、説明する。
電報は至急便で、「コミナトマチ517 カガワ キョウスケ殿 ソチラヘユケヌ スミコ」と書かれてあった。
その宛名に書かれた加川恭助(雪丘恵介)と思しき男は、お願いです、お名前をと頭を下げて聞くので、まあ、そんな変な顔しないで、僕と一緒に来ないかね?あの二人、まだ君のことを諦めたわけじゃなさそうだ、さあと笑って二階堂は誘い、二人で港の倉庫街の方へ向かう。
途中、二階堂が立ち止まって加川にタバコを勧めているのを見たのは、待ち構えていた先程の二人組で、若い方が年上に、来た、来た、来たぞ!と小声で知らせる。
誰だ?と年上の男が聞くと、お前は知るめえが、あいつは銀座旋風児と呼ばれている野郎で、凄腕なんだと若い方が年上の男に教える。
畜生、嫌な奴が絡んできやがったなと年上の男が言うと、挟み撃ちにするんだ、俺が撃ったら、おめえも撃て!と若い方が指示したので、よっしゃ、じゃあ俺は後ろに回ると年上の男が答え、倉庫の反対側に回り込む。
加川と歩いていた二階堂は、殺気を感じ、若い方の男が撃った瞬間、香川の体を押さえて弾を避けたので、結局二人組の襲撃は失敗に終わる。
夜明けを迎えた「ホテル神戸」
自分の部屋に加川を招き入れた二階堂は、まだ額の傷をハンカチで抑えていた加川に、もう落ち着きたまえと話しかける。
僕の知りたいのは、君を狙っている男の名前と、二階堂はタバコに火をつけながら聞く。
しかし加川が離そうとしないので、いや、あの二人じゃない、あの男たちを差し向けた、そのまた影の男…と二階堂は付け加える。
その時、部屋の電話が鳴り出したので、二階堂が黙って受話器をとると、良いか、お前が手を引かねえならお前も狙う、良いな?殺し屋がどんなにしつこい奴かわからしてやるぜと、先程の二人組の若い方が脅してくる。
ああ、分かった、良く分かったよと二階堂は受け流し、電話を切ると、といっても、君を放って逃げるわけにもいかないしね、しかし訳のわからない理由で君と心中しても仕方ないとも言う。
まあ良いだろう、君が話をしたければ聞くし、話したくなければ言わんで良いと二階堂は加川を突き放す。
それでも加川は、バッグを胸元に抱き締めるだけで何も言おうとはしなかった。
路面電車と車が行き交う銀座
とあるビルの看板プレートの3階部分には「二階堂卓也 装飾美術研究所」と書かれてあった。
事務所の中では、情報屋の政(宍戸錠)が、先生、どこまで行っちゃったんだろうな?なんとか言ってきたって良さそうなものなのに…と、モップで床掃除をしていた村越明子(浅丘ルリ子)にぼやいていた。
すると明子は、ぶつぶつ言ってないで少しぐらい手伝ったらと言い返す。
はい、仕事のね、情報屋には掃除くらいがちょうど良いとこだし…と政は自嘲し、箒を手にするが、だいたい先生、何考えてんだろうなと言いながら、デスクの上の写真立てを裏返す。
政、まあ待て!まあ待て!それだけなんだからねと二階堂の声色を真似て見る。
私にだって同じよ、この助手の私にだって…と明子もすねる。
いや、先生は君には危ないことはさせたくないんだよと政がフォローする。
写真立てには二階堂の姿が映っていた。
その時電話が鳴り出したので、明子も政も咄嗟に自分が取ろうと受話器に近づく。
一瞬早く受話器を取った明子が、もしもし、二階堂事務所でございますと答えると、はぁ、何だ荒木さん?ええ!先生からと嬉しそうに答える。
うん、二階堂さん、神戸で大変な事件の尻尾を掴んだらしい、今朝、連絡があったよと「東都タイムス」2階の編集局にいた貴社の荒木和夫(青山恭二)が教える。
とにかく僕はそのことで出ていかなくてはならなくないんだが、君に知らせようと思ってね、うん、神戸だ、ハハハッ…心配ないよ、銀座旋風児じゃないか、じゃあ!と言って電話を切る。
ひどいよ先生、神戸くんだりまで行っちゃってさ、第一ここへこそ真っ先に電話くれたって良いじゃないの、もっともこのスタイルには慣れっこだけどねと政が諦めたように文句を言うので、ねえ、政さん、荒木さんが新聞社を出るところをつけてみたら?と明子が入れ知恵をする。
そいつは良い考えだ!だけど僕一人で行くよ、君はこの続きをと言いながら、政は持っていた箒を明子に手渡し、事務所を出ていったので、明子は唖然とする。
荒木は編集長(河合健二)に、では出かけますと伝言し、メモを受け取って「中央区佃島48 加川すみ子」ですねと住所を確認する。
編集長は、頼むぞ、大体のことは二階堂さんと打ち合わせてある、特ダネだぜ、印刷局の熟練工の行方不明、偽札…と、この前の事件より複雑らしいと言う。
荒木は、良し、やりますよ、じゃあと挨拶し出かけようとするが、その後ろ姿に編集長は、おい荒木、結婚第一回の事件だな、しっかりやれよと冷やかす。
その言葉にニヤつきながら荒木はコートを着て編集局を出る。
その頃「ホテル神戸」では、君が僕に隠しても、奴らは喋らなかったと信じるかな?それで君は助かると思うかね?僕は強制はしないよとまだ口を開こうとしない加川を説得していた。
君が絶対に言えないものを言わすつもりも権限もない…、ただ君が僕を信じるか、奴らを信じるかだ…、それに東京に残してきた家族のことをまず第一に考えるんだね…と二階堂は続ける。
まだ悩み抜いていた加川だったが、意を決したかのように持っていたバッグのチャックを開き、中から札束を取り出して二階堂に見せる。
それは?と二階堂が聞くと、旦那、絶対他言はしないと…と加川は言い出す。
二階堂はその札束を見て、おお?偽物だねと指摘したので、え!どうしてそれが…と加川は戸惑ったようだった。
うん、なかなか精巧だ、どう見ても偽札には見えないよと、札束を手に取り二階堂は褒めるが、紙幣の裏面が白紙のままなので、ほお、片面刷りだねと気づく。
加川は、そうです、片面刷りです、私の作ったもんです、私はこの道では印刷局に15年も勤めていたんです、だから…と口ごもるので、うん、大した腕だ、それで君は片面まで作らされて球に怖くなって逃げ出した訳だと二階堂は推測する。
はいと加川が言うので、しかし裏ができると…、裏は?と二階堂が聞くと、まだです、でももうすぐできるはずで…と加川は案ずる。
つまり技術者は一人や二人じゃない、君の他にも?と二階堂が確認すると、はいと加川が言うので、よかった!君は逃げてきて良かったと二階堂は安堵する。
しかし旦那…とと加川が心配そうに聞くので、奥さんと子供さんかね?それは僕が保証しよう、あなた方は僕が責任を持って守ると二階堂は約束する。
二階堂さん!と加川が喜ぶと、二階堂は愉快そうに笑顔になると、言ってくれますか?あなたを雇った男の名前を、あなたをこんな危険に追い込んだ男の名前を!と迫る。
加川は覚悟を決めたかのように頷く。
「加川恭助」の表札がついた家の前に車が停まる。
乗っていたのは明子と政で、先生に知られても知らないよと、運転手の政は声をかけるが、こどm子じゃないわよ、私!と、助手席の明子は言い返してくる。
「東都タイムス」を出た荒木を尾行していたのだった。
当の荒木は、加川の妻のすみ子(木城ゆかり)に会っていた。
すみ子から見せられた手紙を読み終えた荒木は、すると、この手紙は一昨日届いたと言うことですね?と確認する。
ええ、現金を一万円も入れてあって、私の田舎の神戸にすぐ来いと書いてあったんですけど、子供が球に熱を出したもんですから…とすみ子は言う。
で、印刷局をお辞めになったのは?と荒木が聞くと、一月前です、ちょうど…とすみ子は答える。
どうしてあなたはご主人が半月もうちに帰らないのに警察へ届けなかったんですか?と荒木が確認すると、それが、お友達と二人で独立して仕事を始める、資金の調達で地方に行くので半月ほど帰れないがって…と、そのお友達から連絡がありお金まで為替で送ってきたものですから…とすみ子は言い訳する。
その友達は、あなた知ってますか?と荒木が聞くと、いえ、全然…と言う。
そうでしょうと荒木が答えると、あの〜、加川が何をしたんでしょうか、加川はどこにいるんです?とすみ子は聞いてくる。
奥さん、実は加川さんはね…と荒木は話しかけたその時、突然家の中に二人組が侵入する。
車で待ちくたびれた政が明子に、遅いな、直接荒木さんに会っちゃいましょうと言い、明子はせっかちね、政さんったらなどと呆れながら自宅前にくる。
政が、ごめんくださいと玄関戸を開けて声をかけ、お邪魔しますよと部屋の中を勝手に覗いた時、荒木が倒れているのに気づき、慌てて中に入る。
荒木は殴られたのか額から血が出ており、驚いた政は、荒木さん!しっかり!しっかりしてよと明子と共に抱き起こす。
気づいた荒木は、奥さん?子供、子供は?と言いながら部屋を見回す。
部屋は荒らされ、すみ子と先ほどまで寝っ転がって漫画を読んでいた子供の姿はなかった。
夜行列車が走る。
夜の銀座の片隅にある「おでん お春」の店
ええ、とにかく東京に帰ってくることは確実なのよ、私の店の前にちゃんと書き置きがあるの、先生の姿が見えないなんて…ととお春(南風夕子)訪れた政に、その書き置きを見せる。
「風雲急を告ぐ、いずれ笑ってあい見えるべし 銀座旋風児」とそれを読んだ政は、お春さん、面白くなってきたねと言いながらそれをお春に返す。
でも何って、いつのことか分かりはしないわとお春は不満顔。
政は、春さん、心に秘めし人を待ち焦がるるの図だねと揶揄うと、うん、知らない!私はそんなんじゃありません、ただ…とおハルが言い返したので、ただ?と政は後を聞きたがる。
先生のためになることをしたいのよ、なんでも良いからとお春は答える。
そりゃ、俺だって!と政も同意するが、でも明子さんね…、ねえ政さん、先生、明子さんのことどう思っているのかしらとお春は気にする。
しかし政は興味なさげに、さあねと言って顔を背ける。
事務所では、写真立ての中の二階堂の写真を見つめる明子がいた。
その時、ドアのガラス窓に人影が映ったので、喜んでドアを開けた明子だったが、そこにいたのは丸メガネをかけた髭面のホームレスのような汚い男で、これを届けろって頼まれましたと紙片を差し出したので、それを受け取り読んでみると、「小生の命令なしに動く不可 (当分、事務所の清掃にのみ ご留意ありたし) 銀座旋風児」と書かれてあった。
まあ酷い!と呆れた明子だったが、気がつくと、先ほどの男は消えていた。
「腰村」と表札がかかった屋敷
和服で書斎でくつろいでいた腰林陣吉(安部徹)は、人影に気づいて誰だ!と叱ると、そこに立っていたのは先ほど二階堂の事務所に来た丸メガネに髭面のホームレス風の男だった。
お前、一体誰だ!と腰村は叱りつけるが、今新聞をにぎわしている、公団の汚職に関係があると言う理事長はお前さんか?とホームレス風の男が聞いてくる。
あんた、加川ちゅう男を知っちょるかね?とホームレス風の男が聞くと、何?と腰村が反応したので、印刷局の職工さんだ、あんたの紹介であるところで働いていた…と男は言い、勝手にソファに腰掛けながら、香川の妻子をどこにやったね?と聞いてくる。
ば、バカな!俺は何も知らん!変な言いがかりはやめろと腰村は怒り出す。
言いがかり?とホームレス男が言い返すと、貴様、何者だ?と腰村は立ち上がり、背後にあった警報のスイッチを押すが、無駄なことはやめたまえと言いながら、帽子やメガネをとって変装を解いた二階堂は、コードはそこで切れていると警報ボタンのコードを指差して教える。
畜生!貴様、強請かたかりか!と怒鳴りながら腰村は警報のスイッチを投げつけてくる。
そんな腰村に飛びかかり、胸ぐらを掴んだ二階堂は、腰林陣吉!警察が動く前に泥を吐いた方が身のためだぜ!と告げる。
俺に何を喋れと言うんだ?と腰村が聞くと、君を一口乗せた男の名前だよ、結局、あなたも利用されているんだ、その男にね、わからんかね?これだよといい、手を離した二階堂は、これだよと言いながら、ポケットから一万円札を取り出して見せる。
裏を返すと白紙だったので、さしもの腰村も驚くが、二階堂に飛びかかろうとする。
その直後、先生、先生と部屋をノックしてた秘書秋山(木崎順)が返事がないのでドアを開け、ソファ上に気絶していた腰村を発見し、先生、先生!と呼びかけるが、外に通じるガラス戸のカーテンが開いていることに気づく。
その後、玄関から外に出た秋山は、運転手の運転する車で走り去る腰村の姿を目撃するだけだった。
割烹「きらく」に1人で来た腰村は、何にせよ、飛んだ奴に嗅ぎつけられたわけだが…、完全に僕の失敗でした、加川をやれなかった以上…と報告したので、いやあ、しかし腰村君、加川だってバカじゃない、女房子供は頭にあるはずだと対面した黒紋付の相手は言う。
まあ、調べたところによると、警察としてはまだ何も掴んでないようですが、ただ折が折だけにねと腰村が不安がるので、だから事は早い方が良いわけじゃないかと相手は笑って答え、あんなにしたって1000万の出資で5000万円の配当は魅力のない話じゃないと続ける。
しかもその出資した1000万円は元を正せば開拓公団の金だ、それであんたの汚職の穴は全て埋められると言う寸法じゃないか?と相手が言うので、腰村は苦笑し、まあ、それにしても加川の始末が大事だと思うんですが、あいつを抑えて何をしでかすかわからん奴が出てきた以上…と腰村が続けるので、いやあ、危険なのはあんたばかりじゃない、やがては我々の方にも波及する問題だ、ま、あんたは誰に頼んだか知らんが、まあ素人の殺し屋じゃ無理だろうと相手は断じ、笑い出すと、背後の電話に振り返り誰かに電話する。
電話をかけた腰村の相手、黒川壮介(植村謙二郎)は、うん、俺だと言い、香川は今夜東京地検に入った、うん、すぐには吐かんだろうが、奴にしゃべられればまずい、お前たちにとってもまずい、必ず三日中に加川を消せ、それから銀座旋風児とかいう若造もなと命じる。
電話を受けた高見沢十郎(内田良平)は、会長、必ずやります、任しといてくださいと答える。
電話を切って腰村と再び向き合った黒川は、いやあ、まあ見ててください、素人と玄人の違いをねと伝え、苦笑する。
腰村は、すまんです、それさえ片付けてくだすったら僕は何も言うことはありませんと感謝する。
その時廊下から、ごめんくださいと声がしたので、おお?と答えた腰村だったが、襖を開けて、お久しぶりですと挨拶してきた女将のたき(山田美智子)を見て、ああ、これはたき!と感激する。
たきは、ご用談中失礼と断って座敷に入ってくると、黒川に何やら耳打ちしたので、大阪か…、何もわしが行くほどのことはなかろうて…と黒川は答えるが、でもそれは先生が行かれないことには…とたきは勧める。
新日本生産促進連盟関西支部の発足がいよいよ明後日だと黒川は言うので、ああ、これは結構ですな〜、大慶至極!とお愛想を言い、じゃあ私はこれでと盃を挙げて切り上げる。
あら、腰村先生、ごゆっくりなさっていかれると思ってましたとたきは驚いたので、いやあ、これは弱いな〜、たきの凄絶なるウィンクをされちゃあねと腰村も笑って調子を合わせたので、まあお上手とたきも苦笑する。
「おでん お春」に来た政は、へえ、それでお春さん、田舎に行っちゃったの?と店員の小女(清水千代子)に聞くと、ええ、昨日の朝早くと言うので、なんだってこの風雲急なる時にね…と政は落胆する。
すると小女は、風雲急なる時にお酒飲む人もいるわよと言いながら、政にお銚子を差し出す。
その時、店ので電話がかかってきたので、小女が受話器を取り、はい、は、そうですと答えた後、政さん?政さん電話と受話器を差し出しながら伝える。
はい政です、え、先生?待ってました、情報屋の政、張り切りの巻ですと答える。
その後、腰村のいた割烹「きらく」近くの公衆電話ボックスに場所を変えた政は、あ、あっしです、ええ、腰村以外に誰も入った形跡はないんですが、一体やつが会いにきている相手ってのは誰なんですか?と聞くと、慌てるな、右脳ち向こうから尻尾を出すよ、うん、しかし腰村が入ってからどのくらい経っている?1時間半?そいつは長すぎるドジャー、や、お前の張り込みがだ、政、お前誰かに気づかれたようなことはないだろうな、ええ?と、東京地検検察官斉土則武(菅井一郎)の部屋から電話をしていた二階堂は尋ねる。
ええ!と驚いた政が振り返ると、物陰に人影が見えたので、先生!そ、そういえば確かに…と報告したので、良し、構わん、お前はそのまま外に出ろ、出たらすぐに右に走れ、近くに小学校がある、その庭に逃げ込むんだ、俺が行くまで隠れてろよ、絶対に見つかるんじゃないぞ、良いな?と二階堂は指示する。
政は電話ボックスを出ると、物陰に潜んでいた二人の男が姿を見せる。
割烹「きらく」では、いやあ、あんたは不味かったな、ここへ入るところをつけられていたと黒川が腰村に教えていた。
腰村は、えっ?と驚くと、いや、わしの所の者は片付けると言うが、気をつけてもらわんとな、お互いのためだと黒川は指摘する。
いやしかし、僕がここへ来るというだけじゃ別に…と腰村が困惑したので、笑い出した黒川は、そこじゃ手…、一端あんたも偽札作りに加担してるほどの男じゃないか、まあ車の後を人につけさせるようじゃ困るわけだろう、まあ、わしは大阪に行かにゃならんので消えるが…、このようにしてと、黒川は部屋の壁のどんでん返しで別室へ移動したので、腰村は仰天する。
しかし別室には潜んでいたお春がいて、慌てて逃げようとしたので、待て!貴様、見たな!と黒川は叱りつける。
いえ、私、お願いです、私何も見たりしません、お願いですとお春は命乞いをする。
そこにやってきたのが高見沢たち子分とたきだった。
お春に気づいたたきは、お前さん!と睨みつけると、気の毒だが、この女、秘密のツールを見つけたようだと黒川は言うので、お春さん、あんた誰に頼まれてうちに入ったんだい?とたきが詰め寄る。
見ない顔だが新米か?と黒川が聞くと、そう、昨日入ったばかりだからとたきは教える。
黒川は高見沢に目で合図をし、高見沢は銃を取り出す。
お春が庭先に逃げると、高見沢が銃を向けるが、誰かがその腕目掛けライターを投げてきたので、直撃された拳銃を取り落とす。
庭の木陰から現れた二階堂は、含み笑いをし、ふふふ…、弾が外れて外に流れたらどうするね?ましてや美しい女を殺すと言うようなことが、この堂々たる割烹で行われて良いものかどうか?もうちょっと早く来れば君の後ろにいたはずの人も見られたかもしれないがねと二階堂は指摘する。
先生と二階堂の背中に駆け寄ったお春に、お春さん、話を後で聞く、逃げたまえと指示する。
庭の背後からも黒川の子分たちが接近してくる。
先生は?とお春が聞くので、さ、早く!と二階堂は言い、高見沢が拾おうとした拳銃を先に奪って、さ、そこの木戸から逃げるんだと命じる。
言われた通り城戸から逃げようとしたお春に、敵の子分が掴みかかろうとしたので、二階堂が引き剥がし、迫ってきた他の子分にも殴り返す。
廊下で見ていた高見沢の目の前で、次々と子分たちを薙ぎ倒していった二階堂は、目の前にあった木の枝の上部に一瞬で登る。
その頃、黒いの子分の追手を巻いて、小学校の校庭に逃げ込んだ政も、必死人地下回っていた。
いたか?そっちはどうだ?俺はあっちを見る、あそこ臭いな…などと追手4人は校庭内で会話し、2人は体育用具倉庫を覗き込む。
政はその倉庫の用具の背後に隠れていたが、入ってきた追手に見つかりそうなので、裏手の壁に穴が空いた箇所から脱出する。
しかし倉庫内を探しあぐねた追手二人もそこに近づいてきて、ここにいないとするとどこへ行きやがったかな?とにかく逃げちゃいねえ、逃すわけはねえんだ、などと話し合い、おい炭俵見ようと言い出した時、炭俵を積み重ねた背後に身を潜めていた政は、つい炭俵の一つを崩してしまう。
やむなく飛び出した政は、迫ってきた二人を薙ぎ倒し逃げたので、おい、いたぞ!と追手たちは仲間に知らせる。
他の二人も後者から出てきて、必死に逃げる政に銃弾を浴びせてくる。
迫ってくる追手に、政は、水道の蛇口から水をひっかけ一時的に敵を怯ませるが、4人が合流してきて政に迫った時、タクシーで二階堂が学校に到着し、銃声が響いたので、政!大丈夫か?と呼びかける。
大丈夫ですと言いながら政が校舎の入り口のひさしの上から返事をしたので、そうか、良かった、奴らは?と二階堂は安堵しながら近づくが、その時、二階堂に向けて銃弾が発射されたので、二階堂は瞬時にその場に腹ばいになる。
手を伸ばして小石を掴んだ二階堂はそれを銃を持った追手たちに投げつける。
見事命中して、一人が拳銃を取り落とす。
その隙を狙い踏み込んだ二階堂が四人を相手に殴り合いを始めたので、入り口のひさしに乗っていた政も敵の背後に飛びつく。
二階堂はあっという間に3人を追い払ったので、1人の相手をしていた政も、待て!と虚勢を張るが、二階堂の顔を見た途端、あ痛ててて…と苦痛に顔を顰めながらその場にうずくまる。
そこには敵の一人が気絶して倒れていた。
どうした政、大丈夫かと二階堂が心配して声をかけてくるが、政は、大丈夫ですと答える。
そこに逃げた3人の追手たちが乗った車が近づいてきたので,二階堂は政に危ない!と叫んで身を避けると、車は止まって、倒れていた仲間を乗せて走り去ってゆく。
それを見た政は畜生!野郎と悔しがるが、その時パトカーのサイレン音が聞こえて来たので、二階堂は安堵して政に笑いかける。
パトカーと共に学校に駆けつけた斉土検事は、それで腰村と会っていた大物の顔は君はついに見ずじまいだったんだねと二階堂に聞くので、ええ、残念ですと二階堂も無念がる。
もう一足早ければ…、だがそやつの顔を見たものがいますよ、私の事務所に帰っているお春さんの報告を聞けばわかりますと言う。
それを聞いた斉土検事は、さすが二階堂君だと感心したので、一緒にいた政も自分のことのように喜ぶ。
その時、警視庁より警視9、警視庁より警視9とパトカーに無線が入る。
警視9より警視庁、どうぞとパトカーの警官(志方稔)が応答すると、港区汐留105番地に氏名不詳女中風の女の重症者あり、直ちに現場に直行してくださいとの連絡が入る。
汐留と言えばこの近くだと二階堂は気付き、ひょっとするとお春さん!と政が指摘したので、しまった!と二階堂は気づく。
さあ、乗ろうと斉土検事が二人に指示する。
重症の被害者はやはりお春だったので、病院に運ばれる救急車に同乗した二階堂は、すまなかった、お春さん、無事に帰れると思った、間違いだった、僕の責任だと悔やむ。
一緒に乗っていた政も、お春さん、先生が俺を助けようとしたばっかりに…、俺なんかどうでも良かったんだよと悔しがる。
斉土検事が、お春さんはどうです?見込みはありますか?と医者に聞くと、大丈夫です、しかし当分は安静を要しますね、肩の骨をやられていますから…と医者は説明する。
畜生、今に見てろ!と政は復讐を誓う。
その直後、二階堂はスレッチャーに寝ていたお春の右手に何かが握られていることに気づき、指を開くとそれは鍵だった。
各新聞社の車が腰村邸の前に横付けし、屋敷内では腰村に各社の記者たちが取材しに来ていた。
腰村は大笑いし、よく調べてみればわかることですよ、僕はね、君たちの新聞を名誉毀損で訴えようかと思ったくらいですよ、収賄とはひどいじゃないか、収賄とは…と記者たちに答えていた。
それはね、金が腐るほどあるとは言わんがね、1000万や2000万のかねで目の色が変わる腰村陣吉ではないよと腰村が言うので、しかし急に財閥になったわけでもないでしょう?噂によるとだいぶん借金があるとね…と記者が聞くと、また腰村が破顔し、そりゃ借金もあり、財産もあると笑い飛ばす。
君たちサラリーマンだって、小は小なりにそう言うことがあるでしょう?僕はね、公団の理事長を務めるほかに事業もやっとるんだよと腰村は続けるので、ところで今度開拓団の汚職問題に関係があるって言われている東洋自動車や…と別の記者が質問してくる。
その取材に参加していた荒木記者は、頭に包帯を巻いたまま続いて地方検察庁に向かう。
斉土検事の前にきた荒木記者は、会って来ましたよ、どうして大した役者ですよ、結局問題は、加川を奴らがどう考えてるかにかかってますね、ところで斉土さん、加川の妻子はどうしているか?我々としても動けますかね、僕とあなたの仲じゃないですか?おっしゃってくださいよと話しかける。
苦笑した斉土検事は、余計なことは考えないでもらいたいね、我々としては妻子は健在だと考える、なぜなら加川は我々に肝心な場所を言っとらんからね、それだけは二階堂君にも我々にも言っとらんのだ、ここが辛いじゃないかと言う。
その時電話がかかって来たので受話器を取った斉土検事は、何!加川が!と驚く。
留置場で食事をしている途中で死んでいた加川を見た斉土検事は、おい、誰だ!加川に差し入れた奴は?と検事局員(菊田一郎)に聞くと、はあ、加川の親戚だと言う男らしいんですが…と刑事は答えたので、しまった、これは重大なミスだ、地検の中まで奴らが入り込むとは…と斉土検事は嘆く。
地検の建物から出て来た男は、車の横で待っていた黒川の手下仲間と出会うと、手順通りだ、うまくいったぜと報告する。
ところが、牢の中で倒れていた男の箸を持った指が動き出し、起き上がった男は二階堂の変装と分かったので、留置所の前でそれに気づいた斉土検事と荒木記者は、おい、君!二階堂さん!一体これは!と驚く。
いやあ、斉土さん、お騒がせしてすみませんと二階堂は詫び、これも奴らの裏を掻く策略ですよと打ち明ける。
斉土検事はすぐさま警官に留置場の鍵を開けさせる。
牢を出た二階堂は、毒入りの弁当ですと斉土検事に報告する。
じゃあ加川は?と斉土検事が不思議がると、ええ、奴らには指一本触れさせませんよと二階堂は言い切ると、本物の香川が正座して入っている牢の前に来る。
斉土検事と荒木もその前に来ると、さあここでブンヤさんの協力が必要なんだ、頼むよと二階堂は荒木の方に手を置いて依頼する。
荒木は地検前に停めてあった自分の車の運転手にさあ、行くよと声をかけ、乗り込むと、そのまま走り去ったので、先ほどの黒川の子分二人もそれに気づき、後を尾行し出す。
その黒川の子分たちの車を尾行し出したのは、政と明子が乗った車で、明子は、もっとスピード出ないの?この車、ボロねと悪口を言う。
運転する政は、だいたい君を連れて来たんだって、先生には内緒なんだぜと言い返すが、おしゃべりしてるとますます遅れるわよと明子ややり返す。
青い荒木の乗る車、それを追う荒木の子分たちが乗る青い車、さらにそれを尾行する政と明子の乗った青い車が続く。
黒川の子分の車がやって来たのは「新日本生産促進連盟本部」の建物だった。
それについてやって来た政は、とうとう突き止めたぜ、ここが奴らの巣だったのか…と敵の本拠地を知って喜ぶが、視線を横に向けると、割烹「きらく」があったので、え、ここは「きらく」の前じゃないかと政は驚く。
この二つの建物は押印時関連性があるわけね、政さん、私ちょっと行ってくると言い、明子は勝手に車を降りたので、アキちゃん、だめだよ、また先生に!と慌てて政は注意するが、明子は聞かなかった。
「我々の目標達成は若人の熱と力だ!!」と書かれた看板が立てかけられた「新日本生産促進連盟本部」の前まで来た明子は、政の方へ指でOKマークを出し、そのままドアから中に入り込んでしまう。
本部ないの事務所に戻って来た二人の子分は、香川の奴、死にましたよ、地検の中は蜂の巣をつついたような騒ぎだと嬉しそうに高見沢に報告する。
明子は人気のない建物内をこっそり歩いていたが、やがて高見沢らがいる事務所らし部屋の前に来たので聞き耳を立てる。
高見沢は電話の下にオープンリール録音機を取り付け、ご指定通り、上手くやりましたとその電話で報告する。
それを聞いた電話相手の腰村は、そうか、ご苦労と感謝するが、それで例の方はどうします?と高見沢が聞くと、香川をやってしまった以上、帰って女房子供を生かしておくのはまずいな、消してくれ、うん、うん、今夜11時、「きらく」で会おう、金はその時持って行くよ…と腰村は答えたので、高見沢は、ハッと答えて電話を切る。
高見沢はテープレコーダーのスイッチを止め、ニヤリと笑うが、その時、廊下でスパイだぞ、スパイだぞと叫ぶ声が聞こえ、見つかったと知った明子は慌てる。
逃げ出そうとした明子だったが、あっという間に黒川の部下たちに囲まれ、部屋からは高見沢も出て来て明子の前に立ち塞がる。
なかなか度胸のある男だなとて下の一人が言うと、お嬢さんだよと高見沢が訂正する。
女かと子分は驚き、おい、誰に頼まれた?と別の古文が聞く。
何の用か大概察しはついてる、おい、客間の方へご案内してくれと高見沢は部下たちに命じ他ので、明子は逃げ出そうとするが、すぐに部下たちに押さえ込まれて、物置部屋に閉じ込められてしまう。
うん、アキが入ったきり出てこないんですよ、それが…、止めたんですけどもどうしてもって…と、政は公衆電話ボックスから電話していた。
お春が入院中の病室で電話を受けた二階堂は、バカ!お前がついてなんてことだと叱りつけるが、うん、まあ、入った以上は明子は必ず何かを掴むはずだ、心配するな、俺の目はいつでも光ってる、良し、とにかくお前は自分の車を隠して、どんなことがあってもそこから目を離すんじゃないぞ、良いな?政!と伝え、電話を切る。
その会話を聞いていた明子は、先生、本当に明子さん、大丈夫なんですか?と不安がる。
大丈夫、手金時やられたと見せかけてその裏をかくのが旋風児の搦手戦法と二階堂は答え、とにかく君は心配しないで、良いこで寝てりゃ良いんだと労る。
その夜、割烹「きらく」に、万吉(木浦佑三)運転の車で乗りつけた腰村は、バッグを抱えていた。
一方、「新日本生産促進連盟本部」の事務所で、高見沢、腰村が来ているよ、ていの部屋に通してあるからねというたきの内線電話を受けた高見沢は、はあ、わかりました、すぐに参りますと返事する。
高み座は事務所の書類だなのある壁を自動で開き、その背後の秘密通路を「気楽」の方向へ進み出す。
一方、「特別室」と書かれた物置部屋に閉じ込められていた明子は、なんとか脱出しようとしてたが、奥の壁の一箇所にスイッチらしきものを発見し、押してみると壁が開く。
そこには別の部屋があり、ベッドに寝ている子供をあやしている女性がいたので、あなたは加川すみ子さんですね?と明子は気づいて呼びかける。
え?どうしてそれを!とすみ子が驚いたので、明子は部屋の壁を観察すると、そこにもスイッチらしきものを見つける。
それを押し、どんでん返しで開いた壁の奥が通路になっているのに気づくと、奥さん、この地下道はきっとどっかに抜けられると思います、行ってみましょうと誘うので、すみ子もはいと返事し、子供を背負って後について来る。
「きらく」の座敷で高見沢に金を渡した腰村は、もうこれで、後は運転手にしてある万吉さえ片付けてくれれば、あんた方とは縁切りをさせてもらおうと言い出す。
高見沢はわかってますと返事し、良いな?お互いに水知らず、赤の他人だと腰村は確認する。
すると高見沢は、こいつはどうも…と苦笑し、そんなに急に薄情にならなくても良いじゃありませんかと言い返し、笑い出す。
これに釣られて腰村も笑い出し、いや、そう言うわけじゃないんだがねと返事する。
すみ子と子供を連れた明子は秘密通路を先導し、逃げ道を探していた。
一方、地上で張っていた政も、黒川の子分たちの目を避けていた。
すると、政が身を潜めていた塀のすぐ横が開き、子供を背負ったすみ子を連れ出てきた明子が、あ、政さん、早く!と指示してきたので、唖然としが柄も、良し!と答え、すみ子の背中から子供を受け取り路地から逃げ出そうとするが、すぐに敵の手下たちと遭遇してしまう。
「きらく」の座敷では、それでつまりは恐ろしなったってわけで?ああ…、大阪に行ってる会長がなんと言いますかなと高見沢は思案するふりをする。
じょ、冗談じゃない!僕はただ会長に出資してくれと言われて…と腰村が慌てると、ところが、そのために加川を殺させたのはあんたですよ、しかもあんたがここで喋られたことは細大漏らさずテープにとっとけと言われましてねと高見沢は打ち明ける。
何!と腰村が怯むと、急に笑い出した高見沢は、例えば万吉を殺してくれと言ったあんたの言葉も何もかもだと脅してくる。
そんな座敷の様子を廊下で立ち聞きしていた万吉は、畜生、俺を消そうって言うのかと焦る。
これは私じゃないお、総裁の命令なんだ、あんたが加川の妻子を殺す、万吉も殺す、全て人殺しはあんたがやったことになるんだと高見沢は腰村に説明する。
それを聞いた腰村は、き、貴様たちは!と激昂するが、一切あんたに着てもらって一件落着さ、そのあとで香港に飛んで偽札をドルに替える、それをまた持って帰って円に戻す…と高見沢は淡々と説明すると、いきなり銃を取り出し、すぐに来てもらおうか、加川の妻子は本部にいると腰村を脅迫する。
政と明子たちの前に立ち塞がった黒川の子分たちは、いずれみんな消えてもらわなくちゃならねえ、おめえたちだ、言っておくことあったら聞いとくぜと、こちらも銃を取り出して脅していた。
その時、背後から現れ、拳銃を持った男を突き飛ばしたのは、こちらも銃を持った二階堂だった。
先生!と明子は喜び、政はありがてえと喜ぶ。
お望みとあれば銀座旋風児、存分にこいつを噛み付かせるぜと銃を見せながら二階堂は敵に告げ、さあ、早く逃げるんだと明子たちに指示すると、敵を蹴散らしながら路地から脱出する。
明子らが路地から出ると、後に残った二階堂は大勢の子分たちと乱闘を始める。
「きらく」の座敷では高見沢が、カメラの用意もできてる、俺はそれを忠実に記録すりゃ良いことになってるんでねと、まだ銃を突きつけて腰村に言っていた。
畜生!と言いながら、腰村が立ち上がりざま、テーブルをひっくり返し高見沢を転ばせると、銃を手にした高見沢に飛びかかり、揉み合いが始まる。
腰村は高見沢を投げ飛ばすと床の間の花瓶をぶつけてくるが、高見沢はその場で腰村を射殺してしまう。
運転手の万吉は表に止めてあった車に乗り込み逃げ出そうとするが、後部座席に乗り込んでいた二階堂に銃を突きつけられる。
万吉、どこに行くんだと二階堂が聞くと、違う!俺は殺される、旋風児助けてくれ、高見沢は俺を殺すつもりなんだ、頼む、助けてくれ!と万吉が命乞いしてきたので、良し、じゃあ俺の言う通りに走るんだと二階堂は命じる。
二階堂が指示した行き先は東京地方検察庁だったので、あ、ここは!と万吉は驚くが、真人間になる気があるならば、黙って俺の言う通りにするんだ、良いなと後部座席でタバコを咥えた二階堂は告げる。
運転席で観念した万吉は、はいと頷く。
翌日、新聞印刷の輪転機が回る。
「腰村理事長が失踪」「日本開拓公団疑獄」「東洋自動車に飛び火」「背後に偽造紙幣団」の見出しが新聞誌面に踊る。
その夜、割烹「きらく」に、大阪から黒川が帰ってきたので、子分たちが一斉に玄関で出迎え、お帰りなさいませと挨拶をする。
座敷に落ち着いた黒川は終始不機嫌で、新聞記事を前に、腰村はどうした!と高見沢に詰め寄る。
はあ、それがやむを得ず…と高見沢が口ごもると、バカめ!と怒鳴りつけた黒川は、それで後始末はどうしたんだ?身代わりはどうしたんだ?と聞く。
はあ…と高見沢が返事に急すると、加川の妻子はどうした?と黒川が続けて聞いたので、それが旋風児に…と高見沢が打ち明けると、バカ!と一喝した黒川は、しかしおかしいな、この部屋に誰か入った奴がいると指摘する。
は?そんなはずありません、この部屋に入れる人間は…と高見沢が言い返すと、しかし見ろ、この地下道へ通ずるドアの鍵が外れていると黒川が言うので、会長、ここの女中で気がついた奴は、あのお春以外におらんはずですと高見沢は言う。
うん、いるはずがないと黒川も同意するが、そこにバッグも持ってやってきた女将のたきが何やら黒川に耳打ちする。
うん?お前の部屋にも?女中じゃないのか?と黒川が聞き返すと、そんなはずはないのよ、女中の中で私の部屋を知ってるものないんだからとたきは答える。
黒川ににじり寄った滝川たち古文は、もしかすると地下工場の中に…と指摘したので、うん、調べようと黒川も乗り出す。
黒川が壁のスイッチを入れると掛け軸が下がった床の間の壁面が上に開く。
黒川たちは銃を構えて地下通路へ向かうと、座敷に残った滝が壁を閉めるが、その時、何か異変を感じる。
地下の作業場では3人の印刷工が、見張りの子分の前で偽札を印刷していた。
そこに黒川が高見沢らを従えてやってくると、あ、会長、印刷が出来上がりましたと見張り薬の古文が立ち上がって報告する。
黒川は出来上がったばかりに偽札をすかして見て、うん。これなら誰が見ても偽札とは思わんだろうと褒めると、ところでここへ誰も来なかったか?と高見沢が見張り役に聞く。
見張り役が、へえ、誰も…と答えると、良し、よくやった、ご苦労だったなと黒川は印刷工たちを労う。
「きらく」の廊下では、女将さん、ずいぶん探したんですけど?と女中が駆け寄ってきたので、あら、ここにいたのに…?どうしたの?とたきが聞くとあの〜、お丁場の金がなくなってるんですと女中は言う。
ええ!と驚いたたきが丁場に行ってみると、そこには「ニセ札 確かに受け取った お春 代理人」と書かれた紙が金庫に貼られて、中はもぬけの空だった。
だ、誰よ!こんなイタズラしたの!とたきが怒ると、でも女将さん、悪鬼まであったお金、本当に…と女中が偽札を疑って聞くので、そんなばかな!とたきは否定するが、あの〜、もう警察が来るかもしれないんです、それまで一切手をつけちゃいけないってと別の女中が言うので、警察に届けたって?バカだね!お金は私が出したんだよ、なんて余計なことを!と滝は癇癪を起こすが、その時、障子に映った影が、大事な犯人が残していたものを破いちゃ困りますねと笑いながら話しかけてきたのでたきは仰天する。
誰あんた!と呼びかけながらたきが障子を開くと、そこに立っていたのは二階堂だった。
あなたがそこからご自分でお出しになったというお金、これじゃないですかと二階堂は札束を取り出すと、愉快そうに聞くと、その札束を部屋に投げ捨てて見せる。
たきがそれを見て慌てると、驚くことはないよ、これを見ろ!とん街道は鍵を取り出して見せ、これはお前たちの犠牲になったお春が固く握っていた鍵だ、この鍵がぴったりの場所がこの家に三箇所あるはずと二階堂は指摘する。
すると滝は、壁のどんでん返しを抜けて地下通路に逃げたので、二階堂もその後を追跡しようと通路に入ると、背後の扉にシャッターが閉まって、元の部屋に戻れなくなり、さらに下へ降りる階段の前にも檻が降りてきて閉じ込められてしまう.
すると笑い声が響いてきて、さすがの旋風児もこういう仕掛けだとは気が付かなかったらしいなと嘲笑してくる。
近づいてきた声の主は高見沢で、どうだ?動けるもんなら動いてみろと挑発して来て、ついて来た子分が持った機関銃を見せる。
そこに、待て!と声をかけて来たのは黒川で、あ、会長!と高見沢は思わず身を正す。
黒川の後からついて来たたきは。ちょっとお待ち、そんなやつをいっぺんに撃ち殺すなんてもったいないよ、私たちが苦労して来た仕事を邪魔した憎い奴!と言ってくる。
一歩前に出た黒川は、おい旋風児!良いザマだ、今1時20分だと腕時計を見て告げると、後10分の地にはダイナマイトでお前の体は木っ端微塵だ!と言い、高笑いをする。
明日の朝刊には「きらく」が吹き飛んだと出るだろう、バラバラになった銀座旋風児か…、俺は飛行機の中で乾杯するだろうと黒川は得意げに説明するが、そこに、会長、大変です!と子分が駆け込んできたので、どうした?と聞くと、羽田はダメです、手が回りましたと黒川に知らせる。
くそ、ちくしょう!と悔しがった黒川は、良し、例の船着場だ!高見沢、金は?と聞くと、準備完了ですと高見沢は答える。
良し!と応じた黒川は、通路の隅に置いてあった木箱のダイナマイトを持ち出し、中から導火線月のダイナマイトの束を取り出し高見沢に渡すと、万一のためにと思って残しておいたこいつが、お前を消すのに役に立つとは思わなかったと二階堂を見ながら言う。
高見沢はそれを檻に閉じ込められた二階堂の前の階段の途中に仕掛ける。
どうか線を伸ばしながら交代した高見沢はその場でライターの火で着火すると、子分たちに合図して全員その場から逃げ出してゆく。
二階堂は檻を持ち上げようとしたり、シャターにぶつかってみるが開かない。
その間にも導火線の火はダイナマイトに近づいてくる。
腕時計で時間を見た二階堂は、1時21分だと知る。
地下の印刷室では、印刷工たちが食事の用意をした机の周囲で全員殺されていた。
地下道のある場所に来た黒川は、ここからは二組に分かれる、お前たちは北側の地下道から出ろ、早く行け!と子分たちに命じる。
下水道を行きかけていた子分たちの背後から、機関銃を持った子分が乱射して皆殺しにする。
黒川は、車二台分には乗り切れなかったんだ、悪く思うなよと嘯くと、腕時計で時間を確認すると、さ、そろそろバカなお客さんの来る時刻だ、行こうと高見沢に言うと、今し方撃ち殺した部下たちの死体を乗り越えて、下水道を歩いていく。
警察隊を乗せた車両が「新日本生産促進連盟本部」前に到着する。
逃げるに逃げられない二階堂は、腕時計で、すでに1時25分になったことを知る。
明子と政も、斉土検事とともに割烹「きらく」の中に踏み込むが、いないよ、先生!と政は戸惑い、先生!と明子も呼びかけるが、二階堂の姿はなかった。
斉土検事も、おかしいな、二階堂くんもいなければ奴らもいないと不思議がるので、どこ行っちゃったんでしょうね?と政も答える。
その時、明子が、内線電話の音に気づき、スイッチを入れる。
みんなご苦労だったな、まあゆっくり探してくれ、銀座旋風児は後4分すると、我々の仕掛けた爆弾で木っ端微塵だと地下から通話してきた黒川の声と笑い声が聞こえてくる。
明子はもしもし!と呼びかけるがすでに返事はなかった。
政が、ちくしょう、どっから?と聞くと、先生はこのうちのどっかにいるわ、どうしましょうと明子は斉土検事に聞く。
ともかく表に出よう、奴らのことだ、そのくらいのことはしかねない、外に出る!、逃げるんだ!と斉土検事は警官たちにも呼びかける。
導火線の火は階段の真下まで接近していた。
黒川たちは地下の下水道を逃亡していた。
割烹「きらく」の操作をしていた警官たちは一斉に退避する中、明子と政は必死に壁を調べていたが、ダメだ、わかんないと政は匙を投げ出す。
時刻は1時28分になりかけていた。
何をしてるんだ、早く逃げなさい!と明子たちに斉土検事が忠告にくる。
でも先生が!と明子が言うので、バカ危ない危ない、早く!と斉土検事は二人を連れ出す。
女中も警官隊も割烹「きらく」の外に逃げ出し遠ざかろうとする。
斉土検事と明子たちが外に飛び出した直後、「きらく」は大爆発を起こす。
「きらく」が燃え上がるのを見た明子が、先生!と呼びかける。
地下道から脱出しようとしかけていた黒川は、遠くから接近してくる消防車のサイレン音を聞き、これで銀座旋風児もお陀仏だ、急げと高見沢に話しかけたので、高見沢が先に階段手すりを登り出す。
マンホールの蓋を押し上げ地上に出る高見沢や黒川たちは、そこで待機していた二台の車に分乗するとすぐに走り出す。
港の倉庫外に到着した黒川は車を降り、おい早くしろと指図する。
その時、車の運転をしていた男が立ち塞がり、待て!と黒川たちに呼びかける。
誰だ!と黒川が怒鳴り返し、高見沢が懐中電灯の明かりを顔に当てると、そこにいたのは二階堂卓也だった。
旋風児!と黒川が驚くと、木っ端微塵にならなくて悪かったな、気の毒だが、旋風児はご覧の通りピンピンしてるよ、お春さんが持っていたこの鍵、役に立ったよと二階堂が鍵を差し出して明かすと、あ、鍵!とたきも気づく。
女将!いや黒川御夫妻、私が鍵を持っていたことを忘れていたのは千慮の一失だ、地下室に閉じ込められて殺そうとしたが、どっこい銀座旋風児は生きてたよ、そのボストンの偽札を香港でドルに替えられたんじゃ世間が迷惑だなと二階堂が言うので、な、なんだと!と黒川は焦る。
ネタは上がってるんだ、汚職管理の弱みにつけ込み、資金を出させて作った10億円の偽札、その精巧さに恐ろしくなって逃げ出した印刷工の加川を殺させようとして失敗した!腰村理事長を表に躍らせ、良婦の経営する料亭と「新日本生産促進連盟」と銘打った偽札工場を地下で繋ぐ地下のカラクリ、世人はいざ知らず、旋風児はその手には乗らん!と二階堂は断言する。
次の瞬間、黒川がコートのポケットから銃を取り出そうとしたので、二階堂が飛びかかり、それを奪って逆に敵を牽制する。
近くの輸送鉄道の線路内に入って乱闘が始まる。
偽札の詰まったボストンバッグを持って逃げようとする黒川夫妻に飛びかかり、バグを奪おうとする二階堂だったが、子分たちに邪魔される。
その子分たちを蹴散らした後、再び逃げる黒川夫妻の前に先回りして立ち塞がった二階堂だったが、またしても子分たちが飛びかかってくる。
黒川夫妻は建物の外階段を登り始める。
二階堂もその後を追い、二階部分の屋上で黒川に襲いかかる。
その二階堂に組み付き、投げ飛ばされた高見沢が拳銃を取り出すが、二階堂に弾き飛ばせれ、銃はたきの足元に転がる。
逃げるくろかわにおいtうき、殴り倒した二階堂だったが、たきが隙を見て、2階の端で組み合っていた二階堂を拾った拳銃で撃つ。
しかし、一見二階堂が倒れ、立ち上がった黒川がボストンバッグを拾い上げようとしたかに見えたが、撃たれたのは黒川の方だったので、たきは無念がる。
黒川はよろめき、ボストンバッグを握ったまま建物の2階部分から落下する。
地面には大量の偽札が散らばる中、黒川が突っ伏していた。
それを無念そうに見下ろす二階堂。
風が偽札を巻き上げる。
お春の入院していた病室に、明子、政、香川の妻子が集まっており、一緒にいた荒木が、奥さん良かったですねと笑顔で話しかけると、すみ子も、はあ、おかげさまで皆さんには大変ご迷惑をおかけいたしまして…と恐縮する。
いや、加川さんも、案外早く帰れるらしいですよ、それもこれもみんな銀座旋風児二階堂さんの活躍のおかげですと荒木は教える。
そういえば先生、一体どこでまごまごしてるのかしら、おかしいわと、すでに起き上がっていたお春の横に座っていた明子がぼやく。
だいたい二階堂さんがここに来るから集まれって言ったのは誰なんだと荒木も不思議がる。
すると、頭に包帯を巻いたお春が、私よ、だって先生、さっきその花を持ってお見舞いに来てくださった時、1時間したらまた来るからみんな集めておけって言って出て行ったんですものと打ち明ける。
ふ〜ん…、それにしてももう2時間近くになるでしょう?と明子が指摘すると、またやられたらしいですね、お春さんと言いながら政が、二階堂が持ってきたという花束を持って下に向けた時、何か紙片が落ちたので、あ、政さん、何か落ちたよと荒木が教える。
それを拾い上げた政は、近づいた荒木と一緒に中身を読み、ああ、やられましたよ、「雲の如くまた旅に出る 銀座旋風児」切ない文句だね、俺たちをお春さんのお見舞いに集めといてさ、自分は雲の如くか…、やりきれませんと紙片を読んだ政はぼやいてみせる。
子供を抱いて座っていたすみ子は、一言お礼を申し上げたかったのに…と残念が理、お春と明子も互いに見つめ合う。
う〜ん、雲の如くか…と荒木も呟き、ふん!と答えた政とともに、窓の外の空を見る。
正月の凧が上がった青空の下の銀座の通りを独り歩き去る二階堂の後ろ姿に、主題歌が重なる。
通り過ぎる二階堂に気づいた女性らは、嬉しそうに指差す。
銀座四丁目交差点を渡る二階堂
服部時計店を中心とした銀座の風景に「終」の文字
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