「警視庁物語 十二人の刑事」

シリーズ17弾で、上映時間77分と本編並みの尺になってる。

内容的にも東京中心の話ではなく、宮城県警との合同捜査の話になっており、名古屋県警も絡んでスケールも大きい。

特に前半は松島のシーンがメインで、捜査と絡めた名所紹介のような雰囲気になっているので、いつもとかなり印象が違う。

しかも現地の方言を再現しているので、馴染みがないものにはセリフの意味が入りにくい部分もある。

事件の背後にはプロ野球の話が絡んでいるのも興味深いところ。

後半、東京の野球場も登場し、ビール売りの様子が描かれているが、当時は昔の駅弁売りと同様、男が首からビールを入れた箱をぶら下げて売っている。

真夏の設定なので、当時はどんな建物にもエアコンなどないことから、刑事たちも庶民も汗まみれで働いている様が見られる。

劇場版「月光仮面」の大村文武さん、テレビ「七色仮面」の波島進さん、「新七色仮面」の千葉真一さんと、当時の人気変身ヒーローが揃っている点が見どころかもしれない。

特に大村さんと波島さんは同じ仙台署のコンビとして出ているので、「月光仮面」(東映版は1958年から上映)と「七色仮面」(1959年から放送)の共演ということになる。

たまたまかもしれないが、上映時期から見て、東映側がその辺を意識した趣向とした可能性もあるのではないか。

千葉真一さんはまだ学生のようで初々しい。

さらに「ウルトラセブン」のキリヤマ隊長こと中山昭二さんも出てくるし、「V3から来た男」こと南廣さんも登場するので、まさしくヒーロー大集合の雰囲気。

「仮面ライダー」の「地獄大使」こと潮健児さんも、このシリーズのほぼ常連みたいに登場するので楽しい。

脇役として出てくる殿山泰司さんとその女房役の戸田春子さんの存在感が見事。

また、劇中の捜査本部で歓迎用のビールを出すシーンがあるのだが、冷えてますよと言っているところを見ると冷蔵庫があったのだろうが、捜査本部の中にあるのだろうか?

食堂があるようなセリフもあるので、食堂から取り寄せたとも考えられるが、映画を見ている限りすぐに出て来たので部屋に用意してあったようにしか見えないし、冷蔵庫がなければ、部屋に置きっぱなしで冷えてますよと言うわけもない。

野球が絡んでいるのも興味深く、渡辺刑事がジャイアンツのことを悪く言っているのは、当時東映フライヤーズのライバルだったからか?

本作では関山耕司さんが上野署の刑事をやっており、シリーズでは犯人を演じたりと忙しく役柄が変わる一人だろう。

二転三転する展開は面白く、最後に登場する佐久間良子さんの愛らしさが、哀れを誘うラストになっている。

【以下、ストーリー】

1961年、東映、長谷川公之脚本、村山新治監督作品

天橋立、秋の宮島と並んで、松島は日本三景と呼ばれている。

この松島は、湾の広さ約96平方キロ、大小236の島々が点在して、とりどりの形を競い合っている。

その明媚な風光は遠く平安の昔から人に知られ、清少納言や芭蕉をはじめ、幾多の文人墨客に讃えられた。

そして今日では、その明媚な風光を求めて訪れる観光客が年間250万人を下ることはないと言われている。

それらの観光客は、この旅館に立ち並ぶ旅館で一泊すると、もう翌日は松島を後に帰ってゆく。

しかしここに、ホテルの一室に投宿したまま、翌日になってもまだ姿を見せない客があった(と、空撮映像にナレーション)

ボーイ(菅原杜男)が部屋のドアをノックし、返事がないので、合鍵で扉を開いて中を見ると、ベッドに頭から毛布で包まったままの姿が見えたので、もしもしお客さんと揺り起こしてみるが相手は動かない。

その首元には、窓から続くロープが伸びていたので、恐る恐る毛布をめくってみると、客の女の首にロープが巻き付いていたので、ボーイは驚いて身を引く。

(女の死体の映像に)起こしタイトル

推定年齢28歳、死因は口径よる窒息死、この被害者は昨9日年齢25~6歳、浅黒い男と同宿した。

宿町によれば山田一郎の妻信子と記されているが、同宿した男は殺害後、いずれかに逃走したものと推定されただけで、西洋式のホテルであるため、その人相も確実には取れなかった。

一方、現場から発見された遺留品としては、3個の完全指紋、東京上野の新新道とネームの刻まれた靴べら、赤城洋品店とスタンプのあるハンカチ、十三屋製紙と商標のある塵紙、それと白浜荘のネーム入り石鹸箱であった。

白浜という地名は、和歌山、千葉、兵庫の各県にある。

捜査当局はそれら遺留品の調査を関係警察署に依頼するとともに、宮城県塩釜警察署に捜査本部を設置したが、ちょうどその日は二日間に渡る塩釜港祭りの第一日目でもあった(と、現場鑑識の様子や、塩釜の現地映像にナレーション)

ジープが塩釜署に到着し、「松島グリーンホテル殺人事件捜査本部」の貼り紙が貼られた部屋にやってきた刑事が、長さん、ガイシャの写真が出来ましたと報告する。

あ、いやあやあ、こんたらめんこいのに殺されるなんて全く…と、写真を受け取った池本刑事(波島進)が嘆く。

良し!本田らこれで、ガイシャと同宿した山田一郎の足取りを取ってもらうと宮城県警課長(石島房太郎)が指示を出す。

それからホテルには、9日の6時過ぎには到着しているのだから、それより前に、松島海岸さ到着する交通機関を特に念入りに洗ってくれやと課長は言う。

ああ、すかす、あの~と池本刑事が発言しようとするが、もちろん投宿前に名所彷徨いている可能性もあるからな、その聞き込みを忘れんようにと課長は念を押す。

はあと 宮城県警小川部長刑事(大村文武)が返事すると、旅行犯罪は捜査が長引くと言いますが…と別の刑事が発言すると、ああ、せめて祭りが済んでからにしてくれると良かったけどなと課長が言うので、んだすなと小川部長刑事も同意する。

捜査本部の窓からは、外の祭囃子が聞こえていた。

早速、駅や松島動物園や松島水族館、松島温泉ヘルスセンター、満巖寺など、各名所の捜査が始まる。

んたら池本君と言い、自転車を降りた小川部長刑事が公衆電話のある遊覧船乗り場で、そこにいた遊覧船ガイド嬢(愛川かおる)に、県警の者ですが、一昨日この客見なかったかな?と写真を見せて聞く。

それを見たガイド嬢は、新聞で読んだけど、今朝、あのグリーンホテルで殺された人!と答える。

んだ、覚えてねえかな?と小川部長刑事が再度聞くと、いや、昨日6時頃着いた遊覧船で来たかもしれんのだがと小川部長刑事が聞くと、今まで電話をしていた遊覧船の事務員(最上逸馬)も電話を終えて、その写真を見に来て、ほんなら最終便だなと教える。

最終?と小川が聞き返すと、うんと言いながら、記録帳を調べ、あ、第七松島丸のお客だと事務員は言う。

第七松島丸?と小川が記録を読むと、え、でがす、今入っているあいつがすと事務員は鳩羽に横付けされていた遊覧船を指して教える。

一方、池本刑事も、港で野菜を売っていたおばさんに、昨日、一昨日だ、9日の夕方の6時頃だとかな?浅黒い細面の若い男がったかもしれさんが思い出さんか?…と写真を見せながら聞いていた。

そこに、池本君!と呼びかけながら駆けてきた小川部長刑事が、あれだ、あれに乗るんだと遊覧船を指差しながら急かす。

しかし自転車…と狼狽する池本に、いいから早く、早く!と小川は急かして、自ら遊覧船に向かう。

池本も一緒に飛び乗り、あわくった!とぼやくと、一昨日の6時頃と言うとこの船らしいと小川が言うので、ほおと池本は驚き、最終便なら少しだから、ガイシャたちが乗ったとすればガイドさんが覚えているだろうと小川は言うので、ガイドさんはどこだべな?と池本は周囲を見回す。

その時、皆様、本日はようこそおいでくださいましたと船内アナウンスが聞こえたので、そら来た!と言いながら、二人は声の方へと向かう。

ただいま今様の第七松島丸はただいまから日本参詣随一の景勝を誇る島の緑を島々の間を通り龍馬江までご案内しますとガイドの声は響く。

松島県警だがとガイド場の近く来て声をかけるが、ちょっとお待ちくださいませとガイドはいうと、あの細い丈が一面に立っておりますのが名産海苔の養殖場でございます、この湾内の海苔は各地方に出荷されておりますが、海苔は東京の浅草海苔に限るよ、どうです、この艶と香りは?とお褒めに預かってりますその海苔も、実はこの松島湾の海苔でございますとガイド嬢は続ける。

その頃、警察ジープは、松島公園タクシーの前に来ていた。

遊覧船ではガイド場が、一名亀島でございますとアナウンスしていたが、マイクを切ると、何か?と刑事たちに向き顔って聞く。

一昨日の最終便の時も、あんたがこの船さ、乗ったんですな?と小川部長刑事が聞くと、ええ、私が…とガイド嬢は言うので、お客が少しだったと?と小川が確認すると、5~60人…などと言うので、ええ!5~60人も!と池本刑事は驚く。

ほんだったらば、こんな人覚えてねえだろうな?とまた写真を出して小川部長刑事が見せる。

それを見たガイド嬢は、そういえば…と言い出したので、え?乗った!と池本刑事は身を乗り出して聞くが、ええ、確か…と言いかけたガイド嬢は、あ、すいませんと断って、またアナウンスを始めたので、池本刑事は苛立つ。

皆様、右手前方をご覧くださいませ、片側にぽっかり穴の空いております島は材木島でございます、ちょうど材木を積み重ねたような岩肌のこの島は、波の侵食によって積紋ができたものでございます、また、皆様の左前方ちょうど仁王様が座ったような形をしたこの島は名勝の仁王島でございます、目もあり、鼻もあり、口もございまして、頭にはベレー帽を被ったこの島は、幾千年と言う長い間、波に現れ風にさらされてできたものですとガイド嬢はアナウンスする。

荒い波風膝下受けて、波をざせきの仁王島…と詠まれておりますとガイド嬢は紹介してまたアナウンスを切ると、写真を見ながら、この人一等のお客さんだったという。

一昨日は一等は4~5人しかいなかったし、それに私おしぼり持ってったもんだから…よガイド嬢がいうので、本で君はこの人覚えてんだな?と小川部長刑事は確認する。

ええ、あ、男の人と一緒だったとガイド嬢は思い出したので、男!どんな?と池本刑事は聞く。

どんなってんだな…、若い色の黒い…とガイド嬢がいうので、ならばその二人は塩釜からこの船さ乗ったんだろうな?と小川部長刑事が聞く。

ええ、この人たち、前の晩塩釜に泊まったんじゃないですか?とガイド場は逆に聞いて来たので、何で?と小川が聞き返すと、私、おしぼり配りながら…と言いかけたガイド嬢は、また、外を見て、あっと気づくと、ちょっとすいませんと断って、皆様、前方から近づいてまいります船団は、港祭りの神輿船でございますと、またガイドを始める。

鳳凰を模ったこの御座船には国土開発、海上守護、安産の神様塩釜神社の神輿が安置され、湾内の形式を5時間にわたって巡航する絢爛豪華な夏祭りなのでございますとアナウンスを終えたガイド嬢は、あ、え~っと、そのアベックさんだけど、私、男の人の方はあまり良く見なかったんですけど、女の人、確かスーツにくのや旅館のレッテルつけてたから…と先ほどの話を続けたので、くのや?と小川部長掲示は確認し、それで、前の晩に泊まったと思ったんだな?と聞く。

ガイド場はええというので、なるほど…と池本刑事も納得する。

船は皆様お待ちかねの塩釜港に入ってまいりました、皆様、拙い説明をお聞きいただきまして誠にありがとうございました、これから皆様が楽しいご日程をお続けくださいますようお祈り致しております…とガイド場が最後のアナウンスを行う。

遊覧船を降りた小川と池本は、祭りで賑わう街中を抜け、「くのや旅館」やってくる。

ごめんくださいと中に入ると、いらっしゃいませと笑顔の若い番領(相馬剛三)が出て来たので、いや、宮城県警の者ですが、女将さんか誰か…と小川部長刑事が言うと、女将さん!と番頭が奥に向かって呼び、はい?と言いながら女将(桧有子)が出てくる。

警察のもんですがと池本刑事が手帳を出して見せると、はい、何か?と戸惑いながら女将は玄関先にしゃがみ込む。

いや、実はな、この客一昨日お宅に泊まったんじゃねえかと思われるので一つ…と言いながら、ガイシャの写真を小川が見せると、あら?この人8日の晩に…、あんた知っとるがな~?と言って、女将は番頭に写真を見せると、このアベックさんなら、私が先輩の番頭さんとうちにご案内したんですと若い番頭は答える。

どっからだべ?と池本刑事が聞くと、本塩釜の駅からです、このおなごの人が乗り越しの清算したもんで…と番頭はいう。

先輩が、ああ言う客は大方宿が決まってねえから、そこから客引きの目のつけどころだなんてね~と番頭は嬉しそうに話す。

なるほど、で、その男の人相なんかわかんねすか?と小川部長刑事が聞くと、さあ、色の黒い人だったども…と若い番頭は言うので、他の番頭さんは?と聞くと、ええ、それが昨日辞めまして…と女将は答える。

辞めた?ならその代わりの女中さん呼んでもらえねえべか?と池本刑事が頼むと、へえ、それも昨日…とお上が言うので、辞めたんすか?と小川部長刑事は確認する。

ええ、実はな~、その女中、お客さんの物、時々これする癖がありまして…と、女将は指を鍵形に真似、盗み癖を匂わせ、昨夜もお客さんの指輪取って、番頭と二人で駆け落ちつすまったんですとお上が打ち明けたので、駆け落ち!と池本刑事は驚く。

仕方ねえな~と嘆いた小川部長刑事が、ほんで、その男は何時の電車で降りたんですか?と、電話に出るため一旦席を外していた番頭に聞くと、ええ、そんですな~、18時50分の下りだったんすなと番頭は答える。

18時50分の下りですか?と、続いて刑事たちが訪れた駅の駅員は、ああ、磐梯山6時だったすよ、ええ、あ、ちょっと待ってと言い、ああ、これでやんすとその切符を探し出して刑事たちに見せる。

上野駅から仙台行き、3等か…と二枚の切符を確認した池本刑事は、裏を返し、3935と3936の番号も見る。

捜査本部でその報告を受けた県警部長は、そうか、ほんだらガイシャは男と一緒に上野を発って、8日の午後7時頃「くのや」に着いた、そこで一泊して、翌る日、第七松島丸で松島海岸さ行き、9日の6時過ぎにグリーンホテルに着いたんだなと、黒板に貼られた手書きの地元地図を指しながら推測する。

海のガイドも駅員も、男は25~6の浅黒い顔と言ってますから間違いないでしょうと小川部長刑事も付け加える。

このホテルではっきり人相取ってれば助かったんだけどなと県警部長は悔しがる。

囮の線から何か手掛かりは?と池本刑事が聞くと、それがな、塵紙も小売の店は一件見つかったけども、売った覚えはねえと言っとるしな…と県警部長は言い、現場の指紋も前科照合をしたところ、該当するものがないんだとも付け加える。

「新新堂」の靴べらと、それからほれ赤城洋品店のハンカチの線は?と小川部長刑事が聞くと、早朝警視庁の方でブツは見つかったと回答はよこしてくれた、それから石鹸箱の南海荘ってのはな、千葉県の白浜にあることもわかったと県警部長は教える。

千葉県ですか…、ほんだらばつまりガイシャは東京近辺の人間ということに…と小川部長刑事は落胆する。

うんだ、で、県警本部の刑事部長の達しでな、捜査は東京警視庁にお願いすることにして、こっちからは君たち二人を出張してもらうことに決めたと県警部長は言い出す。

あの~、私も東京さ、出張ですか?と池本刑事が確認するので、嫌か?と県警部長が聞くと、いやいやと池本は苦笑する。

ほんだば、東京さんに負けんよう頑張りますと小川部長刑事は頭を下げ、他の刑事からしっかりなと励まされる。

ほな早速準備してと県警部長は二人を急かすので、はあと二人は返事するが、立ち上がった小川部長刑事は、ああ、それから「くのや」の駆け落ちした番頭と女中の手配を一つ…と県警部長に頼むので、良し、やっとく、どうやらホシの面を一番取っとるのがあの二人らしいからなと県警部長は答える。

東京警視庁には詳しく電話入れとくからなと県警部長は付け加え、長引くかもしれんが二人とも体気をつけてしっかりなと励ますので、はっ、行ってきますと二人は頭を下げる。

本部の外からは絶えず祭りを知らせる花火の音が響いていた。

翌日、警視庁にやってきた池本刑事は、「松島グリーンホテル殺人事件応援捜査本部」の張り紙がかかった二階の部屋に入る。

宮城県警から参りました池本ですが?と挨拶すると、これはこれは、旅行でお疲れでしょう?と主任警部(神田隆)が労う。

はあ、汽車で酒ばちょっと飲んできたのですと池本が打ち明けると、主任は笑い出し、長田部長刑事(堀雄二)が、どうぞどうぞと椅子を勧める。

お一人ですか?と主任が聞くと、はあ、小川探偵長は別の列車で白浜に直行しまして、夕方にはここへ来ると思いますが、よろしく…と池本が説明して名刺を差し出す。

だったらうちからも応援を出すんでしたがな~と主任は名刺を受け取りながら言う。

探偵長というと?と中川刑事(千葉真一)が聞くと、デカ長の事だ、部長刑事を地方によってはそう呼ぶところがあるんだと隣に座っていた林刑事(花澤徳衛)が教える。

長田にも名刺を見せた主任は、では一応うちの連中も紹介しときますかな?と言うので、池本がお願いしますと答えて起立すると、まず長田部長刑事、渡辺刑事(須藤健)、高津刑事(佐原広二)、金子刑事(山本麟一)、林刑事と中川刑事だと紹介したので、それぞれよろしくと言いながら会釈してくる。

その頃、一人で白浜を歩いていた小川部長刑事は、「千葉県 千倉警察署 白浜町白浜巡査派出所」にやってくる。

ごめんください、こんにちは!と声をかけると、はいと背後から声が聞こえ、自転車を押した巡査(滝島孝二)が戻ってきたので、お暑うございます、宮城県警の小川ですと小川部長刑事は挨拶する。

あ、こりゃどうも、迎えに行くべと思ったけど、母ちゃんがちっと買ってきてというもんでねと言いながら巡査は買い物してきた野菜を見せる。

ほお?と買い物籠を小川が除くと、一つ如何ですと勧めてきたで、いや…と小川は遠慮するが、出てきた巡査の妻(小甲登枝恵)が、あら、いらっしゃいと笑顔で出迎えたので、どうもと小川も頭を下げる。

本部では、池本から渡された切符を見ながら、上野で買ったんですね、8日の日に…と主任が確認していた。

はあと池本が答えると、じゃあ渡辺君と金子君、一つこれで上野駅を当たってくれないか、星の特徴でも何か掴めれば拾い物だからなと言って主任は切符を手渡す。

それからですね、「新新堂」の靴べらと赤城洋品店んハンカチの方はどうなんでしょう?と池本が聞くので、その2つはちょっと無理ですな、靴べらは約5万、ハンカチは30万もばら撒いているんだと長田部長刑事が答える。

いやはや、東京ってのはすごいもんですな~、30万というと仙台の人口と同じくらいですと池本は驚いたので、刑事たちは笑い出し、世はまさにPR時代という事ですなと林刑事も口を挟む。

いやあ、全く東京は暑いですな~と池本が軽口を叩いたので、上着を取んなさいよと林刑事が勧め、暑いですな~と言いながら池本は上着を脱ぎ、窓から見える東京の道路状況を見る。

一方、白浜の派出所に来ていた小川部長刑事は、巡査にタバコの火をつけてやっていた。

ほんなら、南海荘の親父さんと言うのは、選挙違反で捕まったことがあるんすな?と小川が聞くと、そうです、選挙のたんびに問題起こしてるんですよ、この街のボスでねと巡査は教える。

私はただ命令で調べただけなのに、この私を目の敵にしてるんですよと巡査は教える。

ほお、じゃあ、この石鹸箱調べるのも手間取るかもしれませんなと小川は案ずる。

ああ、ともかく相手が…、まあ行ってみますか?と巡査が言うので、小川も同意するが、出かけっかい?と飲み物を持ってきた妻が聞くので、ああ、南海荘だと巡査が言うんで、まあ一杯どうです?と妻は飲み物を勧めるが、後で一つ…と小川は礼を言う。

すぐ帰ってくるからよと巡査は言い、妻は熱いところ大変ですね~と声をかけてくる。

その後、自転車を押す巡査と小川部長刑事は、炎天下の中、海水浴客たちとすれ違いながら目的地に向かう。

あ、あれですよと巡査が一軒の旅館を指差す。

ちょうど門のところには「甲子園大会 東関東代表選抜決勝戦 白浜高校野球壮行会会場」の立て看板がかかっており、入り口からユニフォームを着た高校生たちが出てきていた。

そんな球児たちに、ええか、よう覚えとけ、相手のピッチャーは外角への速球がウィニングショットだからな、ええか?今日負けたら聞かねえぞ、その代わり勝ったら甲子園は一流の旅館に泊まらせてやる、ええな!と檄を飛ばしていたのが南海荘の主人(永田靖)のようだった。

出発する生徒たちに、よお、勝ってこうよと主人は呼びかける。

そこにやって来た巡査が、あの~、お暑うございますと低姿勢で挨拶すると、わしゃまだ、衆議院が解散になった話は聞かんがねと主人は嫌味を言って来たので、いや、会長、今日の要件はですね…と巡査がばにつ名しようとするが、フンと言い捨てて、旅館の中に入り込む。

勘定場に入った主人を追って来た巡査は、あの~、こちらは宮城県警の小川部長刑事さんですと紹介する。

お邪魔します、突然で失礼ですけんど、お宅にこんな客が泊まったんでねえかと思われるんで…と言いながら、小川が写真を差し出すと、ああ、俺はいちいち客の面まで覚えているわけじゃねえからなと主人はけんもほろろに言うだけだった。

そうですか、なら、こっちの方を一つ…とと言いながら、小川部長刑事が石鹸箱を取り出し、お宅で作ったものんに間違いないですな?と確認すると、ああと言いながら巡査を睨んだので、いつ頃作られたんでしょうか?と小川は聞くと、この春だ、開局記念になと主人は答える。

そん時、なんぼくらい?と小川が聞くと、主人は100と即答する。

あのお、配った先はわからないでしょうか?と小川が聞くと、さあな、その辺にだってまだ半分くらい残っているいるべと言うだけ。

お手数かけて申し訳ありませんが、その配った先を詳しく調べていただけないでしょうか?と小川は頼み込む。

ええ?と主人が露骨に迷惑そうな顔をして来たんで、いや’、実は松島で殺人事件が起こりまして、これが重要な手がありになるもんで、何とか一つ割り出さなくちゃいけないとおなんで負いまして…と小川は事情を打ち明ける。

そうだな~、石鹸箱は上等の団体客だけにやっているから…と言いながら、主人は帳簿を調べ始める。

その頃、警視庁の捜査本部では、探偵長から連絡ありません?と林刑事が聞き、ああ…、上野駅の方もあまり宛に並んだろうとと主任が答えていた。

ああ、田舎と違って…と林刑事が同意すると、せめて白浜の方でガイシャの身元でもわかってくれたらねと主任は言い、池本さん、食堂でも行きましょうか?と誘う。

その時、ちょうど渡辺刑事たちが戻って来たので、おう、どうだった?と聞くと、いやあ出札係がガイシャの人相に覚えがないそうですと渡辺刑事は答える。

それがですね、18時50分に塩釜に着く列車と接続する列車を調べてもらって、その常務車掌にも会ってもらったんですが…と金子刑事が続けると、そいつもダメだったんだな?と高津刑事が先に言い当てる。

やっぱりね…と長田部長刑事が言い、残念だが切符の件はひとまずこれで打ち切りだと主任は判断する。

その時電話がかかって来たので、はい、捜査本部と中川刑事が受話器を取ると、池本さんと言って受話器を差し出す。

おっと言って受け取った池本が電話に出ると、もしもし、ああ探偵長ですか?どうでしたか?ああ、ほお…、じゃあ例の石鹸箱は100つくられて、そのうち54個が今も残っている、うん、後は24個と13個と7個と言う具合に3箇所に配った?と池本が、中川が出した紙にメモをとりながら応対するので、近くの刑事たちも同じように手帳に書き込む。

しかし探偵長、これだば、残った54個と足して98個しかねえでねえっすかと池本が聞くと、うんだ、2個足りねえけんどな、それは紛失したらしいって話なんだ、どうも気むづかしい旦那さんでな~と小川部長刑事は電話で伝える。

へえ、そうっすか、それはどうもご苦労さんでしたなと池本は電話口で労い、ほんなら私はこっちで待ってますからと答え電話を切る。

池本から受け取った主任のメモを横から見た林刑事は、ああ、みんな東京の団体客がもらってるんだねと察する。

よし、じゃあこの三つの団体を手分けしてあたってみてくれと主任は指示する。

長田君と中川君はこの岩田電機と言うので、24名ですね?と中川が確認し、永田部長刑事が行こうと言う。

渡辺君と金子君は野球場の7名、林君は池本君と組んで東京ゴム加工の13名だと主任は言い渡し、指示された刑事たちは全員部屋を後にし、残った高津刑事が行ってらっしゃいといて送り出す。

見送った高津が、主任、僕はまた留守番ですか?と不満そうに聞くと、私もだよと主任が笑いかけて来たので、高津は頭を掻いて恥ずかしがる。

岩田電機では、どうもお待たせしましたと言い、石鹸をもらった社員たちが建物の外に出てくる。

早速ですが、あなた方は白浜に出かけられましたね?と中川刑事が確認する。

その時泊まった南海荘で小さな石鹸箱をもらったと思うんですが?皆様まだお持ちですか?と聞くと、どうかな?と一人が仲間たちに確認し、確か全部で24名で行かれたはずなんですが?と長田部長刑事が捕捉し、調べてもらえますか?と中川が頼む。

良し、じゃあみんな集めましょうか?その方が早いからと社員の一人が提案したので、お願いしますと長田は礼を言う。

一方、東京ゴム加工に出向いた林刑事は、で、なくした2つってのはどこで落としたの?と女皇たちに聞いていた。

さあ、私、針箱の代わりで使っていたんですけどと作業中の一人(佐藤淑子)が答える。

隣の女性(川村裕子)は、私は工場内よ、でも蓋が壊れちゃっていたからと述べる。

ああそう…、ところでね、この13人の内の3人の人は?と林が聞くと、徐行員たちはくすくす笑いをしてある女性の方に目を向ける。

ああ、生理休暇中ですか?と池本がその3人に近づき聞いたので、ううん、辞めちゃったのよと1人が教える。

ああ、お嫁さんだなと林刑事が推測すると、違うんです、この工場小さいでしょう?だから私たち、代わる代わる社長さん家でお風呂もらうんだけど、壁の穴から覗いちゃうのと1人が打ち明ける。

え?あの社長さんが?と林刑事が驚き呆れ、その社長が自宅から出て来て別の方へ向かったので、何とねえ、その3人は辞めちゃったわけ?と女性たちに確認する。

女性たちが頷くと、で、その壁の穴はどうなったんすか?と池本刑事が聞くと、私たちで塞いじゃったわと一人が教えたので、で、その覗かれた3人の人の住所はわからないかな?と林刑事が聞来ながら、製品のゴムパットを触り始めたので、女性たちは含み笑いし始め、林さん!と池本が注意したので、あ、これは偽おっぱいか!と林は気づく。

女性工員たちは全員笑い出す。

ナイトゲームで満員の野球場

渡辺刑事と金子刑事は、場内のビール売りたちを通路に集めていた。

どうです?皆さん、あの時の石鹸箱持ってます?と金子刑事が聞くと、売り子の一人(佐藤晟也)がお前どうした?と仲間に聞き、相手があるよと答えると、俺は妹にやっちまったなと答える。

妹に?その妹今家にいますか?と渡辺刑事が確認する。

今旅行中だけどと売り子が言うので、旅行?どこへ?と金子が聞くと、東北の松島からどこか向こうの方と答えたので、じゃあ、その妹さん、この人じゃありませんか?と渡辺刑事が手帳に挟んだ写真を取り出して見せる。

とんでもねえ、俺の妹はまだ中学3年ですよと売り子は答える。

ああそうですかと渡辺刑事が苦笑した時、ちょうどバッターボックスには王選手が登場して大声援が起きたので、ついそっちの方に目がいってしまう。

すごい人気ですね?と金子刑事が言うと、捜査、おうっていって、少年たちには英雄みたいなものだからな、ねえと渡辺刑事は売り子たちに同意を求める。

次の瞬間、王選手は大きな当たりを打ったんで、観客席は総立ちになる。

捜査本部に帰って主任に渡辺掲示が報告すると、今日は良かったよ、野球さなどと林刑事が話しかけてくる中、小川部長刑事が到着したので、池本が嬉しそうに出迎え、うちの探偵長ですと他の刑事たちに紹介する。

ああ、小川です、どうぞよろしくと部長刑事が頭を下げると、主任です、疲れたでしょう、まあまあといって椅子を勧める。

早速ですが、石鹸箱の方は…と小川部長が聞くので、ああ、13個のゴム会社と7個の野球場を聞き込みに行った連中はみんな帰って来とるんですが、その合計20個をもらった中の人にはガイシャもおらんし、心当たりもないそうですよと主任が答える。

そうですか…と小川が落胆すると、もっともその20個の内1個は紛失でまだ確認してないんですがねと林刑事が報告する。

まさか、その紛失した1個をガイシャが拾って持っていたなんつうことはないと思うんですが、探偵長と池本が言うと、俺もそうだが、駄菓子菓子…と小川が言い返していた時、長田部長刑事と中川刑事が帰ってくる。

ああ、ご苦労さん、どうだった?と主任が聞くと、全員被害者に当たりませんでしたと長田が報告する。

と言うと24個全部確認できたと言うわけか?と主任が聞くと、はあと中川が答える。

そうか…、すると林君たちが当たった内の紛失した1個と言うのが現場の遺留品ということか…と主任は呟く。

岩田電機の24人のアリバイは?と高津刑事が聞くと、うん、それがみんな、犯行当時のアリバイがあるんだよと長田が答えたので、そうですか…と高津は納得しながらも、するとあの石鹸箱をもらった44人の中に容疑者がいるってことは全く考えられないわけですねと確認する。

うんと主任が頷くと、主任さん、例の南海荘でなくなっちまってるかもしれんという2個なんですがね、どうもそれが…と小川部長刑事が発言したので、臭いというんだね?と林刑事が口を挟む。

ええ、いつ頃どういう風になくなっちまったのか、その辺を聞き出そうとしたんですが、野球の週刊誌かなんか見ちまって…とあきれたように小川が言うので、野球?と主任が聞き返す。

ええ、取り合ってもらえなかったんです、野球気狂いらしいっすな…と小川部長刑事は打ち明け、まあ、場合によっちゃ、もう一度出直そうと思ってたんですと言う。

その時、主任、そのおっさん自分に任せてもらえませんかと渡辺刑事が言い出す。

うん?と主任が不思議がると、早速明日でも出かけて来ましょうと渡辺刑事が熱心なので、そうかいと主任が答えると、まあ、やれるだけやってみますと渡辺刑事が請け負う。

ほんならば、明日もう一度と小川部長刑事も応じたので、ご苦労ですがと主任は依頼する。

いやあ、これは私の方の事件なんですよと小川刑事は照れ笑いする。

じゃあ、お近づきの印に、顔の揃ったところで行くか?と主任は酒を飲む手真似をしながら言うと、刑事たちは一斉に立ち上がり、冷えてますよと言いながら用意してあったビールとコップを部屋に持ってくる。

翌日千葉行きの列車の中で渡辺刑事は、「巨人逆転で権藤を攻略」「王痛烈な同点打」などと書かれた報知新聞を読んでいた。

向いに座った小川は、それに気づいて、渡辺さんはこの巨人軍、ジャイアンツ贔屓ですか?と聞くが、とんでもない、昨夜勝ちやがったんでね、むしゃくしゃしてるんでよ、自分はね理屈抜きで巨人嫌いでねと渡辺は答えるが、隣の女性客は笑っていた。

南海荘に案内して来た小川部長刑事は、あそこですわと指差す。

門から入る際、渡辺がゴソゴソポケットに何か入れているいるので、何してるんですか?と小川は不思議がるが、渡辺はいやいや…とごまかす。

どうぞと女中(滝千江子)に案内され小川と渡辺が入ってきたのを見た主人は、また来たのかいと迷惑そうに顔を顰める。

小川部長刑事はどうも…と低姿勢で、渡辺刑事はお邪魔しますと言いながら横に座る。

今日はひょっとこ忠兵衛は来ないのかね?と主人が駐在のことを言うので、ええ、今日は東京の警視庁から自分が応援で…と渡辺刑事が説明する。

東京から?と主人が驚くと、ああ言う人混みから揺られてくると、白浜は良いところですな~やっぱりと渡辺はお愛想を言う。

そんな渡辺のスーツのポケットに報知新聞が入っていることに気づいた主人は、まあねえと言いながらも、これ、今朝のかね?と渡辺刑事のポケットから覗いていた新聞のことを聞いてくる。

ええ、昨夜のナイターがすっかり載っているやつですがねと言いながら、渡辺はスポーツ紙を差し出す。

取れどれと言いながら受け取った主人に、どうぞどうぞと勧める渡辺刑事。

「巨人逆転で権藤を攻略」か!と嬉しそうに主人が見出しを読み上げたので、ご主人は巨人ファンですか?と渡辺刑事が聞くと、あったりめえだよ、野球通なら誰だって…と主人は答える。

そうですか、自分も台の巨人ファンでしてねと渡辺が言い出したので、隣に座っていた小川部長刑事は呆気に取られる。

ほお?と主人は興味を惹かれたようで、ジャイアンツと聞きますとね、理屈抜きに好きなもんですから…と渡辺は、小川の目線を気にしながらも言うので、ほお、そうかい!と主人はすっかり渡辺のことを気に入ったようだった。

昨夜なんか、実に、胸の空くような勝ちっぷりでしたな!などと渡辺刑事のよいしょは止まらない。

良かった!と言いながら急に上機嫌になった主人は渡辺刑事と小川部長刑事にタバコを勧めてくると、おい、誰か!お茶を二つ!としよう人に声をかけたので、どうぞお構いなくと渡辺は遠慮しながらも、ところでね、ご主人、例の石鹸箱の件ですがね…と急に話題を変え他ので、主人は、ああ?と戸惑う。

昨日なくしたと言われた二個の行方、お分かりにならんですかな?と小川部長刑事がすかさず聞く。

ありゃね、俺の勘違いで、どうやら客にやったらしいよと主人は言い出す。

客にですか?と渡辺が確認すると、主人はうんと言う。

そこに女中が茶を運んできたので、うん、ぬいじゃなかったか?いつかアベックの客からチップを余計にもらったから記念の石鹸箱をやってくれっていたのは?と主人はその女中に聞く。

しかし女中は、いいやと否定したので、そうか…と主人は困惑し、それともお絹だったかな?と考える。

その女中さんいますか?と渡辺刑事が聞くと、それがね、田んぼが忙しいから…,ち主人が言うので、辞めたんですか?と小川が横から割って入る。

主人はうんと頷く。

本部では長田部長刑事が、石鹸箱どうなったかね?と案じていた。

アウトしてもらわないと、ツーランのツースリーというところですかなねと池本が野球に例えたので、長田は苦笑する。

そこに電話がかかってくる。

はいそうです、ちょっとお待ちくださいと答えた高津刑事が、塩竈の本部からですと言いながら、電話機ごと主任の前に持ってゆく。

ほおと立ち上がって、受話器を受け取り、主任ですが?と応答すると、どうもどうも、その後どんな具合ですか?と県警課長が聞いて来るが、返事を聞いて、ほお~、そうですか…と落胆する。

は、実はですな、例の「くのや旅館」ですな、その留守内でガイシャの男と泊まった…、ええそうです、その「くのや」から駆け落ちした女中と番頭なんですが、その後の足取りの捜査で、東京方面さ向かったってわかりましてな、それでまあ、一応ご連絡したわけですが…と県警課長は言う。

そうですか、そりゃどうも…わざわざ…、いえいえ、できるだけやってみますからと主任は礼を言って電話を切る。

すぐ直後にまた電話がかかったので、それを取った主任は、はいはい、おお渡辺君、どうかね?と聞くと、うん、そうか…、ああ、よろしく頼むよと言って切る。

主任、何か?と中川刑事が立ってくると、石鹸箱の件だがね、南海荘を辞めた女中が知ってるかもしれんっていうので、これから会いに行くそうだよと主任が答えると、へえと中川が驚き、ヒットになりますかな、こりゃ!と池本刑事も立ち上がる。

南海荘の元女中・きぬ(谷本小夜子)の家に来た渡辺刑事は、早速ですがね、南海荘でこの人見たことありませんか?と写真を差し出す。

竈門を焚いていたきぬは写真を見ても反応が鈍いので、見覚えがない?と渡辺が確認すると、ええと言う。

うんだらば、今年の5月頃、南海荘の開局記念の石鹸箱をアベックさんにあげたのはあなたですか?石鹸箱と小川部長刑事が質問する。

するとちょっと考えたきぬは、ああ、あげた、あげたと言うので、そうですか、ここに宿町を借りて来てるんですがね、アベックさんの名前思い出してもらいませんか?と渡辺刑事が頼む。

うわ~と自信なさげに首を傾げたきぬだったが、お客頭で思い出せるはずなんだがね、思い出してみようと渡辺刑事は煽てる。

宿帳を捲り始めた絹だったが、あ、この人たちだわととあるページで手を止める。

野村芳夫と妻:野村弓子と書かれてあった。

確かに間違いありませんか?と渡辺が確認すると、ええ、確かときぬは言うので、やっぱりこの人じゃないのかね?と写真を取り出すが、そう言われればそんな気もすっけど…ときぬは迷う。

ならばこの人ですか?と小川は写真の人物を確認するが、きぬは自信なさげに首を振るので、何かその時のことを思い出せない?と渡辺が指摘すると、あのお二人さん、ご夫婦でねえと思いますよときぬは言う。

ほお、そいつはまたどうして?と小川が聞くと、男の方がお風呂一緒に入ろうって言ったら、奥さん恥ずかしそうにして一緒に入りませんでしたからときぬは思い出す。

頬と渡辺が答えると、それになんとなく他のことでもわかるんですときぬは嬉しそうに笑顔で答えるので、なんとなくね~と渡辺がもう一つ浮かない表情で相槌を打つ。

渡辺さん、ほんだら、この住所を本部さ電話して一つ…と提案したので、そうですなと渡辺が答えた時、ただいまと母親が帰ってくる。

お帰りでがすと小川が挨拶する。

本部に電話が入り、はい、応援本部と主任が出ると、おお、渡辺君!うん、うん、するとその野村芳夫と妻の弓子と称して泊まった女に石鹸箱渡したと言ってるんだな?で、住所は、うん、うん、良し、分かった!と言って電話を切る。

手配写真の女かどうかは、女中には記憶にないそうだよと主任は目の前にいた林刑事に教えると、ああ、大勢の客ですからねと林は答える。

似てるようだと入ってるんだがねと長田部長刑事に主任は付け加える。

とにかくその野村というのに当たってみましょうと長田は言って立ち上がる。

君たち二人と、池本君と中川君と4人で出かけてもらおうと主任は指示する。

野村の家の側にあるガラス細工工場の横を通る時、林刑事は、どこも景気が良いんだね、残業だと言う。

野村芳夫って言うんはこの家ですか?と池本が聞くと、ともかく当たってみようと長田部長刑事が言う。

家の前に来ると、じゃあ僕と池本君で入るからと長田が言い出したので、そうですかと林啓司が答え、じゃあと中川と待機する。

玄関のガラス戸を開け、ごめんくださいと長田が声をかけると、はいと返事があり、男(山崎直衛)が出て来たので、ちょっと伺いますが、野村芳夫さんは?と聞くと、はあ、僕ですがと言うので、ああ、そうですかと答え、実はこういうもんですがといいながら、警察手帳を見せる。

奥さんいらっしゃいますか?と長田が聞くと、えっ?と野村が戸惑ったので、ああ、奥さんって、お袋のことですか?と言うので、いやあんたのですと池本が補足する。

ええ?僕はまだチョンガーですよと野村は苦笑しながら言うので、じゃあこの5月に白浜に一緒に旅行された弓子さんと言うのは?と長田が聞くと、ああ、あれはまだ婚約中の彼女なんですと野村は言う。

ああ、なるほど…と呟いた長田が、弓子さんと言うのはこの人ですか?と写真を見せると、この写真どうかしたんですか?と野村は聞いて来たので、実は殺されたんですと長田は明かす。

いつ?と野村が聞くと、10日の朝、松島で…と池本が教えると、ちょっと見せてくださいと野村は写真を受け取り、ひょっとしたら、これ弓子さんの姉さんじゃありませんかという。

姉さん?と長田が聞き返すと、ええ、二人はとても似てるんです、それに旅行してるって話だし…、そうだ、姉さんかもしれないなと野村は言う。

なら、その家分かってるな?と池本が聞くと、ええ、すぐ案内します、こりゃ大変なことになったなと言い、野村は奥に、おい姐や!俺ちょっと出かけてくるからな!と声をかけると、長田らと共に外に出る。

刑事たちと車に乗って、弓子の家に駆けつけた野村は、弓ちゃん、おばさん、大変ですよと玄関口で呼びかける。

由美子の父である常吉(殿山泰司)が焼酎で晩酌している中、母クニ(戸田春子)が、芳夫さん、どうしたんです?と聞くと、どう下もこうしたも、おじさん、おばさん、初江さんが殺されたらしいんだよと野村は教える。

国が玄関先に駆け寄る中、初江が?初江がどこでやられたんだい?と常吉がちゃぶ台の前に座ったまま聞いて来たので、松島のホテルでだと池本が教えると、あんたらは何だい?と常吉は怪しんで聞いてくる。

あ、突然ですが、こういうもんですと言いながら、長田が警察手帳を差し出すと、早速この写真を見ていただきましょうかと言いながら、写真をクニに見せる。

それを受け取ったクニは、まあ、お父ちゃん!初江だわ!と言いながら常吉に見せに行く。

写真を見るなり、どいつが初江をやりやがったんだい!と常吉が聞くので、今の所はまだ、松島のホテルに初江さんと一緒に泊まった若い男としか分かってないんですがねと林刑事が答える。

初江は店のお友達と一緒に旅行するって出かけたのに、男と一緒だったなんて!とクニは騙されたように言うと、だからお父ちゃん、私は早く嫁にやったらって言ったじゃないの!と常吉にくってかかる。

ばか言え!おめえが初江にはどうしても婿を取るんだと頑張るからよ、それで嫁に行きそびれてたんじゃねえか!と常吉は言い返す。

だって最初はお父ちゃんだって!とクニが言うので、なんでえ、こんな時に!と常吉は叱る。

そこに、ただいまと銭湯帰りらしいの弓子(宮園純子)が戻って来たので、野村は弓ちゃんと声をかける。

初江が殺されたんだよとクニが教えると、ええ!と驚いて固まる。

お家の方が心当たりあるんじゃないですか?と長田部長刑事が聞くと、刑事さん、そいつが分かってりゃ、あっしがふん捕まえてよ…と言いながら常吉が玄関口に近づいて来たので、しかし、一緒に旅行されているんですから…、勤め先かなんかで知り合った男とか…と長田が冷静に聞くと、勤め先ったってパチンコ屋だからねと常吉は教える。

他に知ってる男といやあ…と常吉がクニの方を見ると、この先の町会議員さんに二度ばかり見合の世話をしてもらったくらいで…と国も玄関口に来て言う。

頷いて聞いていた林刑事が、ところで初江さんが旅行に出られたのはいつでした?と聞くと、8日の朝でしたとクニが答える。

その時、何か変わったことありませんでした?と林が聞くと、うん、別に…とクニは言うが、そう言えば姉ちゃん、出かける前!と玄関先に立ちっぱなしだった弓子が言い出したので、何か?と長田が聞くと、ええ、5日の晩でしたけど、姉ちゃん40万円も貯金おろして持ってったんですと由美子は言う。

40万!と常吉が驚くと、初江はそんな大金持ってたのかね?と弓子に聞と、母ちゃん!と初江は恥ずかしそうに声を顰め、それでその40万どうするのって聞いたんです、そしたら姉ちゃん、将来の生活設計のためにって、とっても自信ありそうに言ってたわ、だから私、それ以上は聞かなかったの、でもねえやんがこんな目に遭うなんて…と弓子は野村に話しかけ、泣き出す。

そうですか…、ところであの小さな石鹸箱は、あなたがお姉さんにやったものかね?と林刑事が聞き、ほら、白浜でもらったろう?と野村も話しかける。

ああ、ええそうよ、姉さん、私と違って倹約して一生懸命お金を貯めていたからと由美子は言うと、可哀想な姉ちゃん…と言ってまた泣き出す。

弓ちゃん…と野村は慰める。

本部に戻った林刑事たちに、野村芳夫はホシじゃなかったんだってねと主任が聞く。

ええ、近所の懲戒議員という人に会って来ましたがね、その見合いの相手というのは2人とも素性の非常にはっきりした…、ええ、と林は報告したので、そうか…と主任は納得する。

長田さんは今この先のパチンコ屋の方に回りましたと林は付け加える。

腰を下ろした林に、隣に座っていた小川部長刑事がタバコを勧めると、いやあ、わしはこっちの方がと言いながら、林はキャラメルの箱を取り出す。

しかしなんですね、ガイシャも可哀想なもんですね~とキャラメルの包み紙を開きながら、林は主任に話しかける。

例の石鹸箱もそうだけど、靴でもハンドバッグでも、全部妹のお古に使うようにして金を貯めていたらしいですがね~と林が説明すると、妹は妹でまた、取っただけぱっぱっと使っちまうという腹だで、全く…と池本も説明する。

だから二人ともほとんど家に金を入れてなかったらしいんですがね、親たちだって娘たちを食いもんにしようとしているし…、まあ老後の心配というのもわからないことはないけども…、今時婿養子ったってね~と林は主任に話す。

しかもガイシャのヤサってのはちょっとしたスラムなんですよ、まあ、そんなこんなでガイシャも焦ったんでしょうね…と林は続ける。

1つの屋根さ住んでいるというだけで、まあてんでバラバラなんですね、あれじゃあ間違えも起こりますよと池本刑事も被害者の家庭事情を補足する。

閉店後の「ラッキーパチンコ」に長田部長刑事と共にやってきた中川刑事は、扉を叩き、こんばんわと声をかける。

何か?と店主(滝謙太郎)が出て来たので、夜分どうも、谷口初江さんのことについてちょっと伺いたいことがありますと長田が警察手帳を見せながら説明すると、ええ、まあどうぞと中に招かれる。

店内では釘師が、パチンコ台の釘を調整していた。

あの人は?と長田が聞くと、釘師ですよ、機械を調節すると店主が言うので、ほほおと長田は感心すると、で、ご用件というのは?と店主が聞く。

ええ、実は…と長田部長刑事は釘師の存在を気にして声を顰めると、谷口初江さんが殺されましてね…と打ち明けたので、え!と店主は驚く。

で、初江さんの男関係がわかったら思いまして…と長田が続けると、そうですか…、じゃあ女店員にも聞いて頂かんと…、狭い所ですが、どうぞと店主は答え、2階の住居部分へ案内する。

そこには布団が並べて敷かれ、下着姿の女店員たちがおしゃべりしていた。

どこのパチンコ屋でも、どうしても店の方に場所を取られますんでね…と、店主は長田に住居部分の狭さの言い訳をすると、静かにしないか、刑事さんだよ…と女店員たちに注意する。

ちょっとお邪魔しますと言いながら、長田と中川は寝室の中央部分に案内される。

店主もその場に座ると、お前たち、谷口初江の付き合っていた男を知ってるかいと聞く。

あの人、彼氏なんかいた?いなかったよ、真面目だから…、でも米本さん、モーションかけてたじゃない?などと女店員たちは話し出す。

その米本さんというのは?と長田が聞くと、米本っていうのは釘師でしてねと店主が説明したので、じゃあさっき下にいた?と中川が聞くと、いや、あれは真面目な男ですよと店主は言う。

って言うと、その米本と言う人は…と中川刑事が聞くと、ええ、あれはちょっと…、そうだ、今月の5日頃ですがね、店の売上金を持って逃げちまったんですよと店主は言うので、5日に?と長田部長刑事は確認する。

初江さんが貯金をおろしたのと同じ日ですねと中川が長田に語りかける。

まあ、どうせ流れ者の釘師なので、ロクな奴じゃなかろうと思ってたんですがねと店主は言う。

その男の写真ありますか?と長田が聞くと、誰か奴の写真持ってるか?と店主は女店員たちに声をかける。

持ってないわ、あの人撮ったことないもんなどと女店員たちは否定する。

そうですか、じゃあ何か特徴でも良いんですがねと扇子で仰ぎながら長田が聞くと、そうだな~と店主や女店員たちは考え出す。

年はいくつくらいですか?と長田が聞くと、自分じゃもう釘師で10年くらい飯を食ってるって言ってましたが、顔つきも腕前も、せいぜい25~6ってとこですかね~と店主は答える。

25~6、どんな顔してました?と中川が女店員たちに尋ねると、細面だけど…と一人が答えたので、色は白い方?それとも;と聞くと、黒いねと女店員たちは言う。

そう…、色が黒くて、細面で、25~6歳ですか…と長田部長刑事は復唱する。

他に何かありませんか?と中川が聞くと、他にったってね~と女店員たちはざわつくだけだったが、なんでも良いんですよと長田が助け舟を出すと、だったら、あの人とっても毛深いんですけどと答え、急に女店員たちがざわめき出す。

そうそう長嶋!長嶋の方がずっと似合ってるよ、気安く言わないで!ねえ刑事さん?などと女店員たちは冗談を言いながら、中川刑事の気を引こうとする。

名前は詳しく分かりますか?と長田が店主に聞くと、さあ、分かりませんえ~、それにあの連中には偽名を使っているのもいますからね~、米本ってのも本当かどうか…と店主は答える。

そうですか…と長田部長刑事は落胆するが、一応特徴と米本某で手配してみたらどうでしょう?と提案すると、そうだね、売上金持ち逃げの容疑で…と答える。

松島グリーンホテル殺人事件重要参考人の手配書が刷り上がる。

捜査本部では、この手配書でどっかのパチンコ屋から返事があるとうまいんだがね~と刷り上がった手配書を見た主任が言う。

しかしこりゃちょっと…、もう少し特徴がわかれば別でしょうがね~と池本刑事は不満そうに意見を言うので、うん、そうだな…と長田部長刑事も認める。

そこに戻ってきた高津刑事が、主任、一応、米本って苗字だけで前科を洗ってみたんですが、該当するものはおりませんでしたと報告する。

そうか…、売り上げを持ち逃げするような奴が本名使うはずもないからな~と主任はわかっていたように答える。

まあそうですねと林刑事も答えるが、その時、本部に訪れた常吉に気づいた中川刑事が、あ、ガイシャのお父さんですと主任に紹介する。

主任は、ささ、どうぞと手招く。

主任の前に来た常吉は、あの~、実は今朝、初江の死亡届を出しに区役所に行ったんだ、そしたらこの5日に初江の籍は抜いてあるって言われたんですが?と言うので、戸籍が?と主任は驚く。

ええ、わしにはさっぱり訳がわからないもんですから…と常吉が言うので、うん、抜いたからにはどっかに入れてあるんでしょうか?と主任が聞くと、ええ、役所じゃここだと書いてくれたんだと言いながら、常吉はワイシャツの胸ポケットから紙を取り出す。

名古屋区水野区石川町1の4…、原山二郎…と主任は受け取ったメモかきを読み上げる。

もちろん、この男に心当たりはないんですな?と横で聞いていた小川部長刑事が聞くと、うん、名前を聞いたことも…と常吉は頷く。

5日といえば、米本がずらかった日ですねと中川刑事が隣の林刑事に話しかける。

うん、ガイシャも40万円貯金を下ろしていたなと林刑事も不審がる。

わかりました、早速調べて後返事しましょうと主任が言うと、よろしくお願いします、でないと初江も浮かばれませんから、よろしくお願いしますと常吉は刑事たちにも頭を下げて帰ってゆく。

小川部長刑事は、常吉を見送った後、主任さん、ホシはガイシャに40万円出させて入籍した後、松島さ連れて行ってやっちまったんじゃないでしょうかね?と意見を言う。

しかし探偵長、ほんだら、ホシはまるで警察官に名刺配って歩いてるようなもんじゃねえですか?と池本刑事が指摘する。

いやしかし、逆手を考えればそこが犯人の付け目で、もしアリバイさえ作っとけばかえって容疑を逃れられると…こう、ホシは考えたんじゃないですかね~と金子刑事が異論を述べる。

まあそう言う考え方もあるな…と林刑事が答える。

良し、とにかくこの原山二郎という男を洗うことにして…と、金子君、君は名古屋出身だったね?それに宮城県警に敬意を表して探偵長、早速二人で名古屋に飛んでもらいましょうか?今の段階では有力な線だからねと主任は指示する。

早速名古屋に飛んだ小川部長刑事と金子刑事は、地元署の刑事部屋にやってくると、よお!と挨拶してきた刑事がいたので、やっと亀だな~、元気け?と金子が親しげに挨拶する。

おかげだ、お前もちょっとも変わらんなと地元署の高山刑事(中山昭二)は嬉しそうに答える。

おミャアも俺も相変わらず平刑事かと金子が皮肉ると、こいつ!と高山刑事は苦笑する。

あ、紹介しとこう、探偵長、こいつは僕と中学が一緒の高山刑事ですと、金子刑事は二人を紹介する。

んだすか、宮城県警の小川ですと小川部長刑事が紹介すると、あ、こちらこそ、さあ、どうぞと高山啓司も会釈して席を勧めると、おい、お茶!と奥に呼びかける。

椅子に座った高山は、実はな、金子、電話があった例の原山二郎な、あいつの戸籍調べてみたら、確かに今月の6日、谷口初江29歳を入籍しとるんだと手帳を見ながら教える。

ほんで、現住所には本人は住んでらっしゃらない、その番地の面を聞き込んでみますとね、原山は中学を卒業するとすぐに紡績工場の臨時工になったらしいんですと小川に伝える。

んだすかと小川が答えると、そこを30年の秋に辞めてパチンコ工場に行ったんやと高山は続ける。

ほうか…、で、そのパチンコ工場というのは分からんか?と金子刑事が聞くと、分からんじゃいこまいけ、ちょこちょこ探ってようようわかったにゃ、すぐに行こまいか?と高山は答える。

どこや?と金子が聞くと、平和公園の先やと高山は言って、女性警察官が持ってきた麦茶を飲む。

ほうか…と答えた金子も麦茶を飲む。

車で移動中、巨大な墓が立ち並んだ道を通しすぎたので、驚きましたな~と小川が言うと、ここが平和公園ですのや、戦前被害にあった墓穴を新しい都市計画で全部ここへ疎開させたのですと高山が教えると、へえたまげましたな~と小川は感心する。

助手席に乗っていた金子は、高山、お前も死んだらここへ入れてもらうんだな、まあこれだけ揃ってれば寂しゅうなくてええわななどと冗談を言ってくる。

すると高山は、わしはここに入るからよ、ちょっとは交通費でももろうて夜晩霊場の交通整理でもやるかの?と冗談を言ったので、小川と一緒に大笑いする。

パチンコ工場に来ると、わし、青田(小林寛)だがよと職人の一人が職場から出てくる。

高山は警察手帳を見せながら、ちょっと来てくれないかと言って場所を変える。

わし、近頃何にもやっとらへんでと青田は先に言う。

いや、局長さんの話だと、君、原山次郎と仲良うしとったがいや?と高山は尋問する。

うんと青山が頷くと、原山さんは紡績会社から今まっずっと一緒だったのかい?と金子刑事が聞くと、あいつはわしより半年ぐらい後から入ってきたんやわ、あれもなあ、わしと同じで片親だわと青山は言う。

こんなもんでよお、努めるとなると、臨時工とかこんなもんくらいしか入れてもらえんのだわ、ふん、本当にたわくらしいわさと青山は打ち明ける。

ほんで原山は、何でここ辞めたんや?と高山が聞くと、あれはよお、生まれつき手先が器用だから、それでよう、ここにいた俺の知り合いが3~4年前に連れて行ったんだ、釘技に仕立ててやる言うてよと青山は言う。

原山は釘師に?ほんで、本当に釘師になったんですか?と小川部長刑事が確認すると、ウンと青山は頷く。

ふ~ん、ほんで原山の家はどこだ?分からんかい?と金子刑事が聞くと、さあ?家なんかありゃせんわ、どこも…と青山が言うので、しかしおめえ、おっ母ちゃんか誰か…と小川が聞くと、おらへんわと青山は吐き捨てる。

死んだのか?と高山が聞くと、いやちゃんと生きとったんだがや、本でよ、あれが中学卒業した時によ、男作ってどっか行っちまったんだがや、妹だけ連れてよ…と青山は言うので、生き別れか…と小川部長刑事は呟き、ほんだらおめえ、原山が名古屋で一番行きそうな場所分かんねえかな?と聞く。

さあ、行きゃ、妹ん所だけがさと青山は教えたので、妹?それはまたどこにいるんだ?と小川は追求する。

「ドラゴン」辺りにいるんと違うきゃ?と青山が言うので、「ドラゴン」?ナイトクラブのけ?と高山刑事が聞くと、ストリップだがやと呆れたように青山は答える。

その後、高山、金子、小川の三人は「ドラゴン」と言うストリップ小屋の舞台横から、踊っている踊り子の様子を伺う。

小川は、名古屋の方はどぎついですねと感心するので、うっかりしとると全ストもやりますからなと高山が教える。

全ストというと、…ですか?と小川は信じられないように聞き返す。

ええ、それとコールガールが盛んになってきたのも、全くそのへんは敵いませんと高山は打ち明ける。

照明が落ち、踊り子が舞台袖に引っ込んで楽屋に戻ろうとしたので、あんたが原山二郎の妹さんけ?と小川部長刑事が聞くと、階段を降りかけた踊子で原山の妹・ユカ(高山美代子)はええ、そうですがなもと答え、そのまま楽屋に向かおうとしたので、ああ、ちょっとと呼び止め、あんたの所に近頃来ましたか?と聞くと、ええ、今月の…、ああ6日だったやも、何でやも?と踊り子は不思議がる。

東京の本部では店屋物で夕食中だったが、イヤホンで野球中継を聴いていた渡辺刑事が、打った、打った!大東!と急に喜ぶ。

長田部長刑事らは笑いだし、主任は仕方なさそうに部屋のラジオのスイッチを入れ野球中継が流れ出したので、そろそろ名古屋から定時の連絡がありそうだがな~と呟く。

その時電話が鳴ったので、来たなと言いながら長田が受話器を取る。

はい本部!あ、金子君か、ちょっと待って主任に受話器を渡す。

もしも~し、あ、主任さんですか?あのですね、前に原山が勤めていたパチンコ工場でですね、人相写真ができたので、さっき電送写真で送りましたが?届きましたか?と金子が言うので、いやまだだよと主任は答え、うん、で、どうだい?原山の線は?と聞く。

そこに池本刑事と林刑事が帰ってきたので、どうでした?と渡辺刑事が聞くと、いや~、全然でしたよと池本が悔しそうに答える。

今日聴き込んだ範囲では、米本という釘師は手もありませんなと林刑事が答える。

そうですか、自分たちの方もさっぱりなんですよと渡辺刑事も報告したので、そうと林は答える。

林たちは、主任が電話で、すると探偵長が聞き込んだ妹は、原山は6日の夜訪ねてきて、またしばらく旅に出ると言って立ち去ったんだな?と話していることに気づき近づいてくる。

さらに、名古屋から電信ですと長田部長刑事に電装写真が届いたので、もしもし、今届いたよ!と主任はその写真を受け取り電話相手の金子に知らせる。

届きましたか?はあ、はあ、僕たちは明日、また原山の足を折ってみようと思いますが?ええ、2箇所ばかり見当をつけたんですと金子が電話している背後で、小川部長刑事と高山刑事が名古屋警察の捜査部屋で出されたスイカを食べてた。

はい、はい、はい、じゃあと言って電話を切った金子刑事は、例の米本という釘師と原山が同一人物かどうか、ラッキーパチンコホルに確かめに行くと言ってますがと小川部長刑事に伝えながら、自分は足の水虫に薬をつける。

良いですからと小川が答えると、それと宮城県警の方にも送って、ホシを見た人に面通しするそうですと金子は続ける。

原山二郎イコール米本イコール犯人といきゃ良いけどなと高山が言うと、そうすな~と小川も金子も頷く。

あ、こいつですよ!こいつが米本という釘師に間違いありませんと伝送された原山の写真を見たラッキーパチンコの店主は、持参した中川刑事に即答する。

本部では、そうか、だんだんホシ臭くなってくるな、こいつは…と、戻ってきた中川からの報告を聞いた主任が言い、良し、高津君、この人相で、もう一度米本と原山二郎の本名を使って手配してくれんかと指示する。

その直後電話がかかってきて、はい、本部!と主任が出ると、は?はあ、じゃあすぐ刑事をやりましょうと答え電話を切ると、蒲田の交番から手配の特徴に似た米本らしい釘師が近くのパチンコ屋に来てると言って来たんだけどね、皆で頼む、池本くんも応援してと指示を出し、刑事たちは一斉に出かけてゆく。

残った高津刑事は、主任、また留守番ですか?と聞くので、主任はニコニコ笑うだけだった。

蒲田駅にやってきた刑事たちは、そこで待っていた警官に招かれ、問題のパチンコ屋に向かう。

この店ですと警官が指差すパチンコ屋の中を除くと、客が帰った後の店内で、女店員たちが清掃をやっており、その一隅に原山二郎(潮健児)が腰掛けていた。

写真で確認した長田部長刑事は、私は中に入るからと林刑事らに伝え、林刑事は渡辺や池本刑事らに、じゃあ固めよう、池本さんもあっちをと打ち合わせる。

長田が入口をノックすると、下着姿の女店員が扉を開け、何?と聞いてきたので、警察手帳を見せた長田は中に入る。

原山二郎さんだね?ちょっと警視庁まで来てもらおうかと長田が声をかけると、原口はすぐさま裏口から逃げ出したので、待ち構えていた渡辺刑事や中川刑事、そして池本刑事も加勢して、身柄を確保する。

本部に連れてこられた原山に、原山!なんとか言ったらどうだいと主任が尋問する。

お前が蒲田のあのパチンコ屋に入ったのは、12日の日からってはっきりしてるんだぜ?と主任は続ける。

しかもお前が6日の日名古屋で妹に夕方に会ってる、その6日から12日万までの間、どこで何してたんだ?と主任は追及する。

言えないのか?じゃあ言ってやろう、お前は8日の日に上野を発って、塩釜に泊まり、9日に松島で泊まったと指摘すると、ええ?と原山はとぼけたので、お前は谷口初江を殺したろう?と主任は指摘する。

しかし原山は、初江を?と驚いたようだったので、とぼけるんじゃない!と主任が叱ると、俺が初絵を殺したなんて、そんな…と原山は否定する。

じゃあ7、8、9、10、11の5日間、どこで何してたって言うんだ!と主任は声を荒げる。

どこって、清水にいましたよと原山は答える。

清水?清水のどこだ?と主任が聞くと、パチンコ屋ですよ、清水銀座の「次郎長」って…と原山が言うので、次郎長?と主任は吹き出したので、本当ですよ!本当に…と原山は言うので、じゃあさっきなんで逃げたんだ?と長田が聞くと、実はその店でこれのことで喧嘩になって、仲間を刺しちまったもんで、それでパクられたと思ったんですよ…と原山は打ち明ける。

しこまいか?高津くん、すぐに問い合わせて裏取ってくれと主任は声をかける。

高津刑事はすぐに電話の受話器を取り上げると、静岡県のね、清水警察捜査課、大至急!と連絡先を言う。

嘘か本当か、すぐわかるからなと主任が告げると、原山は頷く。

しかしあんたは谷口初江と5日頃結婚したんだろう?と長田部長刑事が念を押すと、いいえと原口は否定する。

だって君は6日頃、名古屋で初江を入籍してるじゃないか?と林刑事が指摘すると、ええと言うと、入籍した以上結婚したんじゃないか?と渡辺刑事が横から聞く。

違うよ、実は俺、あの店に初めて入った時から初絵に惚れちまったんだよ、それで結婚してくれって言ったんだけどよ、初江の方にはもう別の男がいたらしくて…と原山が言い出したので、別にいた?と林が聞き返すと、ええと言うので、そいつの名前は?と長田が聞くと、川崎一郎ってんですよと原口は言う。

初江さんがそう言ったのか?と長田が聞くと、いやあ、いつか癪に触ったんで、初江のハンドバッグの中覗いてやったんだよ、そしたら病院の請求書にそう書いてあったんですよと原口は答える。

はあ?病院の請求書?と池本刑事が聞くと、ええ、なんでも交通事故で入院したらしいんだよと原山は言う。

俺、突っ込んで聞いてやったんだがよ、そしたらその時初江の奴、最後に結婚するんだもの、病院の費用くらい出すの当たり前よなんて冷てえこと言いやがったんで、俺頭に来て、いく勝、そんなら結婚なんかできねえようにしてやろうと思ってさ…と原山は答える。

それで入籍したのかい?と主任が聞くと、ええと言う。

で、その病院どこだ?と長田が聞くと、さあ、忘れちゃったですよと原山は苦笑混じりで答える。

そうか…、今夜はまあ、ゆっくり泊まってもらうからなと主任は告げ、さあと渡辺刑事が促して原山は連れていかれる。

ああ、こりゃ主任さん、妙なことになってきましたね~と林刑事が言うと、まんざらガセでもなさそうだなと主任も感想を言う。

清水の返事でアリバイが成立すれば、奴の言う川崎一郎ってのが臭くなってきますがねと中川刑事が指摘する。

しかしね、本当に川崎一郎が交通事故起こしていたら、交通課でわかるだろう?と長田部長慶寺が指摘したので、なるほど、早速やってみますか?と渡辺刑事が提案すると、そうだな、林刑事や主任も賛同する。

刑事たちが全員出て行ったので、高津刑事も良し!と言って立ち上がりかけるが、すかさず、君は留守番!と主任が指示する。

「交通総務課 庶務係」と書かれた看板がかかった部屋で、刑事たちは過去資料を確認し始める、いやあ、東京は交通事故も多いですな~と池本刑事が感心すると、ああ、1日に413件と言うからね~と林刑事が教え、種類に目を通していく。

長田部長刑事が、7月5日以降はいらんぞと指図する。

すでに時間は深夜の2時過ぎだった。

捜査本部に残った高津が、清水からの返事は明日になりますかね?と主任に話しかけると、ああと主任が生返事するので、原山の奴、いい加減なこと言ったんじゃないのかな?犯行を隠そうとして…と高津は推測する。

まあ五分五分だな、白と黒はと下着を着替えた主任が答えた時、電話が鳴ったので、清水かな?と言いながら受話器を取る。

もしもし、上野署?と主任が不思議がると、そうです、実はですね、宮城県警から手配中だった女中と番頭捕まえたんですが、ええ?塩釜の「くのや旅館」とかにいた二人ですが…と相手が言うので、そうですか、ちょうど良かった、2人に面通ししてもらいたい写真があるのでね、すぐ刑事をやります、じゃあと言って電話を切った主任は、原山の写真で初江と一緒に泊まった男かどうか…と指示を出したので、高津刑事は行ってきますと答え出ていく。

交通課ではまだ書類の確認作業が続いていた。

世が明けた本部に戻ってきた長田捜査部長は、主任、ありましたよと報告する。

これです、川崎一郎、26歳、トラックを運転中、居眠りして安全地帯にぶつかっているんですと中川刑事は書類を見せる。

そこに戻ってきた高津刑事が、主任、「くのや」の女中も番頭も原山二郎は全然顔が違うそうですと報告する。

そうか…、すると清水からの電話をもらうまでもなく、原山二郎はシロだなと主任は判断する。

するとやっぱりこの川崎一郎が…と渡辺刑事が言葉をかける。

川崎見つかったんですね?と高津刑事が聞くと、良し、高津くん、君は運転免許証から川崎の人相を割り出して、今の女中と番頭に面通しだと主任は指示を出す。

それから林君、渡辺君、池本君は、ここにある川崎の自宅、長田君と中川君は勤務先の運送会社だなと主任は割り振る。

ヨシちゃん、おはようなどと声をかけ女性たちが出社する早朝の住宅街に来た池本刑事たちは、川崎一郎の自宅前に来る。

「川崎一郎 カヨ」と書かれた表札を見た池本が、ありましたと林刑事らに知らせる。

「川崎一郎 カヨ」か…、間違いないらしいなと林刑事も確認する。

どうします?と渡辺刑事が林刑事に相談すると、今見たんだがね、あそこ入った所に防犯協会の会員証を貼った家があったな?あそこでちょっと当たってみようと林刑事が言い、自分はここを張っていますと渡辺刑事が言うので、そうね、じゃあと林刑事は答え、二手に分かれる。

池本刑事と共に奥まった場所の家に来た林刑事は、外で掃き掃除をしていた主婦(不忍郷子)に、おはようございますと話しかけ、ちょっとお伺いしますが?と問いかけたので、はあと主婦は顔を上げる。

実は警視庁の者なんですがね…と警察手帳を見せながら林刑事は身分を明かし、この先の川崎一郎さんについてちょっと…と説明する。

何か?と主婦が言うので、いやちょっとしたことなんですがね、ちょっとお邪魔させてもらえませんか?と林刑事は頼み込む。

戸惑いながらも、まあどうぞ…と主婦が勧めたので、二人の刑事はその家に上がり込む。

ちょうど庭先で盆栽いじりをしていた主人(中村是好)は主婦から耳打ちされ、どうぞと答える。

盆栽を並べた台の前にきた林刑事は、ほお~、こいつは見事なもんですな~、これみんなご自分でご鍛錬を?と聞き、池本刑事も大したものですな~と褒めたので、主人は上機嫌になり、川崎さんのお母さん、まだ寝とりましたか?と聞いてくる。

いえいえ、まだお訪ねしてないんですがねと池本刑事は答えたので主人は戸惑うが、家の縁側に座布団を持ってきた主婦が、まあどうぞと刑事たちに声をかけ、あのお母さんも近頃はリウマチがひどくなって…などと続ける。

女手一つで一郎さんをあそこまで育てた苦労が、ねえ?などと主婦は言うので、林刑事は頷いてみせ、すると他に家族の方っていうのは…とさりげなく林刑事は聞いてみると、ええ、親子二人っきりなんですよと主婦は答える。

もっとも近々嫁さんが来るんだってな~などと盆栽をいじりながら主人が言うので、ええ、トラックを一台買って独立できるようになったから3人なんとか暮らせそうだ、まあ、喜んでいるんですよ、お母さん…と主婦も説明し、奥へと引っ込む。

一郎さん見かけはアレですが、案外親孝行なんですよ、苦労して育ててもらった親の恩が身に染みてるんでしょうと主人も言った時、奇妙な音が聞こえたので、刑事たちが驚くと、y学校遅れるぞ、信彦!と主人が家の方に向かって叱り、うちなんかのんびり育ててますからどうもいけませんと苦笑する。

すると家の奥から、トランペットを持った息子(小川守)が笑顔で顔を見せ、刑事たちに会釈をしてくる。

そこにお盆を持ってきた主婦が、お父さんもそろそろ時間ですよと声をかけ、行って参ります!と言う息子の声に行ってらっしゃいと返事する。

しかし川崎一郎さん、よくトラックを買う金ありましたね~と池本が聞くと、どうせゲップでしょうからと主婦は言うが、それにしても頭金がそれなりにいるんじゃねえすか?と池本が続けると、何せトラック一台ですからね~と応じた主人は、で、それが何か?と逆に聞いてくる。

実は川崎一郎さんのことなんですがね?と林刑事が主人に小声で囁きかける。

「阿部運輸株式会社」に聞き込みに来ていた長田部長刑事と中川刑事に、川崎君ですか?仕事はよくやるんですがね~と、日勤表を見ながら社長(曽根秀介)が答える。

と言うと何か?と長田が突っ込むと、ええ、ドライとでも言うんですか、調子が良くって遊び好きでねと社長は答える。

ああ、今月は不幸があったとかで3日ほど休んでますな?と社長が言うので、休んだ?それはいつでしょう?と長田が聞くと、8、9、10の三日間ですが?…と社長は言うので、8、9、10?と中川刑事が復唱しながら長田の顔を見る。

本部で一人待機していた主任はなった電話の受話器を取り、はい、ああ高津君?川崎一郎の面通しはどうかね?と聞くと、間違いないそうですと答えた高津は、ええ?二人とも確かに谷口初江と一緒に泊まった男だと言っていますと続ける。

そうか、じゃあ川崎一郎が星に間違いないな!よ~し!と言って電話を切る。

直後またかかってきたので受話器を取った主任は、ああ、長田君かと答え、うん、すると犯行当時のアリバイが怪しい?そうか、今し方、川崎がホシに間違いないとわかったよと教える。

で、本人はどうしてる?と聞いた主任は、え?仕事で名古屋へ?と驚く。

名古屋の捜査本部では、まあ何にもできへなかったと帰る準備をしていた金子刑事が高山に愚痴を言っていて、小川部長刑事も、高山さん、えらくお世話になりましたと頭を下げて感謝してた。

高山刑事も大したお力にもなれないでと頭を下げ返す。

じゃあ、今度休みもらってまた来るわと金子刑事が話していたその時、高山の電話が鳴って、はい、捜査一課!と出た高山刑事は、まだおられますと答えると、おい、東京からだと主任に挨拶しかけていた金子たちに受話器を渡す。

はい、金子ですが?と答えると、ああ、私だ、たった今し方のことだがね、新しい容疑者の川崎一郎な?電話で話した…、うん、あいつが本星と決まったんだよ、で、その川崎なんだがね、名古屋で荷物積んで東京に引き返すらしいんだと主任は伝える。

で、荷はどこで積むんでしょう?なるほど、トラックのナンバーは?と金子が聞くと、1ーせー2365、はい、じゃあと言って金子も電話を終える。

直後、高山、小川も含め、3人は名古屋署から出かける。

東京の「阿部運輸」では、じゃあ、」私はちょっと仲間の寄り合いがありますもんで…と言い、社長が出かける中、長田部長刑事と中川刑事は、本当に居眠りしながらやっちゃうんで…と打ち明ける運転手の男(杉義一)と話していた。

どうもと社長を見送った中川らは、半分居眠りとは危険な話ですねと運転手に話しかける。

それで奴さん一度事故やっちまいましたがね、でも奴の原因じゃありませんや、1日24時間走り続けるんですからね〜と運転手が言うので、なるほどねと長田が相槌を打つと、川崎の奴近いうちにトラックを買って独立するんだって言ってましたがね、できることなら誰もが望みますよと運転手は続ける。

しかし川崎君はよくトラックを買うような金がありますね?と長田が聞くと、僕もびっくりしたんですよ、奴は女にもモテるし派手だし…、良く40万も…と運転手が言うので、40万?と中川刑事が聞き返す。

ええ、頭金にするんだって言ってましたがねと運転手は言う。

何時ごろですか、そりゃあ?と中川刑事が聞くと、ええっと、まだ一週間とは経ってませんが…と運転手は答える。

川崎君には初江って彼女がいたって話は聞いてませんか?と長田部長刑事が聞くと、奴の女なら香ってんですよ、もう1年越しの仲なんですがね〜と運転手は言う。

トラックの雇われ運ちゃんじゃあってんで、彼女のお袋さんが反対してるってね、いつm子は頭に来てましたねと運転手は言い、そうだ、初江ってのは、最近やつのところにちょくちょく電話をかけてくる娘じゃねえかな?と思い出す。

ほお、パチンコ屋に勤めているんですか?と長田が確認すると、そうかもしれないぞ、奴さんその子に惚れられたらしくてね、小型ラジオなんてもらっちゃってね、運転しながら、いつもジャズや野球中継を聞いてましたよと運転手は教える。

なるほど、すると結婚はそのカオルさんとするつもりだったんだね?と長田部長刑事が聞くと、ええ、そうでしょうと運転手は不思議そうに答え、あの〜、奴がどうかしましたか?と不安そうに聞いてきたので、いやあまあ…と長田は誤魔化し、ねえ、そのカオルさんってどこの人?と中川刑事が尋ねると、三島ですよ、三重春食堂って言ってね、あっちへ出かける時俺たちが一服する所の一人娘でね、なかなか可愛い子ですよと運転手が答えていると、あの〜お電話ですけどと女性事務員が知らせに来たので、僕に?と長田は驚く。

いやどうもと礼を言って事務所の電話に出た長田は、あ、主任ですか?何か?と聞くと、ほお、ほお…、すると川崎は今朝の8時にもう名古屋を出たんですねと小声で返事する。

そうですか…、実は…と囁く長田の報告を聞いた主任は、うん、三島に?三重春食堂のカオル?よしわかった、すぐ手配しようと答えたので、お願いします、俺たちここにずっとはりますか?と長田が確認すると、はあ…と答えて電話を切る。

そこに運転手が入ってきたので、今朝の8時に名古屋を出ると、今はもう三島を過ぎてますか?と聞くと、そうですな〜と腕時計を見た運転手は、川崎君ですか?と聞いてくる。

はあと長田が曖昧に答えると、まだでしょう、きっと…と運転手は言うので、そうですかと確認し、長田も腕時計で時間を確認する。

その頃、道路沿いで通過するトラックを調べていた愛知県警東刑事(南廣)は、仲間の刑事に、東京から手配のナンバーはないようだな?と確認し、良し、じゃあ張っててくれと指示を出す。

近くの食堂に、こんちわ!と言いながら入った東は、あら、東さんと答えた女将(澤村貞子)に、カオルさんは?と聞く。

東さん、片親なんか情けないもんだよ、子供だ、子供だと思ってるうちにね、良く来るトラックの運転手に唆されてしまってね、女親の言うことなんか聞こうともしないで、うち出てしまったんだよと女将が愚痴るので、いつ?と東刑事は聞く。

ついさっき、親子で大喧嘩したんだけど、今度は自分一人でトラック一台持つようになったなんて上手いこと言うけどさ、そんな簡単に買えるもんじゃないよ、あの男に…と女将は、客に出す料理を続けながら言う。

その男って川崎一郎って言うんじゃないですか?と東が聞くと、どうしてあんたがそれを?と女将は聞いてくる。

ええ、ちょっと…と麦茶を飲みながらごまかした東は、で、川崎は今日ここにきたんですか?と聞くと、ああ、さっきここへ来てね、カオルを連れて行っちまったんだよと言いながら女将はしゃがみ込む。

じゃあ一緒のトラックで?と東が聞くと、いや、カオルは電車だけどねと女将が言うので、何時頃?と聞きながら東は腕時計を見る。

東さん、川崎さんがどうにかしたかね?と女将が聞くので、東はハンカチを出して顔を拭いながら躊躇ってたが、その時、店のラジオから、…した犯人は、トラック運転手川崎一郎26歳と判明しましたと言うニュースの声が聞こえてくる。

宮城県と捜査協力している警視庁捜査第一課では、今日川崎に逮捕状を執行しました、なお川崎は現在名古屋方面を…というラジオニュースを本部で聞いていた高津刑事は、どこで漏れたんでしょう?まずいことになったなあ〜と主任に話しかけていた。

ホシに聞かれたら100年目だな…と主任も顔を曇らせ、すぐさま運輸会社で張っていた長田に電話を入れる。

はい、私ですと長田が受話器を取って答えると、え?ニュースで?と長田も驚き、奴はトランジスタラジオを持ってるんですよと伝える。

一方、永田の自宅前を張っていた渡辺刑事は、池本刑事と道で合流する。

ああ、蕎麦をどうぞやっつけてと池本刑事がいうと、どうも、じゃあお願いしますと渡辺は答え、林刑事の待機している家に向かう。

その頃、安全協会の家にいた林刑事は、電話で本部と話し、え、ラジオで?と驚き、あ、そうですか、わかりましたと言って電話を切ると、縁側に休憩に来た渡辺刑事に、ラジオで名前が出たらしいんだと小声で伝える。

その家の息子がそばにいたからだった。

その息子が何かあったんですか?と興味深そうに聞いてきたので、いやいや…とごまかし、川崎は元プロ野球の選手だったんだってさと林が話題を変える。

へえと縁側に用意されていた店屋物の蕎麦を食べようとした渡辺が驚くと、二軍だけどさ、川崎さんも気の毒だな〜、プロ入りした時は相当有望だったんですよ、それなのに肩壊して追い出されちゃったんだと息子が教える。

はあ、退職金もなしで?と林刑事が聞くと、もちろんですよと息子は答える。

プロ野球はドライですからね、入団する時契約金払っているって考え方なんですよと、蕎麦を食べていた渡辺刑事が蘊蓄を披露する。

ああ、なるほどね、じゃあ川崎も入団する時はたんまり契約金が入ったんだ?と林刑事が息子に聞くと、ええ、甲子園で完投したんですからね、その頃としては最高だったらしいですよと我がことのように自慢する。

でもね、お母さん一人でしょう?金食いおじさんが使っちゃって、ほとんど儲けちゃったんだってと息子が言うので、なるほどね〜、良く聞く話だよと渡辺刑事は納得する。

川崎さん、よくぼやいていましたよ、同じ頃に私鉄に入った豊田や何回の野村なんかバリバリやってるのにって…、東映の土橋なんか高校の後輩なんですってと息子が話すと、ああ、そうと渡辺刑事は相槌を打つが、そこに、あの〜、お電話ですけどと主婦が伝えにくる。

礼を言って受話器を取り、林ですが?と答えると、あ、高津君か?と気づき、え?川崎の女がこっちへ来るかもしれん?と確認する。

ええ、14時5分頃の列車に乗ったらしいんですが…、と高津刑事が伝えると、うん、良し分かった、で、川崎一郎の方は?と林刑事が聞くと、ともかく1時間ほど前三島を発ったことは確かなんで、一応神奈川県警に頼んで小田原辺を警戒してもらっているんですがと高津は言う。

小田原近辺に神奈川県警のパトカーや警官が終結する。

箱根を越えるんだから、時速30kmと内輪に見積もっても小田原に来てるわけだ?と主任は、地図を確認している高津に話しかかける。

はいと言いながらも、やっぱりラジオ聴いてずらかったんじゃないでしょうか?と高津は不安がる。

その時、電話がかかってきたので、受話器を取った高津が、はい、そうです、ちょっとお待ちくださいと言うと、小田原からですと伝え主任に代わる。

もしもし、どうですか?ええ?手配トラックが乗り捨てられているのをパトカーが発見した?じゃあホシはずらかっちゃったんですな?そうですか、まあ、できるだけ足取りを追ってくださいと頼み、こっちは自宅と勤務先を張らせましょう、はいと言って主任は電話を切る。

近所の主婦が外の水道で釜の米を研いでいる後ろ姿を見ていた林刑事は、帰ってきた主婦に、どうもお使い立てしましてと詫びる。

話をしながら深く見てきましたけどね、ラジオを聞いた様子はありませんでしたよと主婦は報告したので、どうもと会釈した林刑事は、また川崎の自宅を見張り始める。

池本刑事と渡辺刑事も板塀の隙間から自宅を監視していたが、なかなか川崎は現れなかった。

一方、運輸会社で張っていた永田部長刑事らも、暗くなっても進展はなかった。

金子刑事と共に本部に名古屋から帰ってきた小川部長刑事は、そうっすか、じゃあホシは結婚はそのカオルと言う恋仲の子とするつもりで、ガイシャをたぶらかせて40万円を引き出させ、挙げ句の果てに殺しちまったと言うわけですね?と確認する。

ええ、ホシも何年か前には騒がれてプロ野球に入った男だそうだが、それがかえって奴の人生を狂わしちまったのかもしれんなと主任は言う。

カオルが来たと言う連絡くらいあっても良さそうですがね…と高津刑事が言う。

ああ、どっかでホシと落ち合ってずらかったんじゃないでしょうか?と金子刑事が言い出す。

そんな中、自宅前を張っていた渡辺刑事と池本刑事は、大きなバッグを持った娘が川崎の自宅前に来たのに気づく。

娘はごめんくださいと言って中に入って行ったので、池本と渡辺も板塀の影から道路に出て近づいて、近くから様子を見る。

自宅の奥から出てきたのは川崎の老いた母親キヨ(原泉)で、どなた?と答えると、あの〜、一郎さん、まだ?と問いかけてきたのはカオル(佐久間良子)だった。

あんた…とキヨが戸惑うと、一郎さんが先に帰って待ってるからと言うので、私…とカオルは答えたので、まあ、じゃあカオルさんかね?とキヨは気づく。

ええとカオルが答えると、じゃあ、早く上がって、一郎も帰るから…とキヨは答える。

外で中の様子を伺っていた池本と渡辺刑事は、近づいてくる防犯協会員の家の主婦に気づいて、ちょっと!と呼び止め、何か?と聞くと、今、一郎さんから電話があってね、カオルさんって方がいたら呼んで欲しいんですってと言うので、今は入ってますよと池本が教えると、そうですかと答えた主婦は、じゃあと言って川崎の家の前に立つと、こんばんわと中に声をかける。

防犯協会員の自宅で張っていた林刑事は、こんばんわ、どうぞと言う声が聞こえたので、カオルがやってきたことに気づく。

受話器を取ったカオルは、もしもし?一郎さん?どうしたの?うん、今来たんだけど、え?40万円?お母さんに言って?嫌だわ、私…とカオルは拗ねる。

どうしてって、まだ会ったばかりだもん…、え?困るわ…とカオルは答える。

その時、家の主人がただいまと言って帰って来たので、別室で息子と共に待機してた主婦が主人を部屋に引き込む。

一旦、帰ってくれば?というカオルの返事を、林刑事も襖越しに聞いていた。

そんなに急ぐの?じゃあいいわ、もらって持って行く、え?タクシーで30分?はい…とカオルは答えて電話を終える。

襖を開けて廊下に出た林刑事は、帰りかけた薫に、ああ、ちょっと、川崎君、今どこにいるの?と話しかける。

え?と薫が戸惑うと、実は警視庁の者なんだがねと林は警察手帳を出して身分を明かす。

川崎はあんたにどこにくるように言ったんだね?と林が聞くと、あの〜、一郎さん、なんかしたの?とカオルは逆に聞いてくる。

林刑事が推し黙ると、ねえ教えて!教えてよとカオルは迫る。

松島のホテルで女の人が殺された事件知ってるだろう?と口を開いた林刑事に、ええ!じゃあ…とカオルは勘づいたので、林刑事は黙って頷く。

協力してくれるね?と林が頼むと、嘘!嘘だわ、一郎さんがそんな!と拒絶したので、気の毒だがちゃんと証拠があるんだよと林刑事は言い聞かせる。

私、協力するのなんて嫌よ、私、結婚する約束したんだもの…、いやいや、いやよ!とカオルは言い返す。

林刑事は黙って、彼女の言葉に頷くだけだった。

防犯協会員の主人も、その会話を聞こうとするが、主婦が押しとどめる。

本部に電話がかかってきて、高津が受話器を取って、もしもし?あ、渡辺さんですか?と答える。

主任に代わると、え、カオルが来た?それで、ふん、ふん…、林君が説得してるんだな?と応じる。

一方、座敷で座って泣き出したカオルに、とにかく、川崎は人一人を殺してしまっているんだから、あんたが本当に川崎のことを思うんだったらねと林刑事が説得していた。

ここで潔く罪に服して、1日も早く清い体にしてやるべきではないかね…、ええ?空あ、今あんたが川崎を逃してやったところで、結局は捕まってしまうんだ、それよりいっそのこと、あんたの口から自首を勧めてやったらどうだい?あんたがそうしてくれるなら、私たちもついて行ってあげるよ、そうすることが川崎にとっても一番良いことだと思うんだがね〜、どうかね?わかってもらえたかな?と林は続ける。

カオルは立ち上がり、部屋を出ようとしたので、一緒に行ってくれるんだね?と立ち上がった林も薫の顔を見て念を押す。

カオルは黙って頷く。

本部で待機していた主任は、電話がかかってきたので素早く受話器を取り、はい、林君か!うん、うん、良し分かった…と答える。

受話器を置いた俊人は、3人ともすぐ応援に行ってくれ、新橋駅の広場だと告げたので、高津、金子、小川たちは、はっ!と答える。

新橋駅前広場に到着した3人の刑事は、周囲を探し始めるが、林さん、まだ来てないようですなと高津刑事は金子に話しかける。

街頭テレビでは、良いですね、今夜の土橋は非常に調子良いですけども、ショートもカーブもよく決まっています、土橋…などと、東映対西鉄のナイター中継が映っていた。

しかし、その直後、西鉄のバッターが打ち、9回表、ランナーありません…とアナウンスが聞こえる。

その時、高津が、カオルを伴った林刑事、池本刑事、渡辺刑事を見つけ合流する。

林さん!と声をかけた高津に、今来る、自首を勧めるからねと林は答え、じゃああんた、あの辺でね、側にいるから、行きなさいとカオルにを指示する。

あのテレビの近くにいさせるが、わしは側にいる、良いな?と金子や高津に林は説明する。

カオルは林の指示通り、街頭テレビの近くに接近する。

さて、バッターボックスには豊田が入りますとテレビのアナウンスが聞こえる。

そして豊田と土橋の対決です、これは面白いですねとアナウンサーが振ると、これはまあ東映戦の見せ場ですねと解説者が言う。

カオルがテレビ画面を見守る中、池本、金子、高津、小川、林ら刑事たちは周辺で油断なく監視していた。

街頭テレビの周辺は人だかりができていた。

林刑事が中止する中、カオルちゃん、遅かったじゃないかと彼女の背後から声をかけたのは川崎一郎(曽根晴美)だった。

持って来たんだろうね?と川崎が念を押し、カオルが持っていた堤を開けると、中に入っていたのは新聞紙だったので、川崎は驚いてカオルを見る。

カオル、お前!と絶句する川崎。

警察の人が!と周囲を見ながらカオルが叫んだので、何!と驚いた川崎は慌てて逃げ出そうとするが、雑沓を抜け出した直後、林と小川が飛びかかり、すぐに池本らも近づいてきたので、離してくれよ!と叫ぶ川崎だったが、小川部長刑事がその手に手錠をかける。

それを見て驚くカオル。

川崎は思わずテレビ画面を見守る。

フルカウント、粘っている豊田、それとも好投を続ける土橋が勝ちますか、土橋、豊田の対決でありますとアナウンサーが実況する。

豊田が打った瞬間、川崎は目を逸らしたので、刑事たちは連行していく。

林だけはカオルの側に戻り、追おうとする彼女の肩を抱いて止める。

しかしカオルは、それを振り切って、一郎さ〜ん!と呼びかけながら、後を追って行く。

新橋駅前広場の雑踏を背景に「終」


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