「室町無頼」
2025年、垣根涼介「室町無頼」原作、入江悠脚本+監督作品
近年、東映配給の時代劇がコンスタントに作られるように見え、往年の東映時代劇ファンとしては嬉しい一方、もう一つ興行成績が伸び悩んでいるように感じられる部分は寂しい気持ちもないではない。
本作も公開前から楽しみにしていたのだが、なぜ正月興行を外し、客が入りにくい「正月映画第二弾」にしたのか不思議だったのだが、実際に見てみると、確かにこの出来では正月映画に客は呼べそうにもない出来だと分かった。
特に出来が悪いわけではないのだが、「時代劇としての華に欠ける」印象があるのだ。
クライマックスは人海戦術とVFXを使った大掛かりな見せ場があるのだが、そこに至る過程に面白みが少ないように感じた。
上映時間135分という長尺にしては、前半部分に見せ場が少なすぎるのだ。
一応、メインキャラの1人の修行シーンという見せ場はあるのだが、昔、若いジャッキー・チェンが「酔拳」で見せていたような肉体を駆使した見せ場ではなく、VFXを使った「トリック」で見せているため感動が薄い。
さらに、一見主役であるはずの蓮田兵衛(大泉洋)の見せ場が少なく、印象も薄いのが残念。
後半のクライマックスへの準備を密かに進行しているという流れはわかるものの、観客を惹きつけるドラマになっていないのだ。
「十一人の賊軍」と同じく明確な悪が存在しておらず、悪政で世が乱れている…では、悪の対象が大きすぎ、シンプルな「勧善懲悪」になりにくいのも、感情移入しにくい部分だと感じた。
登場人物に見覚えのない役者が多すぎ、エキストラと役者の区別すらつけにくいのも気になった。
堤真一さん演じる骨皮道賢も悪なのか善なのかはっきりせず、大泉洋さんと才蔵(長尾謙杜)も加え、メインの三人のキャラクターが全員不明確に感じるのも、もう一つ物語にのめり込めなかった一因のような気がする。
それなりの力作であるのがわかるのだが、「十一人の賊軍」と同じで、作品としては「成功していない」気がする。
0コメント