「男の紋章」
1963年、日活、甲斐久尊脚本、松尾昭典監督作品。
若き高橋英樹主演の任侠シリーズ第一作。
高橋英樹の父親役を演じるのは、同年公開だった黒澤明監督「天国と地獄」(1963)で、刑事のボースンを演じた石山健二郎さん。
本作の方が先の公開だから、日活の撮影を終えて東宝の撮影に参加したのかもしれない。
まだまだ映画全盛期だった時代に作られただけあって、セットも本格的だし、安っぽさは感じられない。
路面電車が走っているシーンなど、セットなのかロケなのかすら判別できないほど。
ただいかんせん、主役を務める高橋英樹に一切の影がない。
爽やかなイケメン青年すぎるのだ。
そのために医者役は似合うのだが、任侠役は似合わない。
それを補うように、和泉雅子さんの可愛らしさ、凛々しさが救いで、英樹さんと二人並ぶと「日活青春映画」そのもの
本作では敵役を演じているのが名古屋章さんということもあり、やや小粒な印象もある。
それでも懐かしの日活作品と割り切ってみれば、あちこちに見所がある。
例えば、山の飯場の診療所に出向いた英樹さんが、飲屋街で組の者に痛めつけられていた酔っ払いを助けるシーンがあるが、この酔っ払い辰を演じているのは、若き日の小池朝雄(刑事コロンボの声で有名)である。
歩兵第68連隊佐川中佐を演じているのは藤岡重慶さん(アニメ「あしたのジョー」での丹下段平が有名)。
本作に登場する女侠客を演じているのは、日活映画ではお馴染みのベテラン轟夕起子さんだが、大映「悪名」シリーズにおける浪花千栄子さんを彷彿とさせる貫禄あるキャラクターである。
親の跡を継いで組を引き継いだものの、最後までカタギとしての道を貫こう、争いは避けようとした主人公であったが、悲劇的なラストが印象に残る名作である。
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