「十一人の賊軍」

2024年、笠原和夫原作、池上純哉脚本、白石和彌監督作品。

「集団抗争時代劇」というより「時代劇版戦争映画」に近く、戦争に一般庶民が巻き込まれる救いのない悲劇が描かれている。

例えれば「激動の昭和史 沖縄決戦」(1971)や「ひめゆりの塔」のテイストに近い気がするのだ。

戦争は「善と悪とが戦っている」わけではないので、わかりやすい「勧善懲悪ドラマ」でもない。

一応、後半で悪人らしき人物が炙り出されることになるが、その人物も真の悪人とは思えず、キャラクターとして小粒な印象であることもあり「悪を倒した」というような爽快感はない。

上映時間155分という長尺にしては、前半の展開が「ぐいぐい物語に惹き込まれる」というような感じではないこともあり、全体的に「大作」「力作」感はありながら、もう一つ面白みを感じられないのだ。

メインの数人の役者とテレビでもお馴染みの芸人など以外の登場人物に馴染みのある顔が少ないのも、集団劇としては乗りにくい部分かもしれない。

映画全盛期末期の「十三人の刺客」(1963)のような往年の東映オールスターは無理にしても、もう少しキャスティングに工夫があっても良かったような気はする。

とはいえ、爺っつぁん役の本山力さんの殺陣シーンなど、顔に見覚えない方の見応えある見せ場があったりと、部分部分に見るべきところがないでもないのだが、大作特有の「大味感」もあり、「成功作」とは言いにくいような気がする。


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