「江戸の名物男 一心太助」
1958年、東映、田辺虎男脚本、沢島忠監督作品
寛永元年10月 三代将軍家光、征夷大将軍任官報告のため、上野寛永寺に参詣…というテロップとその様子から始まる。
参詣の行列に土下座をしていた庶民の前で幼女が手にしていた玉が転がり出て、それを取ろうと幼女が後を追ったので、母親も驚きそれを止めようとするが、幼女はお付きのものたちから手打ちにされそうになる。
その時、飛び出して、幼女を庇おうとしたのは亡き母親の位牌と共に江戸見物を終え、村に帰る途中だった井川の国佐田村の太助(中村錦之助)であった。
そこへ「乱心者!控えおろう!」と叱りつけ現れたのは、天下の御意見番大久保彦左衛門(月形龍之介)、何事じゃ?とカゴから姿を現したのは将軍家光(中村錦之助=二役)だった。
横長の東映スコープであるが、まだモノクロ作品である。
いかにも映画全盛期の東映時代劇といった感じで、「水戸黄門」でも知られる月形龍之介やマチャアキこと堺正章さんの実父堺駿二さんといったお馴染みの顔ぶれが登場している。
ヒロイン役は中原ひとみさん。
中間になった太助から「男になりてえ」と相談された彦左衛門は、「人間、一心、鏡の如しじゃ」と、釣りをしていた湖面を見ながら教える。
後日、家宝の皿が割れた責任を負い、太助がもろ肌脱ぐと、右手には「命」、左腕には「一心如鏡」と刺青が入れてあるのに彦左衛門は気づく。
このエピソードの後、屋敷の腰元衆からモテモテ錦ちゃん状態になるのが愉快なのだが、この当時の中村錦之助さん自体が現実でもそうだったに違いないと思わせるほどの美貌ぶりである。
中盤での魚河岸のアクションシーンは、当時の錦ちゃんの若さと元気の良さを象徴するかのような暴れっぷり。
萬屋錦之介になって以降の錦ちゃんしか知らない方達には、この当時の錦ちゃんの元気の良さは信じられないのではないだろうか。
彦左衛門を慕う家光と太助の、それぞれ立場の違う愛情表現、そして家光と太助を我が子のように愛する彦左衛門も泣かせる。
まさに大衆向けの黄金時代の時代劇というべきだろう。
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