「天下の快男児 突進太郎」
天下の快男児シリーズの2作目で、1作目「天下の快男児 万年太郎」の姉妹編
このシリーズは、健さんが女性にモテまくる青春もので、東宝の加山雄三さん主演の若大将シリーズに近いものを感じる。
健さんが、女性の下着メーカーに勤めるという異色の内容になっているだけでなく、入社試験の初登場時は、着物に袴姿と、まるで金田一耕助みたいな格好をしているのが珍しい。
流石に1960年頃の学生でも、こんな格好しているのは稀だったようで、他の応募者は全員学生服かスーツである。
シリーズの常連で前参議院議員の山東昭子さんもまた登場する。
1960年からフリーになったのか、日活イメージが強い岡田真澄さんも出ているのが珍しい。
健さんの恋敵役で、健さんよりも長身でイケメンなのに、ユーモラスな描写もあり、かなり目立つキャラクターになっているが、その父親役が須藤健さんと言うのは、ちょっと無理を感じる、顔が違いすぎるからだ。
「仮面ライダー」の地獄大使こと潮健児さんも健さんの同僚役として出演しているが、健さんと並ぶとかなり小柄なことがわかる。
これだけ小柄だと、東映の中でも役柄が限定されたのは仕方なかったのかもしれない。
新東宝出身の久保菜穂子さんは、黒縁メガネをかけたちょっとチャーミングな女社長を楽しそうに演じている。
びんちゃんこと楠トシエさんは、いつもコミカルな役柄だが、元々綺麗な方なので、本作では同情したくなる可憐な立場になっている。
健さんも初期の頃は色々な役柄を演じているが、こうした明るいタッチのサラリーマン映画の方が個人的には好みである。
コメディと言っても笑えないものも少なくないが、本作は随所に笑わせようとするアイデアが盛り込まれており、中でも「合気道クラブ」の道場で寝ている女中の荒い寝息で、枕が空中に上下に浮遊する描写などは突飛で笑える。
シリーズの中でも、かなり出来が良い方ではないかと感じる
【以下、ストーリー】
1960年、東映、棚田吾郎脚本、小林恒夫監督作品
「ダイアナ・ランジェリー」と言う会社の前には数多くの花輪が飾られていた。
婦人の下着を作って売るために、こんな立派な建物ができた。
やがてこの快感が女性美追求のメッカとして大反響の盛況するであろうことを信じて疑いません、下着株式会社の社長河野あぐり(久保菜穂子)さん、並びにその補佐役であるところの堀部専務(須藤健)さん方による今後の活躍を、我々専業者は大いに期待を寄せており次第でありますと言い、辻本直秋(伊藤雄之助)は自ら拍手し始める。
それに釣られて来客たちも一斉に拍手をする。
まさに現代は下着時代、女は下着で作られると申しましょうか…と辻本が言うと、会場に飾られた花の四角い枠の部分にカメラがズームし、そこにタイトルとダイアナ、ダイアナという企業ソングがかかる。
ダイアナの商品をバックにスタッフ・キャストロール
デザイナーは女性オンリーですか?と記者から聞かれたアグリ社長は、はい、将来男性にも協力していただく考えで新たに募集いたしまして養成するようになっております、女性の美に最大の関心を抱いておりますのは男性なんですからと答える。
「週刊モード」としては、来週のトップ記事だな、PR料をうんともらわんと合わんねなどと記者はカメラマンに話しかける。
カメラマンたちも、そのつもりで大いにサービスしとこうかなと言い、社長の写真を撮り始める。 翌週の週刊誌には、「下着を作る女性」「特集・魅惑のダイアナ会館」と記事が、あぐり社長の写真とともに出る。
それを見ていたあぐり社長の通信機が鳴る。
はいと答えると、あぐりさん…じゃない、社長!「週刊モード」見ましたか?いや、マスコミって頼まれもしないのに良くPRやってくれますよね、あ、それから男子デザイナーのテストが始まるそうですと堀部茂(岡田眞澄)から連絡があったので、すぐ行きますと答えて切る。
そのそっけない態度にムッとなった茂だったが、父さん行きましょうと堀部専務に話しかけ、馬鹿馬鹿しい、女の下着を作るのに男のデザイナーときた、どうせ応募してくるのやな、穀潰しに決まっとる!と堀部専務は断言する。
いや、しかし、相当評判になってますよと茂が言うと、評判と宣伝とは違う、お前までが社長に同調してどうなるんだ、あの娘のやることはやな、なんでも思いつきだけと専務は手厳しかった。
デスクに座って、釣竿を垂らした茂は、当分好きなようにやらしましょうよ、失敗することはわかってるんですから…と言う。
デザイナー室では、先生、販売部長さんがホールの方へどうぞってと、女性社員が連絡に来る。
マネキンに下着を着せていたデザイナーの小柴千秋(山東昭子)は、そうと答えて、みなさん、審査始めますからお願いしますよと女性デザイナーたちに指示する。
ねえ、千秋さん、下着デザイナーに志望する男性ってそんなかしら?と同僚が聞くと、やな感じと千秋は答え、他の女性社員も笑いだす。
そこへ、あの~、ちょっと伺いますが、デザイナーの試験を受けにきたんだけど、試験場どこ?下で聞いたら3階だって言うからね…と聞いてきたのは着物姿で110番の番号を胸につけた突進太郎(高倉健)だったので、女性陣は唖然として黙ってしまう。
そんな中、千秋は近づいて、この廊下を左に行って、突きあたったら右に行って右側の3番目の部屋ですわと教える。
太郎はその指示を復唱し、どうもと礼を言って出てい行ったので、その直後、女性社員たちは笑い出す。
何あれ?おそれ行っちゃうね、あんなのが私たちの仲間になるつもりなのねなどとからかい出すが、あら、帽子忘れて行ったわ、あの人…と1人が気づくが、手に取ると、アラばっちい!と顔を顰め、マネキンの首の部分に引っ掛ける。
どこの骨董品よ、あら、バランスねと女性社員たちは言う。
試験会場に来た太郎は、他の応募者と一緒に椅子に座っていたが、前列のかた、立ってくださいと言われたので起立する。
ここにある色々な種類の下着を選んで、この人形に着せてください、では鐘が鳴ったら始めていただきますとの指示が出る。
審査員席に座った茂が時計を見ながら係にはい!と合図すると、鐘が鳴ったので、太郎も下着を選び始める。
茂たちは、そんな様子を見て顔を顰める。 審査が終わった後、応募者同士が集まった中、面接となると、私学は全く弱いですねなどと言う学生古川善作(岡野耕作)がいたので、104番の応募者荒井金一(潮健児)が、試験なんてのはね、形式なんだよ、そう言うもんだよと言って慰める。
その時、あなたのでしょう?これ忘れてらっしゃったのと言いながら、太郎のハンチングを差し出したのは千秋だった。
は、どうもすみませんと礼を言って太郎は受け取ると、親父の形見で馴染みが薄いもんですから…と笑いながら言い訳する。
それを着た昭恵は、じゃあ大事になすって、しっかりやんなさいよと声をかけ、部屋を出ていく。
その時、110番、110番の方とアナウンスがあったので、110番?と自分の胸の番号を見た学生が、あなた110番ですよと太郎に教えてくれる。
あ、そうだ!と気づいた太郎は慌てて面会上に駆けつけ、110番ですと出てきた女性に名乗り出るが、昼食時間ですから1時まで休憩しますと女性は言う。
面接が再開され、名前を言いたまえ、名前を!と茂から聞かれた太郎は、突進太郎です!と答えたので、猪みたいな名前だねと茂は笑うが、本籍福岡県遠賀郡香月町、吉田メリヤス工場の紹介か…と茂は履歴書を読んで確認する。
そうですと太郎が答えると、3年前に大学を出てやね、それからずっと何しとったん?と専務が聞くと、え~、2~3の会社に勤めたんですが、どうも性が合わんので国で農業を手伝っておりましたと太郎は答える。
この会社が性に合うかどうか…、さっきのテストを見ても、君何にも知らないね、この下着について…杜茂が聞いてきたので、要するに、下に着るものだと思うんですが…と太郎が答えると、そう言うセンスでは困るんだよ、我が社といたしましてわね…、君、ちょっと冷たいものない?喉乾いて…と茂は係員に申し出る。
あなた、マドレーヌ・グリフって名前知ってる?とあぐり社長が聞くと、映画俳優ですか?と太郎は聞き返す。
フランスの有名な下着デザイナーよとあぐり社長は教えると、知らんですね~と太郎が答えたので、まあ、そうだろうな、いずれ採用か、不採用かとにかく通知するからもう帰ってよろしいと堀部専務は言う。
煮え切らない表情で太郎が退室すると、ふう、最低だな…、紹介者がなかったら面接する必要もなかったと茂が吐き捨てるが、机の上にはまたたり卯が帽子を忘れて行っていた。
その後、廊下で清掃員のおじさんがその帽子をかぶっていることに気づいた千秋が、おじさん、その帽子!と指摘すると、慌てものがいるもんだね、こんなでっかい帽子忘れていくなんてとおじさんは言う。
よっぽど帽子が変な人なのね、まだその辺にいないかしらと言いながら、おじさんからその帽子を受け取った千秋は、窓を開けて外を眺めるが、ちょうど審査員室から出てきたあぐり社長や堀部親子たちは風に驚き、朝比奈雪江(星美智子)が持っていた採用者たちの履歴書が吹き飛んでしまう。
「合気道クラブ」では、女性師範犬養益代(楠トシエ)から投げ飛ばされた辻本直秋が、いやあ、どうもありがとうございましたと礼を言っていた。
なんとも言えんね、この爽快さ、ゴルフなんか問題じゃないねとタオルを取って正座した辻本は仲間に声をかける。
そうだろう、先生に稽古をつけてもらってた時の君の顔幸福そのものだよとクラブ仲間の中田雄之助(神田隆)はからかってくる。
おいおいと辻本は言い返すが、投げられた時なんか恍惚としてたじゃないかと言われてしまうと、中田君、スポーツは神聖ですよと辻本は注意する。
恋愛もまた神聖だ、お宅と言えどもなと言って中田は笑い出す。
その時、先生、これ太郎さんの金?選択するって言うだけんどと訛りの激しい女性カメ(牧野内とみ子)が道着を持ってきて聞く。
太郎さん、帰ってきた?どこよと益代が聞くと、物干しだよとカメはいうが、練習生が間違えて亀につかみかかってきたので、違う、違うとカメは焦る。
それを聞いていた辻本は、太郎ってあの田舎から来た青年のことかね?と聞くと、亡くなった兄さんの親友だそうだ、心配だろう?と中田は聞いて来たので、何言ってるんだ、おまえ、態度悪いなと辻本は不機嫌になる。
早いとこ一本押さえ込んで一本取るんだな、ぐずぐずしてると悔いを千載残すよと中田は忠告する。
物干し台に登った益代は、洗濯物を干していた太郎に、なんだ、洗濯物くらいしてあげるのにと話かけるが、そうはいかないですよと太郎は照れる。
僕はやっぱり国へ帰ることに決めましたよ、就職の当てがないのにいつまでも東京にいても使用がないですからねと太郎が言うと、さっっき来たわよ、期待会社からと益代は教え、通知書を差し出す。
ふん、わざわざ不採用通知かと言いながら、その場で握り潰して捨てた太郎だったが、大体あなたがサラリーマンになろうなんて無理じゃないかしらと言いながら、益代は手紙を拾う。
いや、無理でもやりでもやらなきゃしようがないんですよ、百姓の次男坊は…と太郎が言うので、そんなら田舎なんかに帰らずに、うちの道場でも手伝ってくれた方がよっぽどチャンスはあるわよと益代は言い聞かす。
日報スパローの辻本社長だの新和紡績の中田戦むみたいな偉い人だって来てるしさ、私だって運動してあげるわよ、ね、そうしなさいと益代は説得する。
それでも太郎は、裏戦術は嫌だな、俺はなんでも自力でやる主義だからと言い返す。
それで世の中渡れるものならね…と言いながら、採用通知を広げてみた益代は、あら?採用通知よ、これ!と教える。
それを受け取って確認した太郎は、採用!間違いなし!突進太郎ありがたいと喜び、物干し台に採用通知を貼ると柏手を打つ。
すると益代は、まあみっともない、はしたない!あなたは下着会社に採用されたのに嬉しいの?と因縁をつけてくる。 そりゃ嬉しいさ、僕を認めてくれたわけだからなと太郎は答える。
なにさ、下着会社なんか、第一、あんたの柄じゃないよと言いながら、益代は採用通知を引っ張って下すと、太郎に突きつける。
ところがスーツを着て出社した太郎だったが、採用通知を見た茂は、急に笑い出し、こりゃ風の悪戯だよ、君、つまり不採用者の方に入っていた君の履歴書だと指摘する。
風に飛ばされた結果、一枚だけ採用の方に混ざってしまった、それでこれが君んところに行ったわけだ、分かる?と言うので、変だと思ったよ、一緒に採用されていた荒井金一が古川善作に話しかける。
まあ気の毒だから、特に日当を支給するよ、経理でもらって帰りたまえと茂は言いながら、採用通知をその場で破り捨ててしまう。
すると太郎はいきなり、バカにするな!そっちで勝手に呼び出しときながら、何だい!日当なんかいらないから、社長にすまなかったと言わしたまえ!と言い放つ。
その頃、あぐり社長は、何遍言っても同じよ、こっちから頼んだわけじゃなし…、トップ記事のお礼は広告料としてこの間払ったでしょう?と「週刊モード」記者塚口(岩城力)とカメラマン原田(田川恒夫)と堀部専務を相手に怒鳴りつけていた。
しかし記者は、ご冗談でしょう、ただの広告料の並で済まされてたまりますか、「週刊モード」を甘く見てますねと塚口が脅してくる。
マスコミのありがたさと怖さを知らないな、社長などと原田も言うので、まあまあ、塚口君も原田君もね、そう興奮しないでね、社長、この話はですよ、一つ私に任せてくれませんかと堀部専務が口を挟む。
しかしあぐり社長は、癖になるわよ、非常識だわ!と拒否する。
何ですってと立ち上がった塚口に、専務はまあと抑えようとするが、聞き捨てならんことを言いますねと塚口は迫ってくる。
その時、ノックがして入って来たのは太郎だった。
君!何の用だね?と堀部専務が聞くと、社長に一言謝って欲しいんですよと言うので、あぐり社長は唖然とするが、遅れて入ってきた茂が、おい君!君は全学連か!と太郎に迫る。
社長は今、俺たちと用談中だ!と原田画太郎につかかって言ったので、太郎が跳ね除けると、やる気か?と揉み合いになる。
結局、原田の顔はドアを突き破ったので、廊下を挟んだデザイン室から出てきた千秋や女性社員たちは驚く。
暴力はいかんよ、暴力は、君!と塚口の声が聞こえるが、彼も廊下に投げ出され、原田と共に這々の体で帰ってゆく。
その後社長室から出て来た太郎の姿を見つけた千秋は喜ぶ。
社長と堀部親子があっけに取られたように部屋から出てくるが、もう帰ります、腹の虫は治ったですよと太郎は言う。
古川と荒井もその現場に来合わせ首を傾げる中、千秋は部屋から帽子を持ってくると、はいこれ、今日はお忘れにならないようにね…と言いながら太郎に差し出す。
太郎はどうもと礼を言い、受け取った帽子を目深にかぶる。
その後、社長室では、あんな男をですよ、どういうつもりで採用なさるんですか?と息子茂と一緒に残っていた堀部専務はあぐり社長に聞いていた。
審査の結果は不採用と決まったんだから、1人だけ特別扱いするのはどうかと思うな…と茂も反対する。 しかしあぐり社長は、良いじゃないの、ああ言うのが1人くらいいたってと嬉しそうに主張する。
結局太郎は、晴れてダイアナランジェリーの正社員になり、荒井と古川とともにデザイン室で働き始める。
マネキン相手にサイズの測り方や型取りの描き方などを、千秋から習う太郎。 紡績工場も案内されたり、ミシンの踏み方も学ぶ。
太郎は間違って自分のネクタイがミシンに巻き込まれそうになる。
裁断の勉強時には、太郎が誤って社長のネグリジェを切ってしまったんで、付き添っていた朝比奈雪江(星美智子)と堀部茂は慌てる。
そのネグリジェを見せられたあぐり社長は、まあ!と呆れ、太郎はすみませんと詫びるが、不注意ってもんじゃない!君のような粗雑な神経の持ち主は適さないんだよ、こういうデリカシーを要する種類の仕事は…と茂は吊し上げ、この男には特に注意してくれたまえと同席した雪江に支持する。
まあ、これから気をつけることね、言っても良いわとあぐり社長が言うので、すいませんと再度詫び太郎は帰ってゆく。
本当に泣くにも泣けませんわ、残念で…、特別念入りに仕立て上げましたのに…と雪江がぼやくと、不愉快な感じの男ですねと茂も追い打ちをかけるような発言をし、ネグリジェを渡して、雪へに退室させると、鈍なくせに変に図太いところがあって…とあぐり社長に言い聞かせる。
しかしあぐり社長は、変わってるところが面白いんだけどと言って相手にしなかった。 気まぐれだな~、あなたも…、ところでどうです、今夜ご一緒に夕飯で…と茂は誘うが、この次にしていただきたいわとあぐり社長はそっけなく答える。
うん!この頃ちっとも僕に付き合ってくれないんですねと甘える茂の声を、ドアの外に残っていた雪絵は立ち聞きしていた。
ビジネス第一主義、私は…と、全身姿見の前に立ったあぐり社長は答えるので、ねえあぐりさん…と甘える茂に、会社では社長と呼んでちょうだいとあぐり社長はぴしゃりと叱る。
諦めて社長室を出た茂は、そこに雪江が立っていたことに気づくが、雪江は何事もなかったかのように立ち去る。 茂は慌てて雪江の後についていき、話し合おうと立ち塞がるが、雪江は無視して歩き続ける。
雪江が乗り込んだエレベーターに一緒に乗り込んだ茂は、屋上まで来ると、雪江とキスした名残の口べん時が口についていたので、ハンカチで拭う。
その後から雪江が降りてきて屋上で二人きりになると、今夜一緒に付き合う?と茂が聞いてくる。
社長に断られたから?と雪江が皮肉ると、都合が悪けりゃ無理に誘わないけどと茂は悪びれもせずに聞いて来たので、雪江は悔しい!と言いながら茂の腕をつねるが、その時、茂の腕時計が鳴り始めたので、コンパクトを取り出し化粧直しし始めた雪江は、社長とケコンしたって私の既得権は認めさせていただくわと言い出す。
その時、茂は、ビルの反対側の屋上で会話をしていた太郎と千秋の姿を目撃する。
千秋は、気にすることはないわよ、私たちだって間違って裁断することがあるんですもの…と太郎を慰めていた。
それにね、本当はあのネグリジェ、あなたがハサミを入れたあたりまで切り込んだ方がよくなると思うのと千秋が言うので、まさか…と太郎は疑うが、本当、社長のエレガント好みも良いけど、下着ってもっと生活に密着したものでなくてはダメだと思うのと千秋は自論を述べる。
そりゃそうでしょうな、いや、よくわかんないですけど…と太郎も適当に相槌を打つ。
あなたのおかげで、私アイデアのヒントを得たわとうれしそうに千秋は言う。
そうですか?どうも苦手だな~、堀部販売部長…という太郎の言葉を茂は屋上の端で聞いていた。
後日、茂は太郎たち新人に、今日は諸君にお得意様を訪問してもらうと指示していた。
自分の個性に合わせて特別に下着を注文を下さる大切なお客様だから、失礼のないように充分気をつけてやってくれたまえと茂は念を押す。
それから突進君、特に君の印象は非常に悪いから、注意するようにと茂が指名して来たので、面食らう。
君たちは女性が下着を着ることによって存在するがゆえにだ、常に女性に感謝し、女性に奉仕する心構えを持たなければならんと茂は念を押す。
「ダイアナランジェリーKK」の名前が入ったバッグを持ち、外回りをする太郎には、前からやって来る女性たちが全員下着姿に見えてしまう。
その時、太郎さんあんた、どこに行くんですか?と古川が聞いて来たので、田川テレビの宣伝部長の山下女史だよと太郎は答えると、セールスマンとは重い感じですねと、古川も大きなバッグを抱えて答える。
その時、よお!と声をかけて来たのはタクシーに乗った荒井だったので、彼はコネがあるので軽い気持ちなんですよと古川はぼやき、どうです、地震ありますか?と聞いてくる。
太郎は目の前にあった福川警察署の玄関先に立てかけてあった「押し売りはスグ警察へ」と書かれた看板を発見し、全然ないねと呟く。
山下亭にやって来た太郎は、門の内側で唸っているブルドッグを見つけびびっていると、近づいた自転車の女性や警官が自分の方を見ているのに気づき、余計に緊張する。
その後、なんとか自宅に入れた太郎だったが、しょうがないね、お前さんみたいな新米よこして、下着のことわかるのか?と山下ヨシ(高橋とよ)は、昼間からジョニ赤などを飲みながら上から目線できたので、あ、わかるつもりです、少しは…と太郎が答えると、見せてみなと高飛車な言い方をする。
バッグから見本をいくつか出すと、ブラック!とヨシが言うので、黒の下着を差し出すと、吉はその場で着替えようとして赤いブラジャーが見えたので、太郎は思わず目を逸らす。
流石にヨシの方も気後れしたのか、2階に行って着替えてくる。
その時、水が流れる音がしたので、驚いて周囲を見回した太郎は、庭先の小便小僧の音と気付き苦笑する。
さらに、ヨシが置いていったジョニ赤が珍しく、栓をとって中身の匂いにうっとりした太郎は、つい味見をしたくなるが、庭先からブルドッグが睨んでいたので、逆に睨み返してやると、ブルドッグは逃げていく。
その時、おいちょっと!と言いながら黒い下着に着替えたヨシが、そのままの姿で階段を降りて来ると締めてくれ、不自由ってありゃしねえと背中を見せて来たので、太郎がし中を閉めてやり、どうですか?と聞くと、もっとキツくと指示される。
良いですか?と聞いても、もっと!案外力ないんだね、男のくせに…と言われてしまう。
太郎が懸命にコルセットを締めていく内に、ヨシは気を失いかけてしまい、太郎にはその顔がブルドッグに重なって見えてしまう。
這々の体で屋敷を逃げ出した太郎だったが、君のような粗雑な神経の持ち主には適さないんだよ、こういうデリカシーを要する種類の仕事は…と言う茂の姿が思い出される。
次に太郎が訪れたのはミッションスクールで、社長の出身校だ、粗相のないように気をつけたまえよと言っていた茂の姿が思い出される。
その茂のイメージが学園のドアをノックする。
空き集会所で待たされていた太郎は、思わず足を机の上に放り出し、大欠伸をするが、その時、部屋に飾られていた神父やシスターの肖像画が目に止まり、すぐに居住まいを正す。
その時、教会の鐘の音が響き、シスターが1人入ってくる。
釣られて太郎も立ち上がると、数十人の女学生たちが入って来て椅子に腰掛ける。
シスター(原泉)は太郎に近づくと、ご苦労さま、お待たせしました、私、寄宿寮の寮母です、生徒たちと一緒に拝見しましょう、どうぞと声をかけてくる。
はっ!と恐縮した太郎は、バッグを開け、下着を一つ取り出すと、これは我がダイアナ会社社長長野アグリ女史が、母校の皆さんのためにデザインした清楚にして、かつエレガントなスタイル!いかがですか?と披露するが、女生徒たちは全く無反応だった。
ではこれ!生地はかの有名なニッポウステロンを用いてありますので、シワにならない、肌触りの良さ、洗濯してもアイロンがいらないと言う便利なもんですと別の下着を見せ、いかがです?力説するが、これも全く無反応。
ではこれ!エレガントスタイルのハイクラス!と別の下着を広げて見せた太郎だったが、別のシスター(伊藤慶子)がやって来て寮母に何事かを告げる。
洗練されたデザインを入念に仕立ててあります!すごいでしょう?どうですか?と太郎が説明する中、2人のシスターは出ていってしまう。 1人取り残された太郎は、なんとか言ってくださいよ、良いとか悪いとか…、お願いしますと女生徒たちに頭を下げて呼びかける。
これどう?それじゃあ、これどうですかと色々出してみせるが、だめ?それじゃあ俺なら良いでしょう、可愛いよと勧める太郎だったが、やっぱり反応はなかった。
困りきった太郎は、バッグの底に入れていたピンクの下着を見つけるが、それは千秋が、あなたの失敗からヒントを得て作ったの、でもこれはミッションスクールの生徒には向かないわと言っていた商品だった。
それでもそれを取り出した太郎は、ではグッといかすやつ!本年度のデザイン賞に輝く、寝巻きはダイアナの代表作品!と言いながらピンクの衣装を取り出すと、女生徒たちが一斉にどよめき出す。
素敵~!ピンクよ!と言いながら、全女生徒が太郎の元に殺到してくる。
そこに寮主が戻ってきて、静かに!静かになさい!と叱ったので、女生徒たちの騒ぎは治る。
女生徒たちは元の椅子に戻ると、シスターはピンクの下着を取り上げ、なんですこれは?こんな派手なものを頼みましたか?と聞いて来たので、いや、それはその…と太郎は口ごもってしまう。
この噂はすぐにあぐり社長の知るところとなり、社長室に呼び出された千晃と太郎は、千秋さん、ご自分の物でしたらどんなデザインをなさろうとご自由ですけど、ダイアナの商品としては困りましてよと説教されることになる。
申し訳ありませんと昭恵が謝ると、いや、僕が勝手に持ち出したのが悪いんですと太郎が言うと、言い訳は良い、君たちは社長に恥をかかせた挙句、大切なお得意様まで」犠牲にしようとしている、会社にとっては大損害だと茂が指摘したので、すみません、全部僕の責任で千秋さんは関係ありませんと太郎が答えると、黙れ!なんだ貴様の傲慢な態度は!と重は叱りつける。
僕はおとなしく謝っているのですと太郎が言うと、おとなしく?おとなしくだと、このやろう!と茂は激昂し、太郎の胸ぐらを掴んだの、もう良いわよ、茂さん…、おやめなさい!とあぐり社長は宥める。
いや、こんな図々しい奴はうちの女の子たちも迷惑しますよ、あなたがクビにしないなら僕がこいつのコンジュを叩き直してやる、おい、出ろ!と茂は言い放ち、社長室の外に誘い出すと、ドタバタ音がし出したので、あぐり社長、千秋、雪江の3人はドギマギする。
部屋の額縁が落ちるほどのドタバタ音がした後、太郎が先に部屋に戻ってきて、今日限り辞めさせていただきますとあぐり社長に申し出、頭を下げると退出したんで、ちょっと!ちょっと待ってよ!とあぐり社長は後を追いかける。
千秋と由紀恵も一緒に部屋の外に出るが、雪江はそこで伸びていた茂を見つけて、あら!と驚く。
その後、社長のピンク電話がなり、あぐり社長が出ると、うん、社長?あのキングサイズの男、良い社員だね、気に入ったよ、これからうちの係はアレにしてくれないかねと、相手の山下ヨシは申し出る。
は?はあ…、ありがとうございます、その…、実はせっかくでございますけど…とあぐり社長が答えると、折角も八角もあるもんか、うちはあの男でなきゃダメ、すごい力なんだ、グッと絞められて良い気持ちでね~などとヨシが言うので、はあ?とあぐり社長は戸惑うが、とにかくね、あの男を寄越さなきゃ承知しないよ!とヨシは要求してくる。
電話を切ったあぐり社長は、前後策を考え、困ったわね~と嘆くが、その時また電話が鳴り出す。 はいと出たあぐり社長は、ヨハンナ学園?と電話相手を聞き驚くと、もしもし、あ、先生?あぐりでございますと挨拶し、この度はなんとも…と詫びようとするが、なんですって?ストライキ!生徒が…とあぐりは唖然とする。
聖ヨハンナ学園では「白いネグリジェの強制反対!!」「服装の自由を与えよ!!」「白色統一絶対反対」「我色を浴す、故に我在り!!」「神は人間に色彩感覚をお与えになった!!」などと垂れ幕が出ており、女生徒たちは庭先で円陣を組み抗議の歌を合唱していた。
人間、どんな所にいたって、米の飯はついて回りますよと、太郎と飲みに出た古川は慰める。
骨を埋む、ダイアナ会社のみならんや、人間至る所、おむすびがあるんですと古川は巨大なおにぎりを受け取りながら1人演説する。
女性本体の会社に使われているなんて、男子の面目、いずれにあるや!と古川は嘆くので、おい、君まで辞めろとは言っとらんよと太郎は言い返す。
すみません、やっとありついた飯のタイムな物で…と古川は言い訳し、巨大おにぎりにかぶりつく。
すると、店の女の子が、あら、ちょっとイカすじゃないの、見せて!と言い出したので、いや、これはここから出して見せてはいけないものなんだと古川は断る。
そんなこと言ったら余計見たくなるわよ、ねえ見せて!と女の子が言うので、ノー!と古川が拒否すると、女の子は古川の頭を叩いてくる。
古川のスーツの下から抜き出したものを見た女の子は、まあ素敵、いただいても良い?と言うので、おいおい、店の先でそんなもんひけらかすなよと店の主人久平(花澤徳衛)は注意する。
その下着を持って奥へ引っこんだ女の子を見て、女将も、本当に気の早い子だよと呆れる。
そんな中、太郎の頭に帽子を被せてきたのは千秋で、太郎さん、あなたは会社を辞められないわよ、あなたは会社にとって重要な人だからと隣に座って告げる。
ビールを飲みながら、揶揄わないでくださいよと太郎は答えるが、本当よ、あなたの失敗は、実は成功なんだからと千秋は言う。
セールスも大成功となれば社長はもちろん販売部長だってあなたを憎んでも手放すわけにはいかなくなるじゃないと千秋が言うので、よかったですな太郎さん!と古川も祝福してくる。
しかしですよ、僕は仮にも上役を殴ったんだから当然辞めるべきだ、いや、辞めるつもりで殴ったんだからなと太郎は言い返す。
それはもう問題じゃないのよ、社長が…と千秋が食い下がろうとすると、社長がなんと言おうと、僕は自分の意思で行動する男ですと太郎は主張する。
太郎さん、それは意固地ですよと古川が反論すると、君は黙ってろと太郎は跳ねつける。
太郎さん、私社長に変わってここへきたのよ、あなたは社長に謝らせたいの?そしてうちの女性たちにあなたの前に跪いて欲しいとでも言いたいの?と千秋は詰め寄る。
いや、僕はそんなに偉くないんだから、回被られたら迷惑だな、いや、ご使者の講義、承るだけ承っておきましょう、ご苦労様でした…と、太郎は急に時代劇調になる。
お酒?おむすびいかがですか?と酔った太郎は千秋に勧める。
結構よと言って立ち上がった千秋は、ご意見に満腹して吐きそうだわと言い捨てると帰ってゆく。
それを見送った古川が、どうもまずいなと言うと、どっかで飲み直すか?と太郎は誘うが、僕も満腹ですよと言って、古川は腹をさすり、嗚咽をすると、女将が吐くためのどんぶりを差し出してきたので、古川は驚く。
犬養益代の合気道道場にやってきたあぐり社長は、ねえ、本当にお願いするわ、考え直してちょうだい、もう誰にもあなたのことをとやかく言わせないからと説得しようとするが、女中のカメがそこに茶を運んでくると、カメや、いいんだよ、お客様、もうお帰りでしょう?と稽古しながら益代が声をかける。
謝るわ、あなたがあなたを見る目がなかったこと、この通り…とあぐり社長が言って、頭を下げてきたので、それは困りますよと言って太郎はあぐり社長の手を上げさせると、困るのは私の方よ、謝らせて、謝ってあなたの気が済むなら、ね?とあぐり社長は下手に出て、また謝ろうとするので、いや、本当にそう言うことしないでください、本当に!と太郎は必死にあぐりの手を上げて防ごうとする。
そして、参った!と言った太郎は自ら手をついて頭を下げ、社長の熱意にはまいりました、色々お世話かけてすいません、また復職させてもらいますと太郎は答える。
それを聞いたあぐり社長は、そう!ありがとう、ありがとうと喜んで太郎の手を握りしめる。
それを聞いた益代は、気落ちしたのかがっくり膝から崩れ落ちるが、そこに中田と一緒にやってきた辻本が、あぐりさん!と社長を見つけて声をかける。
あら、おじさまとあぐり社長も辻本に気づいて近づくと、あなたもここへ弟子入り?と辻本が聞くので、いいえ、その…、ちょっとこちらの社員のところに寄らせてもらいましたのとあぐり社長は太郎を紹介しながら説明する。
ああ、太郎さんの就職先ってのはダイアナだったの?と辻本が言うので、ええとあぐり社長が答えると、それだったら、なんだってお力添えができたのに…と辻本は言う。
優秀な社員よ、絶対に手放せませんわ、さ、太郎さん、善は急げ、気の変わらないうちに一緒に会社行きましょうと誘うが、そんな会話を聞いていた益代は面白くなさそうだった。
あぐり社長と一緒に帰りかけた太郎に、太郎さん、忘れ物!と言って、カメが投げてきた帽子が太郎の頭にかぶさる。
出社した太郎は、屋上で再開した千秋に、やあ、どうも昨夜は失礼しましたと頭を書きながら詫びると、いえ、私こそ、でもよかった、ほっとしたわと千秋も嬉しそうだった。
もう吐き気は治りましたか?と太郎が揶揄って笑い合う。
僕正直に言うとね、この会社に入社して依頼、毎日女の下着の中に鼻突っ込んでいるみたいでうんざりしていたんです、ところが、偶然ある機会から明るい希望を発見したんです、それ分かりますか?と太郎が聞くんで、わかんないと千秋が言うと、それはですね、小柴千秋のデザインによるあのネグリジェを見た時からですと太郎は打ち明ける。
光栄だわと千秋が言うと、それもちょっとした躓きから全てを失いかけました、無論、僕のわがままからなんですが、そんな男を無条件に迎え入れてくれる社長やあなたに感謝すると同時に、いつも迷惑ばかりかけて本当にすまないと思ってますと太郎は続け、昭恵に頭を下げる。
そんな太郎を見た千秋は、突進太郎としては、いささか神妙ねと揶揄う。
太郎は恐縮し、偽らざる告白ですよと言うと、本当ですか?とそこにやってきたのは古川と荒井で、千秋さん、聞きましたよと荒井も言うので、何を?と千秋が問いかけると、あなたとモデル写真を撮りに行くことですよと荒井は言い、僕も一緒に行くんですと古川も嬉しそうに伝えてくる。
へえ?太郎さんは明日…と千秋が聞くと、僕は社長のうちに来いって言われたんですよ、何の用かわからないんですがねと太郎は答えるので、ふ~ん…、そう…と、千秋は釈然としない表情をする。
海辺に益代と共に車でやってきた辻本は、中田ら釣り仲間と合流すると、いやあ、遅くなってすまん、すまん、ダイアナの社長来ておらんかね?会社の方も途中で拾ったんだと言い、車からは茂も出てくる。
一緒に行く約束すっぽかしてどっか行っちまったのかな?と辻本がぼやくと、さっき誰かと出ていったぞと中田が言うので、それを聞いた茂は怪訝そうな顔になる。
乱暴だな~、女一人で…と茂が言うと、いやあ男と二人だよ、先生のところにいるなんとか太郎と一緒でしたよと中田は言う。
突進と?と茂が驚くと、それを聞いた益代も不機嫌になる。
太郎は、あぐり社長が操縦するモーターボートに乗っていた。
さらに近くの海岸では、千秋が参加し、下着のモデル写真撮影が行われていたので、金jこの漁師たちが野次馬で集まっていた。
その時、千秋が、ねえ、カメラマンどうしたの?と、同行した古川と荒井に聞く。
さっきまでいたはずのカメラマンがいなくなっていたからだ。
あ、あそこですよ!と荒井が指差した先では、トップレス姿の2人の海女をモデルに撮影会が開かれており、ダイアナが雇ったカメラマンもその中で一緒に撮っていた。
それを見た千秋は、バカにしてるわ…、やめた!中止!と言い出す。
さらに千秋は、近くを走り抜けるモーターボートを見て、あら?と驚く。
あれ社長じゃないですか、一緒にいるのは太郎さんらしいなと古川と荒井が言うので、ぼやぼやしてないで、帰るのよ!と千秋は言い、やっぱりそうだなどと2人が話していると、帰るの!とヒスを起こす。
そんな中、モーターボートの調子が悪くなり、あら、おかしいわ?どうしたのかしら?とあぐり社長は止まってしまったボートの上で慌て始める。
油が切れたんじゃないですか?と太郎が聞くと、そんなはずないわよと言いながら、あぐり社長はエンジンの様子を見に行く。
一方、辻元や益代は、苅田小舟の上で釣りを楽しんであり、かかった、かかった!と楽しんでいたが、益代がさっぱりと言うので、バッグの中に缶詰のビールがあるからどうぞと勧める。
益代は、ええ、遠慮なくいただきますわと言って缶ビールを手に取り、これは見事ですな、中田さん…、これは800匁はありますぞ、どうだ、諸君!などと、他の釣り仲間たちは船上で喜んでいた。
缶を開けてビールを飲もうとしていた益代は、ビニールみたいなものが口に入ったので、なにこれ?と驚くが、こりゃすまん、こんなものが入っていたと辻本は詫びるが、缶詰の中身はビールではなく女性用の下着だったことがわかり、まあ!と益代は放り出す。
モーターボート上では、あぐり社長と太郎が悪戦苦闘していた。
望遠鏡で近くを見ていた益代がこのボートを見つけ、まあ!と言うので、何か見えますか?と茂が聞くと、まあ、あんなところで…と益代は嘆く。
僕にもと言って望遠鏡を奪った茂が覗くと、あ、突進が社長と!と驚く。
ボート後部でエンジンを直している二人が何かいちゃついているように見えたからだ。
やがて、二人が一緒に体をかがめたので、さらにあらぬ想像をしてしまう茂。
夢中になって望遠鏡を覗いたまま前のめりになりすぎた茂は、大きいのが来たよ!と喜ぶ辻本の声の中、海に転落してしまう。
益代らは驚くが、釣っていた辻本は、大丈夫、大丈夫、人間はすぐ浮かんでくるからね、望遠鏡を放さんように言ってくれとアドバイスしながらも、あ、かかった、かかったよ!と自分の釣果を喜ぶ。
望遠鏡を持ったまま茂は海上に浮かび出る。
その後、茂は自力で岩場に辿り着き、さっき益代が捨てたピンクの女性用ショーツを履いて岩場に立つと、また望遠鏡でボートを覗いてみる。
そんな中、どこを探しても見当たらないよ、どっかから上がったんじゃないのかねと辻本たちの声が戻ってくる漁船から聞こえてくる。
それに気づいた茂は思わずくしゃみをする。 あぐり社長と太郎はモーターボートで漂流していた。
操縦席に戻ったあぐり社長は、寒いわ、この船どこに行くのかしらと嘆くので、太郎は自分のシャツを脱いで着せてやりながら、こうなったらもう全てを運に任せるんですねと言う。
やがて、モーターボートは小さな漁船に発見され牽引されて陸に戻る。
漁師から布団を借りてきた太郎が、浜辺の小屋で待っていたあぐり社長の下に戻ってきて、この先6kmの村に電話があるそうですよと伝えると、もう良いわ、運に任せましょうとあぐり社長は答える。
どうぞ、これで休んでくださいと布団と毛布を広げた太郎が勧める。
あなたのは?とあぐり社長が聞くと、いや僕は野宿には萎えてますから、どうぞと太郎は言うと、網の上に横になって目を瞑るが、自分の上にあぐり社長が服をかけてきたので、いや僕は…と遠慮するが、下着姿になったあぐり社長は、よくはないわと笑顔で答える。
あぐり社長は布団と毛布にくるまって寝ると、太郎も社長の服を引き上げつい匂いを嗅いでしまうが、慌てて服を跳ね除け横向きで眠る。
夜中、ふとあぐり社長が目覚めると、太郎にかけていた自分の服が毛布の上からかけてあったのに気づき、慌てて起き上がりメガネをかけて小屋の中を見渡すが、太郎はいなかった。
外に飛び出すと、岩場に太郎がしゃがみ込んで焚き火をしていたので、ああ驚いた、目を覚ましたらいないんですものとあぐり社長は言う。
太郎は、もうすぐ夜が明けますよと言うので、あぐり社長も横にしゃがみ込み、ちょっと楽しい思い出になるわねと言いながら焚き火に手をかざす。
僕は楽しくないですねと太郎が本音を言うと、あなた堀部専務や息子の販売部長どう思って?といきなりあぐり社長は聞いてくる。
いや…、困るな、そう言う質問…と太郎が返事をためらうと、まあ、あなたの鉄拳制裁が答えになってるんだけど、私ね、堀部の息子と結婚したくないのよ、だからあなたを誘って彼をすっぽかしてやったのとあぐり社長は打ち明ける。
それを聞いた太郎は、ダシですか?僕は…と苦笑する。
効果としては満点だったわ、こんな人でもお前よりマシだって言う…、ごめんなさい、怒らないでねとあぐり社長は慌てて言い直す。
はあと太郎が答えると、あの人と朝比奈さんのことだったら知ってるのよ、私が欲しいんじゃなくて私の財産を狙ってることも…とあぐり社長は言う。
それだけわかっていれば断れば良いじゃないですかと太郎が言うと、それが今までできなかったのよ、周りの人間はみんな堀部を信用してるでしょう?1人ぼっちだったのよ、そこへあなたが現れたの…とあぐり社長は答える。
現れて巻き込まれたかと太郎が苦笑すると、そうとあぐり社長も笑い、だから私の力になってくださらない?と頼む。
なりますよと太郎が即答すると、嬉しいわと言いながら、あぐり社長は太郎にうなだれかかる。
寒いんですか?夜明けは寒いんでね~と言いながら、太郎は位置を移動し焚き火をいじり出す。
よかったらうちに来て、ずっと居てくださらない?とあぐり社長は誘うが、さあ、それは…と太郎は戸惑う。
その時、あぐり社長がくしゃみをしたので、噂してますよと笑った太郎も釣られくしゃみをする。
会社に戻った茂もくしゃみをしており、けしからん!非常識極まる行為だ!一体どう言うつもりなんだ、あの娘は…と堀部専務が憤慨していた。
茂も、これは確かに計画的ですと言いながら、またくしゃみをする。 デザイン室では、やっぱり僕たちの見たモーターボートに乗ってたんですと荒井が女性社員たちに話していた。
もう何と言われても弁解の余地はないわね、2人で一夜を明かしたとなれば…とと雪江も反応すると、まさかそんなこと…と古川は否定するが、ないとは断言できないでしょう?と雪絵は主張する。
夜になるそうですよ、東京に帰ってくるのは…、4時間くらいで帰れるんだから、ゆっくり休息をお取りになってるのよなどとみんなが発言する中、一人マネキン相手に仕事をしてた千秋はイラつく。
「合気道クラブ」に帰ってきた太郎は、戸を叩いても誰も開けてくれないので、外にしゃがみ込んで腐っていた。
通りからチャルメラが聞こえてきた中、太郎は物陰に用足しに立つが、その瞬間戸が開き、出てきた益代は誰もいないので通りに探しに出てゆく。
その後、入口の所に戻ってきた太郎は、戸が開きっぱなしだったので、これ幸いと中に入り込む。
相互、戻って来た益代は、戸に鍵がかかっていることに気づき、あら?太郎さん!開けて!開けてよ!と戸を叩き始める。
その後、道場で、女中のカメを間に挟んで、カーテンで仕切って、太郎と川の字状態で布団に入った益代は、じゃあ太郎さん、社長のうちへ移りたいと言うわけねと聞くと、社長に頼まれたんだし、とにかく僕もサラリーマンになったんだから、いつまでもここに厄介になってるってのはねと太郎は答える。
こんなところにいるのが嫌になったんでしょう!と益代が拗ねると、おい、先回りして変なこと言うなよと太郎は諌める。
ねえ太郎さん…、私、こんなこと言いたくありませんけどね、あなたが福岡から出てきて、就職が決まるまで置いてくれって頼まれて今日まで、お世話って程のお世話してあげられなかったけど、私、兄さんの親友だと思って…、できるだけのことはしてきたつもりよと益代は主張する。
よくわかってますよ、それは…と太郎は答え、何言ってるんだろうな…と言いながら布団を被る。
あなたがちゃんと落ち着いたら、色々と相談に乗ってもらおうと思ってたのね、でも…と益代は続けようとするが、隣のカメのいびきがうるさかったので、枕を投げて黙らせると、枕はカメの寝息で浮き上がったり降りたりし始める。
益代はその枕を手で押さえつけるが、だけどね、僕が言うのはだよ、君とカメちゃんと2人だけのところにいつまでもいるわけにもいかんし…と太郎が答えると、今更そんな水臭いこと言って…、そうじゃないんでしょう?と益代は嫉妬心をむき出してくる。
太郎さん、あなた、あの下着会社の社長さん好きなんでしょう?誤魔化したってダメよ、見たわよ、なにあの醜態はと、海で見たことを追求してくる。
それを笑い飛ばしていたタリウだったが、気がつくとカーテンを挟んで隣に寝ていたカメの片足が自分の布団の上に乗ってきたので驚きながらも、醜態?と聞くと、そうよ、しらばっくれないで!船の上で一体何してたのさ!と益代がカーテンの上から追求してきたので、そりゃサラリーマンは時には社長のプライベートな用だって…と、太郎も立ち上がって言い返すが、益代から嫌い!と言われてしまう。
あんた、あんたって、そんな人だとは思わなかったわ!散々人に心配させといて帰ってきたと思えば…、そんなに出たければ今すぐ出てってちょうだい!ぐずぐずしてたらつまみ出すわよと、ますよはカーテンを潜って太郎の目の前に来ると言い放つ。
いやそれはね…と立ち上がって言い訳しかけた太郎だったが、その手を取られ、益代に合気道で投げられてしまう。
ひでえな、おい…と太郎はぼやく。
まだ足りないわといい、飛びかかった益代は、逆に太郎に投げ飛ばされ、カーテンを突き抜けて寝ていたカメの上に転がる。
益代が出てけ!と叫んだので、寝ぼけたカメが出て行こうとするが、カメ!お前じゃないと益代は叱る。
太郎はやむなく道場を去り、あぐり社長宅の庭先で空手の練習をするようになる。
おはようとあぐり社長が出てくると、おはようございます、昨夜はどうも遅くご迷惑をかけましたと太郎は詫びる。
まさか昨夜のうちに引っ越して来るとは思わなかったわとあぐり社長は苦笑すると、いやあ、僕も追い出されるとは思わなかったんですよと太郎も苦笑いすると、居心地はどう?とあぐり社長は聞く。
太郎は笑顔で、最高です、はあ…と答える。
堀部から電話がかかってきてね、どうするつもりかってすごい剣幕、だから私言ってやったの、私は突進太郎と別れることはできない、茂さんとの婚約は破棄するって…とあぐり社長は言う。
それを聞いた太郎は、ちょっと待ってください、じう団にもそんなこと言って怒らしては…と言い返すと、しっかりしてよ、その実力をこっちに取り戻そうって言うんじゃないの、会社を乗っ取ろうっていう魂胆は見え透いてるんですもの…とあぐり社長は答える。
その時、女中が出てきて、お嬢様、お食事の支度が整いましたと声をかけてくる。
トーストなど洋食が並んだ食卓についた太郎に、ちょっとこれ見て!とあぐり社長が差し出した朝刊には、「モード界の女王来る」「マドレーヌ・グリッフ」「下着ブームに乗って日本へ」「観光旅行の最中」の見出しが踊っていた。
ほお、モード界の女王来たる!マドレーヌ・グリッフ、下着ブームに乗って日本へ…と太郎は、その見出しを読んで感心する。
あぐり社長は、すぐ出かけるわよ、早く済ませてねと言って先に立ち上がったんで、太郎はトーストを全部口に押し込むしかなかった。
一方会社では、茂がくしゃみしながらも、僕は我慢できない、あ、あんまりにも人を侮辱していると怒っていた。
我々を無視するならばだ、こっちにも考えがあるさと堀部専務が言うが、そこには雪江も同席しており、お嬢さんの気まぐれですまない問題ですわと同調する。
先代が亡くなってから、専務が河野家に尽くしてきた誠意を踏みにじったようなものじゃありませんか!と焚き付ける。
新しい会社を作って叩き潰してやりますか?この会社を…と茂が提案すると、それが良いわ、みんながいなくなったらどう言うことになるか思い知らせてやるのねと雪江は賛成する。
そんな手数のかかることをせんでも社長をおん出せばそれでよろしい、株主総会で社長不信任を決議させるんだと専務は指摘する。
そこにノックの音と主に、よう、オッス!と気軽に入ってきたのは「週間モード」の塚口と原田で、また怖い人もお揃いで来たねと堀部専務が言うと、今日は仕事の話、マドレーヌ・グリッフが日本に来るそうですね、遺本のグリッフ、朝比奈さんからご意見をいろいろと…と塚口は言う。
まあ、私がグリッフだなんて…と雪江は照れると、ご謙遜でしょう、マドレーヌがパリから…と塚口が言っていると、窓の外を眺めた茂が、来ました、社長が…と報告する。
車からあぐり社長と共に降り立った太郎は、急いで朝食を食べたのでしゃっくりが止まらなくなっていた。
古川が、あ、太郎さん!と声をかけてきて、大変な評判ですよと言うので、何が?と聞くと、何がって、本当ですか?太郎さんが社長さんお恋人だって言うの…と聞いてくる。
しゃっくりをしながら、誰が言った?と太郎が聞くと、みんな知ってますよと古川は言う。
そこに、千秋が怖い顔で通り過ぎたので、千秋さん!千秋さん、誤解しないでください!と言いながら太郎は追いかける。
しかし立ち止まった千秋は、何をですの?と惚ける。
僕と社長のことについて…と太郎が言うと、デマだっておっしゃりたいんでしょうと千秋は冷たく言い返す。 ええ、実は深い事情があるんですよと太郎は説明しようとすると、どう言う事情ですの?と千秋は突っ込んでくる。
ところがまた、その時々雨を離せないという事情が…と太郎が言い、しゃっくりをして、弱ったな~と頭を抱える。
私、その事情を聞かないうちは、あなたと口を聞きたくないわと千秋は言い、そのままトイレに入ってしまったので、後を追えなくなる。
そこに通りかかった荒井が、すげえな、社長さんと千秋さん、両手に花じゃないですかと嫌味を言ってくる。
黙って近づいた太郎は、荒井を殴り飛ばす。
その後歩き始めた太郎だったが、突然騒ぎが聞こえたのでそちらを見ると、殴られて女性トイレに倒れ込んだ荒井に、女性社員たちがトイレットペーパーやモップなどを投げつけているところだった。
会議では堀部専務が、ペーパープランですよ、それは…、マドレーヌ、グリッフがですよ、日本にいるのはやね、わずかに1日、これじゃあいかなるプランも実行不可能ですよとあぐり社長の提案を否定する。
マドレーヌの接待は新和紡績に決まってるんですよ、うちは食い込む余地はありませんよと茂も発言する。
しかしあぐり社長は、新和紡績は新和紡績、ダイアナはダイアナよ、ダイアナ下着会社が海外市場に進出するためにはどうしてもマドレーヌ・グリッフのコレクションを持たなければならない、ダイアナの製品を彼女に印象付ける絶好のチャンスじゃありませんかと反論する。
しかし…と茂が言うと、太郎は思わずしゃっくりをしてしまうが、茂は構わず、外人は旅行中に仕事の話は歓迎しませんよと忠告する。
エチケットに反して不愉快な印象を与えてしまっても…と雪江も反対する。
やってみなければわからないじゃないの?そう思わない太郎さんとあぐり社長が聞いてきたので、そうですね、可能性がないとは言えないと思いますと太郎は追従する。
おい、君はさっきからこの席にいるが、一体どう言う資格で出席してるんだ?と茂が質問する。
するとあぐり社長は、今日から私の秘書よと答えたので、ふ〜ん…、ではこの件は突進君に任せるんですな?と堀部専務が皮肉り、他のメンバーと一緒に退室してしまう。
千秋も、ふんと言う感じで出ていってしまう。
2人きりになったあぐり社長が、太郎さん、あなたやれる?と聞くと、余計なこと言っちゃったな…と弱気になった太郎だったが、またしゃっくりをして頭をかくしかなかった。
羽田空港に旅客機が着陸し、マドレーヌ・グリッフ(ドナー・カルソン)が来日する。
スカンジナビア航空会社のお知らせを申し上げます…、987便は北極経由サンフランシコ行きから到着いたしました、お客様は14番ゲートからお入りになりますと空港内で流れる中、神話紡績の中田専務が社員たちと待ち受けていた。
一方、ダイアナランジェリーの方も、あぐり社長以下、堀部親子、荒井、古川、雪江、千秋などが待ち構えていた。
これじゃ突進も処置なしだなと茂が呟く。
旅客機から降りたグリッフに、パイロットに化けた太郎が、辞書を頼りに話しかけ、えーっと、何だっけな?と迷っているのと、何ですか?私、日本語ペラペラよくわかりますとグリっふの方が話しかけてくる。
おお、あなた分かる?よろしいね、あなた、私に付いてくる、荷物ホテルに運ばせる、オーケーね?と太郎は片言の日本語で話しかける。
するとグリっふもオーケーと笑顔で答える。
一方、14番ゲートで待ち構えていた中田たちは、なかなかグリッフが出てこないので手間を食うな〜と苛立ち始める。
そこに専務、大変です!マドレーヌ・グリッフが消えてなくなりましたと部下が報告にくる。
何?消えた!と中田は驚くが、それを聞いていたダイアナの方も唖然とする。
そんな、こんなバカなことがあるもんか、あ、税関の方も行ってないんです、とんでもないですと騒いでいる新和紡績の騒ぎを聞いたあぐり社長や千秋たちは、何事かを察し微笑み出す。
新和紡績の中田の元にはマスコミも集まってきて、専務、マドレーヌが消えたってどう言うわけです?と質問してくる。
中田も、驚きましたね、こっちで聞きたいくらいですよと答えるしかなかった。
隠してるんでしょう?と記者は疑うが、とんでもないと中田は否定する。
そんな騒動をよそに、太郎は空港の外にグリッフを連れ出すと、アルビット、早く、あるビットでお願いしますと、グリッフに話しかけ、待たせていた車に一緒に乗り込む。
2人を乗せた車はすぐに走り出す。
「銀座東急ホテル」に着いた太郎は、部屋でダイアナの赤いネグリジェをグリッフに見せると、トレビアン!とっても素敵ね、みんなダイアナで作りましたか?とグリッフは気にいったのか聞いてくる。
もちろんですと太郎が答えると、みんな私にくれるのでございますか?とグリッフが聞くので、もちろんですと太郎が答えると、素敵ですねと喜んだグリッフは太郎に握手を求めてくる。
それで先生にお願いがあるんですが、先生のデザイン…とまでは言いませんが、何か参考になるアイデアを我が社にいただけないでしょうか?と太郎は申し出る。
するとグリッフは、それダメです、私パリの下着会社と契約があります、他にデザインあげられません、残念でしたと頭を下げる。 サンキュー太郎、お酒飲みませんか?あなたのおかげで大変楽しかったですとグリッフは誘ってくる。
太郎は思わず、こっちはちっとも楽しくねえやと呟いたので、何ですか?とグリッフは聞いてきたので、いえ、こっちのことですと太郎は頭を掻く。
会社で待機していたあぐり社長や堀部専務だったが、電話がかかって来たので、それに出た堀部専務は、あ、もしもし、突進か?うん?今どうしとる?と聞くと、その受話器を奪ったあぐり社長が、今どこにいるの?と聞くが、受話器からは、酒に酔って楽しげに歌いまくるグリッフの歌声しか聴こえてこなかった。
せめて遠い遠い、東京の空に飛んでいけ♩と陽気に部屋で歌っていたグリッフは、太郎が持っていた受話器を取り上げてしまう。
そこキャバレー?ナイトクラブ?とあぐり社長が聞くと、えっ?ホテル!と聞いて驚く。
その頃、「週刊モード」の塚口と原田は、廊下でイラついていた。
そこにやって来た茂は、わかったぞと言うので、どこです?と塚口が聞いてくるが、ちくしょう、うまくやってると茂は悔しがる。
ホテルでは、酔って歌いまくるグリッフが、受話器を取り上げてテーブルに置くと、太郎を抱き寄せて、太郎、今夜泊まっていきなさいなどと誘惑してくる。
それはできませんよと太郎が拒絶するが、泊まれば、デザインあげますとグリッフは言い出す。
困ったな〜、酒癖悪いなこの女…と太郎は小声で愚痴る。
私にミリキ(魅力)ありませんか、太郎?と赤いネグリジェを着たグリッフは聞いてくる。
ミリキおありですよ、だけど僕には恋人があるんですと太郎は説明する。
しかしグリッフは、太郎の顔を両手で支えると、あっても平気でございますと迫ってくる。
太郎が彼女の手を離させると、グリッフは意味ありげなウィンクをして来て自らカーテンの奥の寝室に消える。
太郎は顔の汗を拭うと立ち上がり虎狩りは自信がねえよと吐き捨てる。
それでもグリッフは、太郎!と呼びかけ、カーテンから顔と素足を出して誘ってくる。
グリッフはまたウィンクして来たので、ああ、とってもいけねえやと太郎は弱きになる。
その時電話がかかって来たので、それに出た太郎は、もしもし?ええ、はい、わかりました!と答えたので、何がわかったですか?とグリッフが聞いてくるが、新和紡績と新聞社の者が来たそうです、僕帰ります、さようならと言って、退室しかけるが、太郎!ちょっと!と呼びかけたグリッフは、ピンクのブラジャーを投げて寄越し、それ私のデザイン、まだ誰も知りません、太郎にあげます、今夜の思い出のためにね…と教えてくれる。
持ち帰った太郎のブラジャーをもとに、ダイアナはカラーバリーションを増やした「マドレーヌブラジャー」なる商品を売り出す。
週刊誌にも「女の下着は夜作られる」「マドレーヌ・ブラジャーの秘密」「口説かれた金髪デザイナー」などという扇情的な見出しで売れる。
あぐり社長は、もう一度あなたにしてもらいたいことがあるのと太郎に言い出したので、何です?今度は…と聞くと、堀部たちは今や私たちの実力に驚いているだろうと思うのよ、そこで一発追い討ちをかけるのよ、ダイアナの下着ショー!一発決定的パンチ!ダイアナの水着ショーっていうわけ、どう?名企画だと思わない?と聞いてくる。
僕にどうやれっていうんですか?と太郎が困惑して聞く。
それはね、下着ショーも水着ショーも結構ですけど、社っ張が1人で企画を立てて、それを仕付けるなんて、部長の立場がありませんわねと、話を聞いた雪絵は堀部親子の前で憤慨する。
部屋で釣竿を伸ばしていた茂も、突進に協力せよだって、飛んでもない!誰が、くそ!と憤る。 今度もやな、うまくいくと思ったら大間違いだ、まあ、やらせておくさ…と堀部専務も言う。
しかし、太郎の計画を聞いた古川は、案外また成功するんじゃないかな?とデザイン室仲間の前で楽観的になる。
荒井も、モデルをホテルに連れ込むか?とまた嫌味を言うと、多分、そんなとこよ、本当に何をするかわからない人だから、盲蛇に怖じず、そう言う意味で期待もできるけど、怖いな、そんなのと女性社員たちはめいめい口にしていたが、そこにやって来た太郎が、ショーについて皆さんのご意見を伺いたいんですけど…と話しかけてくる。
ああ、そうね‥と、急にみんなの口は重くなり、どうしましょうと荒井も人ごとのように答える。
それより荒井さん、映画の試写会見せていただけるの?と千秋は、太郎に見せつけるように笑顔で荒井に話しかける。
もちろんですとも喜んで…、あなたにぜひお見せしたい写真なんですよ、ほら…と言いながら、荒井はチケットを出してみせる。
他の女子社員も集まってきて、あ、フランス映画ね、みたいわ〜、ヌーベルバーグよなどと盛り上がり始めたので、取り残された太郎は孤立する。
合気道クラブでも、中田専務が、けしからん、突進という男は!こっちは飛んだ道化だよと益代を前に怒っていた。
でもおらんのですよ、ここには、今…と辻本が説明する。
就職できたらこんな所にいたくなくなったんでしょう、さっさと社長さんの所へ引っ越していきましたよ、社長さんが好きなんでしょう、きっと…と益代も苦笑しながら説明する。
辻本は、そんなことはないだろうけどねと慰めると、いやわからんよ、マドレーヌ・グリッフを口説き落とした男なんだからね…と中田は言い返す。
益代は、もうやめましょう、この話、稽古!というので、はい、お願いしますと辻本が立ち上がる。
止め!と他の練習生たちの稽古を止めると、辻本との稽古を益代は始める。
あまりに何度も投げられすぎたのか、辻本は首を負傷してしまう。
首に針ぐるりを貼った辻本は、堀部はね、河野商店の功労者なんですよとあぐり社長を呼び出して説教する。
息子とあんたの婚約はね、亡くなったお父さんがその恩義に報いるために交わしたもん!ああ、いてて…、あんたの家から一方的な理由で破棄してね、それであんた構わないと思ってるのか?と辻本が、茶を運んできた女性社員の胸のハンケチを釣竿で引っ掛けながら聞くと、良いと思いますわ、その時、私、5つだったんですよとあぐり社長は言い返す。
それでも辻本は、実力者の堀部を怒らせたらね、あんた自分の会社を自分で潰してしまうような結果になってしまうのわからないかな?と説得してくる。
そりゃ、堀部に感謝すべきことは感謝してますわ、ですけど、実力者でも個人の生活にまで圧力をかけてくるなんてもってのほかよとあぐり社長は言う。
まるで脅迫するみたいな態度で結婚式の日取りを決めさせようとしたり、あんな男に実力者顔をされるくらいだったら潰れたって良いわ、会社なんかとあぐり社長がいうので、を知っての話か?と辻本は首を痛がりながら聞いてくる。
さあ、それはまだ発表の段階には至ってないんだけど…とあぐり社長は言葉を濁す。
よろしい、私はね、父さんの友人としてね、これまでもできるだけのことはしてあげたんだけど、これからは単位取引会社の代表であり、ダイアナの株主としての交渉するように留めます、下着ショーでもね、水着ショーでもね、突進さんと何でも2人で好きなようにおやんなさいと辻本は冷たく言い放つ。
う〜ん…、おじさま〜とあぐり社長は甘え声で近づくが、そんな声出してもだめ、自分勝手の企画立てて、無駄遣いばっかりしてるって堀部が言っていたと辻本はいう。
まあ、そんなことを!とあぐり社長は驚くと、一言だけ注意しておこうね、株主総会でね、不信任状を突きつけられないように注意したまえと辻本は言いながら、首の痛みに顔を歪める。
飲み屋で太郎と一緒に待っていた古川が、面白かった、映画?と聞くと、荒井と共にやってきた千秋は、ええ素敵だった、と嬉しそうに報告する。
わかるのかね、ヌーベルバーグと古川は呟くが、千秋と同じテーブルに座った荒井は、ああ、喉が渇いた、あ、ビール!と注文し、千秋さんもどう?と聞くと、千秋は嬉しそうに、ええ、いただくわと答える。
あの女優の下着は素晴らしかったな〜と荒井がいうと、私たちいつまでもマドレーヌブラジャーなんて言ってられないわよと千秋もちょっと近くにいた太郎を意識したように答える。
そうですよ、下着はもはやセクシーではなくショッキングであるべきですよなどと荒井は言う。
そこまで言ったら、下着の必要がなくなるじゃないかとカウンターで飲んでいた古川が言い返し、俺たちはみんな失業だよと付け加える。
そんなこと言っている人たちこそ、下着会社に務める資格なんかないわよと千秋も言い返す。
本当ですよと荒井が言うと、いや、飛躍が脱線になってはいけないと言いたいんですよと太郎が言い返すと、感覚の相違ね、お話にならないわと千秋は無視する。
確かに今度の下着ショーは見ものですぜ、そうだよ、色んな意味でねと言いながら、「週間モード」の塚口と原田が店に入ってくる。
かくして、ダイアナ、ダイアナ、あなたも私もダイアナ♩というダイアナのテーマソングが流れる中、「ダイアナ下着ショー」が開催される。
ダイアナ、良い下着、ダイアナ、はあ素敵だわ、ぴっちりさらさらふんわりやんわり…とテーマソングの中、大勢のモデルが舞台に並ぶ。 それを客席から見守る太郎。
茂のところに来たのは塚口と原田で、イカすじゃないですか、なかなか…と塚口が褒めると、またトップ記事かと茂は揶揄う。
効果100%ですぜと原田が勧めると、今度は特別にPR料払わんよと茂は答える。
あぐり社長も太郎のそばに来て、ショーを見守る。 原口はショーの様子を写真に撮り始める。
どうやら成功ね、ご苦労様とあぐり社長が労うと、今度はフィナーレですと太郎も答える。
モデルが登場すると、突如、数人の下着が脱げるというハプニングが発生、会場に悲鳴が上がる。
千秋弥太郎、あぐり社長たちは驚くが、茂と荒井はニヤリと顔を見合わせる。
舞台に飛び乗った太郎は、ライトを消すように命じる。
会場の悲鳴を聞き、あぐり社長は絶望する。
原田が写した、この会場パニックと太郎の写真を前に、なかなか二枚目だなと、荒井や「週刊モード」の記者たちとキャバレーで飲んでいた茂は上機嫌で揶揄う。
吠える猪ですなと荒井も追従する。 地上最低の下着ショー、衣装が裂けてストリップさ!と塚口も下品に揶揄うと、信用をなくしたダイアナ下着会社!という見出しで、大いに売り出しますぜと原田や別の記者も言うので、君たちんところばかり儲けさせているようんもんだなと茂は軽口を言う。
何とかおっしゃっても、閻魔様でもお見通しですぜと塚口が茂を揶揄う。
今夜の飲み代だけでは承知しませんぜと原田が二流雑誌らしい脅しをかけてくる。
オーケー、オーケー、河岸変えて座敷で女の子を侍らすかと茂は提案する。
そう来なくっちゃ!と「週刊モード」の記者たちは喜ぶ。
しかしホステスは、あら部長さん、約束じゃないの、ねえ、だめ、だめだめ!と茂にしなだれかかってきたので、ああ色男はつらいと塚口が皮肉ると、全く、妻よ許せ!と茂は自惚れる。
その頃、あぐり社長は、許せないわ、訴えてやる!こんなデタラメ書いて!と「週間モード」記事に憤慨し、自宅で雑誌を扉に投げつけるが、その扉を開けて辻本が訪ねてきたので、あら、おじさまと迎える。
いらっしゃいませと女中も出てくると、手土産の果物カゴを渡した辻本は、じゃじゃ馬さんも参ったらしいね、今日会社に電話したらね、病気で休んでいるって言うものだから…と辻本は言うので、過労らしいんですとあぐり社長は答える。
おじさまのご忠告を聞かないで飛び回った天罰ですわとあぐり社長は塩らしく答える。
バカに塩らしいことを言うね、あんたらしくないと辻本が言うと、今度の水着の結果次第で社長をやめようかとも思ってるんですとあぐり社長が打ち明ける。
うん、それはまあ…、自分を知ると言うことは結構なことだ、それに突進太郎のことも…と辻本は言う。
しかしあぐり社長は、あの人のことは別問題ですわと反論すると、別じゃないんだよ、あんたと突進とはね、どこまでも社長と社員、そう言う関係だけであって欲しいんだと辻本は言い聞かすと、そのことはもう少し時間をくださらない?私も子供じゃないんですから…とあぐり社長は答える。
良し、早く病気治して水着ショーでも何でも良いからやんなサイト辻本は助言すると、ええ、やりますわとあぐり社長が張り切ったので、双だ…、あ、やっぱりだめだとまた首の痛みを自覚する。
今度は水着ショーですなと言う記者に、じゃあ、約束通りこれだけと堀部専務は小切手を渡す。
確かにと塚口が受け取ると、また面白いショーになりそうですなと原田が愉快そうに茂に話しかける。
まあ、見ていたまえ…と茂は腕組みをして自慢する。
「研究室」に来た茂は、研究員(滝謙太郎)が薬品を注いだパッドに、紺色の布を投じるとあっという間に溶けてしまう実験を見物し、先生、これはパテント取れますね!と喜ぶ。
しかし研究員は、いや、まだ一つの過程です、この研究の目的は布地を完全に溶かしてしまい、そこからまた新たな繊維を作り出すことなんですと説明する。
先生、この薬、早速作って欲しいんですが?と茂は頼む。
また何か目論んでらっしゃる、もうイタズラは困りますと研究員は言うと、黙って作ってくださいよ、お礼はしますと茂は言い、その生地を撫でながらほくそ笑む。
その生地は水着として作られる。 そして1960年度の「夏のモード」と謳ったダイアナ水着ショーが開催される。
会社の壁には「出品作品は厳重に審査する事 社長」の張り紙が貼ってあった。
デザイン室に来た太郎は、千秋さん、みんなもう会場の方へ行ったの?と尋ねると、ええ、この前のように事故が起きないように自分で扱った水着はめいめい自分で会場に運ぶことにしたんですと千秋は答える。
みんながそのくらい責任持ってくれるとありがたいな、今日の成果は十分期待できますね!と話しかけるが返事がないので、僕、今まであなたに誤解されっぱなししていたけど、あのことについてぜひ釈明させてもらいたいと太郎は、部屋の中に入ってドアを閉めると言うが、もう伺わなくても結構ですわ、私、結婚するかもしれないのと千秋が言うので、誰とですか?と聞くと、まだ発表の段階ではないんですけど…と千秋は言葉を濁す。
しかしですね〜とそこに入ってきたのは荒井で、十分推察していただけると思うんですが…というので、君か!と太郎は驚く。
イエスと荒井は答え、ちあきさん、少し早いけど、一緒に食事してから会場行きませんか?と誘ってくる。
ええと千秋は答え、お先に…と言った新井が彼女のバッグを持ち、一緒に出掛けてゆく。
そこにご苦労様、今度は間違いなく成功よといながらやってきたのはあぐり社長で、私も時間までに会場に行くわと話しかけてくる。
あ、これ臨時ボーナス、後でゆっくり中をご覧くださいねと言って封筒を机に置いて出ていく。
1人部屋に残った太郎は、くそっ!と怒りを露わにする。
「合気道クラブ」では、益代が稽古中だったが、太郎が扉の隙間から中を覗き込むと、誰?押し売りはお断りよ!と益代が呼びかけてきたので、がっかりして帰りかけると、あ、太郎さんじゃない?ちょっと待って!と気づいた益代が近づいてくる。
あ、こんにちは!と挨拶した太郎に、聞いたわよ、辻本さんからと益代が言うので、あなたと社長さんのこと、いつかはごめんなさいね、バカなことを言っちゃって…とますよは謝ってくる。
いや、わかって貰えばそれで良いんです、僕、今日の水着ショーが終わったら国に帰ろうかと思ってるんですよと太郎は打ち明け、中庭の石に腰を下ろす。
まあ、どうして?と益代が悲しげに聞くと、東京の空気はどうも僕の肌に会えわんらしいんですよと太郎は言うので、そうじゃなくて、サラリーマンがあなたの肌に合わないのよ、すまじきものは宮仕え、道場で人を投げ飛ばしてる方があなたにはぴったりなのよとますよは言い聞かせる。
いや〜、それもどうかな…と太郎は首を傾げるので、どうかな〜って…、あなた、本当にどうかしたんじゃないのとますよは案ずる。
そこに来た辻本が、珍しいね、どうだね、太郎君、久しぶりに1つお手合わせ願えんかね?…と誘ってくる。
一方、馴染みの店に来た荒井は、あ、親父さん、ビールと注文する。
その背後を、いらっしゃいと言いながら通り過ぎた女店員の尻を荒井が触ったので、悲鳴をあげた女店員は、身を避けたはずみに近くにあったたぬきの置物を倒して壊してしまう。 あらあら、やったね!と女将が睨んでくる。
気をつけろ、この跳ねっ返りが!と、主人の久平も叱る。
辻本と組んだ太郎は元気がなく、投げられてばかりなので、どうしました、え?下着ショーがしくじったんで元気ないんじゃないですか?と揶揄う。
やっても良いか?と太郎はますよに囁きかけるが、負けてきなさい、負けるが勝ちってことはあるでしょうと益代も小声でアドバイスする。
もう1本お願いしますと太郎は辻元に頭を下げるが、あっという間に辻本を投げ飛ばしてしまったので、益代は慌てる。
しかし転んだ辻本は首の痛みが消えたことに気づき、治ったな、治ったよと喜ぶ。 一方、久平の店でも、割れたたぬきの置物の首を直していた。
そんな店では、で、聞かせてもらえるんでしょうね、この間の返事‥と荒井が迫ると、ええ、色々考えたんですけどね、私、本当は家庭向きな女なのかもしれないって気がつきましたと千秋は答える。
ということは、僕と結婚してくれると解釈して良いんですか?と荒井が聞くが、でも、もう少し時間をいただきたいのと千秋は答える。
ありがとう千秋さん、そのうち、堀部さんが社長になれば、お互い全て好転しますよと荒井が言うので、専務が社長に?と千秋は聞き返す。
独裁女社長は今度の株主総会でこれですからねと、荒井は自分の首を切る真似をしてみせ、下着ショーと水着ショーの失敗が命取りというわけですと続けたので、水着ショーは今日よと千秋は不思議がる。
すると荒井は、プールの水にちょいとばかり仕掛けをするんですよと打ち明けてくる。
まあ、じゃあ下着ショーの時は?と千秋が聞くと、あれはね、下着の生地にある種の薬を塗ったんですが、あ、あの時、あなたも災難でしたねと荒井は思い出す。
そう…と答えた千秋は何事かを考え出す。
ボツボツ見物に出かけますかね、あ、おばさん、つけといてねと荒井は女将に声をかけ、行きましょうと千秋を誘って店を出るが、女将も久平も女店員も全員新井を睨みつける。
あ、ちょっと待っててねと外で荒井に声をかけた千秋は1人店に戻ってくると、今の聞いたでしょう?古川さん、まだ会社にいるから電話で知らせて!と久平と女店員に頼む。
「合気道クラブ」の道場で太郎に肩を揉ませていた辻本に、辻本社長さん、お電話ですとカメが声をかける。
はいありがとうと太郎に礼を言って立ち上がった辻本は奥へ向かう。
その時近づいてきた益代が、太郎さん、ちょっとと稽古場の横の部屋に呼ぶ。
ねえ太郎さん、あたし、あなたに相談したいことがあるって言ってたでしょう?とますよは語り出す。
何の相談ですか?と太郎が聞くと、え、それがね…、あの〜、私、あの〜…とますよはたる偽を向けて照れまくるが、その時やってきた辻本が、太郎君、大変だよ、君んところから電話だよと声をかけたので、ああ、そうですかと答え、太郎は電話の部屋に向かったので、振り返った照代は膨れる。
電話はあぐり社長からで、そうなのよ、太郎さん、すぐに会場に行ってちょうだい、古川さん?もう行ったわ、私もこれから行きますと言ってくる。
「ダイアナ水着ショー会場」には女性客が続々と集まり、モデルたちは水着に着替え中だった。
そこにいた千秋は腕時計で時間を気にしていたが、古川が来たので、社長たちは?と聞くと、まだ見えないんですというので、何をしてんのかな…、とにかく荒井たちの行動に注意してくださいよと千秋に忠告する。
そこに藤野古川がやってきて、さあ、みんな支度してくださいよとモデルたちに指示を出す。
辻本の車で太郎と共に会場へ向かっていた辻本は、ショーを中止するしか手はないだろうなと言うが、いや、中止はできないですよと太郎は答える。
じゃあ警察だと辻本が言うと、それもダメですよと太郎は即答し、顔の汗を拭くためハンカチを取り出すが、その時座席に落ちた航空便を見つけた辻本は、マドレーヌ・グリッフか、世界下着製作者協会、あ、マドレーヌがパリに招待したのか?と聞くので、いやおかしいですよね、僕みたいなもの…と太郎は疑問視する。
辻本も、ああ、おかしいよ、おかしいって、世の中みんなおかしいんだからと答え、おい、急げよ、おい!と運転手に指示する。
あぐり社長も車で会場に急いでいた。
会場のプールでは、バンドの演奏が始まり、水着に着替えたモデルたちが、プール分けに登場し始める。
会場には、堀部専務と茂、雪江たちが出席しており見ていた。
会場へ向かう車の中で焦る太郎、辻本、あぐり社長… ショーは順調に進行していた。
控え室では、古川が、さ、荒井君、景気良く一杯やって、成功を祈りましょうと酒を勧めていた。
成功ねと苦笑しながら、荒井は酒を注がせるが、そこに塚口が大量の仲間を引き連れ入ってくると、専務は?と聞いてくる。
仲間の一部は、着替え中のカーテンをめくったりして、モデルたちが悲鳴を上げる。
プールでは、大きな白鳥型の浮き輪ボートにモデルたちが乗り込んで漕いでいた。
そこに中田専務も来賓としてやってくる。
この次が水上バレーよと雪絵が茂にささやきかけると、茂は立ち上がって移動する。
塚本たちと合流した茂は、ああ、ご苦労さん、突進の奴が来るとちょっとうるさいからな、頼むよと声をかける。
控え室に来て千秋を見つけた茂だったが、千秋はカーテンの奥の着替え室に隠れてしまう。
茂は、おい古川君、君、スワン揚げるのを手伝ってくれと頼み、部屋から追い出すと、おい、用意できてるか?と荒井に聞く。
は?と一瞬戸惑った荒井だったが、茂が手真似すると、はあと理解し、用意していた花束と、ロッカーから取り出した薬品の入った瓶を茂に見せる。
それをカーテンの隙間から千秋は目撃するが、それに気づいた茂は何事かを思案する。
荒井は薬品の入った瓶を花束の中に隠すと、急げ!と茂に言われプールへと向かう。
茂が部屋から出た直後、カーテンから出てきた千秋が後を追おうと部屋を出ると、そこに待ち伏せていた茂が手を掴み、千秋さん、一度あなたと食事を一緒にしたいと思って…、今日ショーが終わったらいかがでしょうと足止めしてくる。
はあ…と千秋は生返事をし、先を急ごうとするが、あ、次水上バレーでしょう?下が良いの?と言いながら控え室に千秋を戻す。
花束を持った荒井が登場すると、客たちから拍手が起こり、堀部専務は雪江と目配せする。
荒井は、スワンのボート二隻の間に花束を投げ込む。
薬品の入った瓶はプールの底に沈み、薬品が水に拡散する。
プール脇に戻ってそれを確認した茂は笑顔になる。
太郎と辻本が乗った車とあぐり社長の車が、相次いで会場に到着する。
入り口から入りかけた辻元に、おじさま!と呼びかけ、あぐり社長が合流するが、中に入った辻本は、もう始まってるよと慌てる。
太郎は控え室から出てきた千秋に呼ばれ、大丈夫ですかと案ずる。
早く、薬を荒井さんがプールの入れたわとちあきが教えると、太郎も、それをそばで聞いたあぐり社長も驚く。
茂や堀部専務の席にやってきた荒井が、突進が社長と!日報ピパロンの辻本社長も一緒ですと知らせる。
それを聞いた茂は、良しと言うと、背後に控えていた塚口たちのグループに合図をする。
塚口たちは一斉に控え室の方へと向かう。
そこにいた辻本と太郎は、大勢の暴漢たち相手に暴れ始める。
プール脇ではショーが続行していたが、そこに乱闘しながら太郎が姿を現したので、茂たちは驚く。
太郎は、飛び込み台からモデルたちが飛び込もうとしていたので、あ、待て!やめろと叫ぶが、数人のモデルたちはそのままプールへと飛び込む。
飛び込んだモデルたちが急いで上がろうとしている様を見た客たちは、あ、水着が縮んじゃったわ、あんなに小さくなっちゃわ、あら、縮んじゃった!と騒ぎ出す。
太郎と辻本は暴漢たちを次々とプールに叩き込むと、太郎は飛び込み台に逃げた暴漢たちも追いかけ、飛び込み台からプールへ蹴り落とす。
堀部親子と雪江は会場から逃げ出すとするが、プール脇に詰めかけた大勢の客に阻まれてしまう。
太郎は逃げ遅れた荒井も抱き抱えると、そのままプールに投げ込む。
プールの中では、泳げない暴漢たちがパニックになっていた。
プール脇に上がった暴漢たちの服も縮んでいた。
あぐり社長は、堀部親子を前にして、責任は当然とってもらいますと言い渡していた。
私としてはこれを機会に、あなた方とははっきり縁を切らせていただきますとあぐり社長が言うと、辻本も、君たち、少し欲張りすぎたようだろう?と堀部親子に指摘する。
それでも堀部専務が、あんた型に勝手な真似はさせんからねと言い返し、茂もそうですよと言い残して立ち去ろうとしたので、待ちたまえと呼び止めた太郎が詰め寄ろうとすると、相手が向かってきて親子ともども勝手にプールに落ちたので、それを見た辻本は笑いだす。
羽田空港には「祝世界下着会議出席」「万歳!日本代表突進太郎君」と書かれた垂れ幕が掲げられた中、ダイアナの全社員が、パリへと旅立つ太郎を見送りに来ていた。
太郎さん、がんばれ〜!と古川が呼びかけ、あぐり社長も辻本社長、中田専務、益代らと共に、笑顔で見送っていた。
その時、あぐり社長が、あら!あの人帽子忘れたわ!と思い出し、ああ、パリまでノーハットで行くつもりねと社員たちも案ずるが、花束を持った太郎がタラップの途中で振り返って手を振ると、帽子を持った千秋が見送り台に駆けつけ、太郎さん、忘れ物よ〜!と呼びかけながら帽子を放り投げると、それは見事に太郎の頭に乗っかるのだった。
古川は振るものがないので、会社の女性用パンティを取り出して振るが、風に飛ばされ地上に落ちてしまう。
太郎は帽子を振って機内に入ると、すぐに扉が閉められるが、パンティは機体後部にひっかかってしまう。
パンティを引っ掛けたまま旅客機は飛び立ってゆく。
終
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