「警視庁物語 顔のない女」

警視庁物語シリーズ第九話

上映時間74分だから、通常の中編よりはやや長め。

冒頭の刑事たちの、家庭的な休暇の様子が微笑ましい。

この当時、渡辺刑事を演じている須藤健さんはまだ髪がある。

山村刑事役の南廣さん、法医技師役の片山滉さん、セールスマン役の成瀬昌彦さんなど、後の特撮番組「ウルトラセブン」でお馴染みの役者も出ているし、菅井きんさんや沢村貞子さんなども登場する。

女子大生の社長令嬢役で登場する佐久間美子さんは初々しい。

劇中、被害者の身長をmで林刑事が報告すると、と言うことは1尺?と主任が聞き直していることから、尺貫法がm法に切り替わっていた時代の話だと言うことだろう。

劇中、ラーメンの借金を芸者が返すシーンがあり、50円玉を渡して24円釣りをもらっているので、ラーメン代は26円だったと言うことだろう。

コップ酒が1杯200円である。

劇中で川に投じられた犬の死骸は本物のように見える。

真犯人が最後の最後まで登場しない展開になっており、焦ったい気もしないではないが、刑事の捜査の大変さがストレートに伝わって来る良作だとも感じる。

【以下、ストーリー】

1959年、東映、長谷川公之脚本、村山新治監督作品

土曜日の午後、働く人々は仕事から解放されて街へ出る。

彼らは平和なひと時を、憩いと喜びのうちに過ごそうとしている。

ある人は家族と共に、そしてまたある人は恋人ともに…

渋谷駅東口近くの地下鉄の入り口前で待っている山村刑事(南廣)の映像

この若い刑事もそんな1人なのだ。

おっと、気長く、気長く、焦らず…、張り込みの要領で…

犯人ならぬ、恋人の手を取って、さあ2人でどこへでも…

だがしかし、彼にはその前にしておかなければならないことがあった(と公衆電話をかける山村刑事の姿を背景にナレーション)

「捜査第一課 七号室」

はい、捜査一課!と電話を受けたのは長田部長刑事(堀雄二)だった。

ああ、山村君か、長田だよと答える横では、渡辺刑事(須藤健)と高津刑事(佐原広二)が将棋を指していた。

うん、今んとこ、事件ないよ、ああ、まあ、心配せんで、ゆっくりランデブーしたまえと長田は笑顔で答える。

ただし、在庁番だから、電話連絡だけは忘れんようにな、うんと言って長田は電話を切る。

幼い娘と息子を連れ動物園のキリンを見にきた捜査主任(神田隆)は、良いかい?ここから動くんじゃないよ、お父さんにちょっと電話をかけてくるからねと長男に話しかけ、長男はウント答えたので、その場から離れる。

その頃、女房のお産を前に病院に来ていた林刑事(花澤徳衛)は、あ、そう、じゃあ、今んとこ事件はないね?とやはり本部に電話確認していた。

いや~、今度こそ、男のこと思ってるんだが…、こればっかりはね、うん、じゃあと言って林刑事は、病室の前の椅子の座っている娘三人を見ながら、電話を切ると、病室から出てきた看護師に、あ、男でしたか?と聞くと、看護師は笑顔で、いえ、まだお生まれになりませんわと笑顔で答える。

一方、バスに乗っていた金子刑事(山本麟一)は、隣の中年客(関山耕司)が居眠りで肩に頭を乗せてくるので、そっと押し返すが、曲がりますからご注意願います!と言うバスガイドの声に気を取られると、居眠りしていた男が床に転がり落ち、奇声を上げたんで、乗っていた娘たちに笑われ、憮然としながら立ち上がると、元の席に座ってきたので、金子刑事は思わず顔を背け笑いを堪える。

その時、窓の外には荒川の河原で野球をしている少年たちの姿が見えた。

ピッチャーが投げた球をバッターが打ち返し、ボールは草っ原の川の近くまで飛んだので、2人の外野手が後を追う。

草むらでボールを探しながら、もっと向こうかな?この辺だよ?と「KINONE」とぬねにイニシャルが入った2人の外野手たちが話し合いながら川に近づく。

その時、1人が岸に引っかかっていた包みのようなものを見つけ、なんだ、あれ?と声をあげる。

その下じゃないか?と近づいたもう1人の少年が言うので、うん、退けてみようと言いながら好奇心で、その包みのようなものをひっくり返したところ、女の乳房がのぞいていたので、あ、人間だ!と驚く。

大変だ!お〜い!と呼びかけながら走り去る2人の少年を背景にタイトル

鉄格子のシルエットを背景にスタッフ、キャストロール

土手に警察車両が集まり、警官たちが一斉に土手を駆け下り河原に向かう。

土曜日の午後、ついに事件は発生した。(とナレーション)

こうした場合に備えて、絶えず連絡をとっていた在庁番の刑事たちは、次々と現場に集まってきた。

警官の縄張りを潜って、林刑事と山村刑事が到着したところで、これで全員集合(とナレーション)

切断死体の検死作業の側で、水筒を肩から下げた捜査主任(神田隆)と共に鑑識作業を見守っていた捜査課長(松本克平)が、つまり女のバラバラと言うわけだね?と聞くと、法医技師(片山滉)が、ええ、首、両手、両足の計五箇所を鋭利なもので切断、関節は全部外してあるわけですと説明すると、残虐な手口ですな〜と主任が指摘する。

うん、犯人は被害者の身元が割れるのを恐れとると課長が言うと、はあ、被害者とある程度面識があるものの犯行ということになりますなと主任も応じる。

その時、先生、あの傷跡は盲腸ですか?と法医技師に聞いてきたのは長田部長刑事で、卵巣を手術した後かもしれませんよと法医技師は答える。

卵巣ですか?と長田は確認し、とにかく解剖へ送ろうじゃないかと課長が提案する。

そうですなと法医技師は答え、金子君、君はあれと一緒にと主任が、立ち去る法医技師の方を指しながら指示する。

長田君、包んであった新聞社は?と主任が聞くと、はあ、全部で28枚、みんな読売新聞でしたと長田は答えたので、日付は?と聞くと、一番新しいのは5日前の13日ですと長田は答える。

すると死体をバラバラにして包んだのは、13日以降ということになるねと課長が指摘する。

はあ、読売新聞はみんな江東版になってますから、これを手掛かりにして配達区域を調べれば…と長田が言うと、ある程度ホシの地域は絞れるというわけだなと主任が応じ、よし、じゃあ君は早速それにかかってくれたまえと指示する。

それから山村君、君はこの死体を縛った紐なんだが、この線を…と主任は命じる。

ところで地取り捜査だが、別にこれといった手がかりも内容だし…と課長が言い出したので、はあ、遺留品が一つくらいあると良いんですがねと主任も答える。

直ちに現場にを女の手だけが包まれた別の遺体の場所に案内してきた金子刑事が、包みが破けて解けていましたと、指紋が取れると良いと思うんですがねと報告する。

そこに近づいた林刑事が、ねえ主任、あの胴体は、この川のもっと上の方から流れてきたもんじゃないでしょうかね?と指摘する。

うん…と主任が答えていた時、課長!と自転車の警官が呼びかけてきたので、何かね?と課長が聞くと、ただいま、対岸のやや下流で両足の包を発見しましたと警官は報告する。

何!と課長は驚き、どこだ?と主任が聞くと、あそこですと警官は対岸の方を指差す。

対岸では、小舟に乗った警官と岸にいる警官たちが、紐で縛られた包みを回収していた。

「バラバラ殺人事件特別捜査本部」

足の爪まで赤く染めていると言う点から見て、水商売の女じゃないかと思っているんですが?と会議で渡辺刑事が発言する。

終戦直後ならそれだけで身元を洋パンに絞って捜査ができたんだがね〜と主任が苦笑しながら応じる。

全く、この頃は素人か玄人かもわからんですからねと渡辺刑事も言い返す。

そこに長田部長刑事が戻ってきたので、やあご苦労さんと主任がねぎらいの声をかける。

あれからすぐに足が出たそうですね?と長田が聞くと、うん、今解剖に回っとるのは、2本一まとめに包んでなと主任が教えると、ああ、やはり新聞紙にですか?と長田が聞くと、しかも胴と同じ読売新聞の…と主任は言い、ところでどうだったね?と成果を聞く。

内ポケットから手帳を取り出した長田は、ええ、江東版というのは、足立、葛飾、江東、江戸川、墨田の5地区に配達されるものとわかりました、したがってホシと関係あると考えて良いようですと長田は報告する。

二時市場ないか、足立、葛飾、江東、江戸川、墨田ね?と主任が確認すると、うん、一応その線で当たってみることにしようと課長は提案する。

しかし5地区と言うと、ほとんど荒川の全流域にわたってますなと渡辺刑事が指摘する。

あるいは、もっと上から流れてきたって言うことも考えられますねと高津刑事が言う。

そこで問題になるのは、一体どっから投げ込んだか?それとどこで殺害してバラバラにしたのか?いずれにしても被害者の身元が割れんとな〜…と主任はぼやく。

そこに山村刑事が帰ってきたので、よお、お帰り!と長田が声をかけ、主任もご苦労さんと労い、どうだったね、紐の線は?と聞く。

はあ、何でも、インド産麻紐にパラフィンとグリフィースで防水加工してあるとわかりましたので、それを手掛かりにやっと問屋まで漕ぎ着けたんですが…と山村が口ごもったので、小売屋が多すぎるのかねと主任が聞くと、はあ、関東だけでも2〜300軒あるそうですと山村刑事は言う。

そこに林刑事と金子刑事が戻ってきたので、よお、解剖の結果は?と主任が聞くと、はあ、なにぶんにもどうと足だけなので、総合的な判断は個体が全部揃ってから出ないと下せないどうですが、わかったことだけ聞いてきましたと金子刑事が答え、じゃあ、林さんと話を振る。

あ、じゃあ…と言いながらコートから手帳を取り出した林刑事は、第一、胴と足は血液型その他の点から見て同一人のものである。第二、被害者は年齢30歳前後の女である。第三、死亡推定日は三日前と報告したので、というと、15日だね?と長田が確認すると、そういうわけですねと林も肯定する。

第四は、絞殺後、切断したものと思われると林が続けたので、考察なのかね?と主任が聞くと、はっきりは首から上が見つからんとわかあんそうですが…とと金子刑事が補足する。

ええ、第五は、足の長さから推定した身長は1m55…と林が言うと、と言うと5尺?と主任が確認したので、1〜2寸じゃないでしょうかと山村刑事が答える。

うん、それから例の卵巣とかの手術の痕は?と主任が聞くと、ええ、あれはやっぱりそうだそうですと林刑事が答える。

それが第七で、第六、胃の内容物は不明なれども、食後三時間経過の消化状態と認められる…、だいたいこんなところですと林刑事はまとめる。

なるほど…、これで残りの首や手が出れば、もっと色々わかるんだろうが…と主任は言う。

しかし、バラバラにして投げ込んだのが、3日前とすると、その首や手はもう東京湾の方へ流れてるんじゃないでしょうか?と長田が指摘する。

うん、それも十分考えられることだと主任も納得すると、いずれにしても、肝心の首と手が出ないことにはこの捜査の見通しは難しいと課長が言う。

はあ、とにかく、明日は水上署の巡視艇が捜索してくれることになっておりますから、その結果に期待するとしまして…と主任が言うと、うん、差し当たり、新聞の配達区域と家出人、行方不明者の照会から洗っていくか…と課長は提案する。

はあと主任は頷くと、じゃあ今日はこれで打ち切りにしよう、明日から頼むぞと課長は全員に声をかける。

会議が終わり散会した直後、それから林君、君んとこ、さっき子供さんが生まれたそうだ、もう聞いたかい?と主任が声をかけたので、はあ、さっき解剖の合間にちょっと病院に電話入れまして…と林刑事が答えたので、そうか…、なら良かった、おめでとうと主任が祝福すると、部屋にいた刑事たちのせて子一斉に祝福したので、ありがとうございますと林は礼を言うが、4人目だなこれで…と主任が苦笑し、今度もかいかだったのかね?と長田が聞くと、いや、それがですねと林が近づいてきたので、それじゃあ待望の…と長田が聞くと、上手くいきまして…と林が答えたので、刑事たちは全員笑い出す。

今日のところはもうおしまいだろうから、早く顔を見に帰りたまえと主任は言う。

はあ、でもまだ目も見えないでしょうし…と林が答えたので、奥さんにさ!と主任が言い返すと、ああ、そうですか、ありがとうと林は勘違いに気づき、縮こまる。

しかし…と林が迷うので、無理することはないよ、主任も言っとられるんだから…と長田も声をかけると、じゃあ、お先にと林は帰ってゆくので、奥さんによろしくなと主任が送り出した後、残った刑事は愉快そうに笑う。

翌日は水上署の巡視艇に乗り、長田らが川の浮遊物を長い竿で漁っていた。

会議室では、川の略図を前に、首や手が流れているものとすれば、当然この辺より下流で発見されんだろうかね?と主任が考え込んでいた。

川底に沈んでいるんじゃないですかね?と林刑事が意見を言う。

うん、その方が海へ出てしまうより発見の可能性が…と主任が応じていた時電話がかかってくる。

はい、捜査本部と受話器を取って答えた主任は、おう、金子君かと気づいて椅子に座る。

ほお、化学分析で足の爪を染めたエナメルが、アリス化粧品の製品と分かった?で、その会社へね、良し、行ってみてくれたまえと電話を切った主任は、ところで家出人、行方不明者の照会はその後どうなってんのかね?と林刑事と渡辺刑事に聞いたので、ちょっと調べてきましょうと言い残し、渡辺刑事が出かける。

アリス化粧品株式会社

さようですか、お話はよくわかりました。まあ、ご存知かも知れませんけれども、私どもの製品は店頭売りは一切致しませんと、金子刑事と会っていた販売部長(高橋とよ)は説明する。

ですからセールスマンは例えネイルポリッシュ1本でも…と販売部長が言うので、はあ?何1本でしょうか?と金子刑事が聞くと、ネイルポリッシュ!つまり、爪に塗ってあった化粧品ですわと販売部長は教える。

ああ、マニキュアの…と金子が答えると、塗ってあったのは足の爪でございましょう?と販売部長が聞くので、はあと言うと、でしたら、ペディキュアとおっしゃっていただきませんと販売部長は訂正を求めたので、なんて言うんですか?と手帳を取り出した金子刑事は、ペディキュア!と再度教える部長の言葉を書き留める。

はあ、僕はまたマニキュアって言うのとばかりと金子が言い訳すると、それは手の爪を塗った場合でございますわと部長が言うので、なるほど…と金子は感心する。

そうでございますとも、とかく日本の殿方は女性のお化粧にご理解が乏しいようでございますが、あ、ぜひ、お宅の奥様にも当社の製品をお薦めになってご覧あそばせ、きっと見違えるほどお美しく御成に…と部長が1人語りを始めたので、あの〜、僕はまだ1人なもんですからと金子刑事は当惑する。

まあ、さようでございましたのと部長は笑顔で応じる。

はあ、ところで、そのセールスマンシステムとすればかった人はわかるわけですね?と金子が聞くと、はあ、いかが?と部長はタバコを勧めてくる。

全部リストがございますから、それでその方のお名前は?と帳簿を見ながら部長が聞くので、それがまだ、名前も顔もわからんのですよと金子が答えると、まあ、それじゃ調べようがございませんじゃないのと部長は呆れたように言う。

新荒川大橋

自転車の警官が戻ってきた赤羽警察署岩渕巡査派出所で、林刑事に地図を見せていた警官が、この辺だそうですと教えていると、あ、戻ってきましたと気づき、本庁の一課の方が例の自動車の件で今ご説明していたところなんだと戻ってきた警官に伝える。

ああ、そうでしたかと言いながら林に敬礼をした警官が、もしやばらばら事件に関係があるのではないかと思いましたので、今朝、上司を通じて…と説明するので、ええ、聞きかしたと林刑事は答え、なんでもその新荒川大橋の上で、15日の夜、駐車違反を湿った車があったとか…と聞くと、そうなんです、あれは警邏で戻ってきた時でしたから、午後10時20分頃でしたと警官は教える。

はあ、で、場所はどの辺です?と林が聞くと、この橋のほぼ中間部でしたと警官は地図を指しながら答える。

はあはあと林が頷くと、ヘッドライトを消しているので駐車違反だなと思って近づいて行くと、男が何か欄干から投げ込もうとしているところと警官が言うので、投げ込んだんですか?と林が聞くと、ええ、私が走って行きますと、急いで車に乗り込んでそのまま走り出したんですと警官は答える。

で、どっち?西の方へ?と林が聞くと、こっちですと警官が地図を指したので、そうすると車はこう向いてたわけですね?と林刑事が確認する。

ええ、そうなんです、すぐにナンバーを見たんですが、と言いながら手帳を確認した警官が、5-す-2100と教え、すも2桁を見損ないまして…と言うので、林もそれを自分の手帳に書き留めようとし、ああ、なるほど、そうすると、5-す-2100なんぼかってわけですな?と確認する。

目撃は15日午後10時20分、番号12xxセダン、この車がホシのもんだとうまいんだがねと、捜査本部に貼られた地図に判明事項を書き込みながら主任は言う。

何かを投げたと言う事実と、こっちの方へ走って行ったと言う事実とは有力ですな、死体を包んであった新聞からこの辺だと割り出されてるんですから、ヤサに逃げ戻ったと言うことも考えられますねと長田部長刑事が地図の略画を指しながら指摘する。

なるほど…、いずれにしてもホシは新荒川大橋から死体を投げ捨てたと見るのは一番妥当な線だろう、あそこからならこの辺まで胴や足が流れてくるのは3日ぐらいだろうからなと主任も言う。

はあ、しかしもしこっちから投げ込んだとすれば、この水門から隅田川の方へ流れてったかもしれませんねと金子刑事が指摘する。

そうだね、今日巡視艇でこの辺から下は徹底的に探したんですからね、隅田川の方へ行ったか、あるいはやっぱり海に出たか…と高津刑事も推理する。

うんまあ、流れの調査をやってみんことには見当がつかんよ、とにかく明日実験してみようじゃないかと主任は提案する。

明日の実験と言いますと?と渡辺刑事が聞くと、うん、野犬狩りで処理した犬の死骸を実際に新荒川大橋から投げて流れの具合を色々調べるのさと主任は答える。

水流研究所ではそのくらいのこと分かってないんですかね?と渡辺刑事が聞くと、いや、死体は腐敗せんと浮き上がらんからね、動物で実験してみる以外にどっちに流れるかわからんてんだよと長田部長刑事が教える。

なるほど…、とんだ手数ですな…と渡辺刑事は呆れる。

うん、で、林君は、あの号数…、2100何番の黒セダンの車を当たり始めたんですか?と長田が聞くと、うん、下二桁がわからないんじゃ大変だろうと言ったんだがね、奴さん、な〜にわずか100台を当たれば良いんだからなんて張り切っとったよ、で、君の方は?と主任は渡辺刑事に聞き返す。

はあ、行方不明と家出人の届けから身長と年齢で割り出してみたら、3人それらしいのが出てきたんですがと言うので、ほお…と主任が関心を向けると、ところが残念なことに、3人とも卵巣手術やってないんですよと渡辺刑事は報告する。

う〜ん、ダメか…と落胆した主任が立ち上がった時、電話がかかってくる。

はい本部、おお、山村か、え?うん…、そうか、じゃあもう戻りたまえ、うんと言って電話を切ると、麻紐の線も絶望だなと部屋に刑事たちに伝える。

ああ、そうですかと長田は答え、他の刑事たちにも疲れの色が見える。

それに気づいた主任は、こうなったらなんとか残りの首やてを探し出すことだ、そのために明日の実験は大事だぞと明るく伝える。

翌日、新荒川大橋にやってきた刑事たちは、車を発見した警官から、私が目撃したのはちょうどこの辺でしたと教えられる。

うん、とにかくやってみるかとしゅにんがいい、はいと答えた山村刑事が犬の死骸を川に放り投げる。

あれを右へ行けば隅田川ですな〜と、遠くにある水門の方を見た主任が聞くと、警官がそうですと答える。

果たしてどっちへ流れて行くか…と主任は呟く。

そこに自転車の警官がやってきたので、どうしたんですか?と聞くと、ただいま」、ばらばら事件のものと思われる女の手が2本、河野中から発見されたと連絡がありましたと警官が言うので、手が?どこです?と主任が聞くと、この上の鉄橋の下なんですと警官が言うので、え!上だって!と山村刑事は驚き、反対側に見える鉄橋の方を向く。

やあどうも…と、目撃者の元に金子刑事が来ると、いや驚いたのなんのって、釣り糸を垂らしてましたらね、水の中から白い手がす〜っと、こうと手振り混じりで釣り人(広田新二郎)が答えた時、側の鉄橋を列車が通り過ぎ、そこに他の刑事たちが駆けつけてくる。

主任さん!と金子が呼びかけると、来てくれたのかい?と言いながら主任たちが近づく。

ああ、本部に通報がありましたので、とりあえず…と金子が言うので、そうかと主任は答え、どっかね?と遺体の場所を聞く。

一応、そこに上げときましたけど、包みは破れて解けていましたと金子が案内したので、主任もそれを見て、うんと頷くが、指紋が取れると良いと思うんですがねと金子刑事は言う。

両手の指にはマニキュアが塗ってあった。

うん、だいぶんふやけとるが、なんとか取れるだろう、被害者は売春か何かで挙げられたことがあるかもしれんから、その線も指紋で一応当たってみるんだなと主任は提案する。

はあ、早速当たってみますと金子が答えたので、頼むよと主任が言うと、一緒に手を見ていた高津刑事が、主任さん、この爪にも赤いエナメルがと指摘したので、うん、ところで問題は、ここが新荒川大橋より上流に当たってることなんだが…と主任は指摘する。

釣り人と話していた山村刑事が、どうもと言って話し終え、バラバラ死体を投げ込んだ場所は、もっと上の方ということになるんでしょうか?と主任に聞いてくる。

ここより上の橋と言うことになると、戸田橋ということになりますなと地元の警官が教える。

そうすると、例の自動車はホシと繋がらんかも知れんねと主任は指摘する。

捜査本部では、現場近辺の略地図に「手」「19日発見」と長田部長刑事が新たな情報を書き込んでいたが、手が川を遡るということは考えられないですかね?と渡辺刑事が聞いたので、うん、もっと海に近いところなら上潮で逆流したとも考えられるんだろうが…と永田は答える。

とすると、やっぱりこの戸田橋ですかな?と渡辺刑事は略地図を見ながら言う。

その時電話が鳴ったので、はい、捜査本部!と出た長田は、うん?小松川署の?え!首らしいものが流れてきた?と聞き返し、ええ、で?さらに下流に流れていったんですね?ええ、目撃者、うん、すぐそちらに行きますと答える。

首が出ればこれで五体全部揃うわけですね?と聞く渡辺刑事に、ウント答えた永田はすぐに電話をする。

あ、もしもし!あ、水上署ですか?こちらバラバラ事件の本部ですが、すぐに巡視艇を出してくれませんか?首が流れていたそうです。ええ、場所は小松川の競艇場付近だそうですと長田は水上署に連絡する。

競艇場脇に来た永田部長刑事は目撃者から証言を聞く。

ちょうど第三レースが終わった時でした。私は金がない時はいつもここから見てるんですがね、しょうをしようと思ってちょっとこっちの方を見たんですよと目撃者は言う。

そうするとちょっとあの辺をパッカリパッカリと…と目撃者は両手で手真似をしながら説明する。

確かに首でしたか?と長田が確認すると、ええ、白くてね、このくらいありましたからねと目撃者は両手で大きさを見せながら答える。

うん…と長田が答えていた時、部長さん、巡視艇が来ましたと地元署の警官が知らせに来たので、目撃者に堂本挨拶し、巡視艇の方へ向かう。

え、ご苦労さんでした、どうでした?と岸に近づいた巡視艇の警官に長田が声をかけると、こっちのは何かの間違いじゃありませんか?今入電したんですが、首は隅田川の方で上がったそうですよと水上署の警官が言うので、長田は、えっ?隅田川で首が!と驚く。

翌日、新聞売り場では「バラバラ事件 生首隅田川で発見 今日 千住大橋下流で」と書かれた読売新聞特報の宣伝文が出ていた。

新聞紙上には「バラバラ荒川死体全部そろう」「生首を隅田川で発見 東大で直ちに解剖」と見出しが踊っていた。

解剖に立ち会った長田と山村刑事に、鼻からこんなものが出ましたよと、解剖医(浜田格)がピンセットでシャーレに置いたので、何ですか?これはと長田が聞くと、有象でしょう、隆鼻術のと解剖医は答える。

本部では、解剖はまだ終わらんのでしょうか?と高津刑事が、ラーメンを啜っていた主任に聞いていた。

略地図には渡辺刑事が、「首」19日2時発見と書き込んでいた。

何せ、相当に腐敗しとったからな〜と言いながらチャーシューの匂いを嗅いで口に入れると、あれじゃあ人相も検討もつかん、解剖でどれだけの手がかりが掴めるもんかね?と主任は呑気そうに答える。

そうですね〜と渡辺刑事が答えていると、そこに戻ってきたので、よお、指紋から何か割り出せたかい?と聞く。

いや、ダメで下というので、つまり被害者は売春婦でもないというわけですな?とと高津刑事は指摘すると、と言って家出人や行方不明の届出もないんだから、家族持ちでもないわけだし…と、ラーメンを食べ終えた主任が答える。

でも手や足にまでエナメルなんか塗ってるんですから水商売の女に間違いないんですがねと渡辺刑事は指摘する。

そんな中、主任の机の上の名簿を見た金子刑事が、ほお、林さんのところの赤ちゃんのお祝いですね?と聞くと、うん?ああ、ちょっと頼むよ、詳細、それに書いてある通りだと主任は答える。

主任500円、部長300円、その他200円、こういうおめでたい集金なら…と言い、金子は財布から金を出そうとする。

すると、被害者は鼻を整形手術してたわけですね?と解剖を終えた解剖医に山村刑事が聞くと、そうですねと解剖医は答え、これが口紅を拭き取った脱脂綿で、これは髪の中から発見されたヘアピン、それとこれも特徴として手掛かりになると思いますが、歯のブリッジ…、サンプラですなと、シャーレの中に取り分けた品を説明する。

ああ、この首んところはやっぱり擦痕ですか?と長田が聞くと、ええ、確かにヒモのようなもので締めてありますねと解剖医は答える。

喉の軟骨が折れてましたから、死因は明らかに絞殺でしょうと解剖医は結論づける。

本部でその報告とシャーレの中身を見せられた主任は、ふ〜ん、絞殺してからバラバラにしたってわけかと納得する。

はあ、ともかく、だいぶん手がかりはできたわけですから、明日からこれで…と長田が答えていた時、林刑事が帰ってきたので、やあ林君、自動車の方はどうかね?と主任は聞く。

着々とやってますがね、黒塗りの国産車で、2100なんぼって車は72代もあるもんですから…と林は答えたので、そうか…と主任も応じるしかなかった。

どうなんですか?新荒川大橋よりさらに上流で手が見つかった以上、無駄じゃないんでしょうかね?と長田は車の捜査に疑念を感じる。

うん、しかし例の車が白と決まれば、それで操作は一歩前進したことになるんだから、まあ地道に洗ってくれたまえと主任は林に伝える。

はあと答えて林が隣室に行った時、お願いしますと言って山村刑事が主任に金を出し、名簿を長田に渡したので、ああ、僕がしんがりかと、その名簿を見て気づいた長田も、じゃあ、主任と言って金を出す。

それを受け取った主任は嬉しそうに「御祝」と書かれた封筒に入れると、林君!と洗面所で顔を洗っていた林を呼び、赤ちゃんの名前はもう決まったんかね?と聞く。

いや、それはまだなんですがね、主任さん、なんか良い名前ありませんかね?と顔を拭きながら林が戻ってくると、これは私たちのささやかなお祝いだ、何か系統のもんでも買ってくれたまえと言って、主任は「祝儀袋」を差し出す。

いや〜、これはどうも…、みなさん、どうもすみませんと林刑事は袋を受け取ると、その場にいた刑事たちに礼を言う。

翌日、路面電車を降りた山村刑事は、橋下整形医院を訪れる。

渡辺刑事は、ヘアピンの小売店を回っていた。

林刑事は、路上に停めてあった「5-す-2138」ナンバーの黒のセダンを調べていた。

高架線脇の整形医を訪ねた山村刑事は、被害者の鼻から出てきた部品を医者に見せていた。

渡辺刑事も別の問屋でヘアピンを見せて話を聞いていた。

「整形外科 十仁病院」から出てきた山村刑事は次の病院を手帳で確認する。

林刑事は路上に停めてあった「5-す-2174」ナンバーの黒のセダンを調べていたが、近づいてきた刑事の姿を認め、おう、山村君!と声をかける。

その声に気づいた山村は、ああ林さん、どうでしたか?と聞く。

いや、やっと32台当たったよと答えた林に、山村はどうですか?と言いながらタバコを差し出す。

イヤイヤとそれを断った林は、君の方はどうかね?と聞く。

美容整形やるところがこんなに多いとは思いませんでしたと言いながら山村が自分のタバコを咥えると、ああ、そうかね、どうも美人が増えたと思ったら、みんなやってるのかもしれんなと言いながら、鼻を高くするジェスチャーをして見せるので、流行ってるそうですからねと山村も答える。

ところでね、山村君、「ただし」ってのはどうかね?名前だよ、赤ん坊の…と林は切り出す。

ああ、なるほどと山村が納得して笑うと、刑事の長男だからな、正しい人間になってもらわにゃならんと思ってねと林が言うので、「ただし」良いじゃありませんか!と山村は賛成する。

そうか…、じゃあ「ただし」に決めるかな?と林は嬉しそうに答える。

夜、渡辺刑事の報告を聞いた主任は、ご苦労さん、じゃあ、ヘアピンの線は打ち切ることにするかと伝える。

まあ、休んでくれと主任が労うと、あ、主任!例の歯のサンプラブリッジですが、歯科医に照会したいんですが、いつ?と長田が聞いてきたので、うん、分かり次第ということになっとるんだが…、今日中には無理かのぶしおしれんな〜と主任は答え、長田と同じテーブルの椅子に腰を下ろすと、お一ついかがですかと言いながら、女性警官が茶を運んできたので、おお、ごちそうさまと礼を言う。

そこに金子刑事が帰ってくる。

いやあ、口紅が帰ってきたなと主任が声をかけると、いや〜それがですね、口紅と例のエナメルをそろいで買っている客はたくさんいるので、やっぱり調べようが無いと言うことでしたよと金子は報告する。

口紅もやっぱりアリス化粧品のものだったのかい?と高津刑事と将棋を指していた渡辺刑事が聞くと、うん、分析の結果、そいつはすぐに分かったんだが…と高津は答える。

その時電話がかかったので、金子刑事が取る。

はい、捜査本部です、はあ?赤羽署?うん、あ、」ちょっと待ってくださいと答え、立ち上がった主任と代わる。

はい、捜査の主任ですが?はい、え?ほお?白に黒い目印の犬が当とするが、せ⚪︎し男くにでの」鉄橋より150mも上流に…と主任が答えると、すぐに立ち上がった長田が、略地図の該当地に「犬、21日夕発見」と書き記す。

すると手が出たところよりもさらに上ですな?うん、ああ、どうもありがとうございましたと言って、主任は電話を切る。

その時、本部に戻ってきた山村刑事が、略地図を見ながら、あれ?新荒川大橋から投げた犬が、そんな上に浮かんだんですか?と聞いてくる。

うん、荒川の水は上に流れることもあると、これで実証できたんだと長田は略図を見ながら指摘する。

とすると、やっぱり林さんの探している黒塗りの自動車が…と山村が言うと、うん、どうやら道がついてきたようだなと主任は嬉しそうに答える。

君のはどうしたい?と長田が聞くと、ええ、やっと例の胴木を使った医者がわかったんですが、誰に入れたものかちょっとわからないそうで、ともかくその病院で隆鼻術をやった人のうち、30歳前後の人の名前は一応写し取ってきましたと、手帳を出しながら山村は答える。

その手帳を受け取った主任は、そうか…、じゃあ明日から、これを片っ端から洗ってみるかと提案する。

翌日、山村と長田は、車で中川歯科医院を訪ねる。

遺体の歯のサンプラブリッジを見た歯科医師(加藤嘉)は、そうです、お知らせして良かった、いや、うちで作ったものに間違いありませんと言うので、そうですか、で、その患者さんは?と長田が聞くと、ええ、小沢初江さんと言う方です都歯科医師が教えると、小沢初江…、あ、あった、昨日整形病院で写したリストの中にありましたよと、手帳を見て発見する。

そうか…。小沢初江さんの住所はわかりますか?と長田が聞くと、もちろんです、今年の患者さんですからと歯科医師は言い、大田区…と受付名簿を読むので、おかしいな、僕の方は板橋区になってますが?と山村刑事が指摘する。

いつの住所だ、それ?と長田が聞くと、いつって、手術したのは去年の…と山村が言うと、それはこっちの方が正しいよと長田は歯科医師の方を指差し、その名簿の住所を再確認する。

該当するアパートに来ると、部屋の窓を開けた大家(菅井きん)は、大沢さんが出かけたまんまですからと言い訳するので、出かけたのはいつですか?と長田が聞くと、あれは15日でしたよと大家は言う。

ほお、15日?と長田が確認すると、ええ、クリーニング屋の払いを15日と30日にしたらしくて、勘定を取りに来たら、立て替えといてくれなんてねと大家は言うので、それは15日の何時頃でしたか?と山村刑事が聞くと、出かけたんですか?3時頃でしたね、おめかしして黒いハンドバッグ持って…と大家は思い出しながら答える。

誰かに会うようなこと言ってませんでしたか?と長田が聞くと、さ〜、今夜は帰らないかもしれないとは言ってましたけどね…と大家は言う。

うん、なるほど…、するとそれっきり…?と長田が確認すると、ええ、今日でちょうど1週間んありましたねと、大家は指折り数えて言う。

その間、ずっとほっとかれたんですか?と山村が聞くと、ほっとくって言いますと?と大家が不安な顔をしたので、いや、例えばどこに行っちまったのかと尋ねるとか?と山村が説明すると、アパートがそんなマメなことしたら、お客さんが嫌がってしまいますよと大家は笑う。

山村は捜査令状を見せ、ちょっと…と大家に断って部屋を調べ始めると、それに小沢さんは今までにも良く留守にすることがありましたからね、それはまあ長くて3日くらいでしたけど…と大家は言うので、良く外泊するというとどこへ?と長田が聞く。

さあね〜、体を張って生きているんだからなんて威張ってましたからね、ここへは若い大学生みたいな人が来てましたけどと大家は答える。

大学生?と長田が聞くと、ツバメっていうんですか?なんだか仲良くしているようでしたと大家は言う。

あ、奥さん、小沢さんの写真ありませんかね?と長田が聞くと、さあ、あるかしら?と大谷は困惑するが、ああ、長田さん、写真でしたら、多分僕の方で手に入ると思いますがと言う。

「整形外科 岡村医院」にやって来た永田と山村に、部屋から出てきた看護婦(山本緑)が、小沢初江さんでしたわね、この方ですと確認しながら写真を手渡す。

受け取った山村はその写真を長田に渡しながら、やっぱり手術した当時の住所は板橋でしたと伝える。

うん、板橋からここまで来たんじゃだいぶん遠いようですね?と長田が聞くと、そんな…、もっと遠くからでも入院なさいますわ、それにこのかた、紹介でいらしたようですし…と看護婦は笑って答えるので、ほおと長田は感心する。

紹介?と長田が聞くと、ええ、板橋の梅村さんって方でしたか…と看護婦が思い出しながら言うので、その方の住所はわかりますか?と山村が尋ねると、さあ、それは院長先生がお戻りにならないと…と看護婦は言う。

そうですかと答えた山村は、長田さん、僕はとりあえずこの写真で化粧品のセールスマンに聞き込みをとつげたので、うん、じゃあ僕は被害者の勤務先を当たってみようと長田も答える。

この写真貸してもらえますか?と山村が聞くと、看護婦は不安そうな顔では後答える。

山村から写真を見せられたアリス化粧品のセールスマン(成瀬昌彦)は、あ、間違いございません、このかたなら、もうずっとうちの製品を…と確認する。

そうですか、ずっとと言いますと?と山村が聞くと、もうかれこれ2年近くでございましょか?初めてお伺いしたのが板橋のアパートでございましたからとセールスマンが言うので、おお、板橋の頃からと山村は答え、じゃあ、小沢さんについては色々と知っているわけですね?と問いただす。

あの〜、色々ととおっしゃいますと?とセールスマンが怪訝そうに聞いて来たので、いやつまり、生活上の…と山村が補足すると、はあ…、しかし私どもはお客様のことについてとやかく…とセールスマンは、部屋の中で仕事を続けていた販売部長の方をチラリ見て答える。

お客様のことはおしゃべりしないようにと私もセールスマンには厳しく申しておりますんで…と、販売部長が口を挟んでくるが、でもこういう場合はなんでございますから、知っていることはお話ししてとセールスマンに指示する。

はいと答えたセールスマンに、何かこう、男関係についてご存知でしたら一つ…と山村が水を向けると、流石にセールスマンも販売部長の顔色を伺い、どうもはっきりしませんが、板橋にいらした頃は男の方とご一緒だったようで…と答える。

どんな?と山村が聞くと、さあ…と言うので、若い学生かなんかですか?と聞くと、さあ、はっきりご挨拶したことはありませんでしたから…とセールスマンは言うだけなので、そうですか、他に小沢さんのところへ出入りしてた人は?と聞くと、女の方なら、梅村さんとおっしゃる方が…と言うので、梅村?と山村が聞き返すと、はあ、やっぱり私どものお客さんで…と言うので、その人の詳しいことわかりますか?と聞くと、なんでも芸者に出ておられるとかで、住所なんかはリストを調べてみれば…と言うので、そうですか、一つお願いしますと山村は頼む。

セールスマンは販売部長の方に振り返り、部長は黙って頷く。

キャバレー「ミラノ」のステージで歌う三人女性(クリスタル・シスターズ)

ボーイがホステスに声をかけ廊下に連れ出し、待っていた長田にどうぞと声をかける。

廊下の隅で酔って休憩していたホステスに、あら大丈夫?無理して飲むからよ、売り上げ上げるのも良いけどさ、身体壊したらおしまいよと声をかけたそのホステスは、長田に近づくと、あの〜、初江さんのことですか?と聞いてくる。

ええと言いながら警察手帳を出して見せた長田は、ちょっと聞きたいんですがと伝えると、初江さんなら15日からずっと休んでいますけどとホステスは言う。

それであなたにお聞きしたいんですが、初江さんには彼氏らしい人がいたそうですね?と長田が聞くと、彼氏って、成田さんのことかしら…とホステスは自信なさげに答える。

その成田さんって人は?と聞くと、ええ、ここのバーテンですけどとホステスは言うので、ほおと長田は驚いて見せる。

学生アルバイトらしいけど、なかなかハンサムで、私なんか同棲しちゃいなさいって勧めたんだけど、それじゃあ気分が出ないなんて…、でもこの頃はあの2人…と、背後でストッキングを直しに出て来たホステスを見やると、今度も2人一緒に休んだでしょう?てっきり温泉でも行ったのかも思ったら、成田さんだけ翌日出て来たんで…と言うので、ちょっとと話を止めた長田は、初江さんとその成田というアルバイト学生とは15日は一緒に休んだんですか?と確認する。

絵絵とホステスが言うので、で、その成田君、今日も来てますか?と長田が聞くと、さあと答えたホステスは、あ、みどりさん、成田さん来てたわね?とストッキングを直していた仲間に聞くと、うんとみどりは言い、私のペチコート出てない?と聞いて来たので、うんと答えたホステスは、会います?と長田に聞くので、ええ、どの人だか教えてくださいと長田は答える。

どうぞと言って店内に長田を連れてきたホステスが指差した相手に長田は、カウンター内でシェーカーを振っていた成田(今井俊二)に成田君だね?と話しかけ近づく。

その夜の本部では、じゃあその梅村久子っていう芸者の所にも行ったのかね?と報告を受けた主任が山村刑事に聞く。

ええ、でもあいにく今日は客と熱海に遠出しているそうで…と山村刑事が言うので、ほお、明日は帰るのかね?と主任が聞き、予定ではそうらしいですと山村は答える。

そこに成田を連れた長田が戻って来たので、ご苦労さんと主任が出迎え、かけたまえと成田に長田が勧め、主任の耳元に何事かをささやきかけると、そうか…と主任は納得し、まあどうぞと隣の部屋に案内する。

君は小沢初江さんと親しくしておられたそうですが、どんなご関係でした?実は例のバラバラ事件の被害者がほぼ小沢さんに間違いないと分かったんですが、念の為、確かめたいと思うので、何か小沢さんの身体の特徴のようなものをご存知なら聞かせてくれませんかと主任は部屋の火鉢をいじりながら頼む。

山村刑事も成田の隣に座り込む。

不機嫌そうにしていた成田は、どんなこと言えば良いんですか?と挑発するように聞いてくる。

つまり、美容整形をしてたとか…と主任が水を向けると、知りませんと言うので、じゃあ手術をしていたとか?と聞くと、手術ならしてましたと成田は答える。

何の手術でしょう?と聞くと、盲腸じゃないんですか?と成田は言うので、するとあなたはそれをご覧になった?と主任が突っ込むと、え!ええ、まあそうですが…と成田が答えたので、いや、大いに参考になりましたと主任は笑顔で礼を言う。

そこに林刑事が戻って来たので、おい林君!と隣室から主任が呼びかけ、どうだったね?と聞くと、はあ、明日には全部終わりますと林は答える。

そうか…と答えた主任は、ところで、その胸のポケットに入っているものはなんですか?と主任が成田に聞いたので、免許ですよと成田はポケットから出して見せ、答える。

ほお、自動車の運転もやるんですか?車を持ってるの?君は…と、受け取った免許証を見ながら主任は聞いたので、コートを脱いでいた林刑事も注目する。

いや、いつもドラクラの借りてやるんですよと成田は答えたので、ドラクラ?と主任が聞くと、ドライブクラブのことでしょうと山村が横から答えると、ええと成田も言うので、ああ、そうですかと主任は納得する。

あ、ところで成田君、君は15日店を休んだそうですねと長田が聞くと、15日…、さあ、忘れちゃいましたね、良くサボるからと成田は愉快そうに答える。

うん、15日の夜はどこに行かれました?と長田は穏やかに聞くと、さあととぼけるので、思い出したんですね?言ってくれませんかと長田は笑顔で勧める。

どうして言わなきゃいけないんですか、そんなこと!と成田が反抗的になったので、参考にしたいんですよと長田は笑顔で答える。

15日といえば、小沢さんが姿を消した日なんだねと長田は補足する。

ええ!じゃあ、警察は僕のことを疑っているんですか?と成田は驚く。

いやあ、君のアリバイを確かめたいんですよと長田は笑顔を崩さず説明する。

さあ、どこに行きました?その時、誰か一緒の人がいたら、そん人の名前でも良いんですよ、こっちが確かめられればそれで良いんだからと主任も笑顔で聞くが、成田は警戒して口を開こうとはしなかった。

アパートの前を掃き掃除していた大家に、山村刑事は近づき、やあ、先日はと挨拶し、今日はちょっと写真を見ていただこうと思って…と要件を言うと、小沢さんのところへよく泊まった大学生って、この中にいませんかと言いながら複数の写真を出してみせる。

あ、この人です!と大家はすぐに一枚の写真に気づき、よく分かりましたね〜と感心する。

その一枚の写真には成田が写っていた。

そうですか…と山村が納得すると、あの〜、まさかこの人が…と大谷は怯えたように聞いてくる。

いや、それはまだ…と言葉を濁した山村に、あ、そうそう、あの小沢さんの部屋、どうしたもんでしょうね、ああしていつまでも塞がれていると、うちじゃ困るんですけどねと大谷は聞いてくる。

本部に翌日も拘留していた成田に主任は、君がそうしていつまでも黙っていると、君のためにならんですよ、早く言うだけのことは言っちまって、大学院だって行かなきゃならんだろう、君は、ええ!と説教口調になっていた。

そこに林が来たので、おお、林君と呼びかけながら主任は席を立つ。

は?と近づいて来た林に、君の線は追い込みになって来たからな、今日は金子君を応援にして…と主任が指示すると、じゃあ、手分けしてやりますと林は答える。

そこにやって来た長田が主任に何か封筒から取り出して見せながら、耳打ちする。

成田君、君の下宿を調べさせてもらったんだが、この人は誰なんだ?と今、長田から受け取った写真を見せながら聞く。

女が映っていたが、それを見た成田は顔を背けるだけだった。

どこのお嬢さんかね?と長田も聞くと、言えないよと言うので、君の恋人か?と聞くと、知らないよという。

その時電話がかかってきて、はい本部、うん、はいよと答えた渡辺刑事が、主任、山村君からですと声をかけて来たので、主任は電話を受けに向かう。

ああ、俺だ、うん、うん、分かった、すぐ戻ってくれと指示して電話を切ると、成田君、君は良く、小沢初江さんの部屋に泊まったことがるそうじゃないかと主任は成田に聞く。

すると成田は、それがどうしたってんですとい言い返して来たので、うん、つまり君は小沢さんと特殊な関係にあったと考えられる訳だ、ところでこのお嬢さんが君の恋人だとすると、ここに三角関係が出来上がる訳だからな、あるいは君が小沢さんを殺したと言うことも…と主任が説明しかけると、僕じゃない!僕は人なんか殺すものか!と反論してくる。

その証拠は?このお嬢さんの住所はどこなんだ?言いたくないのかね?どうして?と主任と長田は詰め寄る。

それでも成田が自分の殻に閉じ籠ったかのように押し黙るだけだったので,長田は女の写真を持って出かけようとすると、どこに行くんだ!と成田は気になるのか聞いてくる。

この人の身元を割り出して会うのさと長田が説明すると、家まで行くんですか?と成田が聞くので、それはまあ、いろいろ聞きたいことのせてこあるからね〜と主任が答える。

すると成田は、ダメだ、行かないでくださいと急に態度を変えてくる。

どうしてだね?と主任が聞くと、どうしてって、僕はアルバイトのことなんて知られたくないんですよと成田は言う。

おお、というと、隠しておきたい訳かい?と長田が戻って、また座りながら聞くと、ええと成田が言うので、何故?と聞くと、僕…、結婚できるかもしれないんですよと成田は打ち明ける。

うん…、というと、君は小沢初江のことも隠しているんだね?と主任が聞くと、それが分かったらお終いですよと成田は言う。

そうか…、それであの人の名前や住所を言いたがらなかったのかねと主任は苦笑しながら聞く。

ええ、実は15日もあの人と一緒だったんだけどと成田が吐いたので、ほお〜、じゃあ初江さんのことは一歳内緒にすると約束したら彼女の住所を言うかね?と主任が聞くと、でも本当に言いませんか?と成田は疑う。

ああ、どこだね家は?と主任が聞くと、今日はきっと乗馬クラブにいると思うんですが…と悩んだ末に成田は告白したので、乗馬クラブ?と長田は聞き返す。

乗馬クラブで長田が会った令子(佐久間良子)は、ええ、確かに15日はうちで…と言うので、何時頃ですか?と聞くと、3時頃からずっと…、あの日、私車の免許を取ったんで、そのお祝いや御礼を兼ねてうちでパーティをしてたんですと言う。

うん、成田君もずっと一緒でしたか?と聞くと、ええと答えた令子は、あ、ここよと近づいて来た乗馬仲間(松本幸治)に呼びかける。

あの方は?と聞くと、私のフィアンセですのと令子は悪びれずに言うので、え?するとあなたは婚約しておられたんですか、あなたは?と長田は問いかける。

ええ、もう2年も前からよ、彼、この間までパパの会社のニューヨーク支店の方に言ってましたけどと令子は言うので、そうでしたかと長田が答えると、何、感心してらっしゃるの?と令子は無邪気に聞いてくる。

え?いや〜、成田君はあなたと結婚できるかもしれないなんて言ってたんで…と長田が教えると、まあ、あの人には呆れた、私はまた、あの人パパに点数稼いで、就職のコネでも作ろうと思ってたんだとばかり…、まだ何か?と令子が言うので、いや、もうどうぞと長田が答えると、じゃあと言い残して馬の方に向かう。

本部に戻って来た長田から事情を聞いた主任は、そうか…、じゃああの大学生は返さんといかんな、渡辺君、君すぐと言って、成田のいる部屋を指差す。

渡辺が部屋を出ていくと、かわいそうに、令嬢と結婚できるかもしれんなんて言っとったがな〜と主任は同情する。

どうも成田君は、1人合点でもしてたらしいですね、あの様子じゃ…と長田も気の毒がる。

笑い出した主任は、ところで問題は、成田がシロとなるとホンボシはどこにいるかと言う訳なんだがと指摘する。

化粧品のセールスマンが見かけた男ってどんなもんでしょう?と山村刑事が発言すると、しかし詳しいことは分からんのだろう?と主任は聞き返す。

梅村という芸者が知ってるかもしれませんよと長田が言うと、そうだ!もう帰ったことでしょうから、僕はそっちの線を言いながら山村が立ち上がったので、頼むよと主任は励ます。

出かけようとする山村とすれ違うように帰って来た林刑事が、主任、やっと追い詰めましたよと言いながら手帳を見て、号数の2169って奴なんですがね、押上なんですよと言う。

と言うと、例の新聞から割り出した地区の街じゃないかと長田も気づく。

そうなんですよ、とりあえず、金子君が当たりに行くって言うんで、私は報告に…と林刑事は言う。

そうか、そいつはご苦労だったなと主任が労う中、会釈をして山村は出かけてゆく。

林刑事は、はあ、いえ…と謙遜しコートを脱いでいるとき部屋に来たのが成田で、よお、いろいろ迷惑をかけたかもしれんが…と主任が出迎えると、令子さんと会ったんですか?と成田が聞いて来たので、あったと椅子に腰掛けた長田が答え、しかしちゃんと約束は守ったよと言って立ち上がる。

そうですか…と答えた成田に、ところで君は本当に玲子さんと結婚しようと思ってんのかい?と主任が聞くと、どうしてですか?僕は令子さんを愛してるんですからねと成田は答える。

じゃあ、小沢初江との関係はどう言うことに?と聞くと、ああ、あれですか、あれは別ですよと成田が言うので、しかし少なくとも小沢さんの方は本気じゃなかったのかね?と主任が聞くと、さあ、結婚しなくても1人で十分やっていけるなんつってましたからねと小沢は言う。

1人で女給を?と主任は驚いたように聞き返す。

バーでもやるつもりだったんでしょう?だいぶん貯め込んでいるようでしたからと成田は言うので、どこに?と長田が聞くと、通帳見たけど忘れちゃいましたねと成田は答える。

通帳?そんなもんがどっかにあったのかね?と主任が不思議がると、そん時は、長押の間から出してみせましたと成田は教える。

長押の間?と長田が聞くと、ええ、僕の見た時は、向かって右側のと成田は答えたので、ふ〜んと答えた主任は長田の顔を見て、長田は黙って頷くと部屋を後にする。

僕はもう良いんでしょうと言うので、いや、どうも…と主任は挨拶し、渡辺君と案内を頼む。

その時電話がかかって来たので、主任ははい本部!と答え、おお金子君か、うん、それで?と話を促す。

電話ボックスから電話していた金子刑事は、はあ、ヤサは判明しましたが、どうもハンカチタクシーをやってる奴らしんですがと言うので、ほお、ハンカチタクシーをと主任も驚き、で、そいつの名前はと聞き、吉岡ただし30歳とメモに書き留めるので、部屋にいた林刑事も手帳に書き写す。

「ただし」は正義の「正」と主任が確認し、そうか…と言うので、それを見た林刑事は、胸ポケットからメモを取り出し、「林正」という赤ん坊の名前の画数などを書いたものを見直す。

それを渡辺刑事が覗き込もうとしたので、林刑事は慌てて隠す。

じゃあ、早く回ってくださいねと沖屋の受付で話を聞いていた芸者が、「住吉」さんですね?と確認し、じゃあどうも…と挨拶して出かけようとしていた。

受付はご苦労さまと挨拶を返してくる。

そんな沖屋に来た山村は、踊りの稽古をしている横にいた梅村という芸者から話を聞いていたが、だってねえ、もうずっと付き合ってないんですものと相手が言うのを聞いていた。

じゃあ、初江さんが板橋のアパートにおられた頃は?と山村が聞くと、梅村は、通りかかった芸者に、ちょっととんちゃん、こないだの晩食べたラーメンの借金返しとくわと話しかける。

あら、姉さん、良いんですか?と言いながら座った相手に、ええ、あるうちに返しとかなくちゃねと梅村は財布を取り出し、50円玉よ、24円お釣り頂戴と言う。

とんちゃんと呼ばれた芸者は、釣り銭を渡し、すみませんと言いながら、50円玉をもらって立ち去る。

そうね…、あの頃は良い人っていうのかな、そんなような人がいたことはいましたよと、話を中断していた山村記事に話を続ける。

ご存知ないんですねと山村が九人すると、ええ、2度くらいだじゃら、何やっている人か、名前も知らないんですよと言い、タバコを咥える。

年はいくつくらいでした?と聞くと、タバコに火をつけて、30前後かな?でもその人とは別れたって聞いたわよ、渡し…と梅村は答える。

別れた?と山村が聞き返すと、初江さんの他にね、良い人ができちゃったらしいんですよ、大喧嘩して大変あ騒ぎと手振りを交えて梅村が言うので、するとその男は今はその人と?と山村が聞くと、多分そうでしょう、何でもその女ってのは浅草あたりのストリッパーですってと梅村は打ち明ける。

それを聞いた山村は、いやどうもすみませんと言って立ち上がるとすぐに立ち去ろうとするので、後を追って来た梅村は、ねえお兄さん、あんたみたいなイカす男に弱いんだ、渡し、ねえ、サービスするからさ〜、今夜座敷かけてとすがってくるが、山村は無視して帰る。

初江のアパートにやって来た長田は、大家に部屋を開けてもらい、向かって右側かと言いながら、長押の上を手で探り出したので、一緒について来た大家は、何なんです、一体?と困惑するが、やがて金属の銀行通帳のケースを長田は見つける。

中を確認した長田は、15日に全部おろしてあるなと呟くが、それを覗き込んだ大家はへえ、あの人こんなに…、104万…とその金額に感心し、その癖に、うちにガラス一枚だって直させてたんですよと愚痴を言う。

外で金子刑事と合流した林刑事は、ああ、あれかね、吉岡のヤサは…と確認していた。

ええ、まだ戻った様子はありませんがと金子が言うと、ハンカチタクシーなら今頃は稼ぎどきだろうからなと林刑事はしてくする。

しかし何と、名前が正とはね〜と、ポケットからメモを取り出した林が嘆くので、事情を知らない金子刑事は、え?と不思議がる。

浅草オストリップ劇場に来た山村刑事に、この子がサリー佐山ですが?このところ、無断で休んでいるんですよと支配人(滝謙太郎)が写真を選び出して見せる。

しかし住所はわかりますね?富山裏が聞くと、ええ、でもこの先の下宿から実家の方に引き上げたとかいうんですよと支配人が言うので、その実家というのは地方なんですか?と聞くと、いやあ水上生活者ですと支配人は言う。

水上生活者?と山村が確認すると、ええと支配人は言う。

夜、林刑事と金子刑事は、吉岡の家に明かりが灯っているので、在宅と知って見張っていた。

そこに車が近づいてきて、そのナンバーを見ると、「5-す-2169」だった。

車から降り立った運転手の吉岡(杉義一)が自宅の玄関に向かったので、途中で追いつき、もしもし吉岡正さんですね?と確認する。

すると林たちを押し除け車に乗り込もうとしたので、あ、待て!と二人の刑事は後を追いかける。

しかし林と体が交差した金子は追いつく前に転んだので、吉岡の車の発車を阻止するのはできなかった。

呼子を吹き、おい、吉岡!お〜い待て〜!停れ〜!と叫ぶが、もう吉岡の車は走り去った後だった。

金子と林両刑事は「押上駅前」まで追跡するが、吉岡の車は走り去ったので、ちょうど通りかかったタクシーを停めて2人は乗り込む。

林は運転手にあの車を追ってくれ!と前を走る吉岡の車を指差す。

追跡の途中、吉岡は前から来たトラックを避けようとハンドルを切ったので、側溝に落下する。

タクシーを降りた刑事たちは、素行の下を除き、車から脱出しようとしていた吉岡に近づくと、吉岡、吉岡!と呼びかけながら助け出そうとする。

一方、本部に戻った山村の報告を聞いた主任は、え?サリーの実家が見つからん?と驚いていた。

ああ、ええ、浜松町あたりにもやっているダルマ船とまではわかったんですが、ちょうど仕事に出てると言うことで…と山村は説明する。

ああ、そうか、うちごと移動しているわけだねと長田が理解する。

明日また…と山村が言いかけた時電話がかかって来たので、主任が取り、はい本部!大金子君か…、どうかね?え!事故?うん、救急車で吉岡は林君が?良し!わかった、すぐ行く、吉岡が重傷を負ったらしい、とにかく病院行ってみるよと主任は他の刑事に伝える。

病院では同行してきた林刑事が吉岡の輸血に協力していた。

そこに赤ん坊をおんぶした女房らしき女性よし子(谷本小夜子)が訪ねてきて、お父ちゃんと呼びかけ、近づこうとしたので、金子刑事が慌てて後ろに下がらせ、廊下に出す。

あの〜、お父ちゃんはどうなんですか?助かるんでしょうか?とよし子が聞いて来たので、まあお医者さんもできるだけのことはするって言ってますからと金子は説明する。

どうしてこんなことになっちまったんですか?とよし子が詰問口調で来たので、それが…、ああ奥さん、あの〜、ご主人ですがね、15日の日は何してたでしょうか?と聞く。

15日?15人いえば、お父ちゃんが仕事休んだ日ですけどとよし子は答える。

休んだ?と金子が聞くと、ええ、お隣で一晩中、麻雀を…と言うので、徹夜で麻雀を?と金子が確認すると、ええ、車を貸しちまったもんだからねとよし子は悔しそうに言う。

誰にです?と聞くと、せんちゃんとよし子は答える。

そこに主任と渡辺刑事が駆けつけてきて、よう、どうかね?と聞いて来たので、あ、あの〜、今輸血を…と金子が説明する。

で、そのせんちゃんと言う人はどこの人ですか?と金子が改めてよし子に聞くと、さあ?何でもお父ちゃんが羽田のキャンプにいた頃お仲間らしいですけど…とよし子はよく知らない風だった。

はあと金子が生返事をすると、3000円とかで、一晩車を貸すことにしたとかって…とよし子は言うので、ああ、ちょっとアリバイを固めて来ようと思いますが?と金子は主任に耳打ちしてその場から立ち去る。

取り残されたよし子は、あの〜、まだ入っちゃいけないんですか?と主任に聞いたので、今少し…と主任は宥めようとするが、その時ドアが開いて、あの〜、警察の方ですか?と看護婦が聞いて来たので、はあ、何か?と聞き返すと、患者さんの容体が…と言うので、ええ!と言いながら病室に入ったよし子は、父ちゃん、あんた!あんた!私を!と吉岡に呼びかけ、無言の夫の死体を前に泣き崩れる。

それに釣られて背負っていた赤ん坊も泣き出したので、医者と刑事たちは何も言えなくなってしまう。

本部に戻った刑事たちは全員落ち込んでしまう。

しかし、林君たちが呼び止めたら車で逃げ出したと言う点からするとと主任が呟くと、吉岡はホンボシじゃないんでしょうかね〜と長田が言い、うん、とすればだ、細君が吉岡のアリバイについて偽の証言をしとることになるんだが…と主任は頭をかかえる。

あの取り乱しようでは、あんまり追及するのも酷ですしね〜と林が言うと、主任も運と答える。

そこに帰って来たのが金子刑事で、行って来ましたと言うので、うん、どうだった?と主任が聞くと、はあ、吉岡の隣のうちで15日の券を確かめましたら、確かに徹夜で麻雀を…と金子が追うので、つまりアリバイがあると言うわけだねと主任が確認すると、はいと言う。

まさかガセじゃないだろうな?グルになってるとかどうかして…と渡辺刑事が疑うと、うん、僕の感じではそんなことないらしいんだけどな〜…と金子は答え、とすれば、吉岡はなぜ逃げたかだと長田が指摘する。

そこがわかれば、今度は車を貸したと言うせんちゃんなる男に容疑の焦点は絞れてくるんだがね〜と主任が言うが、そこに電話がかかってくる。

はい、そうです、はあ、そうですか、ちょっとったと、電話に出た高津刑事が、本庁の交通からですと主任に伝える。

受話器を受け取った主任が、はい主任ですが?と答えると、はい、そうです、追跡中に崖から…、はい、え?うん、うん、そうでしたか、いや、どうも…と言って電話を切ると、吉岡がなぜ逃げ出したか謎がわかったよと刑事たちに告げたので、全員身を乗り出し、おお、どうしてです?と聞くと、吉岡の車、今日昼過ぎ、年寄りを轢き逃げしとったんだと主任は伝える。

ああ、じゃあ、それがバレたと思って…と長田が指摘する。

うん、目撃からナンバーが割れて、交通の方で手配になっとったと言うんだ、そうだ、それが今しがたうちの方で扱ってるとわかって電話をくれたんだが、良し、じゃあ、明日からは、そのせんちゃんなる人物を追求するかと主任は指示する。

羽田空港の係員は、あ、これです、米倉仙三って言いますが…と、せんちゃんの本名を過去名簿から調べ出してくれた。

それを受け取った渡辺刑事と長田部長刑事は、この男ですか?と資料に添付された顔写真を見て確認すると、辞めたのは去年の夏ですか?と聞くと、ええ、機材を持ち出したりしてクビになったんですと係員は教える。

じゃあ、もうここへ現れることはありませんなと長田は言うと、いやあ、それが、米倉はジョージというGIと付き合いがあるもんで、この間もひょっこり…と係員が言うので、こお会いだと言いますと?と渡辺刑事が聞くと、え〜っと、あれはジョージたちが帰国する日でしたから、16日の午前中ですかねと記録帳を見ながら係員は教える。

16日?その日、この米倉は、ここへ何しに来たんでしょう?と長田が聞くと、ええ、おそらくジョージから闇ドルを仕入れたんだと思いますよと係員は教える。

闇ドル?と渡辺刑事が聞くと、ええ、ジョージは日本円で彼女に手切れ金をやりたあっていたんですよと係員は言う。

一方、水上生活者の船の所に来ていた山村刑事は、じゃあ、浅草の方は辞めるつもりでゲス句を引き払ったわけですか?とタライで選択していたおばさんに聞くと、ええ、今度はもっと良いアパートを借りるんだとか言ってねとおばさんは言うので、どこでしょう?そのアパートは?と山村は聞く。

なんでも今度の小屋の先生が 見つけてくだすったんだとか…、立派な所らしいですよ、話聞くと…としか言わないので、そうですか、どうも…と言って去ろうとすると、まああの子もこれでやっと芽が出ましたよ、なんちったって浅草じゃ段違ですからね〜とおばさんは話しかけてくる。

近くでは林刑事が他の主婦と、そうか、それじゃあ子供たちは他の学校に行ってるし、父ちゃんと始終差し向かいって訳だなどと話しかけ、まあ、そう言ったとこですねなどと主婦は答え雑談していた。

そこに合流した山村刑事に、わかったかね?と林が聞くと、ええ、サリーはどうやら引き抜かれたらしいですよ、浅草からと山村は教えたので、どこへ?と林は聞き返す。

とある劇場のステージでは踊りのレッスンが続けられ、ダメダメ、何遍やったらできるんだ!と振付師から怒られていた。

叱られた踊り子は、フンと顔を背け、ステージの隅の椅子に座って見ていた男に駆け寄ると、先生!と甘える。

まあ良いさ、あとで練習するさ、次!と振付師に指示する。

どう?あの先生の顔!と、舞台袖でこの様子を見ていた他の踊り子は言い、僻むんじゃないのと他の踊り子から宥められていた。

そうよ、悔しかったら、踊りの他にも上手くなることさ、さあ行くよと別の踊り子が声をかけ、その後から数人の踊り子たちがステージへと向かう。

そんな舞台裏に林と共に来ていた山村刑事は、先生のところから舞台袖に戻って来た踊り子に、あの、サリーさんですね?と警察手帳を見せながら尋ね、小沢初江さんって知ってますね?と林が聞く。

サリー(小宮光江)はええと頷いたので、殺されたことも?と林が聞くと、ええと答える。

ところで、小沢さんは板橋にいた頃一緒にいた男なんですが…と山村が聞くと、えっ!とサリーは驚いたように身を引いたんで、あんたもよくご存知なはずなんだが…と林が続ける。

せんちゃんのこと?とサリーが言うので、せんちゃん?と山村が繰り返すと、違うの?とサリーが戸惑った時に、サリー、何だい?と先生がニヤケ顔で近づいて来たので、先生、妬ける?大丈夫よ、刑事さんなんだもの、後でねとサリーはあしらって追い払う。

その様子放送禁見て含み笑いしていた林は、ところでそのせんちゃんという男がつまりその〜、小沢初江さんからあんたに何かしたというと話を続けると、うん、まあ、あの時私子供だったのね、上手いこと口説かれちゃってさ、ついその気になっちゃったんだけど…とサリーが言うので、と言うと、今も?と林が聞くと、当たり前よ、あんな人といつまでも一緒にいたらこっちの体が持たないわ!とサリーは言い返してくる。

ほお、体が持たない…と林が繰り返すと、あの人ね、普通じゃないのよ、愛してはくれるけど、それがね…、よっぽど利用できるんじゃなきゃ付き合いきれないわとサリーは意味ありげに言う。

そりゃ、私を前の劇場に売り込んでくれたのはせんちゃんよ、それ以上は無理ですもんねとサリーは続ける。

じゃあ、この楽屋で会ったこともない?と林が聞くと、うん、2〜3度、街で見かけたことはあるけどとサリーは言うので、どこで?と山村が聞くと、どこって、それがね売人なのと言うので、ああ、麻薬かなんかだね?と林がカマをかける。

ううん、いかにもあの人らしいんだけど、ほらよくあるでしょう?男の人が喜ぶ写真…とサリーが言うので、そんなものをどこで?と山村が聞くと、私に聞いたなんて言わないでねとサリーが言うので、うんと答えると、あのね、2度とも西銀座の高速道路の辺よとサリーは教える。

西銀座だねと念を押し、林と山村はその場から去って行く。

その後2人は西銀座界隈を夜になるまで歩き続ける。

一方、本部では、羽田で調べた米倉仙三の住所をあたってみましたが、だいぶ前に引っ越していて、その先はどうしてもわかりませんでしたと長田が主任に報告していた。

そうか…、実は今、林君たちの線から、せんちゃんがん西銀座あたりに出没したとわかってね、山村くんとその辺を流してもらっとるんだと主任は教える。

頬と長田は感心し、上手く罠にかかるといいですがねと渡辺刑事が答えていた時、高津刑事たちが帰ってくる。

夜になっても林と山村は西銀座近辺を歩き続けていた。

その時、1人の女性がビルから出て来て林の目の前を通り過ぎたので、何気なくそのビルのプレートを見ると、「西銀座美容整形院」と書かれていたので、林は苦笑する。

そんな林に近づき、旦那、良い写真があるんですがと話しかけて来た男(小林寛)がいたので、ほお…、良いってどんな?と聞くと、組み写真なんですよ、クレージーラブと男は言う。

あちらもんかい?と聞くと、いや、こちらもんですけどねと男は答えるので、あまりゾッとしないねと林が気乗り薄な様子を見せると、じゃあミスハリウッドってのはどうです?と話を変えて来たので、ああ、あれか!あれは前にせんちゃんってのから買ったよと林は知っている風を装う。

何だ、奴さんのご常連ですかい?と相手が乗って来たので、うんと答えると、やっぱりね〜と男が感心したので、やっぱりって?と聞くと、顔見りゃね、わかりますよ、買いそうかどうかと男は言う。

そうかねと渋い顔になった林に、だけどね、せんちゃんはここんところ休んでますよ、だからあっしのを買ってくださいよと男は粘るが、その時近づいて来た山村は、林と男に気づいて近くから監視し始める。

何だよ、見せねえで買えって言うのか!と林が男と向かい合って聞くと、ほら、組ですからねと男は後ろを向いて、服の中に隠した写真を見せる。

いくらだい?と聞くと、そうだな〜、せんちゃんのお得意なら…と男が考え出した時、林は警察手帳を出したので、男は慌てて逃げようとするが、山村刑事との連携ですぐに確保する。

男が持っていた写真は女性が洋服を脱いでいる過程を撮っただけで、違法性はなかった。

それを見た主任は、これが仙三の今の女だと言うのかい?と本部に連行された男に聞く。

ええ、てめえの女をこう言う写真にするってとこが奴の神経なんですよと男は言うので、同じ取調室で聞いていた林が、ほお、どうして?と聞く。

どうしてって旦那、奴は、ほら、異常性格ってのがあるでしょう?あれらしいんですよ、前に豚や牛の密殺をやってたそうですがね、あんなことやってると、あんな風になっちゃうんですかね?と男は言うので、密殺をね〜と主任は答える。

しかしこんな写真を売ってるやつの神経だってまともとは言えねえんじゃないかと林が皮肉ると、すいません、だけど旦那…と男が言い訳しようとしたので、まあ良いさ、で、仙三はこの女と一緒にいるのかい?と主任が聞く。

いや、今はまだ1人で間借りしてますがね、そのうちに一軒持つんじゃないですかね、何でも一山当てたら写真のプロダクション作ってボロ儲けしたいなんて言ってましたからねと男は言う。

プロダクション?と山村が聞くと、ええ、そん時は安くあっしにもおろしてやるなんてね、威張ってましたっけと男が言うので、ところで仙三は今、どこに曲がりしてるんだと主任がタバコを勧めながら聞く。

ははあ〜、分かった!そのせんちゃんを探してるんですねと気づいてタバコを受け取った男は、つまり風紀係の旦那じゃないんでしょう?と主任から火をつけてもらったタバコを吸って言い当てる。

すぐ風紀係に回してやるよ、そんなことより仙三のヤサを言いなと林が言うと、へえ、じゃあ旦那型のわかり良いように言いますけどね、業平橋の箱のと男が言うので、業平橋の交番の?と山村が聞くと、すぐ近所に東武線のガードがあるんですよと男は続ける。

うんと林が頷くと、そのちょっと先の香村ってうちなんですと男は教えたので、香村だなと山村は手帳にかき、林は良し!と言って立ち上が離、じゃあ主任と話しかけたので、うん、金子君も連れて気をつけてなと主任は指示する。

後他に、奴の立ち回りそうなところ知らないか?と山村が聞くと、さあ?と男が首を傾げたので、さあじゃないよ、この写真のネタ元があるだろう!と山村は迫る。

でもそれだけは…と男が抵抗するので、言うんだ!と山村は叱りつける。

窓際でそれを聞いていた主任は、まあ言いたくなけりゃ言わんで良いさ、仙三は殺しのホシなんだからなというと、男は、殺しの!と仰天したように主任の顔を見る。

そうだよ、だからお前もそれに加担していると見なすことにするからなと主任が笑顔で脅すと、とんでもないですよ、旦那、言いますよ、言いますよと男が観念したので、どこなんだね、ネタ元は?と主任は聞く。

箱崎町のダルマ船酒場ですと男は自供する。

というと、もやい船なのかね?と主任が聞くと、ええと男は頷く。

「本所警察署業平橋巡査派出所」にやって来た林と金子両刑事に、警官は、ああ、あそこの香村なら保安の方でマークしているうつですよと教える。

保安で?と林が聞き返すと、はい、どうも闇ドルのブローカーやってるらしいんですと警官は言うので、闇ドルですか?と金子も聞き返す。

ええ、ところが肝心の本人が口を割らないまま脳溢血で倒れてしまって、こないだ死んじまいましたと警官は言う。

香村の主人が?と林が確認すると、ええ、それで闇ドルのルートがたどれなくなったってこぼしてましたと警官は説明する。

そこに米倉仙三って男が下宿しているって聞きましたけど?と金子が聞くと、下宿人ですか?と言い、警官は資料を探し始める。

だからさ、せんちゃんに会ってどうしたってのさとダルマ船酒場に客を装ってきた長田に、女給のキミ子(星美智子)は聞く。

映画のプロダクション作ろうと思ってさと長田が言うと、え!何の映画?とキミ子は食いついてくる。

あんたに主演してもらってさと長田がお世辞を言うと、キミ子は嬉しそうに酒お飲むので、組写真なんてもう古いよと長田が言うと、やだそんなの!とキミ子が起こったので、冗談!と長田は言う。

今のは冗談だけどさ、つまりせんちゃんに資本出してもらいたいんだよ、せんちゃん、ここんとこ、だいぶん金掴んだって聞いたんでね〜、あれ嘘かい?と長田は話を続け、キミ子に酒を注いでやると、さあ、どうだか…とキミ子ははぐらかす。

もう一本飲む?とキミ子が言うので、うん、借りでもいいか?と長田が指で金を示すと、うん、良いけどさ…、あんまり勧めないわ、私、あんたを愛しているから…などとキミ子は答える。

長田は苦笑して、振りの客に貸し売りはお断りかい…と言いながら立ち上が離、いくらと聞くと200円とキミ子は答える。

金を払いながら、せんちゃんに会わせてくれないか?と長田が頼むと、今度都合聞いとくわと公子は答えるので、今度っていつ?と聞くと、明日でもまた来て見てと言うので、明日?うん、良し、じゃあと言って長田は帰る。

どうもありがとうと長田を店の外まで見送ったキミ子は、じゃあと挨拶するが、長田は近くのトラックの影に入り、そこにホームレスに化けて隠れていた山村刑事と合流し互いに頷きあう。

一方、林と金子を出迎えた香村の妻(沢村貞子)は、警視庁の方ですか?と節目がちに聞き、いろいろとご迷惑をおかけしましたけど、主人はもう…と言うので、いやいやご主人のことじゃないんですよと林が言い、米倉仙三さんに会いたいと思いましてと金子が説明する。

仙三さんならおりませんけどと妻が言うので、引っ越したんですか?と金子が聞くと、いえここんとこずっと…と言うので、そこへ行ったんでしょう?と林が聞くと、さあ…と言うだけ。

じゃあ15日、15日の夜は何をしていたか、それをちょっと…と金子が聞くと、15日…、あ、その頃でしたら、私、留守を仙三さんに頼んで、ずっと主人の病院の方へと妻は言う。

はあ…、するとその頃は、米倉仙三が1人っきりでこの家に?と林が確認すると、多分…と言う。

ちょっと仙三さんの部屋、見せてもらえませんか?と金子が頼むと、どうぞと言い、金子が階段を登ろうとすると、上がってすぐと妻が言うので、いやわかりますからと金子は答える。

奥さんはその後、仙三さんには会っておられないわけですか?と林が聞くと、ええ、主人が亡くなりました16日の夕方に会っただけですと言う。

16日?あ、16日に会われたんですか?と林が掘り下げると、ええ、仙三さんってひょっこりやって来て、主人がもうわからなくなっているのにしつこく聞こうとするんです、怒鳴りつけてやったんですと言うので、ほお、どんなこと?と林は聞くが、あの…と、妻は口ごもったので、差し障りのあることですか?と林は優しく問いただす。

ええ、でももう申し上げたほうが主人の供養になるかもしれませんわねと言い、闇ドルの振込先を主人から何とか聞き出そうとしたんです、どこで手に入れたんだか、こんな風呂敷包みを持ってきて、これが無駄になっちまうなんて私にまで毒づいたんですと妻は打ち明ける。

なるほど…、すると奴はそれをのせておう捌いたでしょうか?と林が聞くと、さあと妻は首を傾げる。

その時二階から降りて来た金子が、林さん、こんなものがと言いながらハンドバッグを手にし、小沢初子は確かこんな奴を持ってったってことでしたね?と確認してくる。

本部では渡辺刑事が、嫌なもんですね、待つってのは‥と主任や高津刑事にぼやいていた。

主任は苦笑しながら、どうだい、将棋でも指さんかい?勝負がお預けになってるんだろう?とからかう。

はあと渡辺は答え、高津も、じゃあやりますかと言って立ち上がる。

2人が将棋盤に駒を並べ始めた時、電話がかかって来て、主任がはいと返事したので、2人もそちらを気にする。

あ、俺だ、何!黒いハンドバッグが!仙蔵の部屋から血痕らしいものも発見された!と主任が声を上げたので、渡辺と高津も主任の机の前に集まる。

うん、するとそこが殺してバラバラにした第一現場ということに!うん、良し!張り込みを続けてくれと主任は指示を出す。

電話を切った主任は、顔を近づけた渡辺と高津に、良し、米倉仙三がホンボシと決まったな、奴なら被害者と面は通ってるし…と話しかける。

犯行の目的はやっぱり物取りですか?と渡辺が聞くと、うん、被害者が預金していた100何万をうまいこと引き出させて、きっと闇ドルで一儲けして、奴の考えていたプロダクションってやつを作ろうと思ったんだろう、とにかく両方に応援に行ってもらおうかと主任は2人に指示する。

渡辺刑事はその後、長田のダルマ船酒場の見張り現場に参加する。

香村の家を張っていた金子と林は、足音が近づいたので、板塀にへばりついて警戒するが、それが高津刑事と気づくと拍子抜けする。

本部では主任が1人、連絡を待ち受けていた。

渡辺と高津が置きっぱなしにしていた将棋盤を見やった主任は、窓の外が白み始めたのに気づく。

ダルマ船酒場も朝になっていた。

見張っていた長田部長刑事は、ダルマ船からキミ子が出て来たことに気づく。

服装からどこかへ出かけるらしかった。

長田と山村は、渡辺と頷き合い、渡辺が現場に残り、残りはキミ子の尾行を始める。

キミ子は一旦後ろを振り返るが、長田と山村は橋の欄干の背後に身を隠す。

香村の家の前も夜が明けて、3人はまだ見張りを続行していた。

キミ子はあるもやい船の近くに近づくと、船の中から男が出てきて手をあげる。

それに気づいたキミ子は嬉しそうに微笑む。

キミ子と合流したその男は、背後の船に手を挙げ、さらにもう1人の男、米倉仙三(潮健児)が姿を現す。

長田はホームレス姿の山村に合図をし、山村はその場でタバコを出して火をつけ、それをもみ消すと3人に近づこうとする。

キミ子と米倉は。近づいて来たホームレスに警戒するが、ホームレスが火の消えたタバコを差し出すと、米倉が口に咥えていたタバコの火をつけてやる。

タバコに火がつくと、山村は近くのコンクリート土管の中に潜り込む。

警戒を解いた米倉は、さあ、それを寄越しなと言うので、キミ子は驚いた表情になり、じゃあ、あたいは連れてってくんないの?と聞く。

ああ…、ともかくそれを大阪あたりで金にして、ほとぼりが覚めたらまた戻ってくるよ、な?と米倉は言うと、嫌よ、あんた…とキミ子が拗ねるので、駄々こねるんじゃじゃねえよ、俺の足手纏いになるつもりかい?というと、だって…とキミ子は承知しない。

その時、先ほどの仲間が、兄貴、ボツボツ積荷の渡しの来る頃だ、俺たちに迷惑のかからないように隠れてくんなよと声をかけてくる。

ああと答えた米倉は、さあ寄越しな!というとキミ子から風呂敷包みを奪い取ろうとしたので、嫌よ、せんちゃん!とキミ子は抵抗する。

それでも米倉が奪い取って船に戻ろうとした時、米倉仙三!殺人容疑で逮捕すると、コンクリート土管から飛び出した山村刑事が呼びかけたので、キミ子と米倉は仰天する。

近づいて来た山村に、畜生!と言いながら、キミ子の体を押し付けた米倉は船の方へと逃げたので、山村が後を追う。

甲板の上からさらに渡板を使い、埠頭に出た米倉を長田も追跡する。

埠頭の突端から先がないことに気づいた米倉は、金網を登って工場内に入り込んだので、長田と山村も金網を登って工場内に侵入する。

土砂の山の中を逃げる米倉、それを追う長田と山村。

土砂の山を必死に登ろうとする米倉の足を掴んだ山村と長谷、米倉は風呂敷包みを投げつけ、偽ドルの札束が散らばる。

それでも米倉の体にしがみついた長田は手錠をかける。

2人に連行される米倉の姿を、金網の向こうからじっと見守るキミ子が、せんちゃん…と呟く。

殺人犯米倉仙三はついに捕まった。

この夥しい数の働く人々には、今週もまた憩いと喜びに満ちた土曜日が巡ってくるだろう。

しかしこの米倉仙三にはもう一生、そんな土曜日が巡ってくることはないに違いない(米倉が乗せられた車が遠ざかって行く映像を背景にナレーション)



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